有価証券報告書-第94期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 15:06
【資料】
PDFをみる
【項目】
137項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用情勢や所得環境の改善を背景に、引き続き緩やかな回復基調で推移しましたが、その一方で、米中間の貿易摩擦の激化や、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済への影響が懸念されるなど、先行き不透明な状況で推移しました。
繊維業界においては、酷暑や暖冬などの天候不順の影響や、消費増税後の消費マインドの低下などにより、実店舗における衣料品販売が総じて苦戦するなど、個人消費は引き続き力強さに欠ける状況が続いており、厳しい環境にあります。
このような状況において当社グループは、2018年度から2020年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2020』で掲げる「企画・開発と営業戦略の融合」、「繊維事業におけるバランスの改革」、「製造原価の低減」、「女性の美と快適に「健康」をプラス」、「生産性の向上」の5つの課題への取り組みに加え、これらを強化するための施策として、2019年度より「事業構造改革」、「業務構造改革」、「コスト構造改革」の3つの構造改革を推進することにより、次の時代を見据えた事業構造への転換を図り、強固な事業基盤の構築を目指しております。
当連結会計年度においては、衛星工場の閉鎖などの構造改革を実施いたしましたが、販売では主力商品群であるレッグウエア商品が年間を通じて苦戦するなど売上が計画を大きく下回った他、利益面では国内工場の生産性悪化による売上原価の上昇、販売の減少に伴う売上総利益の減少などにより、営業利益および経常利益が減少した結果、繊維事業における利益創出が困難となったことから、保有する固定資産の減損損失を特別損失に計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な損失となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は19,621百万円(前年同期比10.3%減)、営業損失は461百万円(前年同期は903百万円の損失)、経常損失は204百万円(前年同期は726百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は5,933百万円(前年同期は3,078百万円の損失)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
[繊維事業]
レッグウエア分野は、プレーンストッキングなどのベーシック商品が期初より苦戦し、更には最盛期である秋冬期においてもタイツなどの季節商品が伸び悩むなど全般的に厳しく、同分野の売上高は15,050百万円(前年同期比14.2%減)となりました。
インナーウエア分野は、スポーツインナー関連が順調に推移した他、主力のブラジャーおよびショーツも好調に推移し、同分野の売上高は3,359百万円(前年同期比7.5%増)となりました。
これらの結果、繊維事業の売上高は18,409百万円(前年同期比10.9%減)、営業損失は690百万円(前年同期は1,370百万円の損失)となりました。
[不動産事業]
保有資産の有効活用を進めておりますが、当事業の売上高は571百万円(前年同期比2.2%減)、営業利益は308百万円(前年同期比25.0%減)となりました。
[その他]
その他の事業につきましては、介護用品の販売は堅調に推移しましたが、太陽光発電による売電は天候の影響などにより発電量が減少いたしました。これらの結果、当事業の売上高は640百万円(前年同期比3.2%増)、営業利益は28百万円(前年同期比48.9%減)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は42,395百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,383百万円減少いたしました。主な増減内容は、繊維事業において、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった一部の生産拠点および物流センター等の事業用資産について減損処理を行ったこと等による有形固定資産の減少5,672百万円、投資有価証券の減少2,169百万円等によるものであります。
負債の部は6,639百万円となり、前連結会計年度末に比べ124百万円減少いたしました。これは主に、繰延税金負債の減少104百万円等によるものであります。
純資産の部は35,756百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,258百万円減少いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失5,933百万円の計上による減少や、前期決算に係る配当金481百万円による減少、土地再評価差額金の取崩による減少1,159百万円、その他の包括利益累計額の減少683百万円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)対前年同期比(%)
繊維事業9,73783.3
合計9,73783.3

(注)1.セグメント間取引については、内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.金額は、製造原価によっております。
b.受注状況
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)対前年同期比(%)
繊維事業18,40989.1
不動産事業57197.8
その他640103.2
合計19,62189.7

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
㈱しまむら2,65012.12,27911.6

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
④キャッシュ・フローの状況
科目前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減(百万円)
営業活動によるキャッシュ・フロー3241,013689
投資活動によるキャッシュ・フロー△979△158820
財務活動によるキャッシュ・フロー△494△47914
現金及び現金同等物に係る換算差額△54△152△97
現金及び現金同等物の増減額△1,2032231,427
現金及び現金同等物の期末残高7,2387,461223

[営業活動によるキャッシュ・フロー]
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失5,495百万円の計上はありましたが、減損損失5,287百万円、減価償却費721百万円、売上債権の減少727百万円等により、差引1,013百万円の収入(前年同期は324百万円の収入)となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得374百万円、投資有価証券の償還224百万円等により、158百万円の支出(前年同期は979百万円の支出)となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払い477百万円等により、479百万円の支出(前年同期は494百万円の支出)となりました。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ223百万円増加し、7,461百万円となりました。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(追加情報)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等不確実性が大きく、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もありますが、連結会計年度末時点において入手可能な情報を基に検証等を行っております。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産の計上が見直され、税金費用の計上に影響を与える可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等の詳細については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。
なお、新型コロナウイルス感染症により2020年2月から3月の企業活動には一定の影響がありましたが限定的であり、当期の業績への影響は軽微であると判断しております。
当社グループの経営に影響を与える大きな要因の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、2 事業等のリスク」をご参照下さい。
当社グループにおける資金需要は、製品製造のための原材料費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備新設、維持改修等に係る投資であります。これらの資金需要につきましては、自己資金を基本としており、現時点で借入金はありません。また、当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、資金調達に関し、低コストかつ安定的な資金の確保を基本に、財務状況や金融環境に応じ、最適と思われる調達手段を選択しております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、現在、2020年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画『ATSUGI VISION 2020』に鋭意取り組み、更に、2019年度より、これらを確実に遂行するため「事業構造改革」、「業務構造改革」、「コスト構造改革」の3つの構造改革をスタートし、衛星工場の閉鎖などの施策を断行いたしましたが、主力のストッキングやタイツの不振などにより販売が計画を大きく下回り、これに加えて、国内工場の収支悪化に伴い、繊維事業に係る固定資産の減損損失の計上を余儀なくされ、2期連続の大幅な最終損失という結果となりました。
今後も厳しい経営環境が継続すること等を踏まえ、あらためて3つの構造改革の計画を検証し、当社グループの主力事業である繊維事業を中心に更なる施策を立案しております。構造改革後に当社グループが目指していく中期的なビジョンとして、連結売上高220億円、連結営業利益15.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益11.5億円、ROE3%を数値目標としております。