有価証券報告書-第62期(平成30年3月1日-平成31年2月28日)

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2019/05/24 10:00
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2018年3月1日から2019年2月28日まで)の連結業績は、連結売上高が2,023億85百万円(前年同期比2.0%増)、連結営業利益1億4百万円(前年同期比39億14百万円減)、連結経常利益3億49百万円(前年同期比42億55百万円減)、親会社株主に帰属する当期純損失は60億円(前年同期は14億91百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)と増収・減益となりました。
売上高は、西日本を中心に発生した2018年7月豪雨や、9月の台風および北海道胆振東部地震等により営業時間の短縮および休業を余儀なくされた店舗が多く発生いたしましたが、主力事業である吉野家の既存店売上高が堅調に推移したことや、積極的に出店を進めている、はなまる・京樽・海外セグメントの売上高が増加したことにより増収となりました。一方で、期初より牛肉・米を中心とした原材料価格の高騰、人手不足やアルバイト・パート時給の上昇による人件費の増加等により減益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は、店舗の撤退等による減損損失51億7百万円を計上したこと等により減益となりました。
当社グループでは、2025年を最終年度とした長期ビジョン「NEW BEGINNINGS 2025」の実現を目指し、当期を最終年度とするファーストステージの3年間は、セカンドステージ以降における成長のシーズを生み出す3年間と位置付け、「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードに、「飲食業の再定義」を目指し、これまでの飲食業になかった新しい価値創造に向け活動いたしました。最終年度となる当期につきましては、次期以降、主要セグメントである吉野家において新サービスモデルへの転換を5年かけて年間100店規模で実施していくことを決定いたしました。また、はなまる・京樽・海外セグメントにおいては出店による成長・規模拡大を引き続き進めてまいります。
セグメント概況につきましては、次のとおりであります。
[吉野家]
売上高は、1,036億7百万円と、対前年同期比2.5%の増収となりました。
増収の主な要因は、以下の通り様々な施策により既存店売上高が堅調に推移したことであります。販売促進活動として、9月にグループの垣根を越え、外食として初の試みとなるガスト・はなまる・吉野家共通「3社合同定期券」を販売し、2月には大型コラボ企画「スーパーフライデー」を実施いたしました。また、商品施策として、3月より順次「新味豚丼」、「鶏すき丼」、「麦とろ牛皿御膳」、「おろし牛カルビ丼」を、11月には冬の定番「牛すき鍋膳」等を販売いたしました。これらにより新規顧客の獲得と既存顧客の来店頻度向上を図った結果、既存店売上高前年比100.8%と前年を上回ることができました。また、8月から順次進めていた新型POSレジの導入以降、12月に交通系電子マネー、自社電子マネー「吉野家プリカ」などを導入いたしました。今後も様々な電子マネーを導入し、お客様の利便性を高めながら、あわせてキャンペーンを行うなど集客につなげてまいります。セグメント利益は、原材料価格の高騰や人件費の増加等により35億22百万円と、対前年同期比30.4%の減益となりました。店舗数は、33店舗を出店し、26店舗を閉鎖した結果、1,211店舗となりました。
[はなまる]
売上高は、290億6百万円と、対前年同期比7.2%の増収となりました。
増収の主な要因は、積極的な出店に伴う店舗数の増加であります。ファーストステージにおいては、事業規模の拡大を図り「はなまるうどん」の出店拡大を進めております。また、コラボ企画として、新規顧客の獲得と既存顧客の来店頻度の向上を目的として、4月には「天ぷら定期券」を、9月には「3社合同定期券」を販売いたしました。加えて季節商品として、6月には「とろ玉めかぶぶっかけ」を、8月には「ガッツリ肉ぶっかけ」、「ピリ辛肉ざる」を、9月には「具沢山豚汁うどん」を、11月には「四川風麻婆あんかけうどん」を、2月には「はまぐりうどん」を販売する等、季節にあったお客様の様々なニーズにお応えいたしました。今後もお客様満足度の向上につながる販売促進および商品開発に努めてまいります。セグメント利益は、店舗数の増加等により増収となったものの、既存店売上高が前年未達であったことに加え、積極的な出店による採用および教育コストの増加や物流コストが高騰したこと等の影響により6億24百万円と、対前年同期比51.0%の減益となりました。店舗数は、48店舗を出店し、15店舗を閉鎖した結果、512店舗となりました。
[アークミール]
売上高は、202億47百万円と、対前年同期比9.9%の減収となりました。
減収の主な要因は、ステーキ・しゃぶしゃぶ業態における競争が激化し既存店売上高が低迷したことや、店舗数が減少したことであります。減収によりセグメント損失は8億41百万円(前年同期は2億9百万円のセグメント利益)となりました。客数回復策として、各業態において季節のフェアメニューを導入したことや、9月には「ステーキのどん」において「日替わりハンバーグ」をお値段そのままで30%増量しバリューアップを図りました。11月には「肉の日」を毎月2日、9日の開催から、29日を含む週末4日間の開催へと、ご家族で来店しやすいイベントに変更いたしました。また、美味しいステーキをおなかいっぱい食べたいというお客様のニーズにお応えすべく、「ステーキのどん」においては「熟成リブロインステーキ」、「フォルクス」においては「サーロインステーキ」を、それぞれ使用する牛肉を一新した上で、増量キャンペーンを実施いたしました。引き続き魅力ある商品の開発と、キャンペーンを効果的に実施することで、お客様の支持を獲得してまいります。店舗数は、1店舗を出店し、7店舗を閉鎖した結果、171店舗となりました。
[京樽]
売上高は、273億23百万円と、対前年同期比2.4%の増収となりました。
増収の主な要因は、首都圏に積極的に出店を行っております回転寿司店「海鮮三崎港」の増加、および既存店売上高が堅調に推移したことであります。テイクアウト事業においては江戸前鮨を強化した「京樽・すし三崎港」併設店による売上高の伸長に加え、ご好評をいただいている「中巻セール」や“ハレの日”の各セールを実施いたしました。外食事業においては「本まぐろ祭」「(店長おすすめ)99円セール」を実施したほか、江戸前寿司用のシャリの合わせ酢を“赤酢”に変更することで旨味を維持したまま20%減塩を実現する等、健康志向の高まりに対応いたしました。また、炊飯米の販売やインターネットサイトを利用した弁当販売も拡大しております。セグメント利益は、積極的な出店による採用コスト増や原材料価格の高騰等により1億62百万円と、対前年同期比48.6%の減益となりました。店舗数は、21店舗を出店し、18店舗を閉鎖した結果、333店舗となりました。
[海外]
売上高は、211億62百万円と、対前年同期比7.2%の増収となりました。
増収の主な要因は、アメリカ、台湾の売上高が好調に推移したことや、フランチャイズも含めた積極的な出店により店舗数が増加したことによるものであります。セグメント利益は、各エリアで原材料価格が高騰したこと、人件費および出店や改装に伴う減価償却費等が増加したことにより8億6百万円と、対前年同期比35.1%の減益となりました。店舗数は、135店舗を出店し、33店舗を閉鎖した結果、923店舗となりました。
当連結会計年度末の財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ29億28百万円減少し、1,126億85百万円となりました。
はなまる、海外セグメント等の積極的な出店により固定資産が増加したものの、償却および店舗の減損損失により建物及び構築物(純額)が21億82百万円減少、一方で、リース資産(純額)13億56百万円増加、関係会社株式取得による投資有価証券7億73百万円増加等により、固定資産は前連結会計年度末に比べ63百万円減少し784億25百万円となりました。また上記投資等により現金及び預金が49億42百万円減少、原材料及び貯蔵品が5億31百万円増加したこと等により流動資産は前連結会計年度末に比べ28億64百万円減少し、342億60百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ48億54百万円増加し、626億59百万円となりました。これは主として、長期借入金が61億47百万円増加したことと、1年以内返済予定の長期借入金が返済等により14億34百万円減少したことによるものであります。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失60億円、剰余金の配当12億91百万円により利益剰余金が72億92百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ77億82百万円減少し、500億25百万円となりました。
自己資本比率は、前連結会計年度末比で5.7ポイント減少し43.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、換算差額を加え、前連結会計年度末より39億12百万円減少して、156億60百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失48億53百万円に減価償却費67億円および減損損失51億7百万円等を加えた収入に対して、たな卸資産の増加6億30百万円及び法人税等の支払額24億89百万円等の支出により、28億30百万円の収入(前年同期は93億74百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得73億71百万円および無形固定資産の取得8億30百万円等の支出により、90億34百万円(前年同期は83億79百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金111億96百万円等の収入に対して、長期借入金の返済64億85百万円および配当金の支払額12億90百万円等の支出により、24億61百万円の収入(前年同期は42億円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
吉野家10,604+2.0
はなまる1,533+6.2
アークミール1,726+2.3
京樽2,994△0.2
その他158△1.1
合計17,016+2.0

(注) 1 海外は生産実績がないため、記載しておりません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
吉野家102,635+2.6
はなまる28,762+7.3
アークミール20,172△10.0
京樽27,169+2.4
海外21,162+7.2
その他2,482△15.5
合計202,385+2.0

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、将来事象の結果に依存するため確定できない金額については、仮定の適切性、情報の適切性及び金額の妥当性に留意した上で会計上の見積りを行っております。実際の結果は、将来事象の結果に特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度の売上高は、前年に対し38億82百万円増加となる2,023億85百万円(前年同期比2.0%増)となりました。連結売上高増加の要因は、主として、吉野家セグメントにおける様々なキャンペーン販促や新商品投入が奏功したこと、海外、はなまるセグメントで店舗数増加により売上高が増加したこと等であります。
b.営業利益、経常利益
当連結会計年度の営業利益は、売上高が増加したものの、売上原価、販売費及び一般管理費の増加により、前年に対し39億14百万円減少し、1億4百万円となりました。経常利益は、前年に対し42億55百万円減少し、3億49百万円となりました。
売上原価は、前年に対し32億14百万円増加し、主要となる原料牛肉や原料米の価格高騰により、原価率は前年に対し0.9%上昇し36.0%となりました。一方、販売費及び一般管理費においては、人件費の上昇、積極的な出店による施設設備費の上昇等により、前年に対し45億82百万円増加となる1,294億76百万円となりました。
c.特別利益
特別利益は、前年に対し15百万円減少し、固定資産売却益7百万円となりました。
d.特別損失
不振店の閉鎖や店舗改装により、減損損失51億7百万円を計上した結果、前年に対し、36億2百万円増加となる52億10百万円の特別損失となりました。
e.親会社株主に帰属する当期純損失
法人税、住民税及び事業税10億19百万円、法人税等調整額1億81百万円、非支配株主に帰属する当期純損失53百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は、60億円となりました(前年は親会社株主に帰属する当期純利益14億91百万円)。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
(4) 経営戦略の現状と見通し
国内においては、緩やかな景気回復基調が持続することが期待されるものの、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げによる消費マインドへの影響もあり、個人消費は引き続き不透明な状況にあります。
外食業界におきましては、原材料価格や物流コストの高騰に加え人手不足による人件費の増加など、引き続き厳しい経営環境が続くものと思われます。
当社グループでは、「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードに、「飲食業の再定義」を実現していくため、これまでの飲食業になかった新しい価値創造にチャレンジしております。ファーストステージではグループ各社様々な実験に着手いたしました。実験の中から成果が生まれつつある労働環境の改善や店舗生産性向上に資する取り組みの実装を進めてまいります。また、海外の既存エリアである米国・アジアおよびアセアン地区の経営の現地化を進めております。各エリアにあった店舗モデルの開発や、現地の食文化、ニーズを捉えたメニュー開発など、スピーディーな意思決定を実行することで海外での成長も拡大させていきます。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、将来の事業展開や経営基盤強化のための新規出店や既存店舗の改装及び生産設備の増強等によるものであります。これらの設備投資資金は、内部留保金の配分とともに、金融機関からの借入金やリース取引により充当しております。なお、借入金のうち、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金は主に設備投資に係る資金調達であります。
手許の運転資金につきましては、グループファイナンスを通じて、国内連結子会社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
また、現預金残高と有利子負債残高を一定範囲にコントロールし、経営環境の変化に対応するための資金の流動性を確保しながら資金管理を行っております。
当社グループにおける当連結会計年度における流動比率は109.6%(前連結会計年度110.2%)となっており、キャッシュ・フロー対有利子負債比率は14.0年となりました。直近5ヵ年における以下の数表の通りであります。
2015年2月期2016年2月期2017年2月期2018年2月期2019年2月期
流動比率125.3%117.2%118.7%110.2%109.6%
自己資本比率53.7%51.7%49.4%49.5%43.9%
時価ベースの自己資本比率75.5%81.6%92.4%107.7%103.6%
キャッシュ・フロー対有利子
負債比率
2.0年72.3年3.5年3.5年14.0年
インタレスト・カバレッジ・
レシオ
40.7倍1.4倍39.8倍51.3倍15.6倍

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
2019年2月期を最終年度とする3ヵ年中期経営計画の目標は、計画策定時に見込んでいた以上の食材価格の上昇に加え、人手不足など等により「国内外店舗数合計3,500店舗」「連結売上高2,100億円」「連結営業利益60億円」「ROE4.7%」すべて未達となりました。これらの目標達成は先送りするものの、2020年2月期は「連結売上高2,080億円」「連結営業利益10億円」「親会社株主に帰属する当期純利益1億円」を必達目標に掲げ、業績の立て直しを図る「基盤整備」の1年といたします。
実績計画計画差
中期経営計画3ヵ年合計
売上高(億円)
5,8946,050-156
中期経営計画3ヵ年合計
営業利益(億円)
59137-78
2019年2月期末店舗数3,4033,500-97

かつての当社グループは、各事業会社がそれぞれ完成したビジネスモデルを持ち、それらを速く正確に回転させることで成長してきました。しかし、2000年以降、そうした取り組みだけで力強い成長を維持することが困難になってきました。この状況を打開し、ステークホルダーの皆様の期待に応えていくために、私たちは、現在のビジネスモデルに代えて長期的に運用できる「新しいビジネスモデル」を必要としています。
今までにない「新しいビジネスモデル」を創り出す取り組みは、あと数年費やすこととなりますが、この間に既存の外食産業の範疇を超えるような市場創造・価値提供を実現したいと考えております。
今後は一層スピード感を強めていくと同時に、さらに突出した革新による飛躍を図らなくてはなりません。こうした革新を当社は、「飲食業の再定義」と名付け、グループ全体の課題として取り組んでいきます。
当社グループは、これらの諸施策を着実に実行することで、企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に努めてまいります。