有価証券報告書-第63期(平成31年3月1日-令和2年2月29日)

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2020/05/22 10:00
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2019年3月1日から2020年2月29日まで)の連結業績は、連結売上高が2,162億1百万円(前年同期比6.8%増)、連結営業利益39億26百万円(前年同期比38億21百万円増)、連結経常利益33億69百万円(前年同期比30億19百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億13百万円(前年同期比67億13百万円増)と増収・増益となりました。
売上高は前年同期に対して138億16百万円の増収となりました。2019年10月の消費増税や台風19号発生による関東地方を中心とした店舗休業の影響がありましたが、主力事業である吉野家が連続的な商品導入や積極的なキャンペーンを効果的に実施したことにより既存店売上高が好調に推移したことや、積極的に出店を進めているはなまる・京樽・海外セグメントの売上高が増加したことにより、前期を上回ることができました。水産物などの食材価格の上昇および、アルバイト・パート時給の上昇による人件費の増加など、厳しい環境が続いておりますが、増収効果がコスト増を上回り増益となりました。当期は、吉野家において新サービスモデルへの転換を実施し、客層を広げながら売上高の向上を図ってまいりました。改装店舗は着実に成果を上げており引き続き積極的に転換を図ってまいります。また、はなまる・京樽・海外セグメントにおいては出店による成長・規模拡大を引き続き進めてまいります。
セグメント概況につきましては、次のとおりであります。
[吉野家]
売上高は、1,116億85百万円と、対前年同期比7.8%の増収となりました。
増収の主な要因は、既存店売上高が好調に推移したことであります。創業120周年を迎えた当年度は、牛肉関連商品を定期的に販売し、従来からの牛丼ファンの来店頻度向上を図ってまいりました。その一環として、3月には28年ぶりとなる牛丼の新サイズ「超特盛」「小盛」を、5月にはコラボ商品「ライザップ牛サラダ」を、9月には「月見牛とじ御膳」を、10月には冬の定番「牛すき鍋膳」と陳建一氏監修の「麻辣牛鍋膳」を、2月には夜の時間帯の強化策として「W定食」を販売いたしました。販売施策として、4月にはご好評をいただいている、はなまるとのコラボ企画「吉野家80円引き!定期券」を発売し、6月には「牛丼・牛皿テイクアウト80円引きキャンペーン」を、7月には「夏休みお子様割」を、10月には「牛丼・牛皿全品10%オフキャンペーン」を、12月にはポケモンとのコラボ「ポケ盛キャンペーン」を、2月には「PayPay40%戻ってくるキャンペーン」を実施いたしました。加えて、宅配需要の開拓を目的に、宅配サービス対応店舗を積極的に拡大し2月末の対応店舗数は461店となりました。これらの結果、既存店売上高前年比は106.7%と好調に推移しました。また、新サービスモデル店舗への転換を進め、期末店舗数は新店を含め112店舗になりました。今後も継続して転換を進めてまいります。セグメント利益は、増収により、59億35百万円と、対前年同期比68.5%の増益となりました。同期間の店舗数は、29店舗を出店し、25店舗を閉鎖した結果、1,214店舗となりました。
[はなまる]
売上高は、308億93百万円と、対前年同期比6.5%の増収となりました。
増収の主な要因は、積極的な出店により、国内はなまる業態が500店舗を突破したことに加え、価格改定や商品施策により既存店売上高が堅調に推移したことであります。販売施策として4月に「天ぷら定期券」を、6月と9月に「500店舗、ありがとうキャンペーン」を、8月には「お子様割キャンペーン」を、12月には「うどんチケット」を販売し、2月には「PayPay40%戻ってくるキャンペーン」を実施し、新規顧客の獲得と既存顧客の来店頻度の向上を図りました。商品施策としては季節商品として、4月には「濃厚豆乳担々うどん」を、6月には「とろ玉ぶっかけ」を、8月には「冷やしごま担々うどん」を、2月には「はまぐりうどん」を販売し、多くのお客様からの支持を獲得いたしました。今後もお客様満足度の向上につながる販売促進および商品開発に努めてまいります。セグメント利益は、増収により、12億52百万円と、対前年同期比100.5%の増益となりました。同期間の店舗数は、30店舗を出店し、20店舗を閉鎖した結果、522店舗となりました。
[アークミール]
売上高は、199億10百万円と、対前年同期比1.7%の減収となりました。
減収の主な要因は、閉鎖に伴い店舗数が減少したことであります。既存店客数の回復のため、販売施策として、「肉の日」において、特別価格での商品提供に加え、継続来店に繋がるよう「ランチタイム定期券」「ステップアップクーポン」「ワンツークーポン」などを配布いたしました。また、4月には「ステーキのどん」において、「映画クレヨンしんちゃん」とのコラボ企画を実施いたしました。商品施策としては、7月に「ステーキのどん」においてボリューム満点の「激アツステーキ」を販売し、ご好評をいただいております。また、「しゃぶしゃぶどん亭」において「月見ラムしゃぶ」「イベリコ豚しゃぶしゃぶ」、陳建一氏監修の「イベリコ豚バラ麻辣しゃぶしゃぶ」や「フォルクス」において「秋フェア フォルクス3種類のステーキ」「ボーンインステーキ」「リブロースステーキ」などの季節のフェアメニューを販売いたしました。これらの施策により、既存店売上高が堅調に推移したことから、セグメント損失は3億9百万円と、前年同期に比べ損失額は5億32百万円の減少となりました。同期間の店舗数は、16店舗を閉鎖した結果、154店舗となりました。なお、アークミールについては、2020年2月29日に当社が保有する株式会社アークミールの全株式を株式会社安楽亭に譲渡いたしました。
※詳細につきましては85~86ページに記載しております。
[京樽]
売上高は、285億44百万円と、対前年同期比4.5%の増収となりました。
増収の主な要因は、既存店売上高が堅調に推移したことに加え、都心を中心に積極的に出店を行っております回転寿司業態「海鮮三崎港」の店舗数が増加したことであります。販売施策としては、ご好評をいただいているテイクアウト事業における「中巻セール」、ひな祭り・節分などの“ハレの日”の各セール、外食事業における「本まぐろ祭」「(赤皿)99円セール」などを効果的に実施いたしました。また、2月には、人気TV番組タイアップセールを実施しご好評をいただきました。商品施策としては、豊後ブリ・鹿児島県産生サバなど、産地にこだわった旬の食材を用いた季節メニューを各業態で販売いたしました。これらに加え、炊飯米の販売やインターネットサイトを利用した弁当販売も拡大しております。セグメント利益は、増収により、4億57百万円と、対前年同期比181.6%の増益となりました。同期間の店舗数は、17店舗を出店し、15店舗を閉鎖した結果、335店舗となりました。
[海外]
売上高は、219億45百万円と、対前年同期比3.7%の増収となりました。
増収の主な要因は、フランチャイズも含めた積極的な出店により店舗数が増加したことであります。セグメント利益は、一部エリアでは原材料価格の高騰による影響がありましたが、出店による増収などにより、9億72百万円と、対前年同期比20.5%の増益となりました。同期間の店舗数は、131店舗を出店し、60店舗を閉鎖した結果、994店舗となりました。
当連結会計年度末の財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ134億82百万円増加し、1,261億67百万円となりました。
これは主として、現金及び預金が56億32百万円増加したこと、および、IFRSを適用している在外連結子会社のIFRS第16号「リース」の適用による使用権資産(純額)25億86百万円の計上によるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べ151億22百万円増加し、777億82百万円となりました。これは主として、長期借入金が41億71百万円増加したことに加え、IFRSを適用している在外連結子会社のIFRS第16号「リース」の適用等により、リース債務が54億26百万円増加したことによるものであります。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益7億13百万円計上したこと、剰余金の配当12億91百万円により利益剰余金が16億11百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ16億40百万円減少し、483億85百万円となりました。
自己資本比率は、前連結会計年度末比で6.0%減少し37.9%となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
また、IFRSを適用している在外連結子会社のIFRS第16号「リース」の適用に関する詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、換算差額を加え、前連結会計年度末より58億39百万円増加して215億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益10億31百万円に減価償却費77億15百万円および減損損失24億79百万円等を加えた収入に対して、売上債権の増加20億7百万円等の支出により、140億38百万円(前年同期は28億30百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得77億47百万円および無形固定資産の取得10億58百万円等の支出により、84億53百万円の支出(前年同期は90億34百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金109億51百万円等の収入に対して、長期借入金の返済64億1百万円、ファイナンス・リース債務の返済31億5百万円および配当金の支払額12億96百万円等の支出により、2億88百万円の収入(前年同期は24億61百万円の収入)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
吉野家10,954+3.3
はなまる1,553+1.3
アークミール1,918+11.2
京樽3,143+5.0
その他169+7.4
合計17,740+4.3

(注) 1 海外は生産実績がないため、記載しておりません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
吉野家110,690+7.8
はなまる30,615+6.4
アークミール19,826△1.7
京樽28,375+4.4
海外21,945+3.7
その他4,748+91.3
合計216,201+6.8

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、将来事象の結果に依存するため確定できない金額については、仮定の適切性、情報の適切性及び金額の妥当性に留意した上で会計上の見積りを行っております。実際の結果は、将来事象の結果に特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度の売上高は、前年に対し138億16百万円増加となる2,162億1百万円(前年同期比6.8%増)となりました。連結売上高増加の要因は、主として、吉野家セグメントにおける様々なキャンペーン販促や新商品投入により既存店売上高が好調に推移したことや積極的に出店を進めているはなまる・京樽・海外セグメントの売上高が増加したこと等であります。
b.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、増収に加え、原価率、及び販売管理費率の低下により、前年に対し38億21百万円増加し、39億26百万円となりました。
売上原価は、前年に対し34億47百万円増加したものの、商品施策や主要となる米や原料牛肉の価格低減等により、原価率は前年に対し0.7%低減し35.3%となりました。販売費及び一般管理費においては、アルバイト・パート時給の上昇による人件費の上昇等により前年に対し65億47百万円増加となる1,360億23百万円となったものの、全体的なコストコントロールにより、経費率では前年に対し1.1%低下し62.9%となりました。
c.経常利益
経常利益は、海外セグメントの持分法適用関連会社に係る関係会社株式に関して、持分法による投資損失として営業外費用に10億27百万円計上等があるものの、前年に対し、30億19百万円増加し、33億69百万円となりました。
d.特別利益
特別利益は、固定資産売却益1億88百万円を計上した結果、前年に対し1億81百万円増加し、1億88百万円となりました。
e.特別損失
不振店の閉鎖や店舗改装により、減損損失24億79百万円を計上した結果、前年に対し、26億83百万円減少となる25億26百万円の特別損失となりました。
f.親会社株主に帰属する当期純利益
法人税、住民税及び事業税10億23百万円、法人税等調整額△7億13百万円、非支配株主に帰属する当期純利益8百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、7億13百万円となりました(前年は親会社株主に帰属する当期純損失60億円)。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
(4) 経営戦略の現状と見通し
昨今の新型コロナウイルス感染症は現在も感染拡大が続いており、世界経済へ与える影響は大きく、グローバルに店舗展開を行っている当社へ影響を及ぼしております。
中国では春節後ほぼ全店が臨時休業や時短営業となりました。現在、大半の店舗が営業再開となりましたが、外出を控える状況は現在も続いております。米国、アセアンでは、外出禁止令によりテイクアウトのみでの運営を余儀なくされるなど、今後の感染拡大によっては、影響が大きくなると見込まれます。
国内事業は、3月2日からの全国一斉休校の影響や、外出の自粛要請により、外食を控える状況が続いており、商業施設の休業・営業時間の短縮などもあり商業施設店舗を中心に、売上高の減少が続いております。休校期間の延長、緊急事態宣言による更なる外出自粛要請もあり、今後の先行きは不透明な状況にあります。
当社グループは、「食」の担い手として、社会が求めるサービスを提供し、感染症対策を支えていきたいと考えています。同時に、今後の事業展開においても、感染症をめぐる市場の変化や、回復後に訪れるであろう変化の芽を的確に捉え、スピーディーに対応していく考えです。2021年2月期においては、当初計画していた新規の投資も当面抑制し、キャッシュフローを重視しながら、その後の飛躍に繋げてまいります。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、将来の事業展開や経営基盤強化のための新規出店や既存店舗の改装及び生産設備の増強等によるものであります。これらの設備投資資金は、内部留保金の配分とともに、金融機関からの借入金やリース取引により充当しております。なお、借入金のうち、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金は主に設備投資に係る資金調達であります。
手許の運転資金につきましては、グループファイナンスを通じて、国内連結子会社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
また、現預金残高と有利子負債残高を一定範囲にコントロールし、経営環境の変化に対応するための資金の流動性を確保しながら資金管理を行っております。
当社グループにおける当連結会計年度における流動比率は108.8%(前連結会計年度106.9%)となっており、キャッシュ・フロー対有利子負債比率は3.6年となりました。直近5ヵ年における以下の数表の通りであります。
2016年2月期2017年2月期2018年2月期2019年2月期2020年2月期
流動比率117.2%118.7%110.2%106.9%108.8%
自己資本比率51.7%49.4%49.5%43.9%37.9%
時価ベースの自己資本比率81.6%92.4%107.7%103.6%109.8%
キャッシュ・フロー対有利子
負債比率
72.3年3.5年3.5年14.0年3.6年
インタレスト・カバレッジ・
レシオ
1.4倍39.8倍51.3倍15.6倍26.9倍

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
かつての当社グループは、各事業会社がそれぞれ完成したビジネスモデルを持ち、それらを速く正確に回転させることで成長してきました。しかし、2000年以降、そうした取り組みだけで力強い成長を維持することが困難になってきました。この状況を打開し、ステークホルダーの皆様の期待に応えていくために、私たちは、現在のビジネスモデルに代えて長期的に運用できる「新しいビジネスモデル」を必要としています。
今までにない「新しいビジネスモデル」を創り出す取り組みは、あと数年費やすこととなりますが、この間に既存の外食産業の範疇を超えるような市場創造・価値提供を実現したいと考えております。
今後は一層スピード感を強めていくと同時に、さらに突出した革新による飛躍を図らなくてはなりません。こうした革新を当社は、「飲食業の再定義」と名付け、グループ全体の課題として取り組んでいきます。
当社グループは、これらの諸施策を着実に実行することで、企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に努めてまいります。
次期につきましては、長期ビジョンにおける「拡大期」セカンドステージの初年度となります。ファーストステージで発見した成長の種を確実に育てることで「利益の拡大」を図ってまいります。長期ビジョンの実現に向け、引き続き社外との「共創」を積極的に進め、「ひと」を活かした持続可能なビジネスモデルを構築してまいります。