有価証券報告書-第100期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

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2019/03/22 13:03
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前連結会計年度より決算期を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い、決算期変更の経過期間である前連結会計年度は2017年4月1日から2017年12月31日までの9カ月間となっています。このため、以下の記述において、当連結会計年度の業績は前年同一期間である2017年1月1日から2017年12月31日までの業績と比較しています。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度におけるグローバル経済情勢を振り返りますと、保護主義的な経済政策やこれに伴う通商摩擦などにより先行きに不透明感が広がっているものの、実体経済は堅調を維持しました。アメリカでは個人消費や設備投資の増加などにより景気の回復が継続しました。欧州では景気は緩やかに回復し、中国をはじめとするアジア新興国では景気は持ち直しの動きが見られました。わが国の経済については、景気は緩やかな回復基調を続けています。
現在、当社グループは事業ポートフォリオの組み換え・最適化による成長を骨子とする第6次中期経営計画(3カ年)を運用しています。主力のコンシューマー・エレクトロニクス(IT)に加え、自動車、医療機器、高機能パッケージ資材を重点市場と定め、バランスの取れた事業基盤の構築を図り、グローバルベースの成長戦略の実践による企業価値の向上を目指しています。当連結会計年度は、主力のディバイス事業では上半期に低迷した製品需要が下半期に拡大基調となり事業収益の改善が進んだほか、メディカルテクノロジー事業では企業買収による成長戦略の業績貢献が始まりました。
これらの結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は2,074億4百万円(前年同期比7.2%増)、利益面ではEBITDAは173億43百万円(前年同期比14.9%増)、営業利益は80億71百万円(前年同期比101.5%増)、経常利益は73億70百万円(前年同期比49.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は43億8百万円(前年同期比60.7%増)となりました。
(注) EBITDAは、営業利益+減価償却費+のれん償却額としています。
セグメントの業績を示すと、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、従来「ライフイノベーション」としていた報告セグメントの名称を「メディカルテクノロジー」に変更しています。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。なお、前連結会計年度のセグメント情報についても変更後の名称で記載しています。
産業資材
産業資材は、さまざまな素材の表面に付加価値を与える独自技術を有するセグメントです。プラスチックの成形と同時に加飾を行うIMDおよびIMLは、グローバル市場で自動車、家電製品、スマートフォンなどに広く採用されています。また、金属光沢と印刷適性を兼ね備えた蒸着紙は、飲料品や食品向けの高機能パッケージ資材としてグローバルベースで業界トップのマーケットシェアを有しています。
当連結会計年度においては、主力の自動車向けや蒸着紙の製品需要は概ね堅調に推移したものの、その他の製品需要は想定をやや下回りました。また、一部の海外工場で生産歩留まりが当初想定を下回るなど、品質コストの削減に課題が残りました。
その結果、当連結会計年度の連結売上高は471億24百万円(前年同期比4.6%減)となり、EBITDAは36億75百万円(前年同期比30.3%減)、セグメント利益(営業利益)は1億38百万円(前年同期比89.6%減)となりました。
ディバイス
ディバイスは、精密で機能性を追求したディバイスを提供するセグメントです。主力製品であるフィルムタッチセンサーはグローバル市場でスマートフォン、タブレット、携帯ゲーム機、産業用機器、自動車などに幅広く採用されています。このほか、気体の状態を検知するガスセンサーなどを提供しています。
当連結会計年度においては、主力のスマートフォン向けの製品需要は下半期に入り拡大基調に転じたものの、当初想定には届かない水準となりました。一方、生産歩留まりの向上などにより事業の収益性は前年同期に比べ大きく改善しました。
その結果、当連結会計年度の連結売上高は1,235億41百万円(前年同期比11.2%増)となり、EBITDAは144億44百万円(前年同期比32.6%増)、セグメント利益(営業利益)は114億49百万円(前年同期比83.9%増)となりました。
メディカルテクノロジー
メディカルテクノロジーは、医療機器やその関連市場において高品質で付加価値の高い製品を提供し、人々の健康で豊かな生活に貢献することを目指すセグメントです。心疾患分野などの手術用器具や医療用電極などを主力製品としており、現在はグローバルベースで大手医療機器メーカー向けの受託生産事業(製品設計~開発~生産の一連の工程を手がける事業)を展開するとともに、医療機関向けに自社ブランド品を生産・販売しています。
当連結会計年度においては、主力の受託生産分野を中心に製品需要は堅調に推移したほか、自社ブランドの新製品である心電用電極「バーメッド クララビュー®」の販売が順調に推移しました。これに加え、当連結会計年度に買収した3社の業績を連結したことにより事業規模が拡大しました。一方、買収関連費用や拠点統合費用などの一時費用が発生しました。
その結果、当連結会計年度の連結売上高は223億51百万円(前年同期比22.8%増)となり、EBITDAは18億29百万円(前年同期比54.6%増)、セグメント損失(営業損失)は60百万円(前年同期は5億円のセグメント損失(営業損失))となりました。
情報コミュニケーション
情報コミュニケーションは、出版印刷、商業印刷、アートソリューション、セールスプロモーションなど、さまざまな製品・サービスを提供し、お客さま企業のマーケティング戦略や広告宣伝・販売促進などのコミュニケーション戦略全般をサポートしています。
当連結会計年度においては、主力の商業印刷分野で情報メディアの多様化における印刷物の減少などの影響があり、事業環境は厳しいものとなりました。また、2019年1月の事業再編に向けた一時的な費用が発生しました。
その結果、当連結会計年度の連結売上高は139億35百万円(前年同期比3.5%減)となり、EBITDAは4億2百万円のマイナス(前年同期は2億33百万円のマイナス)、セグメント損失(営業損失)は6億18百万円(前年同期は4億31百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
なお、情報コミュニケーションは事業収益の改善を目的とした事業再編を2019年1月7日に完了しました。
当連結会計年度末における総資産は2,035億43百万円となり、前連結会計年度末(2017年12月期末)に比べ216億17百万円減少しました。
流動資産は968億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ168億90百万円減少しました。主な要因は、現金及び預金が130億28百万円、受取手形及び売掛金が72億73百万円減少したこと等によるものです。
固定資産は1,067億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ47億26百万円減少しました。主な要因は、有形固定資産が16億69百万円増加した一方、のれんが14億46百万円、投資有価証券が55億2百万円減少したこと等によるものです。
当連結会計年度末における負債は1,139億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ171億95百万円減少しました。
流動負債は827億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ144億81百万円減少しました。主な要因は、支払手形及び買掛金が72億52百万円、電子記録債務が21億37百万円減少したこと等によるものです。
固定負債は312億円となり、前連結会計年度末に比べ27億14百万円減少しました。主な要因は、繰延税金負債が27億72百万円減少したこと等によるものです。
当連結会計年度末における純資産は896億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ44億21百万円減少しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が27億91百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が36億58百万円、為替換算調整勘定が18億96百万円減少したこと等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ125億33百万円減少し、167億57百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
なお、前連結会計年度より決算期を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い、当連結会計年度(2018年1月1日から2018年12月31日)と前連結会計年度(2017年4月1日から2017年12月31日)の対象期間が異なるため、前期比については記載していません。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は42億32百万円となりました。これは主に仕入債務の減少額として91億96百万円計上した一方、減価償却費として76億72百万円、売上債権の減少額として71億66百万円計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は141億81百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得として116億97百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得として15億19百万円支出したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は24億48百万円となりました。これは主に自己株式の取得及び売却による収支として17億14百万円計上したこと等によるものです。
③ 生産、受注および販売の実績
前連結会計年度は、決算期変更により2017年4月1日から2017年12月31日までの9カ月間となっています。このため、生産高、受注高および販売高の前期比については記載していません。
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)
産業資材48,004
ディバイス125,057
メディカルテクノロジー23,037
情報コミュニケーション13,853
その他512
合計210,465

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
産業資材45,3934,861△27.5%
ディバイス132,07120,748+69.8%
メディカルテクノロジー23,2225,102+18.4%
情報コミュニケーション13,5411,374△22.3%
その他452
合計214,68032,087+28.3%

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)
産業資材47,124
ディバイス123,541
メディカルテクノロジー22,351
情報コミュニケーション13,935
その他452
合計207,404

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
APPLE OPERATIONS78,43049.2100,31648.4

3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。当連結会計年度の業績は前年同一期間である2017年1月1日から2017年12月31日までの業績と比較しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度における経営成績につきましては、売上高は、前年同期に比べ7.2%増加し2,074億4百万円となりました。このうち、海外売上高は1,738億66百万円であり、連結売上高に占める割合は83.8%です。海外売上高は主として産業資材、ディバイスおよびメディカルテクノロジーによるものです。また、売上原価は前年同期に比べ4.2%増加の1,701億13百万円、販売費及び一般管理費は前年同期に比べ11.3%増加の292億20百万円となりました。このうち、減価償却費は前年同期に比べ20.1%減少の76億72百万円、のれん償却額は前年同期に比べ7.5%増加の15億99百万円となりました。
その結果、EBITDAは前年同期に比べ14.9%増加の173億43百万円、営業利益は前年同期に比べ101.5%増加の80億71百万円となりました。
なお、セグメント別の経営成績につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
営業外損益については、前年同期は支払利息などを主とした営業外費用を11億48百万円計上する一方で、為替差益などを主とした営業外収益を20億79百万円計上したのに対して、当連結会計年度では受取配当金などを主とした営業外収益を6億7百万円計上する一方で、支払利息などを主とした営業外費用を13億8百万円計上しました。
その結果、経常利益は前年同期に比べ49.3%増加の73億70百万円となりました。
特別損益については、前年同期は投資有価証券売却益などを主とした特別利益を3億73百万円計上する一方で、投資有価証券評価損などを主とした特別損失を12億3百万円計上したのに対して、当連結会計年度では受取保険金などを主とした特別利益を12億70百万円計上する一方で、固定資産除売却損などを主とした特別損失を25億52百万円計上しました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べ60.7%増加の43億8百万円となりました。また、1株当たり当期純利益は前年同期に比べ51.3%増加の85円52銭となりました。
財政状態の分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
② 資本の財源および資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの主な資金需要は、事業上必要な運転資金や設備投資、M&Aによる投資です。これらの資金需要については調達規模や調達市場環境に応じて自己資金および金融機関からの借入や社債の発行等により対応します。また、金融コストの最小化と資金効率の向上のため、日本国内のグループ会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、当社への資金フローの集約により一元的な管理を行っています。
③ 経営方針・経営戦略等または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは現在、事業ポートフォリオの組み換え・最適化による成長を骨子とする第6次中期経営計画(3カ年)を運用しています。主力のコンシューマー・エレクトロニクス(IT)に加え、自動車、医療機器、高機能パッケージ資材を重点市場と定め、バランスの取れた事業基盤の構築を図り、グローバルベースの成長戦略の実践による企業価値の向上を目指しています。2020年12月期に連結売上高2,400億円、EBITDA360億円(EBITDA率15.0%)、営業利益220億円(営業利益率9.2%)、ROE10%以上、自己資本比率50%以上とすることなどをビジョンに掲げています。
当連結会計年度における実績は、売上高2,074億円、EBITDA173億円(EBITDA率8.4%)、営業利益80億円(営業利益率3.9%)、ROE4.7%、自己資本比率44.0%であり、引き続き目標達成に向け努めてまいります。