有価証券報告書-第35期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
■業界動向と当社の状況
日本の情報通信市場は、通信事業者が提供するサービス等の同質化やMVNO各社による格安SIMサービス等の普及、新規通信事業者の参入決定等、競争環境が激化しており、通信事業者は新たな収益の確保に向けて通信以外のサービスへ事業領域を拡大しています。さらに、IoTや人工知能(AI)等のテクノロジーの発展もあり、情報通信市場の事業環境は大きく変化しています。
このような状況の下、当社は、「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を掲げ、通信サービスを中心に、様々なライフデザインサービスを連携しながら拡充することで、「通信とライフデザインの融合」による、新しい価値提案を積極的に進めています。
国内では、通信領域においてスマートフォン・タブレットの普及やIoTに対する取り組みの強化、様々なデバイスの連携による新たな体験価値の創造等への取り組みに加え、お客さまによりご満足いただけるよう、データ通信のご利用方法に応じた料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」の提供やauケータイ・スマートフォン等と固定通信サービスのセット割サービス「auスマートバリュー」の拡販等により、「auお客さま数(ID)×ARPA」の最大化による国内通信事業の持続的成長を目指してきました。また、「au」に加え、グループ会社によるMVNO事業の推進により、当社グループの「モバイルID数」の拡大を図っています。
また、大企業から中小企業まで幅広い法人のお客さまを対象に、モバイル端末の提供や、ネットワーク・アプリケーション・クラウド型サービス等の多様なソリューションを提供しており、法人のお客さまのビジネスの発展・拡大に一層貢献し、お客さまから真の事業パートナーとしてお選びいただけることを目指しています。
さらに、今後本格化する5G(第5世代移動通信システム)・IoT、AI・ビッグデータ等をはじめとする様々なテクノロジーを積極的に活用し、新しい利用シーンの提案に注力しています。特に5Gについては、本年9月のトライアルサービス開始に向けて、幅広いパートナー企業と連携し、技術検証の加速と5Gを活用した新たなサービスの創造を推進しています。
非通信領域においては、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育等のライフデザインサービスを拡充することで、お客さまへの新しい価値提案と「au経済圏」の流通総額の拡大に向けた取り組みを積極的に進めています。「Wowma!」等のコマース事業や「au WALLET カード」等の決済事業の拡大により、流通額の増加を図るとともに、「auでんき」等のエネルギー事業、金融事業や教育事業の拡大・強化を図っています。特に、金融事業では、本年2月に、お客さまにスマホ・セントリックな決済、金融体験を総合的に提供する「スマートマネー構想」の始動を発表し、金融・決済事業の強化を目的に設立した中間金融持株会社「auフィナンシャルホールディングス株式会社」は本年4月に業務を開始しました。
海外における通信事業として、連結子会社のKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.がミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と共同で行っているミャンマー通信事業及びモンゴル国内の総合通信事業者MobiCom Corporation LLCは、それぞれLTEサービスの本格展開を進め、さらなる成長を目指していきます。これらの事業に加え、欧州中心のデータセンターをはじめとした法人向けICTビジネスにおいても、継続して収益力の強化を行い、グローバル事業の拡大を図っています。
これらの取り組みにより、連結営業利益は発足以来初の1兆円を突破、au経済圏流通総額は2兆円超へ成長しました。
■連結業績
当期の売上高は、モバイル通信料収入及び端末販売収入が減少したものの、「au経済圏」の最大化に向けエネルギー事業、株式会社イーオンホールディングス(以下「イーオンHD」)のグループ化、「Wowma!」及び「au WALLET Market」、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加、株式会社エナリス(以下「エナリス」)の新規連結子会社化、ミャンマー通信事業の収入の増加等により、5,080,353百万円(前年同期比 0.8%増)となりました。
営業利益は、エネルギー事業、「Wowma!」及び「au WALLET Market」、決済事業における費用の増加があったものの、売上高の増加等により、1,013,729百万円(同 5.3%増)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加等により、617,669百万円(同 7.9%増)となりました。
b.セグメント別の状況
パーソナルセグメントでは、国内における個人のお客さまを対象に、主に「au」ブランドによるモバイル通信サービスの提供、様々な種類のスマートフォン・タブレット等マルチデバイスの販売に加え、インターネット、電話、TVサービスが快適にご利用いただける「auひかり」ブランドのFTTHサービスや、CATVサービス等の固定通信サービス、エネルギー、教育サービス等のライフデザインサービスを提供しています。また、当社グループが提供するマルチネットワークにWi-Fiを有機的に組み合わせることで、高品質な社会インフラを効率的に作り上げ、シームレスな通信環境を提供しています。
当期は、通信領域において、お客さまにご好評いただいている、データ通信のご利用方法に応じた料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」に加えて、新料金プランとして昨年8月よりコンテンツ利用料金とauスマートフォンの通信料金をセットにした「auフラットプラン25 Netflixパック」の提供を開始しました。また、お客さま基盤の拡大として、モバイルと固定のセット割サービス「auスマートバリュー」及びグループ会社によるMVNO事業の連携による「ID数」の拡大に努めています。
非通信領域では、「通信とライフデザインの融合」の取り組みとして、教育とICTを組み合わせた「EdTech※」を推進する「イーオンデジタルプロジェクトAEON DX」を始動させています。
今後もライフデザインサービスの拡充と「au経済圏」最大化の取り組みを継続し、新しい体験価値を創造していきます。
パーソナルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
※ Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、テクノロジーを使って教育にイノベーションを起こす取り組みのこと。
■業 績
当期の売上高は、モバイル通信料収入及び端末販売収入が減少したもののエネルギー事業収入の増加及びイーオンHDのグループ化により、3,911,229百万円(前年同期比 0.3%増)となりました。
営業利益は、モバイル通信料収入及び端末販売粗利が減少したもののエネルギー事業粗利の増加等により、756,298百万円(同 3.2%増)となりました。
ライフデザインセグメントでは、「通信とライフデザインの融合」を推進し、コマース・金融・決済・エンターテインメント等の様々なサービスを通してお客さまとの接点を拡大するとともに、生活のあらゆるシーン・ライフステージの段階に応じて、お客さまに最適なサービスを複合的に提供し、新しい体験価値を提案しています。
当期は、金融事業において、本年2月に、お客さまの生活の中心となったスマートフォンを預金、決済、投資、ローン、保険といったあらゆるサービスの入り口とし、お客さまにスマホ・セントリックな決済、金融体験を総合的に提供する「スマートマネー構想」の始動を発表しました。au WALLET チャージ残高とau WALLET ポイント残高の合計相当額が1,000億円以上で2,000万超のお客さまが保有する「au WALLET」を軸に、貯める、支払う、殖やす、借りる、備える、といったお客さまのお金にかかわる活動をワンストップで提供することで、新たな体験価値を提案していきます。また、本年4月には、スマホ決済サービス「au PAY」を開始し、キャッシュレス社会への変革を推進しています。
「auスマートパスプレミアム」では、シニア向けや学生向けの特典強化に重点的に取り組みました。その結果、当期末には、会員数が「auスマートパス」会員数全体の3分の1を超える700万会員を突破しました。これからもサービスの満足度を向上させ、お客さまとの接点を拡大していきます。
「エデュテインメント※1」や「地方創生」への取り組みについても推進してきました。本年3月には、5G、IoTなど先端技術を融合したエデュテインメントの進化と地方展開を通じた地域の発展を目的として、「Kids ジョブチャレンジ 2019 in 平戸~アウト オブ キッザニア~」を長崎県平戸市で開催しました。
5G時代を見据えた新しい体験価値の創造にあたっては、「ジャパネット杯 春の高校バレー 第71回全日本バレーボール高等学校選手権大会」や公益財団法人日本サッカー協会が主催する「キリンチャレンジカップ2019」において、XR技術※2を活用することでより楽しくより快適で臨場感のある新たな観戦体験を提供しました。また、KDDI Open Innovation Fund 3号を通じて、スタートアップ企業やパートナー企業との事業共創への取り組みを推進するとともに、「KDDI ∞ Labo」では、本年3月に、5G時代の新たな価値創造を行う「5Gプログラム」の開始を発表しました。
エネルギー事業では、本年2月に関東エリアにおいて、東京電力エナジーパートナー株式会社との業務提携によるご家庭向けの電気・ガス販売を開始しました。
ライフデザインセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
※1 エデュケーション(教育)と、エンターテインメント(娯楽)を組み合わせた造語で、楽しみながら学ぶこと。
※2 AR(拡張現実)/MR(複合現実)/VR(仮想現実)などの技術の総称
■業 績
当期の売上高は、「auスマートパスプレミアム」の収入の増加、「Wowma!」及び「au WALLET Market」の収入の増加、「au WALLET プリペイドカード」及び「au WALLET クレジットカード」などの決済事業の収入等の増加に加え、エナリスの新規連結子会社化により、579,374百万円(前年同期比 11.0%増)となりました。
営業利益は、「Wowma!」及び「au WALLET Market」や決済事業等の費用が増加したものの、売上高の増加により、112,832百万円(同 8.4%増)となりました。
*当連結会計年度より当セグメントの名称を「バリュー」から「ライフデザイン」へ変更しております。
ビジネスセグメントでは、大企業から中小企業まで幅広い法人のお客さまを対象に、スマートフォン・タブレット等のモバイル端末の提供や、ネットワーク・アプリケーション・クラウド型サービス等の多様なソリューションを提供しています。また、中小企業のお客さまについては、連結子会社のKDDIまとめてオフィスグループによる地域に密着したサポート体制を全国規模で構築しています。
当期は、さまざまなIoT機器の通信接続からデータ活用サービス、各国の法規制等に係る手続きまでワンストップにて提供するKDDI「IoT世界基盤」の商用トライアル受付を本年5月より開始することを発表しました。このKDDI「IoT世界基盤」の提供により、企業のIoTビジネスのグローバル展開における課題を解決し、お客さまのビジネス変革と事業拡大を強力にサポートしていきます。
また、スマートドローン※1を安心・安全に飛行制御する基盤システムとなるプラットフォームを活用した用途別ソリューションを本年6月より提供開始することを発表しました。このプラットフォームを活用し、広域監視、構造物点検等において、お客さまの業務効率化や課題解決に貢献します。
その他、アジャイル企画開発手法「スクラム※2」の導入支援により法人のお客さまのイノベーションを実現することを目的として、本年1月に、Scrum Inc.、株式会社永和システムマネジメントとの合弁で、Scrum Inc. Japan株式会社を設立しました。
今後も、法人のお客さまのビジネスの発展・拡大に一層貢献し、お客さまから真の事業パートナーとしてお選びいただけることを目指して、事業の変革に取り組んでいきます。
ビジネスセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
※1 KDDIの通信ネットワークを利用することで、より長距離で安全な運用を可能としたドローンのこと。
※2 Scrum Inc. の創業者 Jeff Sutherland博士らが考案した、お客さまからのフィードバックに基づき計画と開発を短い期間で繰り返 し、新しい機能を次々とリリースしていく、アジャイル企画開発手法として世界で最も普及しているイノベーション手法
■業 績
当期の売上高は、ソリューション収入やエネルギー事業収入等の増加により、796,863百万円(前年同期比 6.3%増)となりました。
営業利益は、ソリューション機器原価や通信設備使用料等が増加したものの、売上高の増加により、103,992百万円(同 23.1%増)となりました。
グローバルセグメントでは、ミャンマーやモンゴルをはじめとする海外のコンシューマビジネスに積極的に取り組むとともに、法人のお客さまに対しては、データセンター・ネットワーク・クラウド・IoT等のICTソリューションを提供し、お客さまのビジネスの発展・拡大への貢献を目指しています。
モンゴル通信事業においては、データ容量の追加されたお得なチャージ型プリペイドカードを本年2月に発売開始しました。また、SNS・ゲーム・ビデオ・音楽の使い放題、聞き放題パッケージを追加しました。今後もお客さまのデータ需要に合わせたサービスを展開していきます。
ICTソリューション事業においては、KDDIシンガポールが、東南アジア諸国に事業展開する法人のお客さま向けに、ネットワーク、セキュリティ、RPA (Robotic Process Automation)、IoTなどの各ソリューションを一元的に提供する「KDDI GX (Global Exchange) Platform」を、本年1月より開始しました。これにより、お客さまの東南アジア諸国における事業拡大を更に強力にサポートします。
また、KDDI上海は、RPA業界のリーディングカンパニーUiPath社より、日系企業として中国大陸初のゴールドパートナーに認定されました。ゴールドパートナーは、UiPath RPAプラットフォームの機能や技術について十分な知識を有した技術者を社内に抱え、導入支援ができるトップレベルのソリューション事業者に与えられる資格です。KDDI上海は、「UiPath RPAプラットフォーム」の提供により、多くの企業の業務効率化に貢献しております。
グローバルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
■業 績
当期の売上高は、ミャンマー通信事業の収入の増加や、「TELEHOUSE」のデータセンター事業収入の増加があったものの、採算性の低い事業の整理による収入減少等により、208,790百万円(前年同期比 16.0%減)となりました。
営業利益は、主にミャンマー通信事業及びデータセンター事業による利益創出や、上記事業整理に伴うコストの減少により、34,368百万円(同 7.7%増)となりました。
なお、KDDI SUMMIT GLOBAL SINGAPORE PTE. LTD.ならびに、同子会社であるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.は、決算体制が整ったことから、当連結会計年度より報告期間を統一しております。
*「(1)当期の経営成績の概況」に記載している社名及び商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。
*2020年3月期より、「パーソナル」、「ライフデザイン」、「ビジネス」、「グローバル」で区分されていた4つの報告セグメントを、マネジメントアプローチに基づき、経営資源の配分・業績評価の単位をベースに集約し、「パーソナル」、「ビジネス」の2つの報告セグメントに再編いたします。
c. 財政状態の状況
(資産)
資産は、繰延税金資産が減少したものの、契約コスト、営業債権及びその他の債権等が増加したことにより、前連結会計年度末と比較し、755,861百万円増加し、7,330,416百万円となりました。
(負債)
負債は、その他の非流動負債ならびにその他の流動負債が減少したものの、借入金及び社債、契約負債等が増加したことにより、前連結会計年度末と比較し、274,186百万円増加し、2,717,484百万円となりました。
(資本)
資本は、利益剰余金等の増加により、4,612,932百万円となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末の57.4%から57.1%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
※ フリー・キャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益1,010,275百万円、減価償却費及び償却費562,402百万円、法人所得税の支払290,689百万円、営業債権及びその他の債権の増加271,723百万円等により1,029,607百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出399,531百万円、無形資産の取得による支出202,607百万円、関連会社株式の取得による支出83,799百万円等により714,578百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債発行及び長期借入による収入456,000百万円、社債償還及び長期借入返済による支出302,151百万円、配当金の支払227,700百万円、自己株式の取得による支出150,000百万円等により、310,951百万円の支出となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較し、3,763百万円増加し、204,597百万円となりました。
③ 営業実績
当連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループにおける重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(売上高)
モバイル通信料収入及び端末販売収入が減少したものの、「au経済圏」の最大化に向けたエネルギー事業、株式会社イーオンホールディングスのグループ化、「Wowma!」及び「au WALLET Market」、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加、株式会社エナリスの新規連結子会社化、ミャンマー通信事業の収入の増加等により5,080,353百万円(前年同期比 0.8%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 25.売上高」をご参照ください。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
電力事業原価が増加したものの、販売手数料・ポイント費用や端末販売コストの減少により4,077,882百万円(同 0.4%減)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 26.費用の性質別内訳」をご参照ください。
(その他の収益及びその他の費用)
雑収入の減少等により、6,479百万円の利益(同 29.9%減)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 27.その他の収益及びその他の費用」をご参照ください。
(持分法による投資利益)
持分法適用関連会社の株式会社カカクコムにおける持分法による投資利益の増加等により、4,780百万円(同 4.1%増)となりました。
(営業利益)
以上の結果、営業利益は1,013,729百万円(同 5.3%増)となりました。なお、営業利益率は、20.0%(同 0.9ポイント増)となりました。
(金融収益及び金融費用)
支払利息8,694百万円、受取配当金2,279百万円の計上等により、6,430百万円の損失となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 28.金融収益及び金融費用」をご参照ください。
(その他の営業外損益)
段階取得に係る差益2,999百万円の計上等により、2,975百万円の利益となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29.その他の営業外損益」をご参照ください。
(法人所得税費用)
課税所得の増加等の影響により309,149百万円(同 5.2%増)となりました。なお、2019年3月期の法人税等負担率は30.6%となりました。法人所得税費用に関する詳細については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.繰延税金及び法人所得税」をご参照ください。
(非支配持分に帰属する当期利益)
主にUQコミュニケーションズ株式会社の利益減少等の影響により、83,457百万円(同 5.9%減)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
上記の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は617,669百万円(同 7.9%増)となりました。
なお、報告セグメントの売上と営業利益の概況については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社グループは、運転資金及び設備投資については、自己資金及び借入金等により資金調達することとしております。このうち、借入金等による資金調達に関しては、通常の運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金は固定金利の長期借入金及び社債で調達することを基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等を含む有利子負債の残高は1,275,711百万円、現金及び現金同等物の残高は204,597百万円となっております。
流動性リスクとその管理方法につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記32.金融商品」に記載しております。
c.経営上の財務目標の達成状況について
当社グループは、事業環境の変化に迅速に対応しながら、持続的な成長を実現していくため、2016年度からの3年間における中期目標を策定しており、利益成長目標として、「連結営業利益 CAGR(年平均成長率) 7%」を掲げておりました。
当連結会計年度においては、「国内通信事業の持続的成長」に加えて、新たな成長軸の確立に向けて「au経済圏の最大化」と「グローバル事業の積極展開」を進めたことにより、利益成長は概ね目標通り遂行し連結営業利益は発足以来初の1兆円を突破しました。
今後は営業利益の持続的な成長を目指し、EPSについては2024年度1.5倍(2018年度比)の実現を目指します。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
① 連結の範囲
ワイヤレスブロードバンドサービスを行っているUQコミュニケーションズ(株)(以下「UQ」)については、議決権の32.3%を所有しているため、日本基準においては持分法を適用しておりました。一方、当社はUQの筆頭株主であること、UQの取締役会の構成員の過半数であり、代表権は当社からの取締役が有していること、また、UQの事業活動は当社に大きく依存していることから、当社は取締役会等を通じてUQにパワーを有しております。よって、IFRSの適用にあたり、UQ設立当初から実質的に支配していると判定し、子会社として連結しております。
上記の影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて資産合計が39,257百万円増加、負債合計が52,400百万円減少、資本合計が91,657百万円増加しております。また、売上高が34,479百万円増加、営業利益が48,389百万円増加しております。
② 収益認識
当社グループが携帯端末の代理店に対して支払う手数料のうち、携帯端末の販売に関する部分について、日本基準では発生時に費用として認識しておりましたが、IFRSでは携帯端末の販売時点で、手数料の将来発生見込額を収益から控除しております。なお、これに伴い、期末の棚卸資産の評価にあたって、IFRSでは手数料の将来発生見込額を正味実現可能価額の金額に反映させております。
当社グループがお客さまから受け取る対価について、日本基準では総額で表示している取引のうち、当社グループが契約の当事者として財またはサービスの提供に主たる責任を有しているか、在庫リスクを負っているか、価格決定権を有しているか等を総合的に勘案し、お客さまから受け取る対価の総額から第三者に対する手数料その他の支払額を差し引いた純額で表示することが適切な取引については、IFRSでは純額で表示しております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上高が137,275百万円減少し、売上原価、販売費及び一般管理費が141,267百万円減少しております。
③ のれん(関連会社に対する投資を含む)
当社グループは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的にのれんを償却しておりましたが、IFRSではのれんを償却せずに毎期減損テストを行っております。同様に、持分法で会計処理されている投資に関連するのれんは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的に償却しておりましたが、IFRSでは規則的な償却はせずにのれんを含む関連会社に対する投資全体について、減損している客観的証拠がある場合、減損テストを実施しています。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が32,258百万円減少しております。
④ 有形固定資産の減価償却
有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、日本基準では主として定率法を採用しておりましたが、IFRSでは減価償却方法の見直しを行い、定額法を採用しております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上原価、販売費及び一般管理費が5,064百万円減少しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
■業界動向と当社の状況
日本の情報通信市場は、通信事業者が提供するサービス等の同質化やMVNO各社による格安SIMサービス等の普及、新規通信事業者の参入決定等、競争環境が激化しており、通信事業者は新たな収益の確保に向けて通信以外のサービスへ事業領域を拡大しています。さらに、IoTや人工知能(AI)等のテクノロジーの発展もあり、情報通信市場の事業環境は大きく変化しています。
このような状況の下、当社は、「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を掲げ、通信サービスを中心に、様々なライフデザインサービスを連携しながら拡充することで、「通信とライフデザインの融合」による、新しい価値提案を積極的に進めています。
国内では、通信領域においてスマートフォン・タブレットの普及やIoTに対する取り組みの強化、様々なデバイスの連携による新たな体験価値の創造等への取り組みに加え、お客さまによりご満足いただけるよう、データ通信のご利用方法に応じた料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」の提供やauケータイ・スマートフォン等と固定通信サービスのセット割サービス「auスマートバリュー」の拡販等により、「auお客さま数(ID)×ARPA」の最大化による国内通信事業の持続的成長を目指してきました。また、「au」に加え、グループ会社によるMVNO事業の推進により、当社グループの「モバイルID数」の拡大を図っています。
また、大企業から中小企業まで幅広い法人のお客さまを対象に、モバイル端末の提供や、ネットワーク・アプリケーション・クラウド型サービス等の多様なソリューションを提供しており、法人のお客さまのビジネスの発展・拡大に一層貢献し、お客さまから真の事業パートナーとしてお選びいただけることを目指しています。
さらに、今後本格化する5G(第5世代移動通信システム)・IoT、AI・ビッグデータ等をはじめとする様々なテクノロジーを積極的に活用し、新しい利用シーンの提案に注力しています。特に5Gについては、本年9月のトライアルサービス開始に向けて、幅広いパートナー企業と連携し、技術検証の加速と5Gを活用した新たなサービスの創造を推進しています。
非通信領域においては、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育等のライフデザインサービスを拡充することで、お客さまへの新しい価値提案と「au経済圏」の流通総額の拡大に向けた取り組みを積極的に進めています。「Wowma!」等のコマース事業や「au WALLET カード」等の決済事業の拡大により、流通額の増加を図るとともに、「auでんき」等のエネルギー事業、金融事業や教育事業の拡大・強化を図っています。特に、金融事業では、本年2月に、お客さまにスマホ・セントリックな決済、金融体験を総合的に提供する「スマートマネー構想」の始動を発表し、金融・決済事業の強化を目的に設立した中間金融持株会社「auフィナンシャルホールディングス株式会社」は本年4月に業務を開始しました。
海外における通信事業として、連結子会社のKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.がミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と共同で行っているミャンマー通信事業及びモンゴル国内の総合通信事業者MobiCom Corporation LLCは、それぞれLTEサービスの本格展開を進め、さらなる成長を目指していきます。これらの事業に加え、欧州中心のデータセンターをはじめとした法人向けICTビジネスにおいても、継続して収益力の強化を行い、グローバル事業の拡大を図っています。
これらの取り組みにより、連結営業利益は発足以来初の1兆円を突破、au経済圏流通総額は2兆円超へ成長しました。
■連結業績
(単位:百万円) | |||||||
2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 2019年3月期 自 2018年4月1日 至 2019年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | ||||
売上高 | 5,041,978 | 5,080,353 | 38,375 | 0.8 | |||
売上原価 | 2,821,803 | 2,867,413 | 45,610 | 1.6 | |||
売上総利益 | 2,220,175 | 2,212,940 | △7,235 | △0.3 | |||
販売費及び一般管理費 | 1,271,215 | 1,210,470 | △60,746 | △4.8 | |||
その他の損益(△損失) | 9,241 | 6,479 | △2,762 | △29.9 | |||
持分法による投資利益 | 4,592 | 4,780 | 188 | 4.1 | |||
営業利益 | 962,793 | 1,013,729 | 50,937 | 5.3 | |||
金融損益(△損失) | △7,950 | △6,430 | 1,520 | - | |||
その他の営業外損益 | 305 | 2,975 | 2,670 | 876.8 | |||
税引前当期利益 | 955,147 | 1,010,275 | 55,127 | 5.8 | |||
法人所得税費用 | 293,951 | 309,149 | 15,197 | 5.2 | |||
当期利益 | 661,196 | 701,126 | 39,930 | 6.0 | |||
親会社の所有者 | 572,528 | 617,669 | 45,141 | 7.9 | |||
非支配持分 | 88,668 | 83,457 | △5,211 | △5.9 |
当期の売上高は、モバイル通信料収入及び端末販売収入が減少したものの、「au経済圏」の最大化に向けエネルギー事業、株式会社イーオンホールディングス(以下「イーオンHD」)のグループ化、「Wowma!」及び「au WALLET Market」、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加、株式会社エナリス(以下「エナリス」)の新規連結子会社化、ミャンマー通信事業の収入の増加等により、5,080,353百万円(前年同期比 0.8%増)となりました。
営業利益は、エネルギー事業、「Wowma!」及び「au WALLET Market」、決済事業における費用の増加があったものの、売上高の増加等により、1,013,729百万円(同 5.3%増)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加等により、617,669百万円(同 7.9%増)となりました。
b.セグメント別の状況
パーソナルセグメント |
パーソナルセグメントでは、国内における個人のお客さまを対象に、主に「au」ブランドによるモバイル通信サービスの提供、様々な種類のスマートフォン・タブレット等マルチデバイスの販売に加え、インターネット、電話、TVサービスが快適にご利用いただける「auひかり」ブランドのFTTHサービスや、CATVサービス等の固定通信サービス、エネルギー、教育サービス等のライフデザインサービスを提供しています。また、当社グループが提供するマルチネットワークにWi-Fiを有機的に組み合わせることで、高品質な社会インフラを効率的に作り上げ、シームレスな通信環境を提供しています。
当期は、通信領域において、お客さまにご好評いただいている、データ通信のご利用方法に応じた料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」に加えて、新料金プランとして昨年8月よりコンテンツ利用料金とauスマートフォンの通信料金をセットにした「auフラットプラン25 Netflixパック」の提供を開始しました。また、お客さま基盤の拡大として、モバイルと固定のセット割サービス「auスマートバリュー」及びグループ会社によるMVNO事業の連携による「ID数」の拡大に努めています。
非通信領域では、「通信とライフデザインの融合」の取り組みとして、教育とICTを組み合わせた「EdTech※」を推進する「イーオンデジタルプロジェクトAEON DX」を始動させています。
今後もライフデザインサービスの拡充と「au経済圏」最大化の取り組みを継続し、新しい体験価値を創造していきます。
パーソナルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
※ Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、テクノロジーを使って教育にイノベーションを起こす取り組みのこと。
■業 績
(単位:百万円) | ||||||
2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 2019年3月期 自 2018年4月1日 至 2019年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |||
売上高 | 3,899,605 | 3,911,229 | 11,624 | 0.3 | ||
営業利益 | 732,931 | 756,298 | 23,366 | 3.2 |
当期の売上高は、モバイル通信料収入及び端末販売収入が減少したもののエネルギー事業収入の増加及びイーオンHDのグループ化により、3,911,229百万円(前年同期比 0.3%増)となりました。
営業利益は、モバイル通信料収入及び端末販売粗利が減少したもののエネルギー事業粗利の増加等により、756,298百万円(同 3.2%増)となりました。
ライフデザインセグメント |
ライフデザインセグメントでは、「通信とライフデザインの融合」を推進し、コマース・金融・決済・エンターテインメント等の様々なサービスを通してお客さまとの接点を拡大するとともに、生活のあらゆるシーン・ライフステージの段階に応じて、お客さまに最適なサービスを複合的に提供し、新しい体験価値を提案しています。
当期は、金融事業において、本年2月に、お客さまの生活の中心となったスマートフォンを預金、決済、投資、ローン、保険といったあらゆるサービスの入り口とし、お客さまにスマホ・セントリックな決済、金融体験を総合的に提供する「スマートマネー構想」の始動を発表しました。au WALLET チャージ残高とau WALLET ポイント残高の合計相当額が1,000億円以上で2,000万超のお客さまが保有する「au WALLET」を軸に、貯める、支払う、殖やす、借りる、備える、といったお客さまのお金にかかわる活動をワンストップで提供することで、新たな体験価値を提案していきます。また、本年4月には、スマホ決済サービス「au PAY」を開始し、キャッシュレス社会への変革を推進しています。
「auスマートパスプレミアム」では、シニア向けや学生向けの特典強化に重点的に取り組みました。その結果、当期末には、会員数が「auスマートパス」会員数全体の3分の1を超える700万会員を突破しました。これからもサービスの満足度を向上させ、お客さまとの接点を拡大していきます。
「エデュテインメント※1」や「地方創生」への取り組みについても推進してきました。本年3月には、5G、IoTなど先端技術を融合したエデュテインメントの進化と地方展開を通じた地域の発展を目的として、「Kids ジョブチャレンジ 2019 in 平戸~アウト オブ キッザニア~」を長崎県平戸市で開催しました。
5G時代を見据えた新しい体験価値の創造にあたっては、「ジャパネット杯 春の高校バレー 第71回全日本バレーボール高等学校選手権大会」や公益財団法人日本サッカー協会が主催する「キリンチャレンジカップ2019」において、XR技術※2を活用することでより楽しくより快適で臨場感のある新たな観戦体験を提供しました。また、KDDI Open Innovation Fund 3号を通じて、スタートアップ企業やパートナー企業との事業共創への取り組みを推進するとともに、「KDDI ∞ Labo」では、本年3月に、5G時代の新たな価値創造を行う「5Gプログラム」の開始を発表しました。
エネルギー事業では、本年2月に関東エリアにおいて、東京電力エナジーパートナー株式会社との業務提携によるご家庭向けの電気・ガス販売を開始しました。
ライフデザインセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
※1 エデュケーション(教育)と、エンターテインメント(娯楽)を組み合わせた造語で、楽しみながら学ぶこと。
※2 AR(拡張現実)/MR(複合現実)/VR(仮想現実)などの技術の総称
■業 績
(単位:百万円) | ||||||
2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 2019年3月期 自 2018年4月1日 至 2019年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |||
売上高 | 521,736 | 579,374 | 57,638 | 11.0 | ||
営業利益 | 104,045 | 112,832 | 8,786 | 8.4 |
当期の売上高は、「auスマートパスプレミアム」の収入の増加、「Wowma!」及び「au WALLET Market」の収入の増加、「au WALLET プリペイドカード」及び「au WALLET クレジットカード」などの決済事業の収入等の増加に加え、エナリスの新規連結子会社化により、579,374百万円(前年同期比 11.0%増)となりました。
営業利益は、「Wowma!」及び「au WALLET Market」や決済事業等の費用が増加したものの、売上高の増加により、112,832百万円(同 8.4%増)となりました。
*当連結会計年度より当セグメントの名称を「バリュー」から「ライフデザイン」へ変更しております。
ビジネスセグメント |
ビジネスセグメントでは、大企業から中小企業まで幅広い法人のお客さまを対象に、スマートフォン・タブレット等のモバイル端末の提供や、ネットワーク・アプリケーション・クラウド型サービス等の多様なソリューションを提供しています。また、中小企業のお客さまについては、連結子会社のKDDIまとめてオフィスグループによる地域に密着したサポート体制を全国規模で構築しています。
当期は、さまざまなIoT機器の通信接続からデータ活用サービス、各国の法規制等に係る手続きまでワンストップにて提供するKDDI「IoT世界基盤」の商用トライアル受付を本年5月より開始することを発表しました。このKDDI「IoT世界基盤」の提供により、企業のIoTビジネスのグローバル展開における課題を解決し、お客さまのビジネス変革と事業拡大を強力にサポートしていきます。
また、スマートドローン※1を安心・安全に飛行制御する基盤システムとなるプラットフォームを活用した用途別ソリューションを本年6月より提供開始することを発表しました。このプラットフォームを活用し、広域監視、構造物点検等において、お客さまの業務効率化や課題解決に貢献します。
その他、アジャイル企画開発手法「スクラム※2」の導入支援により法人のお客さまのイノベーションを実現することを目的として、本年1月に、Scrum Inc.、株式会社永和システムマネジメントとの合弁で、Scrum Inc. Japan株式会社を設立しました。
今後も、法人のお客さまのビジネスの発展・拡大に一層貢献し、お客さまから真の事業パートナーとしてお選びいただけることを目指して、事業の変革に取り組んでいきます。
ビジネスセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
※1 KDDIの通信ネットワークを利用することで、より長距離で安全な運用を可能としたドローンのこと。
※2 Scrum Inc. の創業者 Jeff Sutherland博士らが考案した、お客さまからのフィードバックに基づき計画と開発を短い期間で繰り返 し、新しい機能を次々とリリースしていく、アジャイル企画開発手法として世界で最も普及しているイノベーション手法
■業 績
(単位:百万円) | ||||||
2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 2019年3月期 自 2018年4月1日 至 2019年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |||
売上高 | 749,971 | 796,863 | 46,892 | 6.3 | ||
営業利益 | 84,467 | 103,992 | 19,524 | 23.1 |
当期の売上高は、ソリューション収入やエネルギー事業収入等の増加により、796,863百万円(前年同期比 6.3%増)となりました。
営業利益は、ソリューション機器原価や通信設備使用料等が増加したものの、売上高の増加により、103,992百万円(同 23.1%増)となりました。
グローバルセグメント |
グローバルセグメントでは、ミャンマーやモンゴルをはじめとする海外のコンシューマビジネスに積極的に取り組むとともに、法人のお客さまに対しては、データセンター・ネットワーク・クラウド・IoT等のICTソリューションを提供し、お客さまのビジネスの発展・拡大への貢献を目指しています。
モンゴル通信事業においては、データ容量の追加されたお得なチャージ型プリペイドカードを本年2月に発売開始しました。また、SNS・ゲーム・ビデオ・音楽の使い放題、聞き放題パッケージを追加しました。今後もお客さまのデータ需要に合わせたサービスを展開していきます。
ICTソリューション事業においては、KDDIシンガポールが、東南アジア諸国に事業展開する法人のお客さま向けに、ネットワーク、セキュリティ、RPA (Robotic Process Automation)、IoTなどの各ソリューションを一元的に提供する「KDDI GX (Global Exchange) Platform」を、本年1月より開始しました。これにより、お客さまの東南アジア諸国における事業拡大を更に強力にサポートします。
また、KDDI上海は、RPA業界のリーディングカンパニーUiPath社より、日系企業として中国大陸初のゴールドパートナーに認定されました。ゴールドパートナーは、UiPath RPAプラットフォームの機能や技術について十分な知識を有した技術者を社内に抱え、導入支援ができるトップレベルのソリューション事業者に与えられる資格です。KDDI上海は、「UiPath RPAプラットフォーム」の提供により、多くの企業の業務効率化に貢献しております。
グローバルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりであります。
■業 績
(単位:百万円) | ||||||
2018年3月期 自 2017年4月1日 至 2018年3月31日 | 2019年3月期 自 2018年4月1日 至 2019年3月31日 | 比較増減 | 増減率 (%) | |||
売上高 | 248,702 | 208,790 | △39,912 | △16.0 | ||
営業利益 | 31,907 | 34,368 | 2,461 | 7.7 |
当期の売上高は、ミャンマー通信事業の収入の増加や、「TELEHOUSE」のデータセンター事業収入の増加があったものの、採算性の低い事業の整理による収入減少等により、208,790百万円(前年同期比 16.0%減)となりました。
営業利益は、主にミャンマー通信事業及びデータセンター事業による利益創出や、上記事業整理に伴うコストの減少により、34,368百万円(同 7.7%増)となりました。
なお、KDDI SUMMIT GLOBAL SINGAPORE PTE. LTD.ならびに、同子会社であるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.は、決算体制が整ったことから、当連結会計年度より報告期間を統一しております。
*「(1)当期の経営成績の概況」に記載している社名及び商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。
*2020年3月期より、「パーソナル」、「ライフデザイン」、「ビジネス」、「グローバル」で区分されていた4つの報告セグメントを、マネジメントアプローチに基づき、経営資源の配分・業績評価の単位をベースに集約し、「パーソナル」、「ビジネス」の2つの報告セグメントに再編いたします。
c. 財政状態の状況
2018年3月期 | 2019年3月期 | 比較増減 | |
資産合計(百万円) | 6,574,555 | 7,330,416 | 755,861 |
負債合計(百万円) | 2,443,298 | 2,717,484 | 274,186 |
資本合計(百万円) | 4,131,257 | 4,612,932 | 481,675 |
親会社の所有者に帰属する持分(百万円) | 3,773,703 | 4,183,492 | 409,789 |
親会社所有者帰属持分比率(%) | 57.4 | 57.1 | △0.3 |
一株当たり親会社所有者帰属持分(円) | 1,568.84 | 1,779.41 | 210.57 |
有利子負債残高(百万円) | 1,118,616 | 1,275,711 | 157,095 |
(資産)
資産は、繰延税金資産が減少したものの、契約コスト、営業債権及びその他の債権等が増加したことにより、前連結会計年度末と比較し、755,861百万円増加し、7,330,416百万円となりました。
(負債)
負債は、その他の非流動負債ならびにその他の流動負債が減少したものの、借入金及び社債、契約負債等が増加したことにより、前連結会計年度末と比較し、274,186百万円増加し、2,717,484百万円となりました。
(資本)
資本は、利益剰余金等の増加により、4,612,932百万円となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末の57.4%から57.1%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円) | |||
2018年3月期 | 2019年3月期 | 比較増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,061,405 | 1,029,607 | △31,799 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △633,847 | △714,578 | △80,731 |
フリー・キャッシュ・フロー ※ | 427,558 | 315,028 | △112,530 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △453,168 | △310,951 | 142,217 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △163 | △314 | △151 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | △25,773 | 3,763 | 29,536 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 226,607 | 200,834 | △25,773 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 200,834 | 204,597 | 3,763 |
※ フリー・キャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益1,010,275百万円、減価償却費及び償却費562,402百万円、法人所得税の支払290,689百万円、営業債権及びその他の債権の増加271,723百万円等により1,029,607百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出399,531百万円、無形資産の取得による支出202,607百万円、関連会社株式の取得による支出83,799百万円等により714,578百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債発行及び長期借入による収入456,000百万円、社債償還及び長期借入返済による支出302,151百万円、配当金の支払227,700百万円、自己株式の取得による支出150,000百万円等により、310,951百万円の支出となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較し、3,763百万円増加し、204,597百万円となりました。
③ 営業実績
当連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
パーソナル | 3,911,229 | 0.3 |
ライフデザイン | 579,374 | 11.0 |
ビジネス | 796,863 | 6.3 |
グローバル | 208,790 | △16.0 |
その他 | 99,180 | △5.8 |
セグメント間の内部売上高 | △515,082 | - |
合計 | 5,080,353 | 0.8 |
(注)1.金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループにおける重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
(売上高)
モバイル通信料収入及び端末販売収入が減少したものの、「au経済圏」の最大化に向けたエネルギー事業、株式会社イーオンホールディングスのグループ化、「Wowma!」及び「au WALLET Market」、決済事業などのライフデザイン事業の拡大による収入の増加、株式会社エナリスの新規連結子会社化、ミャンマー通信事業の収入の増加等により5,080,353百万円(前年同期比 0.8%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 25.売上高」をご参照ください。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
電力事業原価が増加したものの、販売手数料・ポイント費用や端末販売コストの減少により4,077,882百万円(同 0.4%減)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 26.費用の性質別内訳」をご参照ください。
(その他の収益及びその他の費用)
雑収入の減少等により、6,479百万円の利益(同 29.9%減)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 27.その他の収益及びその他の費用」をご参照ください。
(持分法による投資利益)
持分法適用関連会社の株式会社カカクコムにおける持分法による投資利益の増加等により、4,780百万円(同 4.1%増)となりました。
(営業利益)
以上の結果、営業利益は1,013,729百万円(同 5.3%増)となりました。なお、営業利益率は、20.0%(同 0.9ポイント増)となりました。
(金融収益及び金融費用)
支払利息8,694百万円、受取配当金2,279百万円の計上等により、6,430百万円の損失となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 28.金融収益及び金融費用」をご参照ください。
(その他の営業外損益)
段階取得に係る差益2,999百万円の計上等により、2,975百万円の利益となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29.その他の営業外損益」をご参照ください。
(法人所得税費用)
課税所得の増加等の影響により309,149百万円(同 5.2%増)となりました。なお、2019年3月期の法人税等負担率は30.6%となりました。法人所得税費用に関する詳細については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.繰延税金及び法人所得税」をご参照ください。
(非支配持分に帰属する当期利益)
主にUQコミュニケーションズ株式会社の利益減少等の影響により、83,457百万円(同 5.9%減)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
上記の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は617,669百万円(同 7.9%増)となりました。
なお、報告セグメントの売上と営業利益の概況については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社グループは、運転資金及び設備投資については、自己資金及び借入金等により資金調達することとしております。このうち、借入金等による資金調達に関しては、通常の運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金は固定金利の長期借入金及び社債で調達することを基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等を含む有利子負債の残高は1,275,711百万円、現金及び現金同等物の残高は204,597百万円となっております。
流動性リスクとその管理方法につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記32.金融商品」に記載しております。
c.経営上の財務目標の達成状況について
当社グループは、事業環境の変化に迅速に対応しながら、持続的な成長を実現していくため、2016年度からの3年間における中期目標を策定しており、利益成長目標として、「連結営業利益 CAGR(年平均成長率) 7%」を掲げておりました。
当連結会計年度においては、「国内通信事業の持続的成長」に加えて、新たな成長軸の確立に向けて「au経済圏の最大化」と「グローバル事業の積極展開」を進めたことにより、利益成長は概ね目標通り遂行し連結営業利益は発足以来初の1兆円を突破しました。
今後は営業利益の持続的な成長を目指し、EPSについては2024年度1.5倍(2018年度比)の実現を目指します。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
① 連結の範囲
ワイヤレスブロードバンドサービスを行っているUQコミュニケーションズ(株)(以下「UQ」)については、議決権の32.3%を所有しているため、日本基準においては持分法を適用しておりました。一方、当社はUQの筆頭株主であること、UQの取締役会の構成員の過半数であり、代表権は当社からの取締役が有していること、また、UQの事業活動は当社に大きく依存していることから、当社は取締役会等を通じてUQにパワーを有しております。よって、IFRSの適用にあたり、UQ設立当初から実質的に支配していると判定し、子会社として連結しております。
上記の影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて資産合計が39,257百万円増加、負債合計が52,400百万円減少、資本合計が91,657百万円増加しております。また、売上高が34,479百万円増加、営業利益が48,389百万円増加しております。
② 収益認識
当社グループが携帯端末の代理店に対して支払う手数料のうち、携帯端末の販売に関する部分について、日本基準では発生時に費用として認識しておりましたが、IFRSでは携帯端末の販売時点で、手数料の将来発生見込額を収益から控除しております。なお、これに伴い、期末の棚卸資産の評価にあたって、IFRSでは手数料の将来発生見込額を正味実現可能価額の金額に反映させております。
当社グループがお客さまから受け取る対価について、日本基準では総額で表示している取引のうち、当社グループが契約の当事者として財またはサービスの提供に主たる責任を有しているか、在庫リスクを負っているか、価格決定権を有しているか等を総合的に勘案し、お客さまから受け取る対価の総額から第三者に対する手数料その他の支払額を差し引いた純額で表示することが適切な取引については、IFRSでは純額で表示しております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上高が137,275百万円減少し、売上原価、販売費及び一般管理費が141,267百万円減少しております。
③ のれん(関連会社に対する投資を含む)
当社グループは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的にのれんを償却しておりましたが、IFRSではのれんを償却せずに毎期減損テストを行っております。同様に、持分法で会計処理されている投資に関連するのれんは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的に償却しておりましたが、IFRSでは規則的な償却はせずにのれんを含む関連会社に対する投資全体について、減損している客観的証拠がある場合、減損テストを実施しています。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が32,258百万円減少しております。
④ 有形固定資産の減価償却
有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、日本基準では主として定率法を採用しておりましたが、IFRSでは減価償却方法の見直しを行い、定額法を採用しております。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて売上原価、販売費及び一般管理費が5,064百万円減少しております。