有価証券報告書-第44期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/20 10:37
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135項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
①業績等の概要
(経済及び業界の環境)
当連結会計年度のわが国経済は、足踏みがみられますが緩やかに回復しております。一方で世界的な金融引き締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念等、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクがあり、先行き不透明な状況が続いております。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、日銀のマイナス金利解除に伴う金融市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
企業収益は総じてみれば改善しており、事業拡大や競争力強化を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)ニーズは引き続き旺盛であり、顧客企業におけるシステム投資につきましては、堅調に推移しました。
(企業集団の営業の経過及び成果)
当社グループは、2021-2025年度中期事業方針(2021年4月公表)に基づき、「デジタル製造業」「プラットフォーマー支援」「デジタルワークプレースソリューション」「ITアウトソーシング」の4領域について事業成長を牽引する「注力領域」として定め、お客様のDX推進に伴うニーズを最大限に獲得し、事業拡大に取り組んでおります。
お客様のDX推進への取り組みとして、日本製鉄㈱向けに、数理最適化技術を応用した業務改革を実現する生産計画システムを共同で開発し本格運用を開始したほか、電力会社の発電所構内に、映像や音声等を活用した現場の遠隔監視による保守・点検業務等の効率化及び技術継承の円滑化を可能とする、大容量データ送受信システムであるローカル5Gシステムや、食品業界向けに当社の有するサプライチェーンマネジメントクラウド「PPPlan(ピーピープラン)」を活用した需給管理システムを導入いたしました。このほか、金融機関向けに統合経営管理プラットフォームサービス「ConSeek(コンシーク)」の提供や、保険会社の基幹システムにおけるモダナイゼーションプロジェクトを開始いたしました。
これらに加え、当社が知見を蓄積してきたAI領域における生成AI/ChatGPT活用支援サービスや、基幹系システムのクラウドリフトを推進する「Oracle Cloud VMware Solution」トータル支援サービスを開始したほか、仮想デスクトップサービス「M³DaaS@absonne(エムキューブダース・アット・アブソンヌ)*1」や、電子取引・契約サービス「CONTRACTHUB(コントラクトハブ)*2」の拡販に引き続き取り組み、注力領域の成長に努めております。
成長に向けた投資として、AIスタートアップ企業である㈱エクサウィザーズや、デジタル製造業領域における日鉄テックスエンジ㈱との業務提携を行ったほか、日鉄ソリューションズビズテック㈱の当社グループ会社化及び㈱東邦システムサイエンスとの資本業務提携に向けた契約を締結する等、お客様のDXニーズへの対応力強化を図っております。
*1.「DaaS」の「市場占有率」にて10年連続で1位を獲得
(株式会社富士キメラ総研「2023クラウドコンピューティングの現状と将来展望」より)
*2.累計文書登録件数が2023年4月末に3,000万件を突破、電子契約サービス市場の従業員規模1,000名以上において7年連続シェアNo.1を獲得
(株式会社アイ・ティ・アール「ITR Market View:ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/電子請求書サービス/電子契約サービス市場2023」より)
サステナビリティ経営の推進にあたっては、当社が目指す社会的存在意義であるパーパスを起点に価値創造プロセスを整理し、5つのマテリアリティを定め、取り組んでおります。当社はD&I推進をはじめ、誰もが活き活きと働きがいをもって活躍できる組織風土醸成に取り組んでおり、昨年に引き続きLGBTQ+等の性的マイノリティに関する取り組みの評価指標である「PRIDE指標2023」で最高位の「ゴールド」を受賞しました。また、人的資本可視化サービス「ソシキノミライ 人的資本シリーズ」を提供開始しており、テクノロジーを活用した人的資本経営実践の支援も行っております。この他、島根県出雲市及び同県内の企業と共同で地方の高度ITエンジニアの育成と雇用機会創出を推進するインキュベーションラボ「GRID BOX」の設立や、当社が運営するプログラミング学習サイト「K3Tunnel(ケイサントンネル)」を活用した小中学校への出張授業が累計200回を超える等、豊かな社会づくりに向けてESGの観点から様々な事業活動に取り組んでおります。これらの取り組みの結果、ESG投資のための株価指数である「FTSE4Good Index Series」「FTSE Blossom Japan Index」及び「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」構成銘柄に引き続き選定されました。
当連結会計年度の売上収益は、メガバンクや日本製鉄㈱向けの増に加え、デジタルワークプレースソリューションやクラウド及びオラクルビジネスが好調であったことから、310,632百万円と前連結会計年度(291,688百万円)と比べ18,944百万円の増収となりました。営業利益は、営業力強化に加え、採用・教育等の人的資本強化策や、社内基盤整備等を推進したことにより販売費及び一般管理費が増加したものの、売上総利益率の改善も含めた売上総利益の増があったことから、35,001百万円と前連結会計年度(31,738百万円)と比べ3,263百万円の増益となりました。
当連結会計年度をサービス分野別(ビジネスソリューション、コンサルティング&デジタルサービス)に概観しますと、次のとおりであります。
(ビジネスソリューション)
ビジネスソリューションにつきましては、当連結会計年度の売上収益は231,516百万円と前連結会計年度(217,489百万円)と比べ14,026百万円の増収となりました。
産業・鉄鋼
産業・鉄鋼分野向けにつきましては、日本製鉄㈱向けの増により、売上収益は前連結会計年度と比べ増収となりました。
流通・プラットフォーマー
流通・プラットフォーマー分野向けにつきましては、売上収益は前連結会計年度と比べ増収となりました。
金融
金融分野向けにつきましては、メガバンク向けの増により、売上収益は前連結会計年度と比べ増収となりました。
(コンサルティング&デジタルサービス)
コンサルティング&デジタルサービスにつきましては、デジタルワークプレースソリューションやクラウド及びオラクルビジネスが好調であったことから、当連結会計年度の売上収益は、79,116百万円と前連結会計年度(74,198百万円)と比べ4,918百万円の増収となりました。
※売上収益に関する表示方法の変更について
当連結会計年度より、当社グループの中期事業方針の戦略に則り、顧客・マーケット及び主たるサービスの性質を勘案して、売上収益の分解を従来の「業務ソリューション」、「サービスソリューション」から、「ビジネスソリューション」、「コンサルティング&デジタルサービス」に変更しております。
なお、前連結会計年度は、当該変更を反映して作成したものを開示しております。
② 経営成績の分析
1)売上収益
当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度の291,688百万円に対し6.5%増収の310,632百万円となりました。サービス分野別の状況は以下のとおりであります。
ビジネスソリューションにつきましては、当連結会計年度の売上収益は231,516百万円と前連結会計年度(217,489百万円)と比べ14,026百万円の増収となりました。
コンサルティング&デジタルサービスにつきましては、当連結会計年度の売上収益は、79,116百万円と前連結会計年度(74,198百万円)と比べ4,918百万円の増収となりました。
2)売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度の225,752百万円に対し5.8%増加し238,790百万円となりました。その結果、売上総利益率は、前連結会計年度の22.6%に対し0.5%向上の23.1%となりました。
販売費及び一般管理費は、営業力強化、採用・教育、社内基盤整備他の実行により前連結会計年度の33,007百万円に対し11.0%増加し36,634百万円となりました。
3)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用
当連結会計年度の持分法による投資損益、その他の収益及びその他の費用は、減損損失が減少したこと等により、前連結会計年度の△1,189百万円に対し△205百万円となりました。
4)営業利益
当連結会計年度の営業利益は、販売費及び一般管理費が増加したものの、売上総利益の増益により、前連結会計年度の31,738百万円に対し10.3%増加し35,001百万円となりました。
5)金融損益
金融収益と金融費用を合わせた当連結会計年度の金融損益は、投資事業組合運用損が増加したものの、有価証券評価益が増加したこと等により、前連結会計年度の362百万円に対し436百万円となりました。
6)税引前利益
当連結会計年度の税引前利益は、前連結会計年度の32,101百万円に対し10.4%増加し35,437百万円となりました。
7)法人所得税費用
当連結会計年度の法人所得税費用は、前連結会計年度の9,385百万円に対し9.5%増加し10,280百万円となりました。
8)親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度の22,000百万円に対し10.2%増加し24,241百万円となりました。また、基本的1株当たり当期利益は、前連結会計年度の240.46円に対し10.2%増加し264.96円となりました。
③生産、受注及び販売の状況
当社グループは情報サービス単一セグメントでありますが、サービス分野別の当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の生産実績、受注実績及び販売実績を示すと、次のとおりであります。
1)生産実績
(単位:百万円)
サービス分野別の名称生産高前年比
ビジネスソリューション231,5286.5%
コンサルティング&デジタルサービス82,8248.9%
合計314,3537.1%

(注)金額は販売価格によっております。
2)受注実績
(単位:百万円)
サービス分野別の名称受注高前年比受注残高前年比
ビジネスソリューション239,0524.7%96,4128.5%
コンサルティング&
デジタルサービス
81,404△4.5%59,1254.0%
合計320,4572.2%155,5386.7%

3)販売実績
(単位:百万円)
サービス分野別の名称販売高前年比
ビジネスソリューション231,5166.4%
コンサルティング&デジタルサービス79,1166.6%
合計310,6326.5%

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
相手先前連結会計年度
(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
販売高割合(%)販売高割合(%)
日本製鉄㈱57,91219.962,50920.1


(2) 財政状態
(財政状態計算書)
①資産
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末319,908百万円から54,728百万円増加し、374,637百万円となりました。主な内訳は、その他の金融資産の増加24,548百万円、使用権資産の増加9,861百万円、その他の流動資産の増加9,440百万円、契約資産の増加4,103百万円等であります。
②負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末112,108百万円から17,744百万円増加し、129,853百万円となりました。主な内訳は、リース負債の増加9,762百万円、契約負債の増加8,241百万円、繰延税金負債の増加5,591百万円、退職給付に係る負債の減少△6,211百万円等であります。
③資本
当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末207,800百万円から36,983百万円増加し、244,783百万円となりました。主な内訳は、当期利益25,157百万円、その他の包括利益19,422百万円、配当金の支払△7,319百万円等であります。その結果、親会社所有者帰属持分比率は63.2%となります。
(3) キャッシュ・フロー
(キャッシュ・フロー計算書)
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、103,975百万円となりました。前連結会計年度の現金及び現金同等物の増減額が5,616百万円であったのに対し、当連結会計年度の現金及び現金同等物の増減額は2,652百万円となりました。各活動区分別には以下のとおりであります。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
前連結会計年度は、税引前利益32,101百万円、減価償却費及び償却費12,620百万円、営業債権及びその他の債権の増減額△9,848百万円、契約資産の増減額△2,449百万円、棚卸資産の増減額△1,846百万円、営業債務及びその他の債務の増減額4,542百万円、法人所得税等の支払額△10,912百万円等により26,032百万円となりました。一方、当連結会計年度は、税引前利益35,437百万円、減価償却費及び償却費12,050百万円、営業債権及びその他の債権の増減額△2,728百万円、契約資産の増減額△4,086百万円、棚卸資産の増減額△3,608百万円、営業債務及びその他の債務の増減額6,840百万円、退職給付信託の設定額△6,596百万円、法人所得税等の支払額△11,968百万円等により26,154百万円となりました。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
前連結会計年度は、有形固定資産及び無形資産の取得による支出△4,400百万円、その他の金融資産の取得による支出△6,942百万円、その他の金融資産の売却及び償還による収入5,812百万円等により△5,635百万円となりました。一方、当連結会計年度は、有形固定資産及び無形資産の取得による支出△3,122百万円、その他の金融資産の取得による支出△6,623百万円、その他の金融資産の売却及び償還による収入9,216百万円、関係会社株式取得のための前払金の支出△8,143百万円等により△8,570百万円となりました。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
前連結会計年度は、リース負債の返済による支払額△8,189百万円、配当金の支払額△6,496百万円等により△14,943百万円となりました。一方、当連結会計年度は、リース負債の返済による支払額△7,444百万円、配当金の支払額△7,319百万円等により△15,078百万円となりました。
(資本の財源、資金の流動性に係る情報)
①基本方針
当社グループは将来にわたり競争力を維持強化し、企業価値を高めていくことが重要と考えております。
そのため、進展するDXニーズの着実な取り込み、高付加価値事業と総合的な企業価値の持続的向上、優秀な人材の獲得・育成の一層の強化、内部統制・リスクマネジメント徹底の継続等による事業成長に伴う資金需要及び広域災害等の事業リスクに備えて内部留保を確保するとともに、利益配分につきましては株主の皆様に対する適正かつ安定的な配当等を行うことを基本としております。
配当につきましては、連結業績に応じた利益還元を重視し連結配当性向30%を目安といたします。
②資金需要及び資金調達の主な内容
当社グループの主要な資金需要は、材料費、外注費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備投資等であります。これらの資金需要につきましては自己資金により充当しております。
手許の運転資金につきましては、当社及び一部の国内子会社において当社のキャッシュマネージメントシステム(CMS)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理をしております。また、当社は、日本製鉄㈱のCMSを利用しており、当連結会計年度末における預入額96,131百万円を現金及び現金同等物に含めて表示しております。
突発的な資金需要に対しては、大手各行及び親会社である日本製鉄㈱に対し当座借越枠を確保することにより、流動性リスクに備えております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
その作成には、経営者による見積り、判断並びに仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債、及び開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。これらの見積りにつきましては過去の実績等、連結財務諸表及び財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるためこれらの見積りと異なる場合があります。
特に、受注損失引当金につきましては重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。