有価証券報告書-第31期(平成29年9月1日-平成30年8月31日)

【提出】
2018/11/29 15:59
【資料】
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【項目】
115項目
(1) 経営成績等の状況の概況
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における国内経済は、堅調な企業業績に伴う設備投資の増加、雇用、所得環境の改善、消費者マインドの持ち直しにより緩やかな回復基調が持続しておりました。一方、世界経済に目を向けると、米国を中心とした貿易摩擦の深刻化の懸念、東アジア地域の情勢不安に起因する地政学的リスクの高まりなどの不安要素があるものの、米国や中国における景気が堅調だったことから、全体として穏やかな景気回復傾向が続いておりました。
また、国内眼鏡小売市場(視力矯正眼鏡)は、平成28年3月以降、前年同期比マイナスの傾向が継続しており、引き続き足元は弱含みに推移しております
このような市場環境の中で、当社グループのアイウエア事業では、予てより経営課題と掲げている商品戦略の再構築、店舗オペレーションの改善などの取り組みを継続的に推進しております。また国内アイウエア事業において更なる成長を実現していくためには、商品力の向上及び接客力、店舗マネジメント力の強化が必要不可欠と認識しており、これらの諸課題に対して注力してまいりました。また、店舗戦略につきましては、ショッピングモール形態での出店を継続しながらも、郊外ロードサイド型店舗の出店戦略において、コーヒーショップや書店といった他業態との協働など、より集客力の高い立地への出店を推し進め、店舗基盤の強化に努めてまいりました。
店舗展開につきましては、当連結会計年度末におけるアイウエア専門ショップの店舗数は、国内直営店349店舗(出店30店舗、退店4店舗)、中国直営店130店舗(出店31店舗、退店4店舗)、米国直営店4店舗(出店、退店なし)の合計483店舗となりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績及び財政状態は以下のとおりとなりました。
(イ) 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高54,872百万円(前年同期比8.8%増)、営業利益6,071百万円(前年同期比12.4%増)、経常利益5,627百万円(前年同期比7.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,097百万円(前年同期比11.9%増)と増収増益となりました。
なおセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
国内アイウエア事業の業績につきましては、売上高45,067百万円(前年同期比6.8%増)、営業利益6,235百万円(前年同期比9.4%増)となりました。
海外アイウエア事業の業績は、売上高7,213百万円(前年同期比38.6%増)、営業利益70百万円(前年同期は営業損失327百万円)となりました。
雑貨事業の業績は、売上高2,589百万円(前年同期比14.8%減)、営業損失235百万円(前年同期は営業利益30百万円)となりました。
(ロ) 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は31,499百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,145百万円増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は11,792百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,046百万円減少いたしました。
当連結会計年度末における純資産合計は19,707百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,192百万円増加いたしました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5,531百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,328百万円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(イ) 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ1,596百万円収入が減少し、4,742百万円の収入となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益4,909百万円の計上、減価償却費2,369百万円の計上による資金の増加があったものの、たな卸資産の増減額488百万円、法人税等の支払額1,930百万円による資金の減少があったことによるものであります。
(ロ) 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ657百万円支出が増加し、3,064百万円の支出となりました。
これは主に、店舗の出店及び改装に伴う有形固定資産の取得による支出2,102百万円、貸付けによる支出637百万円、敷金及び保証金の差入による支出365百万円によるものであります。
(ロ) 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ1,448百万円支出が増加し、2,996百万円の支出となりました。
これは主に、短期借入金の純減額708百万円、リース債務の返済による支出668百万円、配当金の支払額862百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
当社は卸・小売業であり、生産活動を行っておりませんので、生産実績、受注実績は該当事項がありません。
販売実績につきましては、「(2)経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき、重要な会計方針及び見積りにより作成されております。
当社は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の決算数値及び偶発債務の開示ならびに会計期間における収益・費用の決算数値に影響を与える見積り項目について、過去の実績や状況に応じ、合理的と考えられる様々な要因に基づいた見積りと判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
これらの連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は54,872百万円(前年同期比8.8%増)となりました。
国内アイウエア事業につきましては、上半期の既存店売上高は秋冬物の新作「JINS×TIME」シリーズの販売不振等の影響もあり、前年同期を僅かながら下回る状況であったものの、下半期に入ってからは、平成29年3月より導入した3プライス制の新価格戦略が1年経過し一式単価が持ち直してきたこと等により、当連結会計年度における既存店売上高は前年同期を上回ることとなりました。
また、郊外ロードサイドにコーヒーショップや書店といった他業態との協働した集客力の高い出店を推し進めるなど、店舗基盤の強化を図ることで、前期から26店舗純増し国内直営店は349店舗となりしました。これにより国内アイウエア事業の売上高は前期同期比6.8%増加しました。
海外アイウエア事業につきましては、中国における競争環境が激しさを増しているものの、模倣店との差別化を浸透させることで、既存店売上高が回復基調にあり、米国においても、米国向けデザイン商品の投入及び店舗オペレーションの改善等により既存店売上高が大幅に増加しました。これにより海外アイウエア事業の売上高は前年同期比38.6%増加しました。
雑貨事業につきましては、通販サイト及び中古市場の台頭等により厳しさが増しており、当社グループの業績も少なからずその影響を受けております。これにより雑貨事業の売上高は前年同期比14.8%減少しました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は6,071百万円(前年同期比12.4%増)となりました。
国内アイウエア事業は、上期より売上高に占めるセール構成比が増加したものの、下期においてセールの抑制及び原価管理を徹底したことにより売上高総利益率はほぼ前年同期並となり、販売管理費についても、広告宣伝費の増加及び配送費の高騰等により各種費用が増加したものの、人件費等を適切にコントロールをしたことにより増益要因となりました。
海外アイウエア事業は、調達先の見直し等で原価を削減したこと、また米国での損益が改善されたことにより増益要因となりました。
雑貨事業は、販売管理費を抑制したものの減収を補うには至らず、減益要因となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は5,627百万円(前年同期比7.7%増)となりました。
これは主に、不動産賃貸費用が247百万円、支払利息が152百万円あったことにより、営業利益6,071百万円から443百万円の減少となりました。
(税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は4,909百万円(前年同期比10.0%増)となりました。
これは主に、店舗資産等の減損損失が445百万円、固定資産除却損が198百万円あったことにより、経常利益5,627百万円から718百万円の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は3,097百万円(前年同期比11.9%増)となりました。
これは主に、法人税、住民税及び事業税及び法人税等調整額があったことによるもので、税金等調整前当期純利益4,909百万円から1,812百万円の減少となりました。
財政状態及びキャッシュフローの分析
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は31,499百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,145百万円増加いたしました。
これは主に、現金及び預金が1,328百万円減少したものの、商品及び製品が446百万円増加したこと、新規出店等に伴い建物及び構築物等の有形固定資産が831百万円増加したこと、敷金及び保証金が123百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は11,792百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,046百万円減少いたしました。
これは主に、短期借入金が677百万円減少したこと、未払消費税等が358百万円減少したこと、長期借入金が334百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は19,707百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,192百万円増加いたしました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益3,097百万円の計上があったことによるものであります。
キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
セグメント別の業績の概況
(国内アイウエア事業)
国内アイウエア事業につきましては、上半期は秋冬物の新作「JINS×TIME」シリーズの販売不振、売上に占めるセール構成比の増加及び低価格商品への偏り等の影響もあり、既存店売上高は前年同期を僅かながら下回る状況であったものの、コラボ商品が好調だったこと等総じて販売本数の伸びが顕著でありました。下半期に入ってからは、1本で簡単にメガネにもサングラスにもなるアイウエア「JINS Switch(ジンズ・スイッチ)」等が順調な売れ行きだったこと、また平成29年3月より導入した3プライス制の新価格戦略が1年経過し一式単価が持ち直してきたこと等により、当連結会計期間における既存店売上高は前年同期を上回ることとなりました。
さらに、平成29年11月にリリースした「JINSオリジナルアプリ」がお客様より好評を頂き、平成30年8月には累計ダウンロード数が180万件を突破しました。また、平成29年12月には1日使い捨てコンタクトレンズ「JINS 1DAY」の発売によりコンタクトレンズ事業に参入する等、新たな取り組みを開始しております。
店舗展開につきましては、概ね計画通りに進捗し、国内直営店舗数は349店舗となりました。
以上の結果、国内アイウエア事業の業績は、売上高45,067百万円(前年同期比6.8%増)、営業利益6,235百万円(前年同期比9.4%増)となりました。
(海外アイウエア事業)
海外アイウエア事業につきましては、中国における競争環境が激しさを増しているものの、模倣店との差別化を浸透させながら、既存店売上高が回復基調にあること及び売上高総利益率が改善したこと等から同地域における黒字積み増しが図れております。
米国においては、米国向けデザイン商品の投入及び店舗オペレーションの改善等により既存店売上高が大幅に増加し、また、レンズの調達先変更により売上高総利益率も上昇したことで収益構造が改善しております。
また、平成30年3月にフィリピンにて小売店舗を多数運営しているSuyen社とフィリピンにおけるフランチャイズ契約を締結し、平成30年4月にフィリピン第1号店を開店いたしました。当社の海外進出は4地域目、フランチャイズ形態での海外出店は初となります。
店舗展開につきましては、海外直営店舗数は134店舗となりました。
以上の結果、海外アイウエア事業の業績は、売上高7,213百万円(前年同期比38.6%増)、営業利益70百万円(前年同期は営業損失327百万円)となりました。
(雑貨事業)
雑貨事業につきましては、メンズ雑貨事業、レディス雑貨事業の収入により構成されております。
雑貨事業を取り巻く環境は、通販サイト及び中古市場の台頭等により厳しさが増しており、当社グループの業績も少なからずその影響を受けております。市況の変化に対応できるよう店舗オペレーション及び商品戦略の見直しを行い、業績の回復に注力してまいります。
店舗展開につきましては、メンズ雑貨専門ショップ21店舗(出店1店舗、退店なし)、レディス雑貨専門ショップ19店舗(出店2店舗、退店3店舗)となりました。
以上の結果、雑貨事業の業績は、売上高2,589百万円(前年同期比14.8%減)、営業損失235百万円(前年同期は営業利益30百万円)となりました。

資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品仕入の他、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。投資を目的とした資金需要は、出店等の設備投資によるものです。
また、当社グループの運転資金及び出店資金については自己資本を基本としておりますが、必要に応じて設備投資や長期運転資金の調達について銀行借入及びリース契約を使用する場合があります。
当連結会計年度においては、取引銀行5行と極度額8億円及び130百万元の当座貸越契約、取引銀行4行と総額8,000百万円のコミットメントライン契約を締結しており、機動的かつ安定的な投資資金の調達の実現を図っております。
なお、当連結会計年度における上記契約を含む金融機関からの資金調達額は2,817百万円、リース債務残高は1,423百万円であります。
経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、アイウエア事業に参入以降、眼鏡を必要とされるすべての方に高品質・高機能メガネを市場最低・最適価格で提供してまいりました。また「JINS SCREEN」、「JINS 花粉CUT」を始めとした機能性アイウエアを開発し、新しい市場を創出してまいりました。
しかしながら、JINSが率先して世に提案してきたサービスやイノベーティブな商品のコモディティー化が進んできております。当社グループがさらにお客様の期待に応えるために、「バイオレットライトプラスレンズ」をはじめとした新しい価値をもたらすプロダクトの開発、ショールーミングに特化した次世代型店舗などのこれまでにないエクスペリエンスの提供、「JINSオリジナルアプリ」を使用したお客様の視力数値・購買情報を基にしたパーソナルデータベースの強化を推し進め、年間500万人を超える顧客基盤を持つ当社グループでしかできない変革に挑戦してまいります。