有価証券報告書-第39期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/18 11:02
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【項目】
113項目
本項における将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当事業年度におけるわが国の経済は、海外経済の先行きに不透明感が増すなか、企業収益の改善に足踏みがみられたものの、雇用・所得環境の改善が継続し、個人消費も持ち直すなど緩やかな回復が続きました。
住宅市場につきましては、政府の住宅取得支援策や低水準な住宅ローン金利が継続し、新設住宅着工戸数は前年同期並みで推移しました。住宅ローン市場におきましては、借換需要が引き続き低位で推移するなか、金融機関は新築・中古物件の案件を獲得するため、多様な商品やサービスの提供および推進活動を継続しました。
このような事業環境のもと、当社は中期経営計画「Best route to 2020」の2年目として「事業規模の拡大」、「企業価値の向上」ならびに「事業領域の拡大」の課題を中心に各種施策に取り組んでまいりました。
事業規模の拡大におきましては、既存提携金融機関との関係強化および未提携金融機関との新規契約締結に取り組んでまいりました。既存提携金融機関との関係強化につきましては、申込データ連携システムおよびインターネットを活用した申込スキームの提案活動に努めたほか、取引深耕のため当社保証商品についての説明会や営業店への訪問活動を継続しました。また、例年ご好評いただいておりますキャンペーンを実施し、住宅ローン獲得に向けた営業推進にお役立ていただきました。未提携金融機関との新規契約締結におきましては、継続的な営業活動を展開した結果、当事業年度において銀行3行、信用組合1組合、JA6組合の合計10機関と契約締結に至りました。
企業価値の向上におきましては、働き方改革の推進や新人事制度、新評価制度の導入および浸透など、活力ある企業風土の醸成に努めました。また、社内業務のペーパーレス化の推進や、RPA(Robotic Process Automation)の活用など業務効率化を図りました。
事業領域の拡大におきましては、債権回収会社(サービサー)の株式を取得し子会社化したほか、スタートアップ企業2社とAI・ブロックチェーン技術を活用した新たな審査手法の研究を開始いたしました。
2018年3月期2019年3月期対前期増減率(%)
営業収益39,599百万円43,204百万円9.1
営業利益31,179百万円34,229百万円9.8
経常利益31,974百万円35,169百万円10.0
当期純利益22,052百万円24,134百万円9.4

こうした取り組みの結果、当事業年度の営業収益は、新規提携金融機関の増加や既存提携金融機関の利用率向上により保証債務残高が堅調に推移し増収となりました。
営業費用につきましては、代位弁済の発生が引き続き低位に推移したことにより、債務保証損失引当金繰入額は減少となりました。また、貸倒引当金繰入額は回収が順調に進んだことにより戻入が発生した結果、営業利益は増益となりました。
営業外収益は、有価証券利息が増加した結果、経常利益は増益となりました。
最終的に営業収益、営業利益、経常利益、当期純利益は、それぞれ過去最高の数値を更新しました。
なお、当社は信用保証事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
②財政状態の状況
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べて9.2%増加し、321,232百万円となりました。
流動資産は、前事業年度末に比べて7.0%減少し、188,741百万円となりました。これは現金及び預金、金銭の信託が減少したことなどによります。
固定資産は、前事業年度末に比べて45.3%増加し、132,490百万円となりました。これは投資有価証券、長期預金が増加したことなどによります。
負債合計は、前事業年度末に比べて4.4%増加し、194,233百万円となりました。
流動負債は、前事業年度末に比べて3.6%増加し、30,406百万円となりました。これは前受収益、未払法人税等が増加したことなどによります。
固定負債は、前事業年度末に比べて4.6%増加し、163,826百万円となりました。これは長期前受収益が増加したことなどによります。
純資産合計は、前事業年度末に比べて17.5%増加し、126,998百万円となりました。これは、利益剰余金が増加したことなどによります。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べ6,875百万円減少し、70,992百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は32,812百万円(前年同期は34,911百万円の資金増加)となりました。主な増加要因は税引前当期純利益34,844百万円、長期前受収益の増加額7,170百万円等であります。一方、主な減少要因は法人税等の支払額10,174百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は34,182百万円(前年同期は29,176百万円の資金減少)となりました。主な減少要因は定期預金の預入による支出115,250百万円、投資有価証券の取得による支出41,159百万円、有価証券の取得による支出10,000百万円等であります。一方、主な増加要因は定期預金の払戻による収入113,150百万円、有価証券の売却及び償還による収入13,920百万円、金銭の信託の解約及び配当による収入5,032百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は5,505百万円(前年同期は4,269百万円の資金減少)となりました。主な減少要因は配当金の支払額5,508百万円等であります。
当社における運転資金の需要は、代位弁済金の支払ならびに販売費及び一般管理費等の営業費用となります。当社のビジネスモデルにおいては、保証引受の役務と同時に対価である保証料を収受することが多く、必要資金の流動性及び源泉の安定的確保が可能であることから、運転資金については自己資金にて対応することとしております。
④生産、受注及び販売の状況
a)生産実績
該当事項はありません。
b)受注状況
該当事項はありません。
c)販売実績
当事業年度の販売実績をセグメント別に示すと、次の通りであります。
セグメント名金額(百万円)前期比(%)
信用保証事業43,204109.1

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針および見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成しております。財務諸表の作成にあたり、資産・負債の残高および収益・費用の金額に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績や現在の状況ならびに現在入手可能な情報を総合的に勘案し、その時点で最も合理的と考えられる見積りを採用しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況」中、「1(1)財務諸表」の「重要な会計方針」に記載しております。
②経営成績の分析
財政状態およびキャッシュ・フローに関する分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
各種指標については以下のとおりです。
a)受付件数、実行件数ならびに新規保証実行金額
民間金融機関保証における受付件数、実行件数、新規保証実行金額につきましては、提携金融機関の利用率向上により順調に推移しております。
民間金融機関住宅ローン保証における受付件数、実行件数、新規保証実行金額の推移
(単位:件、百万円)
2017年3月期2018年3月期2019年3月期
受付件数245,758260,343284,552
実行件数71,77768,07368,311
新規保証実行金額1,689,7251,666,3151,722,629

b)保証債務残高
保証債務残高および保有契約件数は、民間金融機関保証における住宅ローン保証が堅調に推移していることから、増加を続けております。これは、他社と差別化した保証商品のラインナップや多様な保証料設定を実施した結果と捉えております。
なお、公的住宅融資保証およびその他に含まれる家賃保証につきましては、新規保証の取扱いを停止しており、保証債務残高および保有契約件数は減少しております。
イ.保証債務残高および保有契約件数の推移
(単位:件、百万円)
2017年3月末2018年3月末2019年3月末
区分件数金額件数金額件数金額
合計679,79410,890,638726,48311,789,304772,81812,717,625
民間金融機関656,56010,789,256705,67411,702,638754,31512,643,809
住宅ローン634,18310,715,885679,73011,630,848725,22612,574,439
アパートローン298552880327717
教育ローン254236184162134117
カードローン7,67744411,32775314,9711,180
その他14,41771,83414,40570,07013,95767,353
公的機関21,71499,28319,54584,80917,52172,242
その他1,5202,0981,2641,8569821,573


ロ.民間金融機関住宅ローン保証における業態別保証債務残高および保有契約件数の推移
(単位:件、百万円)
2017年3月末2018年3月末2019年3月末
区分件数金額件数金額件数金額
民間金融機関634,18310,715,885679,73011,630,848725,22612,574,439
銀行198,5123,691,789230,3154,392,186265,5745,185,779
信用金庫351,2175,743,469361,3885,901,003368,9756,010,834
信用組合32,749419,21233,623431,29534,384444,258
JA50,527843,92953,131887,25454,953913,249
JF・労働金庫・その他1,08016,7801,18418,5151,25419,784
未提携987048959386533

(注) 1.JAとは農業協同組合、信用農業協同組合連合会を指します。
2.JFとは漁業協同組合、信用漁業協同組合連合会を指します。
3.未提携とは、合併や破綻した金融機関が保有していた当社保証付きの住宅ローン債権を引き継ぎ、当社と保証基本契約が未締結の金融機関を指します。
c)提携金融機関数
当社は外部の保証機関を求める金融機関等のニーズに応えるべく、多数の金融機関と保証基本契約を締結してまいりました。
系列保証会社への一極集中からリスク分散を図ることなどを目的とした外部保証会社導入の検討が進み、当社に対するニーズは高まっております。こうした状況を踏まえ、当社は、保証シェアの拡大を図るべく未提携金融機関へ新規契約締結に向けたアプローチを継続しております。
金融機関業態別提携金融機関数の推移
(単位:機関)
2017年3月末2018年3月末2019年3月末
銀行889093
信用金庫253250248
信用組合10110099
JA268279283
JF・労働金庫・その他282727
合 計738746750

(注) 1.JAとは農業協同組合、信用農業協同組合連合会を指します。
2.JFとは漁業協同組合、信用漁業協同組合連合会を指します。
3.各事業年度末時点の提携金融機関数を集計しております。
d)延滞金額
良好な雇用環境が続いたことに加え、延滞初期段階から金融機関と協調し返済正常化を目的とした相談・助言を行い、保証委託者の実態について早期把握に努めたことから、保証債務残高に対する延滞金額の割合は低位で推移しております。
民間金融機関住宅ローン保証における延滞金額の推移
(単位:百万円)
2017年3月末
(金額:2016年9月末時点)
2018年3月末
(金額:2017年9月末時点)
2019年3月末
(金額:2018年9月末時点)
延滞金額22,35324,01424,095

(注) 延滞金額につきましては、延滞期間が3ヶ月以上の保証引受先を集計しています。
e)代位弁済金額および求償債権回収金額
イ.代位弁済金額
延滞初期段階から保証委託者の現状と将来の返済能力を早期に把握し、延滞長期化の防止および返済正常化に取り組んでいることから、保証債務残高に対する代位弁済金額の割合は低位で推移しております。
代位弁済金額の推移
(単位:百万円)
2017年3月期2018年3月期2019年3月期
代位弁済金額11,42311,23711,709

ロ.求償債権回収金額
当社が代位弁済後において取得する求償債権につきましては、その殆どに不動産担保が設定されております。当社では、回収期間の短縮化と回収金額の最大化を図るという基本方針に基づき、保証委託者の実態に応じた物件売却(任意売却・競売)を実施し、迅速かつ最大限の回収に努めております。
求償債権回収金額の推移
(単位:百万円)
2017年3月期2018年3月期2019年3月期
求償債権回収金額8,2737,5948,469

③経営戦略の現状と見通し
次期は、中期経営計画「Best route to 2020」の3年目として、中核事業である住宅ローン保証の事業規模拡大および事業領域の拡大に取り組み、着実な成長を目指してまいります。
住宅ローン保証の分野におきましては、長期的に少子高齢化に伴う人口・世帯数の減少により新築住宅市場は縮小していくことが見込まれるものの、中期的には現在の新設住宅着工戸数の水準が維持されることや中古・リフォーム市場の活性化も予想されます。また、新規ローン貸出市場ならびに既存のローン残高市場の双方において当社がシェアを拡大できる余地は十二分に残っており、提携金融機関の増加および当社保証の利用率向上により更なる事業規模の拡大を図ってまいります。事業領域の拡大につきましては、次期においても長期的課題として検討を継続してまいります。