四半期報告書-第201期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)

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2021/02/04 11:24
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当第3四半期連結累計期間における当社グループ(当社および子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績
(業績管理指標「コア営業利益」について)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しております。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額等です。
当第3四半期連結累計期間の当社グループの連結業績は、以下のとおりであります。
(単位:億円)
前第3四半期連結累計期間
(自 2019年4月1日
至 2019年12月31日)
当第3四半期連結累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年12月31日)
増減増減率
(%)
売上収益3,5703,94837710.6
コア営業利益6437268312.9
営業利益815875617.5
税引前四半期利益844797△47△5.6
四半期利益44057913931.7
親会社の所有者に
帰属する四半期利益
44070326359.8

■ 売上収益は3,948億円(前年同四半期比10.6%増)となりました。
日本セグメントは、昨年度に販売を開始した2型糖尿病治療剤「エクア」および「エクメット」の寄与などにより増収となりました。また、北米セグメントにおいても、当社グループの収益の柱である非定型抗精神病薬「ラツーダ」の売上が拡大したことなどにより増収となりました。
■ コア営業利益は726億円(前年同四半期比12.9%増)となりました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、販売関連費用等が低調に推移するなか、昨年度に取得したスミトバント社およびその傘下の子会社の費用が認識されたことにより、コアベースの販売費及び一般管理費ならびに研究開発費は増加しましたが、増収による売上総利益の増加が大きく、コア営業利益は増益となりました。
■ 営業利益は875億円(前年同四半期比7.5%増)となりました。
当第3四半期連結累計期間において、当社旧茨木工場の売却に伴う固定資産売却益を計上したことにより、営業利益はコア営業利益に比べ増加しました。なお、前第3四半期連結累計期間においては、ナパブカシンの膵がん患者を対象としたフェーズ3試験の中止決定に伴い、条件付対価公正価値が大きく減少し、多額の費用戻入が発生したことにより、営業利益はコア営業利益に比べ増加しました。
■ 税引前四半期利益は797億円(前年同四半期比5.6%減)となりました。
営業利益は増益となりましたが、受取利息などの金融収益の減少に加え、支払利息や当社が保有する外貨建て金融資産に生じた為替差損などの金融費用が増加したことにより、税引前四半期利益は減益に転じました。
■ 四半期利益は579億円(前年同四半期比31.7%増)となりました。
税引前四半期利益は減益となりましたが、法人所得税が大きく減少し、四半期利益は増益となりました。前第3四半期連結累計期間は、ナパブカシンの膵がん患者を対象としたフェーズ3試験の中止決定などに伴い、米国において認識していた繰延税金資産の取崩しを行いましたが、当第3四半期連結累計期間にはこのような要因はないことから、法人所得税が大きく減少することとなりました。
■ 親会社の所有者に帰属する四半期利益は703億円(前年同四半期比59.8%増)となりました。
スミトバント社傘下の非支配持分を有する子会社の業績が損失となったため、四半期利益から非支配持分に帰属する損失額を控除した親会社の所有者に帰属する四半期利益は、四半期利益に比べ増加しました。
なお、親会社の所有者に帰属する四半期利益の売上収益に対する比率は17.8%となりました。
(セグメント業績指標「コアセグメント利益」について)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しております。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益等を除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
<日本>■ 売上収益は1,185億円(前年同四半期比13.7%増)となりました。
「エクア」および「エクメット」の増収に加え、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」の売上が伸長したことや、本年度に販売を開始した「ラツーダ」の寄与などにより、増収となりました。
■ コアセグメント利益は230億円(前年同四半期比14.4%増)となりました。
増収による売上総利益の増加に加え、COVID-19の影響により販売関連費用など販売費及び一般管理費が減少したことにより、増益となりました。
<北米>■ 売上収益は2,180億円(前年同四半期比11.4%増)となりました。
「ラツーダ」に加え、抗てんかん剤「アプティオム」などの売上が伸長したことや、スミトバント社傘下のマイオバント・サイエンシズ・リミテッドにおいて、ライセンス契約に基づき受領した契約一時金等の一部を売上として認識したことにより、増収となりました。
■ コアセグメント利益は1,045億円(前年同四半期比15.8%増)となりました。
スミトバント社および傘下の子会社で発生した費用などにより販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収による売上総利益の増加が大きく、増益となりました。
<中国>■ 売上収益は191億円(前年同四半期比5.4%減)となりました。
カルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の売上が減少したことにより、減収となりました。
■ コアセグメント利益は85億円(前年同四半期比9.2%減)となりました。
販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少が大きく、減益となりました。
<海外その他>■ 売上収益は115億円(前年同四半期比31.9%増)となりました。
輸出の増加により、増収となりました。
■ コアセグメント利益は53億円(前年同四半期比67.8%増)となりました。
増収による売上総利益の増加により、大幅な増益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品等の販売を行っており、これらの売上収益は277億円(前年同四半期比2.0%減)、コアセグメント利益は29億円(前年同四半期比17.0%増)となりました。
(2) 財政状態
資産については、非流動資産では、その他の金融資産が、当社が保有する投資有価証券の公正価値評価により減少したことに加え、償却や為替換算により無形資産が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ483億円減少しました。
流動資産は、短期貸付金の減少によりその他の金融資産が減少しましたが、現金及び現金同等物や営業債権及びその他の債権等が増加した結果、前連結会計年度末に比べ1,006億円増加しました。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ523億円増加し、1兆3,088億円となりました。
負債については、営業債務及びその他の債務や未払法人所得税が減少しましたが、連結子会社における開発および販売提携契約の締結により、その他の非流動負債に含まれる前受収益が増加したことに加え、引当金などが増加しました。また、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を行った結果、非流動負債の社債及び借入金が増加し、流動負債の借入金が減少しました。
これらの結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ496億円増加し、6,703億円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分は、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の変動などのその他の資本の構成要素は減少しましたが、利益剰余金が増加した結果、前連結会計年度末に比べ145億円増加し、5,472億円となりました。また、非支配持分は、スミトバント社傘下の非支配持分を有する子会社の業績が損失となったため、前連結会計年度末に比べ118億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ27億円増加し、6,386億円となりました。
なお、当第3四半期連結会計期間末の親会社所有者帰属持分比率は41.8%となりました。
(3) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額が増加しましたが、引当金の増加などのキャッシュの増加要因や連結子会社における開発および販売提携契約の締結による契約一時金の受領などにより、前第3四半期連結累計期間に比べ711億円収入が増加し、1,079億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当社旧茨木工場の譲渡により有形固定資産の売却に伴う収入が増加しました。前第3四半期連結累計期間には、ロイバント社との戦略的提携に伴う同社株式の取得などによる投資の取得による支出や、スミトバント社およびその傘下の子会社の支配獲得による支出があったため、前第3四半期連結累計期間に比べ3,203億円支出が減少し、356億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前第3四半期連結累計期間には、ロイバント社との戦略的提携の対価の支払いのため短期借入による資金調達を実施しました。一方、当第3四半期連結累計期間には、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を実施したことなどから、前第3四半期連結累計期間に比べ2,589億円収入が減少し、184億円の支出となりました。
上記の結果、当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は2,198億円となり、前連結会計年度末に比べ1,181億円増加しました。
(4) 事業上および財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上および財務上の対処すべき課題に重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(5) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発費の総額は717億円(前年同四半期比14.4%減)であります。なお、前第3四半期連結累計期間の研究開発費には減損損失などが含まれていることから、これを除いたコアベースの研究開発費は前年同四半期に比べ17.1%増となりました。また、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分しておりません。
米国では、パーキンソン病に伴うオフ症状の改善を適応症とした舌下投与フィルム製剤「キンモビ」(一般名:アポモルヒネ塩酸塩水和物)について、昨年5月に承認を取得し、昨年9月に発売しました。
また、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)受容体阻害剤「オルゴビクス」(一般名:レルゴリクス)について、昨年4月に進行性前立腺がんを適応症とした承認申請を行い、米国食品医薬品局(FDA)により優先審査の指定を受け、昨年12月に承認を取得しました。レルゴリクスのエストラジオール、酢酸ノルエチンドロンとの配合剤については、昨年5月、子宮筋腫に伴う過多月経を適応症とした承認申請を行い、昨年8月にFDAにより申請が受理されました。同配合剤については、昨年4月および6月に、子宮内膜症を対象とした2本のフェーズ3試験について良好な結果を得ています。
さらに、β3アドレナリン受容体作動薬「ジェムテサ」(一般名:ビベグロン)について、昨年12月に過活動膀胱(OAB)を適応症として承認を取得しました。
日本では、昨年7月、2型糖尿病を適応症としてイメグリミン塩酸塩の製造販売承認申請を行いました。
また、株式会社Save Medicalとの間で、2型糖尿病を対象とした糖尿病管理指導用モバイルアプリケーションの共同開発契約を締結し、同社と共同で本アプリケーションの国内フェーズ3試験を開始しました。
1.精神神経領域(2021年1月28日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
ロナセン
(ブロナンセリン)
(新用法:小児)統合失調症日本申請(2020/5)
ラツーダ
(ルラシドン塩酸塩)
(新効能)双極Ⅰ型障害うつ中国フェーズ3
SEP-363856統合失調症米国フェーズ3
日本フェーズ1
パーキンソン病に伴う精神病症状米国フェーズ2
EPI-743
(バチキノン)
リー脳症日本フェーズ2/3
EPI-589パーキンソン病米国フェーズ2
筋萎縮性側索硬化症(ALS)米国フェーズ2
日本フェーズ1
SEP-4199双極Ⅰ型障害うつ米国・日本フェーズ2
(国際共同試験)
DSP-6745パーキンソン病に伴う精神病症状米国フェーズ1
SEP-378608双極性障害米国フェーズ1
DSP-3905神経障害性疼痛米国フェーズ1
SEP-378614治療抵抗性うつ米国フェーズ1
SEP-380135アルツハイマー病に伴うアジテーション米国フェーズ1
DSP-1181強迫性障害日本フェーズ1


2.がん領域(2021年1月28日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
BBI608
(ナパブカシン)
結腸直腸がん(併用)米国・日本フェーズ3
(国際共同試験)
肝細胞がん(併用)米国フェーズ1/2
消化器がん(併用)米国フェーズ1/2
固形がん(併用)米国フェーズ1/2
DSP-2033
(alvocidib)
急性骨髄性白血病(AML)(単剤・併用)(再発・難治性患者対象)米国フェーズ2
骨髄異形成症候群(MDS)(併用)米国フェーズ1/2
DSP-7888
(アデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩)
膠芽腫(併用)米国・日本フェーズ2
(国際共同試験)
固形がん(併用)米国フェーズ1/2
TP-0903
(dubermatinib)
固形がん(単剤・併用)米国・日本フェーズ1
DSP-0509固形がん(単剤・併用)米国フェーズ1/2
TP-0184骨髄異形成症候群に伴う貧血(単剤)米国フェーズ1/2
固形がん(単剤)米国フェーズ1
DSP-0337固形がん(単剤)米国フェーズ1
TP-1287固形がん(単剤)米国フェーズ1
TP-3654固形がん(単剤)米国フェーズ1
骨髄線維症(単剤・併用)米国フェーズ1
TP-1454固形がん(単剤・併用)米国フェーズ1


3.再生・細胞医薬分野(2021年1月28日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
RVT-802小児先天性無胸腺症米国申請(2019/4)
審査結果通知(CRL)を受領(2019/12)
他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞パーキンソン病日本フェーズ1/2
(医師主導治験)
HLCR011
(他家iPS細胞由来網膜色素上皮)
加齢黄斑変性日本治験開始に向けて準備中

4.その他の領域(2021年1月28日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
レルゴリクス子宮筋腫欧州申請(2020/3)
米国申請(2020/5)
子宮内膜症米国フェーズ3
(国際共同試験)
PXL008
(イメグリミン塩酸塩)
2型糖尿病日本申請(2020/7)
ジェムテサ(ビベグロン)(新効能)前立腺肥大症を伴う過活動膀胱米国フェーズ3
rodatristat ethyl肺動脈性肺高血圧症(PAH)米国フェーズ2
MVT-602不妊症ドイツフェーズ2
URO-902過活動膀胱米国フェーズ2

5.フロンティア事業(2021年1月28日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
SMC-01
(2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション)
2型糖尿病日本フェーズ3
((株)Save Medicalとの共同開発)

(6) 生産、受注及び販売の実績
2019年11月から「エクア」および「エクメット」の販売を開始したこと等により、当第3四半期連結累計期間において、日本セグメントにおける仕入実績が著しく増加しました。
(7) 主要な設備
当第3四半期連結累計期間において、新たに確定した重要な設備の新設計画は次のとおりであります。
会社名
事業所名
所在地設備の内容投資予定金額資金調達
方法
着手および完了予定
総額
(百万円)
既支払額
(百万円)
着手完了
当社大阪府吹田市再生・細胞医薬
製造施設
1,100自己資金2020年10月2021年度中
総合研究所

なお、前連結会計年度末において計画中であった茨木工場の売却について、2020年7月9日に不動産売買契約を締結し、2020年10月8日に物件を引き渡しております。