有価証券報告書-第106期(2024/01/01-2024/12/31)

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2025/03/21 13:34
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態および経営成績の状況
当社グループはMissionに、「人材能力とコア技術の多様性」を成長の原動力として、高い競争力を有する特徴ある製品・サービスの創出によりお客さま価値を実現し、「人々の豊かな生活」の実現に寄与することを掲げています。
このMissionのもと、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)として定め、多様な技術や人材能力の結集・融合により、メディカル・モビリティ・環境に関わるグローバルな社会課題の解決に貢献することで、社会・経済価値の創出を目指しています。また、サステナビリティビジョンを起点にバックキャストして、2024年から2026年までの3年間で目指すべき中期計画とそこに至るための戦略を第8次中期経営計画として定め、運用しています。安定的な成長と資本効率性の向上を志向し、これまでに構築した事業ポートフォリオの強化を通じて、利益率の向上と安定化を実現します。
当期のグローバル経済情勢は、景気持ち直しの動きとなりました。アメリカでは、個人消費などが底堅く推移し、景気が拡大しました。ヨーロッパでは、外需の低迷などにより生産活動が停滞し、景気は足踏みの動きとなりました。中国では、不動産不況などを背景に景気の弱さが継続しました。わが国の経済については、設備投資などが堅調に推移し、景気回復が緩やかに進みました。
このような状況の下、当期の業績については、産業資材事業の加飾分野の需要が底堅く推移し、同事業のサステナブル資材、ディバイス事業のタブレットおよび業務用端末(物流関連)向けなどの需要が前期の低迷から回復しました。メディカルテクノロジー事業においては、需要が堅調に推移するとともに、企業買収による業績貢献が始まりました。
これらの結果、当期における連結業績は、売上高は1,955億98百万円(前期比16.6%増)、利益面では営業利益は54億86百万円(前期は38億17百万円の営業損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は38億62百万円(前期は29億88百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりです。
産業資材
産業資材事業は、さまざまな素材の表面に付加価値を与える独自技術を有するセグメントです。プラスチックの成形と同時に加飾や機能の付与を行うIMD、IMLおよびIMEは、グローバル市場でモビリティ、家電製品などに広く採用されています。また、金属光沢と印刷適性を兼ね備えた蒸着紙は、飲料品や食品向けのサステナブル資材としてグローバルベースで業界トップのマーケットシェアを有しています。
当期においては、加飾分野のモビリティ向けおよび家電向けの需要は底堅く推移し、サステナブル資材分野の蒸着紙の製品需要は前期の低迷から着実に回復しました。これら需要動向に加え、為替変動の影響などにより、売上高は前期比で増加しました。売上高の増加に加え、生産性および効率性の改善などにより、営業利益は前期比で増加しました。
その結果、当期の連結売上高は740億90百万円(前期比7.7%増)となり、セグメント利益(営業利益)は49億円(前期比5,131.3%増)となりました。
ディバイス
ディバイス事業は、精密で機能性を追求した部品・モジュール製品を提供するセグメントです。主力製品であるフィルムタッチセンサーはグローバル市場でタブレット、業務用端末(物流関連)、モビリティ、ゲーム機などに幅広く採用されています。このほか、気体の状態を検知するガスセンサーなどを提供しています。
当期においては、前期に低迷したタブレット向けおよび業務用端末向けの需要が回復しました。これらの需要動向に伴い、売上高は前期比で増加し、営業利益は黒字に転じました。
その結果、当期の連結売上高は675億42百万円(前期比23.1%増)となり、セグメント利益(営業利益)は17億98百万円(前期は15億80百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
メディカルテクノロジー
メディカルテクノロジー事業は、医療機器やその関連市場において高品質で付加価値の高い製品を提供し、人々の健康で豊かな生活に貢献することを目指すセグメントです。幅広い診療領域で使われる低侵襲医療用の手術機器や医療用ウェアラブルセンサーなどの製品を手がけており、現在は欧米中心に大手医療機器メーカー向けの開発製造受託(CDMO)を展開するとともに、医療機関向けに自社ブランド品を製造・販売しています。
当期においては、主力の医療機器CDMOの堅調な需要や企業買収による業績貢献に加え、為替変動の影響などにより、売上高および営業利益は前期比で増加しました。
その結果、当期の連結売上高は456億22百万円(前期比26.7%増)となり、セグメント利益(営業利益)は23億88百万円(前期比60.0%増)となりました。
当連結会計年度末における総資産は2,507億80百万円となり、前連結会計年度末(2023年12月期末)に比べ329億26百万円増加しました。
流動資産は1,286億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ212億25百万円増加しました。主な要因は、現金及び現金同等物が131億15百万円、営業債権及びその他の債権が63億20百万円増加したこと等によるものです。
非流動資産は1,221億53百万円となり、前連結会計年度末に比べ117億1百万円増加しました。主な要因は、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の変動および売却等によりその他の金融資産が81億80百万円減少した一方、有形固定資産が33億6百万円、新規連結等によりのれんが134億93百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における負債は1,352億58百万円となり、前連結会計年度末に比べ282億57百万円増加しました。
流動負債は639億82百万円となり、前連結会計年度末に比べ173億89百万円増加しました。主な要因は、営業債務及びその他の債務が35億19百万円、借入金が91億35百万円増加したこと等によるものです。
非流動負債は712億76百万円となり、前連結会計年度末に比べ108億68百万円増加しました。主な要因は、社債及び借入金が81億12百万円、新規連結等によりその他の金融負債が56億24百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における資本は1,155億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ46億69百万円増加しました。主な要因は、新規連結等により資本剰余金が43億33百万円減少した一方、為替換算等の影響によりその他の資本の構成要素が22億24百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により利益剰余金が68億97百万円増加したこと等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ131億15百万円増加し、509億70百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は123億12百万円(前期比728.1%増)となりました。これは税引前利益62億13百万円の計上に対して、主に、営業債権及びその他の債権の増加額として39億34百万円計上した一方、減価償却費及び償却費として95億13百万円、営業債務及びその他の債務の増加額として18億52百万円計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は114億31百万円(前期比42.5%増)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入として81億85百万円計上した一方、有形固定資産の取得として67億10百万円、子会社の取得として113億20百万円支出したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は91億47百万円(前期は126億29百万円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の返済による支出として25億34百万円、リース負債の返済による支出として21億16百万円、長期借入金の返済による支出として27億3百万円、親会社の所有者への配当金の支払として24億24百万円計上した一方、短期借入れによる収入として111億34百万円、社債の発行による収入として89億53百万円計上したこと等によるものです。
③ 生産、受注および販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
産業資材75,27411.2
ディバイス71,82832.1
メディカルテクノロジー46,18626.5
その他8,3494.6
合計201,63921.1

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
産業資材83,34051.323,04277.5
ディバイス77,32886.222,52476.8
メディカルテクノロジー46,78026.721,63018.1
その他8,093△0.2363△42.1
合計215,54352.167,56051.3

(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
産業資材74,0907.7
ディバイス67,54223.1
メディカルテクノロジー45,62226.7
その他8,3433.1
合計195,59816.6

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
APPLE OPERATIONS LIMITEDおよびそのグループ会社35,17321.044,63722.8


(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度における経営成績につきましては、売上高は、前連結会計年度に比べ16.6%増加し1,955億98百万円となりました。このうち、海外売上高は1,744億53百万円であり、連結売上高に占める割合は89.2%です。海外売上高は主として産業資材、ディバイスおよびメディカルテクノロジーによるものです。また、売上原価は前連結会計年度に比べ12.4%増加の1,518億円、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ12.5%増加の371億26百万円となりました。売上原価、販売費及び一般管理費、その他の費用に含まれる減価償却費及び償却費は前連結会計年度に比べ4.1%増加の95億13百万円となりました。その他の収益・費用については、前連結会計年度は政府補助金収入などを主としたその他の収益を6億98百万円計上する一方で、のれんの減損損失などを主としたその他の費用を38億94百万円計上したのに対して、当連結会計年度では受取補償金などを主としたその他の収益を4億39百万円計上する一方で、遊休資産諸費用などを主としたその他の費用を12億93百万円計上しました。
これらの結果、営業利益は54億86百万円(前期は38億17百万円の営業損失)となりました。
なお、セグメント別の経営成績につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
金融収益・費用については、前連結会計年度は為替差益などを主とした金融収益を28億97百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を18億42百万円計上しました。また、当連結会計年度においても、為替差益などを主とした金融収益を25億39百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を18億12百万円計上しました。
その結果、税引前利益は62億13百万円(前期は27億62百万円の税引前損失)となりました。
法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ767.1%増加の21億85百万円を計上しました。
これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益38億62百万円(前期は29億88百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。また、基本的1株当たり当期利益は80円15銭(前期は61円13銭の基本的1株当たり当期損失)となりました。
財政状態の分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
② 資本の財源および資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの主な資金需要は、事業上必要な運転資金や設備投資、M&Aによる投資です。これらの資金需要については調達規模や調達市場環境に応じて自己資金および金融機関からの借入や社債の発行等により対応します。また、金融コストの最小化と資金効率の向上のため、日本国内のグループ会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、当社への資金フローの集約により一元的な管理を行っています。
③ 経営方針・経営戦略等または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、2030年のあるべき姿であるサステナビリティビジョンの実現に向け、第8次中期経営計画(3カ年)を2024年1月から運用しています。第8次中期経営計画では、安定的な成長と資本効率性の向上を志向し、これまでに構築した事業ポートフォリオの強化を通じて、利益率の向上と安定化を実現します。
医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの市場においては、オーガニックな成長とM&Aの両面で事業を拡大し、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充を目指します。IT機器市場においては、生産体制の最適化を含めた生産性・効率性の改善を追求します。
また、将来の持続的な成長を実現するために、自社開発に限らず業務提携やM&Aなどを通じて、新たな事業や製品群の開発を加速します。
第8次中期経営計画で目指す業績計画は以下のとおりです。
2024年 実績2025年 計画2026年 計画
(M&A含まない)
2026年 計画
(M&A含む)
ROE3.4%3.5%9%以上9%以上
売上高(百万円)195,598190,800210,000225,000
営業利益(百万円)5,4866,60015,00016,500
(営業利益率)(2.8%)(3.5%)(7.1%)(7.3%)
非IT機器の重点3市場
営業利益(百万円)5,5578,30013,00014,500
(営業利益率)(5.1%)(7.0%)(10.2%)(10.2%)

④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎(4)重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しています。