有価証券報告書-第34期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
■業界動向と当社の状況
日本の情報通信市場は、通信事業者が提供するサービス等の同質化やMVNO各社による格安SIMサービス等の普及が進み、通信事業者は新たな収益の確保に向けて通信以外のサービスへ事業領域を拡大しており、各社の事業戦略は異業種との競争も見据えた大きな転換期にあります。さらに、IoTや人工知能(AI)等のテクノロジーの発展もあり、情報通信市場の事業環境は大きく変化しています。
このような状況の下、当社は、お客さまにお選びいただける企業となるため、「お客さま視点」と「革新」をキーワードに、お客さまの期待を超える「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を加速しています。
国内では、通信領域においてスマートフォン・タブレットの普及やIoTに対する取り組みの強化、様々なデバイスの連携による新たな体験価値の創造等への取り組みを本格的に推進し、「auお客さま数(ID)×ARPA」の最大化による国内通信事業の持続的成長を目指していきます。また、「au」に加え、UQコミュニケーションズ株式会社、株式会社ジュピターテレコム、ビッグローブ株式会社においてMVNO事業を推進しており、当社グループの「モバイルID数」の拡大を図っていきます。
当期は、昨年7月に、お客さまによりご満足いただけるよう、データ通信のご利用方法に応じた料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」の提供を開始しました。多くのお客さまにご好評をいただき、当期末には680万契約を突破しました。さらに、昨年8月には、IoT領域におけるリーディングカンパニーである株式会社ソラコムを連結子会社化しました。これまで培ったIoT/M2Mにおける知見や顧客基盤を活用し、新たなIoTビジネスを創出していきます。また、次世代移動通信システム「5G」については、2020年のサービス化を目指して、幅広いパートナー企業と連携し、技術検証の加速と5Gを活用した新たなサービスの創出を推進していきます。
非通信領域においては、「通信とライフデザインの融合」を目指し、従来の通信サービスに加え、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育等のライフデザインサービスを拡充することで、お客さまへの新しい価値提案を積極的に進めています。本年1月には、外国語教育のリーディングカンパニーである株式会社イーオンホールディングス(以下「イーオンHD」)を連結子会社化し、教育事業に参入しました。また、「Wowma!」等のコマース事業や「au WALLET カード」等の決済事業の拡大により、流通額の増加を図るとともに、「auでんき」等エネルギービジネスの拡大や金融事業の確立等により、お客さまに多様なライフデザインサービスの提案を続けることで、「au経済圏」の最大化を図っていきます。
海外では、新興国における通信事業として、連結子会社のKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.がミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と共同で行っているミャンマー通信事業がグローバル事業の柱となるように注力していきます。また、モンゴル国内携帯電話契約者シェアNO.1の総合通信事業者MobiCom Corporation LLCにおいては、LTEサービス導入を契機に、さらなる成長を目指しています。これら新興国での事業に加え、欧州中心のデータセンターをはじめとした法人向けICTビジネスにおいても、継続して基盤強化を行い、グローバル事業の拡大を図っています。
■連結業績
当期の売上高は、モバイル通信料収入の増加に加え、「au経済圏」の最大化に向けたエネルギー事業、コマース事業、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加や、ミャンマー通信事業の収入の増加等により、5,041,978百万円(前年同期比 6.2%増)となりました。
営業利益は、コマース事業、決済事業における費用や、マーケティングコスト等が増加したものの、売上高の増加により、962,793百万円(同 5.5%増)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加等により、572,528百万円(同 4.7%増)となりました。
b.セグメント別の状況
パーソナルセグメントでは、国内における個人のお客さまを対象に、主に「au」ブランドによるモバイル通信サービスの提供、様々な種類のスマートフォン・タブレット等マルチデバイスの販売に加え、固定通信サービスとして、インターネット、電話、TVサービスが快適にご利用いただける「auひかり」ブランドのFTTHサービスや、CATVサービス等を提供しています。また、当社グループが提供するマルチネットワークにWi-Fiを有機的に組み合わせることで、高品質な社会インフラを効率的に作り上げ、シームレスな通信環境を提供しています。
当期は、通信領域において、引き続き「auスマートバリュー」の拡販及び連結子会社のUQコミュニケーションズ株式会社、株式会社ジュピターテレコム、ビッグローブ株式会社によるMVNO事業の推進により、当社グループの「モバイルID数」の拡大に努めています。新料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」については順調に契約数を拡大し、当期末には680万契約を突破しました。また、本年3月1日より、動画配信サービスや高画質4K・8K映像、VR等の高速・大容量インターネットのニーズに応えるべく、次世代超高速インターネットサービス「auひかり ホーム10ギガ」「auひかり ホーム5ギガ」の提供を開始しました。本年3月28日には4G LTEのネットワークにおいて、上り通信速度最大112.5Mbps※1の高速データ通信サービスを東名阪の一部エリア※2で提供を開始する等、さらなるお客さま体験価値の向上に取り組んでいます。
非通信領域においては、「通信とライフデザインの融合」を目指し、お客さまとauをつなぐ最大のタッチポイントであるauショップを活用した物販サービス「au WALLET Market」やエネルギー事業の推進等、「au経済圏」の最大化に取り組んでいます。また、教育市場においても連結子会社のイーオンHDにてICTを活用したサービスを提供していきます。
パーソナルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
※1 ご利用地域やご利用端末によって最大通信速度が異なります。また、通信速度は技術規格上の最大値であり実使用速度を示すものではありません。お客さまのご利用環境、回線の状況等により低下する場合があります。
※2 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の一部エリアとなります。対象エリアは今後順次拡大予定です。なお、ご利用の機種によって、対応する周波数帯の都合上、ご利用可能なエリアが異なる場合があります。
■業 績
当期の売上高は、モバイル通信料収入及びエネルギー事業収入等の増加により、3,899,605百万円(前年同期比 7.3%増)となりました。
営業利益は、エネルギー事業における電力小売販売原価や顧客獲得増加に伴うマーケティングコスト等が増加したものの、売上高の増加により、732,931百万円(同 3.1%増)となりました。
バリューセグメントでは、「通信とライフデザインの融合」を目指し、「au経済圏」の最大化と新規事業領域でのビジネス拡大に向け、コマース・金融・決済・エンターテインメント等の付加価値サービスを提供し、様々な取り組みを推進しています。
当期は、引き続き「auスマートパスプレミアム」及びコマース事業・決済事業の強化により、付加価値ARPA、流通総額の拡大に努めています。「auスマートパスプレミアム」は、「学割キャンペーン」や「三太郎の日」における会員限定特典の提供等により順調に会員数を拡大し、本年3月には400万会員を突破しました。コマース事業では、今後市場拡大が予想されるライブコマース領域への参入に向け、本年3月に動画メディア事業を展開する株式会社エブリーとの資本業務提携を行いました。金融事業では、お客さまの資産形成のサポートを目的に、株式会社大和証券グループ本社との合弁によるKDDIアセットマネジメント株式会社を発足させました。決済事業では、「au WALLET カード」の発行枚数が順調に増加し、本年3月にはau WALLET決済の流通額が1兆円を突破しました。
また、様々なベンチャー企業との連携による新事業創出の取り組みも加速しています。本年3月には医療・介護の現場におけるIT化支援を目的に、ソーシャル医療介護連携プラットフォームを提供する株式会社日本エンブレースと資本業務提携を行いました。
バリューセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
■業 績
当期の売上高は、「auスマートパス・auスマートパスプレミアム」の収入の増加に加え、コマース事業の収入の増加や、「au WALLET プリペイド・クレジットカード」などの決済事業の収入等の増加により、521,736百万円(前年同期比 15.7%増)となりました。
営業利益は、コマース事業や決済事業等の費用が増加したものの、売上高の増加により、103,986百万円(同 8.4%増)となりました。
*2019年3月期より当セグメントの名称を「バリュー」から「ライフデザイン」へ変更いたします。
ビジネスセグメントでは、大企業から中小企業まで幅広い法人のお客さまを対象に、スマートフォン・タブレット等のモバイル端末の提供や、ネットワーク・アプリケーション・クラウド型サービス等の多様なソリューションを提供しています。また、中小企業のお客さまについては、連結子会社のKDDIまとめてオフィスグループによる地域に密着したサポート体制を全国規模で構築しています。
当期は、モノとインターネットがつながるIoT時代の到来を踏まえ、ガス、水道等のスマートメーター、物流やウェアラブル等、多種多様な分野でIoTを活用できるように、法人のお客さま向けに、低消費電力・広域で廉価なIoT通信を実現するセルラーLPWA通信サービス「KDDI IoT通信サービス LPWA※ (LTE-M)」の提供を本年1月に開始しました。
様々なパートナー企業との協業ビジネスを推進し、株式会社野村総合研究所との合弁で設立したお客さまのデジタル変革の戦略策定から実行までスピーディに実現するKDDIデジタルデザイン株式会社が本年1月より事業を開始しました。また、本年2月19日には、サイバーセキュリティ分野のリーディングカンパニーである株式会社ラックとの合弁でネットワークからセキュリティまで一元的に支援するKDDIデジタルセキュリティ株式会社を設立しました。
今後も、法人のお客さまのビジネスの発展・拡大に一層貢献し、お客さまから真の事業パートナーとしてお選びいただけることを目指して、事業の変革に取り組んでいきます。
ビジネスセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
※「Low Power, Wide Area」の略。少ない電力で広いエリアをカバーする無線通信技術の総称です。
■業 績
当期の売上高は、通信料収入が減少しているものの、ソリューション収入や端末販売収入等の増加により、749,971百万円(前年同期比 5.6%増)となりました。
営業利益は、端末販売原価や通信設備使用料等が増加したものの、売上高の増加により、84,467百万円(同 11.1%増)となりました。
グローバルセグメントでは、ミャンマーをはじめとする海外のコンシューマビジネスに積極的に取り組むとともに、法人のお客さまに対しては、接続性の高いデータセンター「TELEHOUSE」を核としたICTソリューションをワンストップで提供しています。さらに、世界600以上の通信事業者との間で音声及びデータビジネスを展開しています。
当期は、コンシューマビジネスにおいて、サービス向上に向けたエリア拡大や高速化等の積極的な設備投資を行っています。ミャンマーのモバイル通信事業においては、1.8GHz帯のLTEサービスにおけるキャリアアグリゲーション※1技術の導入により、最高速度300Mbps※2を実現しました。
また、データセンター事業においては、TELEHOUSE EUROPEのデータセンター「TELEHOUSE London Docklands」にて、構内配線で直接接続する「AWS Direct Connect」の提供開始を本年2月に発表しました。これにより、お客さまは、近接性が高く、低遅延でセキュアなクラウド環境の構築が実現可能となりました。
グローバルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
※1 複数の周波数帯域を同時に使い、束ねてデータ通信を行うことで、受信時の最大通信速度を引き上げます。
※2 ベストエフォート型サービスです。記載の速度は技術規格上の最大値であり、実使用速度を示すものではありません。エリア内であってもお客さまのご利用環境、回線の状況等により通信速度が低下する場合があります。
■業 績
当期の売上高は、ミャンマー通信事業の収入の増加や、「TELEHOUSE」のデータセンター事業収入の増加があったものの、前期より実施している採算性の低い事業の整理による収入減少等により、248,702百万円(前年同期比 10.3%減)となりました。
営業利益は、主にミャンマー通信事業やデータセンター事業による利益創出により、31,907百万円(同 32.1%増)となりました。
*社名及び商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。
c. 財政状態の状況
(資産)
非流動資産は、繰延税金資産が減少したものの、その他の長期金融資産やのれんの増加等により、4,423,306百万円(前期末比 2.9%増)となりました。
流動資産は、現金及び現金同等物が減少したものの、営業債権及びその他の債権の増加等により、2,151,249百万円(同 9.4%増)となりました。
(負債)
非流動負債は、その他の長期金融負債の減少等により、1,005,498百万円(同 24.6%減)となりました。
流動負債は、営業債務及びその他の債務の増加等により、1,437,800百万円(同 32.9%増)となりました。
なお、有利子負債残高は、前連結会計年度末から33,034百万円減少し、1,118,616百万円となりました。
(資本)
資本は、利益剰余金の増加等により、4,131,257百万円(同 7.3%増)となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末を0.7ポイント上回る57.4%となりました。
また、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は、前連結会計年度末の0.32倍から、0.30倍へ低下しました。
② キャッシュ・フローの状況
※ フリー・キャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益955,147百万円、減価償却費及び償却費546,815百万円、法人所得税の支払302,783百万円、営業債権及びその他の債権の増加219,125百万円等により1,061,405百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出361,102百万円、無形資産の取得による支出199,776百万円等により633,847百万円の支出となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較し96,291百万円減少し、427,558百万円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払219,885百万円、自己株式の取得による支出150,000百万円、社債発行及び長期借入による収入95,000百万円、負債性金融商品の取得による支出95,000百万円等により、453,168百万円の支出となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較し、25,773百万円減少し、200,834百万円となりました。
③ 営業実績
当連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループにおける重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(売上高)
モバイル通信料収入の増加に加え、「au経済圏」の最大化に向けたエネルギー事業、コマース事業、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加や、ミャンマー通信事業の収入の増加等により5,041,978百万円(前年同期比 6.2%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 25.売上高」をご参照ください。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
コマース事業、決済事業における費用や、マーケティングコスト等の増加により4,093,018百万円(同 6.5%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 26.費用の性質別内訳」をご参照ください。
(その他の収益及びその他の費用)
雑支出の減少等により、9,241百万円の利益(同 77.7%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 27.その他の収益及びその他の費用」をご参照ください。
(持分法による投資利益)
持分法適用関連会社の株式会社エナリスにおける持分法による投資利益の増加等により、4,592百万円(同 66.7%増)となりました。
(営業利益)
以上の結果、営業利益は962,793百万円(同 5.5%増)となりました。なお、営業利益率は、19.1%(同 0.1ポイント減)となりました。
(金融収益及び金融費用)
前連結会計年度は、支払利息10,872百万円、為替差損2,128百万円の計上等により、11,562百万円の損失となりましたが、当連結会計年度は支払利息9,701百万円、受取配当金2,479百万円の計上等により、7,950百万円の損失となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 28.金融収益及び金融費用」をご参照ください。
(その他の営業外損益)
前連結会計年度は、関係会社株式売却損5,535百万円、持分変動利益18百万円の計上により、5,517百万円の損失となりましたが、当連結会計年度は、関係会社売却益305百万円の計上により、305百万円の益となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29.その他の営業外損益」をご参照ください。
(法人所得税費用)
課税所得の増加等の影響により293,951百万円(同 16.1%増)となりました。なお、2018年3月期の法人税等負担率は30.8%となりました。法人所得税費用に関する詳細については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.繰延税金及び法人所得税」をご参照ください。
(非支配持分に帰属する当期利益)
主にUQコミュニケーションズ株式会社の利益減少等の影響により、88,668百万円(同 7.6%減)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
上記の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は572,528百万円(同 4.7%増)となりました。
なお、報告セグメントの売上と営業利益の概況については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
当社グループは、運転資金及び設備投資については、自己資金及び借入金等により資金調達することとしております。このうち、借入金等による資金調達に関しては、通常の運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金は固定金利の長期借入金及び社債で調達することを基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等を含む有利子負債の残高は1,118,616百万円、現金及び現金同等物の残高は200,834百万円となっております。
流動性リスクとその管理方法につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記32.金融商品」に記載しております。
c.経営上の財務目標の達成状況について
当社グループは、事業環境の変化に迅速に対応しながら、持続的な成長を実現していくため、2016年度からの3年間における新たな中期目標を策定しており、利益成長目標として、「連結営業利益 CAGR(年平均成長率) 7%」を掲げております。
当連結会計年度においては、「国内通信事業の持続的成長」に加えて、新たな成長軸の確立に向けて「au経済圏の最大化」と「グローバル事業の積極展開」を進めたことにより、利益成長目標の達成に向け着実に進捗しており、引き続き取り組んでまいります。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
① 連結の範囲
ワイヤレスブロードバンドサービスを行っているUQコミュニケーションズ(株)(以下「UQ」)については、議決権の32.3%を所有しているため、日本基準においては持分法を適用しておりました。一方、当社はUQの筆頭株主であること、UQの取締役会の構成員の過半数であり、代表権は当社からの取締役が有していること、また、UQの事業活動は当社に大きく依存していることから、当社は取締役会等を通じてUQにパワーを有しております。よって、IFRSの適用にあたり、UQ設立当初から実質的に支配していると判定し、子会社として連結しております。
上記の影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて資産合計が124,064百万円増加、負債合計が14,791百万円減少、資本合計が138,855百万円増加しております。また、売上高が44,893百万円増加、営業利益が54,616百万円増加しております。
② 収益認識
当社グループが携帯端末の代理店に対して支払う手数料のうち、携帯端末の販売に関する部分について、日本基準では発生時に費用として認識しておりましたが、IFRSでは携帯端末の販売時点で、手数料の将来発生見込額を収益から控除しております。なお、これに伴い、期末の棚卸資産の評価にあたって、IFRSでは、手数料の将来発生見込額を正味実現可能価額の金額に反映させております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上高が107,282百万円減少し、売上原価、販売費及び一般管理費が1,856百万円増加しております。
③ のれん(関連会社に対する投資を含む)
当社グループは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的にのれんを償却しておりましたが、IFRSではのれんを償却せずに毎期減損テストを行っております。同様に、持分法で会計処理されている投資に関連するのれんは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的に償却しておりましたが、IFRSでは規則的な償却はせずにのれんを含む関連会社に対する投資全体について、減損している客観的証拠がある場合、減損テストを実施しています。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が28,487百万円減少しております。
④ 有形固定資産の減価償却
有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、日本基準では主として定率法を採用しておりましたが、IFRSでは減価償却方法の見直しを行い、定額法を採用しております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上原価、販売費及び一般管理費が4,610百万円増加しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
■業界動向と当社の状況
日本の情報通信市場は、通信事業者が提供するサービス等の同質化やMVNO各社による格安SIMサービス等の普及が進み、通信事業者は新たな収益の確保に向けて通信以外のサービスへ事業領域を拡大しており、各社の事業戦略は異業種との競争も見据えた大きな転換期にあります。さらに、IoTや人工知能(AI)等のテクノロジーの発展もあり、情報通信市場の事業環境は大きく変化しています。
このような状況の下、当社は、お客さまにお選びいただける企業となるため、「お客さま視点」と「革新」をキーワードに、お客さまの期待を超える「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を加速しています。
国内では、通信領域においてスマートフォン・タブレットの普及やIoTに対する取り組みの強化、様々なデバイスの連携による新たな体験価値の創造等への取り組みを本格的に推進し、「auお客さま数(ID)×ARPA」の最大化による国内通信事業の持続的成長を目指していきます。また、「au」に加え、UQコミュニケーションズ株式会社、株式会社ジュピターテレコム、ビッグローブ株式会社においてMVNO事業を推進しており、当社グループの「モバイルID数」の拡大を図っていきます。
当期は、昨年7月に、お客さまによりご満足いただけるよう、データ通信のご利用方法に応じた料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」の提供を開始しました。多くのお客さまにご好評をいただき、当期末には680万契約を突破しました。さらに、昨年8月には、IoT領域におけるリーディングカンパニーである株式会社ソラコムを連結子会社化しました。これまで培ったIoT/M2Mにおける知見や顧客基盤を活用し、新たなIoTビジネスを創出していきます。また、次世代移動通信システム「5G」については、2020年のサービス化を目指して、幅広いパートナー企業と連携し、技術検証の加速と5Gを活用した新たなサービスの創出を推進していきます。
非通信領域においては、「通信とライフデザインの融合」を目指し、従来の通信サービスに加え、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育等のライフデザインサービスを拡充することで、お客さまへの新しい価値提案を積極的に進めています。本年1月には、外国語教育のリーディングカンパニーである株式会社イーオンホールディングス(以下「イーオンHD」)を連結子会社化し、教育事業に参入しました。また、「Wowma!」等のコマース事業や「au WALLET カード」等の決済事業の拡大により、流通額の増加を図るとともに、「auでんき」等エネルギービジネスの拡大や金融事業の確立等により、お客さまに多様なライフデザインサービスの提案を続けることで、「au経済圏」の最大化を図っていきます。
海外では、新興国における通信事業として、連結子会社のKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.がミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と共同で行っているミャンマー通信事業がグローバル事業の柱となるように注力していきます。また、モンゴル国内携帯電話契約者シェアNO.1の総合通信事業者MobiCom Corporation LLCにおいては、LTEサービス導入を契機に、さらなる成長を目指しています。これら新興国での事業に加え、欧州中心のデータセンターをはじめとした法人向けICTビジネスにおいても、継続して基盤強化を行い、グローバル事業の拡大を図っています。
■連結業績
(単位:百万円) |
2017年3月期 自 2016年4月1日 至 2017年3月31日 | 2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | ||
売上高 | 4,748,259 | 5,041,978 | 293,718 | 6.2 | |
売上原価 | 2,669,678 | 2,821,803 | 152,125 | 5.7 | |
売上総利益 | 2,078,582 | 2,220,175 | 141,593 | 6.8 | |
販売費及び一般管理費 | 1,173,562 | 1,271,215 | 97,653 | 8.3 | |
その他の損益(△損失) | 5,202 | 9,241 | 4,039 | 77.7 | |
持分法による投資利益 | 2,755 | 4,592 | 1,837 | 66.7 | |
営業利益 | 912,976 | 962,793 | 49,816 | 5.5 | |
金融損益(△損失) | △11,562 | △7,950 | 3,612 | - | |
その他の営業外損益 | △5,517 | 305 | 5,822 | - | |
税引前当期利益 | 895,897 | 955,147 | 59,250 | 6.6 | |
法人所得税費用 | 253,282 | 293,951 | 40,669 | 16.1 | |
当期利益 | 642,615 | 661,196 | 18,581 | 2.9 | |
親会社の所有者 | 546,658 | 572,528 | 25,870 | 4.7 | |
非支配持分 | 95,957 | 88,668 | △7,289 | △7.6 |
当期の売上高は、モバイル通信料収入の増加に加え、「au経済圏」の最大化に向けたエネルギー事業、コマース事業、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加や、ミャンマー通信事業の収入の増加等により、5,041,978百万円(前年同期比 6.2%増)となりました。
営業利益は、コマース事業、決済事業における費用や、マーケティングコスト等が増加したものの、売上高の増加により、962,793百万円(同 5.5%増)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加等により、572,528百万円(同 4.7%増)となりました。
b.セグメント別の状況
パーソナルセグメント |
パーソナルセグメントでは、国内における個人のお客さまを対象に、主に「au」ブランドによるモバイル通信サービスの提供、様々な種類のスマートフォン・タブレット等マルチデバイスの販売に加え、固定通信サービスとして、インターネット、電話、TVサービスが快適にご利用いただける「auひかり」ブランドのFTTHサービスや、CATVサービス等を提供しています。また、当社グループが提供するマルチネットワークにWi-Fiを有機的に組み合わせることで、高品質な社会インフラを効率的に作り上げ、シームレスな通信環境を提供しています。
当期は、通信領域において、引き続き「auスマートバリュー」の拡販及び連結子会社のUQコミュニケーションズ株式会社、株式会社ジュピターテレコム、ビッグローブ株式会社によるMVNO事業の推進により、当社グループの「モバイルID数」の拡大に努めています。新料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」については順調に契約数を拡大し、当期末には680万契約を突破しました。また、本年3月1日より、動画配信サービスや高画質4K・8K映像、VR等の高速・大容量インターネットのニーズに応えるべく、次世代超高速インターネットサービス「auひかり ホーム10ギガ」「auひかり ホーム5ギガ」の提供を開始しました。本年3月28日には4G LTEのネットワークにおいて、上り通信速度最大112.5Mbps※1の高速データ通信サービスを東名阪の一部エリア※2で提供を開始する等、さらなるお客さま体験価値の向上に取り組んでいます。
非通信領域においては、「通信とライフデザインの融合」を目指し、お客さまとauをつなぐ最大のタッチポイントであるauショップを活用した物販サービス「au WALLET Market」やエネルギー事業の推進等、「au経済圏」の最大化に取り組んでいます。また、教育市場においても連結子会社のイーオンHDにてICTを活用したサービスを提供していきます。
パーソナルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
※1 ご利用地域やご利用端末によって最大通信速度が異なります。また、通信速度は技術規格上の最大値であり実使用速度を示すものではありません。お客さまのご利用環境、回線の状況等により低下する場合があります。
※2 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の一部エリアとなります。対象エリアは今後順次拡大予定です。なお、ご利用の機種によって、対応する周波数帯の都合上、ご利用可能なエリアが異なる場合があります。
■業 績
(単位:百万円) |
2017年3月期 自 2016年4月1日 至 2017年3月31日 | 2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |
売上高 | 3,632,969 | 3,899,605 | 266,635 | 7.3 |
営業利益 | 711,087 | 732,931 | 21,844 | 3.1 |
当期の売上高は、モバイル通信料収入及びエネルギー事業収入等の増加により、3,899,605百万円(前年同期比 7.3%増)となりました。
営業利益は、エネルギー事業における電力小売販売原価や顧客獲得増加に伴うマーケティングコスト等が増加したものの、売上高の増加により、732,931百万円(同 3.1%増)となりました。
バリューセグメント |
バリューセグメントでは、「通信とライフデザインの融合」を目指し、「au経済圏」の最大化と新規事業領域でのビジネス拡大に向け、コマース・金融・決済・エンターテインメント等の付加価値サービスを提供し、様々な取り組みを推進しています。
当期は、引き続き「auスマートパスプレミアム」及びコマース事業・決済事業の強化により、付加価値ARPA、流通総額の拡大に努めています。「auスマートパスプレミアム」は、「学割キャンペーン」や「三太郎の日」における会員限定特典の提供等により順調に会員数を拡大し、本年3月には400万会員を突破しました。コマース事業では、今後市場拡大が予想されるライブコマース領域への参入に向け、本年3月に動画メディア事業を展開する株式会社エブリーとの資本業務提携を行いました。金融事業では、お客さまの資産形成のサポートを目的に、株式会社大和証券グループ本社との合弁によるKDDIアセットマネジメント株式会社を発足させました。決済事業では、「au WALLET カード」の発行枚数が順調に増加し、本年3月にはau WALLET決済の流通額が1兆円を突破しました。
また、様々なベンチャー企業との連携による新事業創出の取り組みも加速しています。本年3月には医療・介護の現場におけるIT化支援を目的に、ソーシャル医療介護連携プラットフォームを提供する株式会社日本エンブレースと資本業務提携を行いました。
バリューセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
■業 績
(単位:百万円) |
2017年3月期 自 2016年4月1日 至 2017年3月31日 | 2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |
売上高 | 451,058 | 521,736 | 70,678 | 15.7 |
営業利益 | 95,894 | 103,986 | 8,092 | 8.4 |
当期の売上高は、「auスマートパス・auスマートパスプレミアム」の収入の増加に加え、コマース事業の収入の増加や、「au WALLET プリペイド・クレジットカード」などの決済事業の収入等の増加により、521,736百万円(前年同期比 15.7%増)となりました。
営業利益は、コマース事業や決済事業等の費用が増加したものの、売上高の増加により、103,986百万円(同 8.4%増)となりました。
*2019年3月期より当セグメントの名称を「バリュー」から「ライフデザイン」へ変更いたします。
ビジネスセグメント |
ビジネスセグメントでは、大企業から中小企業まで幅広い法人のお客さまを対象に、スマートフォン・タブレット等のモバイル端末の提供や、ネットワーク・アプリケーション・クラウド型サービス等の多様なソリューションを提供しています。また、中小企業のお客さまについては、連結子会社のKDDIまとめてオフィスグループによる地域に密着したサポート体制を全国規模で構築しています。
当期は、モノとインターネットがつながるIoT時代の到来を踏まえ、ガス、水道等のスマートメーター、物流やウェアラブル等、多種多様な分野でIoTを活用できるように、法人のお客さま向けに、低消費電力・広域で廉価なIoT通信を実現するセルラーLPWA通信サービス「KDDI IoT通信サービス LPWA※ (LTE-M)」の提供を本年1月に開始しました。
様々なパートナー企業との協業ビジネスを推進し、株式会社野村総合研究所との合弁で設立したお客さまのデジタル変革の戦略策定から実行までスピーディに実現するKDDIデジタルデザイン株式会社が本年1月より事業を開始しました。また、本年2月19日には、サイバーセキュリティ分野のリーディングカンパニーである株式会社ラックとの合弁でネットワークからセキュリティまで一元的に支援するKDDIデジタルセキュリティ株式会社を設立しました。
今後も、法人のお客さまのビジネスの発展・拡大に一層貢献し、お客さまから真の事業パートナーとしてお選びいただけることを目指して、事業の変革に取り組んでいきます。
ビジネスセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
※「Low Power, Wide Area」の略。少ない電力で広いエリアをカバーする無線通信技術の総称です。
■業 績
(単位:百万円) |
2017年3月期 自 2016年4月1日 至 2017年3月31日 | 2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |
売上高 | 710,170 | 749,971 | 39,801 | 5.6 |
営業利益 | 76,053 | 84,467 | 8,414 | 11.1 |
当期の売上高は、通信料収入が減少しているものの、ソリューション収入や端末販売収入等の増加により、749,971百万円(前年同期比 5.6%増)となりました。
営業利益は、端末販売原価や通信設備使用料等が増加したものの、売上高の増加により、84,467百万円(同 11.1%増)となりました。
グローバルセグメント |
グローバルセグメントでは、ミャンマーをはじめとする海外のコンシューマビジネスに積極的に取り組むとともに、法人のお客さまに対しては、接続性の高いデータセンター「TELEHOUSE」を核としたICTソリューションをワンストップで提供しています。さらに、世界600以上の通信事業者との間で音声及びデータビジネスを展開しています。
当期は、コンシューマビジネスにおいて、サービス向上に向けたエリア拡大や高速化等の積極的な設備投資を行っています。ミャンマーのモバイル通信事業においては、1.8GHz帯のLTEサービスにおけるキャリアアグリゲーション※1技術の導入により、最高速度300Mbps※2を実現しました。
また、データセンター事業においては、TELEHOUSE EUROPEのデータセンター「TELEHOUSE London Docklands」にて、構内配線で直接接続する「AWS Direct Connect」の提供開始を本年2月に発表しました。これにより、お客さまは、近接性が高く、低遅延でセキュアなクラウド環境の構築が実現可能となりました。
グローバルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。
※1 複数の周波数帯域を同時に使い、束ねてデータ通信を行うことで、受信時の最大通信速度を引き上げます。
※2 ベストエフォート型サービスです。記載の速度は技術規格上の最大値であり、実使用速度を示すものではありません。エリア内であってもお客さまのご利用環境、回線の状況等により通信速度が低下する場合があります。
■業 績
(単位:百万円) |
2017年3月期 自 2016年4月1日 至 2017年3月31日 | 2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |
売上高 | 277,204 | 248,702 | △28,503 | △10.3 |
営業利益 | 24,157 | 31,907 | 7,750 | 32.1 |
当期の売上高は、ミャンマー通信事業の収入の増加や、「TELEHOUSE」のデータセンター事業収入の増加があったものの、前期より実施している採算性の低い事業の整理による収入減少等により、248,702百万円(前年同期比 10.3%減)となりました。
営業利益は、主にミャンマー通信事業やデータセンター事業による利益創出により、31,907百万円(同 32.1%増)となりました。
*社名及び商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。
c. 財政状態の状況
(単位:百万円) | |||||
2017年3月期 | 2018年3月期 | 比較増減 | 増減率 (%) | ||
非流動資産 | 4,297,800 | 4,423,306 | 125,505 | 2.9 | |
流動資産 | 1,966,025 | 2,151,249 | 185,224 | 9.4 | |
資産合計 | 6,263,826 | 6,574,555 | 310,729 | 5.0 | |
非流動負債 | 1,333,201 | 1,005,498 | △327,704 | △24.6 | |
流動負債 | 1,081,491 | 1,437,800 | 356,309 | 32.9 | |
負債合計 | 2,414,692 | 2,443,298 | 28,605 | 1.2 | |
資本合計 | 3,849,133 | 4,131,257 | 282,124 | 7.3 |
(資産)
非流動資産は、繰延税金資産が減少したものの、その他の長期金融資産やのれんの増加等により、4,423,306百万円(前期末比 2.9%増)となりました。
流動資産は、現金及び現金同等物が減少したものの、営業債権及びその他の債権の増加等により、2,151,249百万円(同 9.4%増)となりました。
(負債)
非流動負債は、その他の長期金融負債の減少等により、1,005,498百万円(同 24.6%減)となりました。
流動負債は、営業債務及びその他の債務の増加等により、1,437,800百万円(同 32.9%増)となりました。
なお、有利子負債残高は、前連結会計年度末から33,034百万円減少し、1,118,616百万円となりました。
(資本)
資本は、利益剰余金の増加等により、4,131,257百万円(同 7.3%増)となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末を0.7ポイント上回る57.4%となりました。
また、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は、前連結会計年度末の0.32倍から、0.30倍へ低下しました。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円) |
2017年3月期 | 2018年3月期 | 比較増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,161,074 | 1,061,405 | △99,669 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △637,225 | △633,847 | 3,378 |
フリー・キャッシュ・フロー ※ | 523,849 | 427,558 | △96,291 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △485,784 | △453,168 | 32,616 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △3,545 | △163 | 3,381 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | 34,520 | △25,773 | △60,294 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 192,087 | 226,607 | 34,520 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 226,607 | 200,834 | △25,773 |
※ フリー・キャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益955,147百万円、減価償却費及び償却費546,815百万円、法人所得税の支払302,783百万円、営業債権及びその他の債権の増加219,125百万円等により1,061,405百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出361,102百万円、無形資産の取得による支出199,776百万円等により633,847百万円の支出となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較し96,291百万円減少し、427,558百万円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払219,885百万円、自己株式の取得による支出150,000百万円、社債発行及び長期借入による収入95,000百万円、負債性金融商品の取得による支出95,000百万円等により、453,168百万円の支出となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較し、25,773百万円減少し、200,834百万円となりました。
③ 営業実績
当連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
パーソナル | 3,899,605 | 7.3 |
バリュー | 521,736 | 15.7 |
ビジネス | 749,971 | 5.6 |
グローバル | 248,702 | △10.3 |
その他 | 105,273 | 11.9 |
セグメント間の内部売上高 | △483,308 | - |
合計 | 5,041,978 | 6.2 |
(注)1.金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループにおける重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(売上高)
モバイル通信料収入の増加に加え、「au経済圏」の最大化に向けたエネルギー事業、コマース事業、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加や、ミャンマー通信事業の収入の増加等により5,041,978百万円(前年同期比 6.2%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 25.売上高」をご参照ください。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
コマース事業、決済事業における費用や、マーケティングコスト等の増加により4,093,018百万円(同 6.5%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 26.費用の性質別内訳」をご参照ください。
(その他の収益及びその他の費用)
雑支出の減少等により、9,241百万円の利益(同 77.7%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 27.その他の収益及びその他の費用」をご参照ください。
(持分法による投資利益)
持分法適用関連会社の株式会社エナリスにおける持分法による投資利益の増加等により、4,592百万円(同 66.7%増)となりました。
(営業利益)
以上の結果、営業利益は962,793百万円(同 5.5%増)となりました。なお、営業利益率は、19.1%(同 0.1ポイント減)となりました。
(金融収益及び金融費用)
前連結会計年度は、支払利息10,872百万円、為替差損2,128百万円の計上等により、11,562百万円の損失となりましたが、当連結会計年度は支払利息9,701百万円、受取配当金2,479百万円の計上等により、7,950百万円の損失となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 28.金融収益及び金融費用」をご参照ください。
(その他の営業外損益)
前連結会計年度は、関係会社株式売却損5,535百万円、持分変動利益18百万円の計上により、5,517百万円の損失となりましたが、当連結会計年度は、関係会社売却益305百万円の計上により、305百万円の益となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29.その他の営業外損益」をご参照ください。
(法人所得税費用)
課税所得の増加等の影響により293,951百万円(同 16.1%増)となりました。なお、2018年3月期の法人税等負担率は30.8%となりました。法人所得税費用に関する詳細については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.繰延税金及び法人所得税」をご参照ください。
(非支配持分に帰属する当期利益)
主にUQコミュニケーションズ株式会社の利益減少等の影響により、88,668百万円(同 7.6%減)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
上記の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は572,528百万円(同 4.7%増)となりました。
なお、報告セグメントの売上と営業利益の概況については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
当社グループは、運転資金及び設備投資については、自己資金及び借入金等により資金調達することとしております。このうち、借入金等による資金調達に関しては、通常の運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金は固定金利の長期借入金及び社債で調達することを基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等を含む有利子負債の残高は1,118,616百万円、現金及び現金同等物の残高は200,834百万円となっております。
流動性リスクとその管理方法につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記32.金融商品」に記載しております。
c.経営上の財務目標の達成状況について
当社グループは、事業環境の変化に迅速に対応しながら、持続的な成長を実現していくため、2016年度からの3年間における新たな中期目標を策定しており、利益成長目標として、「連結営業利益 CAGR(年平均成長率) 7%」を掲げております。
当連結会計年度においては、「国内通信事業の持続的成長」に加えて、新たな成長軸の確立に向けて「au経済圏の最大化」と「グローバル事業の積極展開」を進めたことにより、利益成長目標の達成に向け着実に進捗しており、引き続き取り組んでまいります。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
① 連結の範囲
ワイヤレスブロードバンドサービスを行っているUQコミュニケーションズ(株)(以下「UQ」)については、議決権の32.3%を所有しているため、日本基準においては持分法を適用しておりました。一方、当社はUQの筆頭株主であること、UQの取締役会の構成員の過半数であり、代表権は当社からの取締役が有していること、また、UQの事業活動は当社に大きく依存していることから、当社は取締役会等を通じてUQにパワーを有しております。よって、IFRSの適用にあたり、UQ設立当初から実質的に支配していると判定し、子会社として連結しております。
上記の影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて資産合計が124,064百万円増加、負債合計が14,791百万円減少、資本合計が138,855百万円増加しております。また、売上高が44,893百万円増加、営業利益が54,616百万円増加しております。
② 収益認識
当社グループが携帯端末の代理店に対して支払う手数料のうち、携帯端末の販売に関する部分について、日本基準では発生時に費用として認識しておりましたが、IFRSでは携帯端末の販売時点で、手数料の将来発生見込額を収益から控除しております。なお、これに伴い、期末の棚卸資産の評価にあたって、IFRSでは、手数料の将来発生見込額を正味実現可能価額の金額に反映させております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上高が107,282百万円減少し、売上原価、販売費及び一般管理費が1,856百万円増加しております。
③ のれん(関連会社に対する投資を含む)
当社グループは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的にのれんを償却しておりましたが、IFRSではのれんを償却せずに毎期減損テストを行っております。同様に、持分法で会計処理されている投資に関連するのれんは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的に償却しておりましたが、IFRSでは規則的な償却はせずにのれんを含む関連会社に対する投資全体について、減損している客観的証拠がある場合、減損テストを実施しています。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が28,487百万円減少しております。
④ 有形固定資産の減価償却
有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、日本基準では主として定率法を採用しておりましたが、IFRSでは減価償却方法の見直しを行い、定額法を採用しております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上原価、販売費及び一般管理費が4,610百万円増加しております。