有価証券報告書-第108期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績の状況の概要は、以下のとおりです。
①財政状態および経営成績の状況
a.財政状態
◆資産
当期末の総資産は、7兆3,953億円となり、前期末比で5,926億円増加しました。
主な増減としては、販売用不動産(仕掛販売用不動産、開発用土地、前渡金を含む)が2,772億円増加し、また新規投資等により有形・無形固定資産が2,526億円増加しました。
なお、当期の設備投資額は3,792億円、減価償却費は914億円でした。
◆負債
当期末の有利子負債(短期借入金、ノンリコース短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内償還予定の社債、ノンリコース1年内償還予定の社債、社債、ノンリコース社債、長期借入金、ノンリコース長期借入金の合計額)は、3兆4,811億円となり、前期末比で5,745億円増加しました。
なお、資金調達の流動性補完を目的として、コミットメントラインを複数の金融機関との間で設定しており、4,000億円の未使用枠があります。
また、当期末の流動比率(流動資産/流動負債)は、前期末の191%から上昇し230%となりました。
◆純資産
当期末の純資産合計は、2兆4,865億円となり、前期末比で657億円の増加となりました。これは、利益剰余金が1,080億円増加した一方で、資本剰余金が311億円、その他有価証券評価差額金が146億円減少したこと等によります。
当期末の自己資本比率は32.6%と前期末の34.4%から低下し、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は1.45倍と前期末の1.24倍から上昇しました。なお、1株当たり純資産額は、2,480.36円(前期末は2,384.87円)となりました。
b.経営成績
当社グループの連結業績につきましては、売上高は1兆9,056億円(前期比444億円増、2.4%増)、営業利益2,806億円(前期比184億円増、7.0%増)、経常利益2,585億円(前期比44億円増、1.7%増)となりました。これに特別利益として投資有価証券売却益167億円を計上し、特別損失として固定資産除却損42億円や事業譲渡損29億円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,839億円(前期比153億円増、9.1%増)となりました。
報告セグメント別の業績は、次のとおりです。
各セグメントの売上高は、外部顧客に対する売上高を記載しており、特に記載のない場合、単位は百万円となっております。
① 賃貸
前期に竣工・開業した「msb Tamachi 田町ステーションタワーS」「日本橋髙島屋三井ビルディング」「55ハドソンヤード」「三井アウトレットパーク台中港」「日本橋室町三井タワー」等の通期稼働効果や当期に開業した「ららぽーと沼津」の収益寄与等により、セグメント全体では、327億円の増収、39億円の増益となりました。
なお、当社の首都圏オフィス空室率(単体)は1.9%となりました。
<売上高の内訳>
・貸付面積の状況(単位:千㎡)
・期末空室率推移(%)
<当期における主要な新規・通期稼働物件>・新規稼働物件(当期稼働物件)
・通期稼働物件(前期稼働物件)
<単体の賃貸事業内訳>・全体
・オフィス・商業施設
② 分譲
国内住宅分譲は、計上戸数の減少により減収となった一方で、「パークタワー晴海」「ザ・タワー横浜北仲」等の引渡しが進捗し増益となりました。投資家向け・海外住宅分譲等は、Jリートをはじめとする投資家への物件売却が伸長し増収増益となりました。セグメント全体では、66億円の減収、257億円の増益となりました。
なお、国内の新築マンション分譲の次期計上予定戸数3,800戸に対する当期末時点の契約進捗率は81.6%となりました。
<売上高・営業利益の内訳>
<国内住宅分譲内訳>・売上高等の内訳
・契約状況
(注)契約済み戸数、新規発売戸数には、次期以降に計上が予定されている戸数も含まれております。
・期末完成在庫推移(戸)
・当期における主要な計上物件(国内住宅分譲)
・当期における主要な計上物件(投資家向け分譲)
・当期における主要な計上物件(海外住宅分譲)
③ マネジメント
プロパティマネジメントは、運営管理受託事業の大型物件の通期稼働効果やリパーク事業(貸し駐車場事業)の管理台数の増加等により増収増益となりました。仲介・アセットマネジメント等は、アセットマネジメント事業の運用受託報酬が増加した一方で、前期の法人向け大型仲介の反動等により増収減益となりました。セグメント全体では、171億円の増収、4億円の増益となりました。
<売上高・営業利益の内訳>
※ 当期末のリパーク(貸し駐車場)管理台数の状況
リパーク管理台数:268,771台(前期末:245,511台)
・三井不動産リアルティの仲介事業の状況(仲介・アセットマネジメント等に含む)
・三井不動産レジデンシャルの販売受託事業の状況(仲介・アセットマネジメント等に含む)
④ その他
施設営業において前期に開業した「三井ガーデンホテル日本橋プレミア」等が通期稼働した一方で、新規に開業した「ハレクラニ沖縄」等の開業費用の影響に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響等により、セグメント全体では、12億円の増収、68億円の減益となりました。
<売上高の内訳>
・受注工事高内訳
<当期における主要な新規・通期稼働物件>・新規稼働物件(当期稼動物件)
・通期稼働物件(前期稼動物件)
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末比で217億円増加し、1,794億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りです。
◆営業活動によるキャッシュ・フロー
当期は、営業活動により870億円の増加となりました。これは、税金等調整前当期純利益2,612億円や減価償却費914億円等によるものです。一方、販売用不動産の取得・売却によるキャッシュ・フローは、取得による支出が売却による回収を上回り、2,558億円の減少となっております。
◆投資活動によるキャッシュ・フロー
当期は、投資活動により5,328億円の減少となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出4,738億円等によるものです。
◆財務活動によるキャッシュ・フロー
当期は、財務活動により4,677億円の増加となりました。これは、借入金の調達等によるものです。
③生産、受注および販売の状況
生産、受注および販売の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要」における報告セグメント別の業績に関連付けて示しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
当社グループの連結業績につきましては、売上高は1兆9,056億円(前期比444億円増、2.4%増)、営業利益2,806億円(前期比184億円増、7.0%増)、経常利益2,585億円(前期比44億円増、1.7%増)となりました。これに特別利益として投資有価証券売却益167億円を計上し、特別損失として固定資産除却損42億円や事業譲渡損29億円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,839億円(前期比153億円増、9.1%増)となりました。また、当連結会計年度末の総資産は7兆3,953億円となり、有利子負債残高は3兆4,811億円となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度のわが国経済は、総じて緩やかな回復が続きましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響に伴い、年度末にかけて状況が一変し、世界経済は急速に悪化しており、わが国においても、イベントおよび外出自粛等の動きにより、個人消費が急速に減少し、外食、観光および交通をはじめとした幅広い産業が打撃を受け、企業収益も大幅に悪化するなど、極めて厳しい状況となりました。
当不動産業界におきましては、オフィス賃貸事業については、空室率はきわめて低水準で推移し、募集賃料も上昇傾向が継続しましたが、足下では、企業業績への不透明感やテレワークの促進によるオフィスワーカーの働き方の変化などにより、オフィス需要への影響が懸念される状況となりました。商業施設賃貸事業およびホテル施設運営事業については、人々の移動等が大きく制限されたことにより、売上等が大幅に下振れする結果となりました。また、不動産投資事業については、緩和的な金融環境のなかで多様な資産の取得が進み、拡大傾向が続きましたが、世界的な経済活動の停滞により金融市場に動揺がみられ、Jリート銘柄の投資口価格が下落するなど、厳しい事業環境となりました。
このような事業環境のもと、当社グループにおきましては、グループ長期経営方針「VISION 2025」を掲げ、「街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現」、「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」、「グローバルカンパニーへの進化」を目指し、「顧客志向の経営」、「ビジネスイノベーション」、「グループ経営の進化」の3つの基本ストラテジーの実践による価値創造に取り組んでまいりました。
また、当社グループは、「&マーク」の理念のもと、環境との共生や「経年優化」の街づくりを通じて、ESG課題の解決やSDGsの達成に向けた取り組みを行い、持続可能な社会の構築にも貢献してまいりました。環境共生・新産業創造・健康長寿を目指す「柏の葉スマートシティ」、新産業創造や芸術文化の発信に取り組む「東京ミッドタウン日比谷」のほか、官・民・地元が一体となり地域の活性化と新しい魅力を創り出す「日本橋再生計画」の第3ステージにおいて、「共感・共創・共発」の考え方のもと、「豊かな水辺の再生」、「新たな産業の創造」、「世界とつながる国際イベントの開催」という3つの重点構想を軸に、世界の課題解決につながる街づくりを推進してまいりました。昨年から稼働している「日本橋スマートエネルギープロジェクト」に続いて、2020年3月に竣工した「豊洲エネルギーセンター」では、電気と熱を安定供給する「豊洲スマートエネルギープロジェクト」に取り組み、コンパクトな自立分散型エネルギー供給を行い、災害に対して強靭で、環境性能の高い街づくりを推進してまいりました。さらに、2050年までに当社グループが事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標として国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟するとともに、企業等に対して気候変動関連リスクと機会に関する情報開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD」の提言に賛同することを表明いたしました。
また、新型コロナウイルスの感染拡大にあたりましては、人命を守るために感染拡大の防止に積極的に協力するという観点から、商業施設およびホテルの休館、当社保有商業施設の賃料減免など企業の社会的使命を果たす取り組みを行ってまいりました。当連結会計年度末には、新型コロナウイルス感染症の影響により大変厳しい事業環境となりましたが、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに6期連続して最高益を更新いたしました。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、2018年5月にグループ長期経営方針「VISION 2025」を策定し、2025年度前後に向けて、連結営業利益は3,500億円程度、うち海外事業利益(※)は30%程度、ROAは5%程度を達成することを目標指標といたしました。
当連結会計年度における営業利益は2,806億円、うち海外事業利益は9.6%、ROAは4.2%となりました。グループ長期経営方針公表からの2年間で、目標指標の達成に向けて着実に推移していると判断しておりますが、新型コロナウイルス感染症による経済の急激な落ち込みを受け、当社グループも影響を受けております。新型コロナウイルス感染症の影響も注視しながら、引き続き持続的な利益成長の実現に向けて取り組んでまいります。
※海外事業利益=海外営業利益+海外持分法換算営業利益(海外所在持分法適用会社について、各社の営業利益または営業利益相当額(当期純利益から税負担分を考慮して簡便的に算出した利益)に当社持分割合を乗じて算出)
当社グループの連結業績につきましては、売上高は1兆9,056億円となり、通期業績予想2兆130億円に比べて1,073億円下回り(5.3%減)、営業利益は2,806億円となり、通期業績予想2,800億円に比べて6億円上回り(0.2%増)、経常利益は2,585億円となり、通期業績予想2,590億円に比べて4億円下回り(0.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,839億円となり、通期業績予想1,920億円に比べて80億円下回り(4.2%減)ました。
報告セグメントごとの連結業績に関する通期業績予想比については次のとおりです。
賃貸セグメントにおいては、主にビル賃貸事業における賃料の増額改定が想定を上回ったこと等により営業利益は1,458億円となり、通期業績予想1,440億よりも18億円の増益となりました。
分譲セグメントにおいては、国内住宅分譲では計上戸数は想定を下回ったことで売上が想定を下回りましたが、利益率の改善等により営業利益は想定を上回りました。また、投資家向け・海外住宅分譲等では投資家向け分譲の各物件の利益率が好調なマーケット下で改善したことで、売上は想定を下回ったものの営業利益は概ね想定通りとなり、セグメント全体では営業利益は1,237億円となり、通期業績予想1,240億円よりも2億円の減益となりました。
マネジメントセグメントにおいては、プロパティマネジメント各社における管理物件の収支改善等に伴うプロパティマネジメントフィーの増加や、投資マネジメント会社における運用受託報酬が想定を上回ったこと等により、営業利益は556億円となり、通期業績予想520億円よりも36億円の増益となりました。
その他セグメントにおいては、国内ホテル事業における新型コロナウイルス感染症拡大による宿泊需要の減少や、新築請負事業における受注が期初想定を下回ったことなどにより営業利益は22億円となり、通期業績予想40億円より17億円の減益となりました。
(注)本報告書の営業収益等は、消費税等抜きで表示しています。
<連結セグメント別業績(通期予想比)>
(注)2020年1月30日公表時の通期業績予想となります。
当連結会計年度の当社グループの経営資源の配分・投入につきましては、有形・無形固定資産について、設備投資3,792億円、減価償却費914億円となり、販売用不動産について、新規投資6,289億円、原価回収3,418億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主要な資金需要は、国内のビル賃貸事業や商業施設賃貸事業等における新規投資や、販売用不動産の取得、および海外事業の拡大に伴う開発資金等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債およびコマーシャルペーパーの発行による資金調達等にて対応していくこととしております。また、手元の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入することにより、資金効率の向上を図っております。
当連結会計年度においては、三井不動産における「日本橋室町三井タワー」や三井不動産アメリカグループにおける「50ハドソンヤード」をはじめとする大型開発等への投資等によって、投資活動によるキャッシュ・フローが5,328億円の減少となりましたが、営業活動によるキャッシュ・フロー870億円と、財務活動によるキャッシュ・フロー4,677億円で充当し、現金及び現金同等物の期末残高が1,794億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要/②キャッシュ・フロー(連結)」をご参照ください。
また、来期においても、三井不動産における「Otemachi One タワー」や三井不動産アメリカグループにおける「50ハドソンヤード」等、大型開発における建築工事金をはじめとした投資に、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、借入金の調達等の財務活動によるキャッシュ・フローで対応していく予定です。
なお当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響による調達環境の悪化等、不測の事態にも対応し得る流動性の確保に努めております。当期末においては現金及び現金同等物に加え、コミットメントラインの未使用枠が4,000億円あります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りの仮定は、「第5 経理の状況」の「1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)」に記載の通りです。
この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、将来生じる実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される見積り及び判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
a.固定資産の減損会計
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準に従い、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能価額まで減額する会計処理を適用しております。
会計処理の適用に当たっては、継続的な営業赤字、市場価格の著しい下落、経営環境の著しい悪化及び用途変更等によって減損の兆候がある場合に減損損失の認識の要否を検討しております。減損損失を認識するかどうかの検討には将来キャッシュ・フローの見積金額を用いており、減損損失の認識が必要と判断された場合には、帳簿価額が回収可能価額を上回る金額を減損損失として計上しております。なお、回収可能価額は正味売却価額又は使用価値のいずれか高い金額によって決定しております。
将来の営業活動から生ずる損益の悪化、市場価格の著しい下落、経営環境の著しい悪化及び用途変更等により減損損失の認識が必要となった場合、また、見積りの前提条件の変更等により将来キャッシュ・フローの見積金額及び正味売却価格が減少することとなった場合には、減損損失の計上が追加で必要となる可能性があります。
b.販売用不動産等の評価
当社グループは、棚卸資産の評価に関する会計基準に従い、収益性の低下により正味売却価額が帳簿価額を下回っている販売用不動産等の帳簿価額を、正味売却価額まで切り下げる会計処理を適用しております。
会計処理の適用に当たっては、個別物件ごとに売価及び見積追加コストに含まれる開発コストの見積りを行った上で正味売却価額を算定しており、正味売却価額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げて評価損を計上しております。
市況の悪化による地価等の下落、経営環境の著しい悪化、開発の遅延等により評価損の認識が必要となった場合、また、見積りの前提条件の変更等により正味売却価額が減少することとなった場合には、評価損計上の処理が追加で必要となる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績の状況の概要は、以下のとおりです。
①財政状態および経営成績の状況
a.財政状態
◆資産
当期末の総資産は、7兆3,953億円となり、前期末比で5,926億円増加しました。
主な増減としては、販売用不動産(仕掛販売用不動産、開発用土地、前渡金を含む)が2,772億円増加し、また新規投資等により有形・無形固定資産が2,526億円増加しました。
なお、当期の設備投資額は3,792億円、減価償却費は914億円でした。
◆負債
当期末の有利子負債(短期借入金、ノンリコース短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内償還予定の社債、ノンリコース1年内償還予定の社債、社債、ノンリコース社債、長期借入金、ノンリコース長期借入金の合計額)は、3兆4,811億円となり、前期末比で5,745億円増加しました。
なお、資金調達の流動性補完を目的として、コミットメントラインを複数の金融機関との間で設定しており、4,000億円の未使用枠があります。
また、当期末の流動比率(流動資産/流動負債)は、前期末の191%から上昇し230%となりました。
◆純資産
当期末の純資産合計は、2兆4,865億円となり、前期末比で657億円の増加となりました。これは、利益剰余金が1,080億円増加した一方で、資本剰余金が311億円、その他有価証券評価差額金が146億円減少したこと等によります。
当期末の自己資本比率は32.6%と前期末の34.4%から低下し、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は1.45倍と前期末の1.24倍から上昇しました。なお、1株当たり純資産額は、2,480.36円(前期末は2,384.87円)となりました。
b.経営成績
当社グループの連結業績につきましては、売上高は1兆9,056億円(前期比444億円増、2.4%増)、営業利益2,806億円(前期比184億円増、7.0%増)、経常利益2,585億円(前期比44億円増、1.7%増)となりました。これに特別利益として投資有価証券売却益167億円を計上し、特別損失として固定資産除却損42億円や事業譲渡損29億円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,839億円(前期比153億円増、9.1%増)となりました。
報告セグメント別の業績は、次のとおりです。
各セグメントの売上高は、外部顧客に対する売上高を記載しており、特に記載のない場合、単位は百万円となっております。
① 賃貸
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
売上高 | 636,056 | 603,284 | 32,771 |
営業利益 | 145,893 | 141,945 | 3,947 |
前期に竣工・開業した「msb Tamachi 田町ステーションタワーS」「日本橋髙島屋三井ビルディング」「55ハドソンヤード」「三井アウトレットパーク台中港」「日本橋室町三井タワー」等の通期稼働効果や当期に開業した「ららぽーと沼津」の収益寄与等により、セグメント全体では、327億円の増収、39億円の増益となりました。
なお、当社の首都圏オフィス空室率(単体)は1.9%となりました。
<売上高の内訳>
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
オフィス | 360,260 | 337,733 | 22,526 |
商業施設 | 240,407 | 238,345 | 2,062 |
その他 | 35,388 | 27,205 | 8,182 |
合計 | 636,056 | 603,284 | 32,771 |
・貸付面積の状況(単位:千㎡)
当期 | 前期 | 増減 | |
(2020.3.31) | (2019.3.31) | ||
オフィス 所有 | 2,051 | 1,969 | 82 |
転貸 | 1,207 | 1,179 | 27 |
商業施設 所有 | 1,675 | 1,593 | 82 |
転貸 | 529 | 600 | △71 |
・期末空室率推移(%)
2020/3 | 2019/3 | 2018/3 | 2017/3 | 2016/3 | 2015/3 | 2014/3 | 2013/3 | |
オフィス・商業施設(連結) | 2.3 | 1.8 | 2.4 | 3.1 | 2.2 | 3.2 | 3.5 | 3.3 |
首都圏オフィス(単体) | 1.9 | 1.7 | 2.2 | 3.4 | 2.6 | 3.2 | 3.3 | 3.8 |
地方オフィス(単体) | 1.3 | 1.8 | 2.3 | 2.3 | 3.1 | 4.1 | 4.3 | 5.3 |
<当期における主要な新規・通期稼働物件>・新規稼働物件(当期稼働物件)
ららぽーと沼津 | 静岡県沼津市 | 2019年10月開業 | 商業施設 |
Otemachi One タワー | 東京都千代田区 | 2020年2月竣工 | オフィス |
豊洲ベイサイドクロスタワー | 東京都江東区 | 2020年3月竣工 | オフィス |
・通期稼働物件(前期稼働物件)
2 テレビジョンセンター | 英国ロンドン市 | 2018年3月竣工 | オフィス |
msb Tamachi 田町ステーションタワーS | 東京都港区 | 2018年5月竣工 | オフィス |
日本橋髙島屋三井ビルディング | 東京都中央区 | 2018年6月竣工 | オフィス |
OVOL日本橋ビル | 東京都中央区 | 2018年6月竣工 | オフィス |
ららぽーと名古屋みなとアクルス | 愛知県名古屋市 | 2018年9月開業 | 商業施設 |
55ハドソンヤード | 米国ニューヨーク市 | 2018年10月竣工 | オフィス |
三井アウトレットパーク台中港 | 台湾台中市 | 2018年12月開業 | 商業施設 |
日本橋室町三井タワー | 東京都中央区 | 2019年3月竣工 | オフィス |
<単体の賃貸事業内訳>・全体
当期 | 前期 | |
(2019.4.1~2020.3.31) | (2018.4.1~2019.3.31) | |
売上高 | 577,450 | 556,207 |
粗利益 | 94,276 | 97,977 |
粗利益率(%) | 16.3 | 17.6 |
・オフィス・商業施設
オフィス | 商業施設 | |||||
首都圏 | 地方 | 合計 | 首都圏 | 地方 | 合計 | |
売上高 | 289,781 | 21,980 | 311,761 | 159,780 | 71,903 | 231,684 |
貸付面積(千㎡) | 2,482 | 326 | 2,808 | 1,364 | 723 | 2,086 |
棟数(棟) | 111 | 28 | 139 | 64 | 25 | 89 |
空室率(%) | 1.9 | 1.3 | 1.9 | 2.7 | 1.3 | 2.2 |
② 分譲
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
売上高 | 524,094 | 530,766 | △6,671 |
営業利益 | 123,745 | 98,037 | 25,707 |
国内住宅分譲は、計上戸数の減少により減収となった一方で、「パークタワー晴海」「ザ・タワー横浜北仲」等の引渡しが進捗し増益となりました。投資家向け・海外住宅分譲等は、Jリートをはじめとする投資家への物件売却が伸長し増収増益となりました。セグメント全体では、66億円の減収、257億円の増益となりました。
なお、国内の新築マンション分譲の次期計上予定戸数3,800戸に対する当期末時点の契約進捗率は81.6%となりました。
<売上高・営業利益の内訳>
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
国内住宅分譲 | |||
売上高 | 268,661 | 285,432 | △16,771 |
営業利益 | 29,624 | 26,604 | 3,020 |
投資家向け・海外住宅分譲等 | |||
売上高 | 255,433 | 245,333 | 10,100 |
営業利益 | 94,120 | 71,433 | 22,687 |
売上高合計 | 524,094 | 530,766 | △6,671 |
営業利益合計 | 123,745 | 98,037 | 25,707 |
<国内住宅分譲内訳>・売上高等の内訳
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | ||||
マンション | 236,023 | (3,194戸) | 252,230 | (3,283戸) | △16,207 | (△89戸) |
首都圏 | 208,144 | (2,515戸) | 223,412 | (2,729戸) | △15,268 | (△214戸) |
その他 | 27,878 | (679戸) | 28,817 | (554戸) | △939 | (125戸) |
戸建 | 32,638 | (481戸) | 33,202 | (475戸) | △564 | (6戸) |
首都圏 | 31,896 | (466戸) | 33,202 | (475戸) | △1,306 | (△9戸) |
その他 | 741 | (15戸) | - | (-戸) | 741 | (15戸) |
売上高合計 | 268,661 | (3,675戸) | 285,432 | (3,758戸) | △16,771 | (△83戸) |
・契約状況
マンション | 戸建 | 合計 | ||
期首契約済み | (戸) (A) | 4,331 | 119 | 4,450 |
期中契約 | (戸) (B) | 2,536 | 426 | 2,962 |
計上戸数 | (戸) (C) | 3,194 | 481 | 3,675 |
期末契約済み | (戸) (A)+(B)-(C) | 3,673 | 64 | 3,737 |
完成在庫 | (戸) | 128 | 58 | 186 |
新規発売 | (戸) | 2,484 | 460 | 2,944 |
(注)契約済み戸数、新規発売戸数には、次期以降に計上が予定されている戸数も含まれております。
・期末完成在庫推移(戸)
2020/3 | 2019/3 | 2018/3 | 2017/3 | 2016/3 | 2015/3 | 2014/3 | 2013/3 | |
マンション | 128 | 141 | 108 | 321 | 88 | 83 | 170 | 223 |
戸建 | 58 | 30 | 40 | 69 | 127 | 100 | 65 | 57 |
合計 | 186 | 171 | 148 | 390 | 215 | 183 | 235 | 280 |
・当期における主要な計上物件(国内住宅分譲)
パークタワー晴海 | 東京都中央区 | マンション |
ザ・タワー横浜北仲 | 神奈川県横浜市 | マンション |
パークコート浜離宮 ザ タワー | 東京都港区 | マンション |
パークコート乃木坂 ザ タワー | 東京都港区 | マンション |
ファインコート石神井公園ザ・グランプレイス | 東京都練馬区 | 戸建 |
・当期における主要な計上物件(投資家向け分譲)
大崎ブライトコア | 東京都品川区 | オフィス |
大崎ブライトプラザ | 東京都品川区 | オフィス |
MFLP堺 | 大阪府堺市 | 物流施設 |
MFLPプロロジスパーク川越 | 埼玉県川越市 | 物流施設 |
MFLP広島Ⅰ | 広島県広島市 | 物流施設 |
パークアクシス押上テラス | 東京都墨田区 | 賃貸住宅 |
パークアクシス池上 | 東京都大田区 | 賃貸住宅 |
・当期における主要な計上物件(海外住宅分譲)
テレビジョンセンター(ザ・ヘリオス、ザ・クレッセント) | 英国ロンドン市 | マンション |
ロビンソンランディング | 米国アレクサンドリア市 | 戸建 |
③ マネジメント
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
売上高 | 421,490 | 404,346 | 17,143 |
営業利益 | 55,670 | 55,180 | 490 |
プロパティマネジメントは、運営管理受託事業の大型物件の通期稼働効果やリパーク事業(貸し駐車場事業)の管理台数の増加等により増収増益となりました。仲介・アセットマネジメント等は、アセットマネジメント事業の運用受託報酬が増加した一方で、前期の法人向け大型仲介の反動等により増収減益となりました。セグメント全体では、171億円の増収、4億円の増益となりました。
<売上高・営業利益の内訳>
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
プロパティマネジメント | |||
売上高(※) | 316,228 | 302,194 | 14,034 |
営業利益 | 32,776 | 31,978 | 798 |
仲介・アセットマネジメント等 | |||
売上高 | 105,261 | 102,152 | 3,109 |
営業利益 | 22,894 | 23,202 | △307 |
売上高合計 | 421,490 | 404,346 | 17,143 |
営業利益合計 | 55,670 | 55,180 | 490 |
※ 当期末のリパーク(貸し駐車場)管理台数の状況
リパーク管理台数:268,771台(前期末:245,511台)
・三井不動産リアルティの仲介事業の状況(仲介・アセットマネジメント等に含む)
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | ||||
取扱高 | 件数 | 取扱高 | 件数 | 取扱高 | 件数 | |
仲介 | 1,783,232 | (42,818件) | 1,706,843 | (41,533件) | 76,389 | (1,285件) |
・三井不動産レジデンシャルの販売受託事業の状況(仲介・アセットマネジメント等に含む)
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | ||||
取扱高 | 件数 | 取扱高 | 件数 | 取扱高 | 件数 | |
販売受託 | 83,840 | (1,127件) | 102,196 | (1,461件) | △18,356 | (△334件) |
④ その他
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
売上高 | 324,001 | 322,797 | 1,204 |
営業利益 | 2,291 | 9,157 | △6,866 |
施設営業において前期に開業した「三井ガーデンホテル日本橋プレミア」等が通期稼働した一方で、新規に開業した「ハレクラニ沖縄」等の開業費用の影響に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響等により、セグメント全体では、12億円の増収、68億円の減益となりました。
<売上高の内訳>
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
新築請負 | 165,818 | 168,173 | △2,355 |
施設営業 | 67,448 | 63,949 | 3,498 |
その他 | 90,735 | 90,674 | 60 |
合計 | 324,001 | 322,797 | 1,204 |
・受注工事高内訳
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 前期 (2018.4.1~2019.3.31) | 増減 | |
新築 | 138,494 | 166,077 | △27,583 |
<当期における主要な新規・通期稼働物件>・新規稼働物件(当期稼動物件)
三井ガーデンホテル福岡祇園 | 福岡県福岡市 | 2019年6月開業 | ホテル |
ハレクラニ沖縄 | 沖縄県国頭郡 | 2019年7月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル京都駅前 | 京都府京都市 | 2019年8月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル銀座五丁目 | 東京都中央区 | 2019年9月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア | 東京都新宿区 | 2019年11月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル六本木プレミア | 東京都港区 | 2020年1月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル札幌ウエスト | 北海道札幌市 | 2020年2月開業 | ホテル |
・通期稼働物件(前期稼動物件)
三井ガーデンホテル大手町 | 東京都千代田区 | 2018年6月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル五反田 | 東京都品川区 | 2018年6月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル日本橋プレミア | 東京都中央区 | 2018年9月開業 | ホテル |
三井ガーデンホテル金沢 | 石川県金沢市 | 2019年1月開業 | ホテル |
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末比で217億円増加し、1,794億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りです。
◆営業活動によるキャッシュ・フロー
当期は、営業活動により870億円の増加となりました。これは、税金等調整前当期純利益2,612億円や減価償却費914億円等によるものです。一方、販売用不動産の取得・売却によるキャッシュ・フローは、取得による支出が売却による回収を上回り、2,558億円の減少となっております。
◆投資活動によるキャッシュ・フロー
当期は、投資活動により5,328億円の減少となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出4,738億円等によるものです。
◆財務活動によるキャッシュ・フロー
当期は、財務活動により4,677億円の増加となりました。これは、借入金の調達等によるものです。
③生産、受注および販売の状況
生産、受注および販売の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要」における報告セグメント別の業績に関連付けて示しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
当社グループの連結業績につきましては、売上高は1兆9,056億円(前期比444億円増、2.4%増)、営業利益2,806億円(前期比184億円増、7.0%増)、経常利益2,585億円(前期比44億円増、1.7%増)となりました。これに特別利益として投資有価証券売却益167億円を計上し、特別損失として固定資産除却損42億円や事業譲渡損29億円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,839億円(前期比153億円増、9.1%増)となりました。また、当連結会計年度末の総資産は7兆3,953億円となり、有利子負債残高は3兆4,811億円となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度のわが国経済は、総じて緩やかな回復が続きましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響に伴い、年度末にかけて状況が一変し、世界経済は急速に悪化しており、わが国においても、イベントおよび外出自粛等の動きにより、個人消費が急速に減少し、外食、観光および交通をはじめとした幅広い産業が打撃を受け、企業収益も大幅に悪化するなど、極めて厳しい状況となりました。
当不動産業界におきましては、オフィス賃貸事業については、空室率はきわめて低水準で推移し、募集賃料も上昇傾向が継続しましたが、足下では、企業業績への不透明感やテレワークの促進によるオフィスワーカーの働き方の変化などにより、オフィス需要への影響が懸念される状況となりました。商業施設賃貸事業およびホテル施設運営事業については、人々の移動等が大きく制限されたことにより、売上等が大幅に下振れする結果となりました。また、不動産投資事業については、緩和的な金融環境のなかで多様な資産の取得が進み、拡大傾向が続きましたが、世界的な経済活動の停滞により金融市場に動揺がみられ、Jリート銘柄の投資口価格が下落するなど、厳しい事業環境となりました。
このような事業環境のもと、当社グループにおきましては、グループ長期経営方針「VISION 2025」を掲げ、「街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現」、「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」、「グローバルカンパニーへの進化」を目指し、「顧客志向の経営」、「ビジネスイノベーション」、「グループ経営の進化」の3つの基本ストラテジーの実践による価値創造に取り組んでまいりました。
また、当社グループは、「&マーク」の理念のもと、環境との共生や「経年優化」の街づくりを通じて、ESG課題の解決やSDGsの達成に向けた取り組みを行い、持続可能な社会の構築にも貢献してまいりました。環境共生・新産業創造・健康長寿を目指す「柏の葉スマートシティ」、新産業創造や芸術文化の発信に取り組む「東京ミッドタウン日比谷」のほか、官・民・地元が一体となり地域の活性化と新しい魅力を創り出す「日本橋再生計画」の第3ステージにおいて、「共感・共創・共発」の考え方のもと、「豊かな水辺の再生」、「新たな産業の創造」、「世界とつながる国際イベントの開催」という3つの重点構想を軸に、世界の課題解決につながる街づくりを推進してまいりました。昨年から稼働している「日本橋スマートエネルギープロジェクト」に続いて、2020年3月に竣工した「豊洲エネルギーセンター」では、電気と熱を安定供給する「豊洲スマートエネルギープロジェクト」に取り組み、コンパクトな自立分散型エネルギー供給を行い、災害に対して強靭で、環境性能の高い街づくりを推進してまいりました。さらに、2050年までに当社グループが事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標として国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟するとともに、企業等に対して気候変動関連リスクと機会に関する情報開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD」の提言に賛同することを表明いたしました。
また、新型コロナウイルスの感染拡大にあたりましては、人命を守るために感染拡大の防止に積極的に協力するという観点から、商業施設およびホテルの休館、当社保有商業施設の賃料減免など企業の社会的使命を果たす取り組みを行ってまいりました。当連結会計年度末には、新型コロナウイルス感染症の影響により大変厳しい事業環境となりましたが、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに6期連続して最高益を更新いたしました。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、2018年5月にグループ長期経営方針「VISION 2025」を策定し、2025年度前後に向けて、連結営業利益は3,500億円程度、うち海外事業利益(※)は30%程度、ROAは5%程度を達成することを目標指標といたしました。
当連結会計年度における営業利益は2,806億円、うち海外事業利益は9.6%、ROAは4.2%となりました。グループ長期経営方針公表からの2年間で、目標指標の達成に向けて着実に推移していると判断しておりますが、新型コロナウイルス感染症による経済の急激な落ち込みを受け、当社グループも影響を受けております。新型コロナウイルス感染症の影響も注視しながら、引き続き持続的な利益成長の実現に向けて取り組んでまいります。
※海外事業利益=海外営業利益+海外持分法換算営業利益(海外所在持分法適用会社について、各社の営業利益または営業利益相当額(当期純利益から税負担分を考慮して簡便的に算出した利益)に当社持分割合を乗じて算出)
当社グループの連結業績につきましては、売上高は1兆9,056億円となり、通期業績予想2兆130億円に比べて1,073億円下回り(5.3%減)、営業利益は2,806億円となり、通期業績予想2,800億円に比べて6億円上回り(0.2%増)、経常利益は2,585億円となり、通期業績予想2,590億円に比べて4億円下回り(0.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,839億円となり、通期業績予想1,920億円に比べて80億円下回り(4.2%減)ました。
報告セグメントごとの連結業績に関する通期業績予想比については次のとおりです。
賃貸セグメントにおいては、主にビル賃貸事業における賃料の増額改定が想定を上回ったこと等により営業利益は1,458億円となり、通期業績予想1,440億よりも18億円の増益となりました。
分譲セグメントにおいては、国内住宅分譲では計上戸数は想定を下回ったことで売上が想定を下回りましたが、利益率の改善等により営業利益は想定を上回りました。また、投資家向け・海外住宅分譲等では投資家向け分譲の各物件の利益率が好調なマーケット下で改善したことで、売上は想定を下回ったものの営業利益は概ね想定通りとなり、セグメント全体では営業利益は1,237億円となり、通期業績予想1,240億円よりも2億円の減益となりました。
マネジメントセグメントにおいては、プロパティマネジメント各社における管理物件の収支改善等に伴うプロパティマネジメントフィーの増加や、投資マネジメント会社における運用受託報酬が想定を上回ったこと等により、営業利益は556億円となり、通期業績予想520億円よりも36億円の増益となりました。
その他セグメントにおいては、国内ホテル事業における新型コロナウイルス感染症拡大による宿泊需要の減少や、新築請負事業における受注が期初想定を下回ったことなどにより営業利益は22億円となり、通期業績予想40億円より17億円の減益となりました。
(注)本報告書の営業収益等は、消費税等抜きで表示しています。
<連結セグメント別業績(通期予想比)>
当期 (2019.4.1~2020.3.31) | 2020年3月期通期業績予想 (2019.4.1~2020.3.31) | 増減 | ||||
売上高 | 営業利益 | 売上高 | 営業利益 | 売上高 | 営業利益 | |
賃貸 | 636,056 | 145,893 | 630,000 | 144,000 | 6,056 | 1,893 |
分譲 | 524,094 | 123,745 | 613,000 | 124,000 | △88,906 | △255 |
マネジメント | 421,490 | 55,670 | 410,000 | 52,000 | 11,490 | 3,670 |
その他 | 324,001 | 2,291 | 360,000 | 4,000 | △35,999 | △1,709 |
消去又は全社 | ― | △46,982 | ― | △44,000 | ― | △2,982 |
合計 | 1,905,642 | 280,617 | 2,013,000 | 280,000 | △107,358 | 617 |
(注)2020年1月30日公表時の通期業績予想となります。
当連結会計年度の当社グループの経営資源の配分・投入につきましては、有形・無形固定資産について、設備投資3,792億円、減価償却費914億円となり、販売用不動産について、新規投資6,289億円、原価回収3,418億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主要な資金需要は、国内のビル賃貸事業や商業施設賃貸事業等における新規投資や、販売用不動産の取得、および海外事業の拡大に伴う開発資金等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債およびコマーシャルペーパーの発行による資金調達等にて対応していくこととしております。また、手元の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入することにより、資金効率の向上を図っております。
当連結会計年度においては、三井不動産における「日本橋室町三井タワー」や三井不動産アメリカグループにおける「50ハドソンヤード」をはじめとする大型開発等への投資等によって、投資活動によるキャッシュ・フローが5,328億円の減少となりましたが、営業活動によるキャッシュ・フロー870億円と、財務活動によるキャッシュ・フロー4,677億円で充当し、現金及び現金同等物の期末残高が1,794億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要/②キャッシュ・フロー(連結)」をご参照ください。
また、来期においても、三井不動産における「Otemachi One タワー」や三井不動産アメリカグループにおける「50ハドソンヤード」等、大型開発における建築工事金をはじめとした投資に、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、借入金の調達等の財務活動によるキャッシュ・フローで対応していく予定です。
なお当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響による調達環境の悪化等、不測の事態にも対応し得る流動性の確保に努めております。当期末においては現金及び現金同等物に加え、コミットメントラインの未使用枠が4,000億円あります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りの仮定は、「第5 経理の状況」の「1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)」に記載の通りです。
この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、将来生じる実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される見積り及び判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
a.固定資産の減損会計
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準に従い、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産の帳簿価額を、回収可能価額まで減額する会計処理を適用しております。
会計処理の適用に当たっては、継続的な営業赤字、市場価格の著しい下落、経営環境の著しい悪化及び用途変更等によって減損の兆候がある場合に減損損失の認識の要否を検討しております。減損損失を認識するかどうかの検討には将来キャッシュ・フローの見積金額を用いており、減損損失の認識が必要と判断された場合には、帳簿価額が回収可能価額を上回る金額を減損損失として計上しております。なお、回収可能価額は正味売却価額又は使用価値のいずれか高い金額によって決定しております。
将来の営業活動から生ずる損益の悪化、市場価格の著しい下落、経営環境の著しい悪化及び用途変更等により減損損失の認識が必要となった場合、また、見積りの前提条件の変更等により将来キャッシュ・フローの見積金額及び正味売却価格が減少することとなった場合には、減損損失の計上が追加で必要となる可能性があります。
b.販売用不動産等の評価
当社グループは、棚卸資産の評価に関する会計基準に従い、収益性の低下により正味売却価額が帳簿価額を下回っている販売用不動産等の帳簿価額を、正味売却価額まで切り下げる会計処理を適用しております。
会計処理の適用に当たっては、個別物件ごとに売価及び見積追加コストに含まれる開発コストの見積りを行った上で正味売却価額を算定しており、正味売却価額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げて評価損を計上しております。
市況の悪化による地価等の下落、経営環境の著しい悪化、開発の遅延等により評価損の認識が必要となった場合、また、見積りの前提条件の変更等により正味売却価額が減少することとなった場合には、評価損計上の処理が追加で必要となる可能性があります。