有価証券報告書-第199期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/20 15:21
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【項目】
88項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、米中間の通商問題、欧州の不透明な政治情勢、中国経済の減速などにより、不確実性は高まりましたが、米国経済が個人消費の増加を受けて堅調に推移したことなどにより、全体としては緩やかに回復しました。わが国経済についても、輸出や生産の一部に弱さがみられ、企業収益の改善には足踏みがみられるものの、設備投資の増加や個人消費の持ち直しなどにより、全体としては緩やかに回復しました。
医薬品業界では、増大する社会保障給付費を抑制するための世界的な動きとして、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進が一段と進むなか、ますます研究開発費は高騰し、競争は激化しています。その一方で、デジタル技術を活用した創薬の進展や予防医療への関心の高まりなど、変化の兆しが見られます。
このような状況のもと、当社グループは、日本において、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」、「ロナセン」などの売上拡大に経営資源を集中するとともに、効率的な事業活動に取り組みました。
北米においては、サノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)が、グローバル戦略品である「ラツーダ」の売上最大化を図るとともに、他の主力製品の売上拡大に向けて事業活動を行いました。
なお、「ラツーダ」については、当社およびサノビオン社は、当社が保有する用途特許などの侵害を理由として、2018年2月に後発医薬品メーカー16社に対する特許侵害訴訟(以下「先行訴訟」)を、また、2018年8月から10月に後発医薬品メーカー3社に対する3件の特許侵害訴訟(以下「追加訴訟」)を、それぞれ米国ニュージャージー州連邦地方裁判所に提起していましたが、同裁判所の関与のもと、被告各社との間で和解などの協議を進めた結果、2018年12月3日までに先行訴訟の全ての被告との間で訴訟が和解により終結しました。また、追加訴訟については、当連結会計年度末現在、2件が和解により終結していますが、まだ1件が係属しています。なお、先行訴訟および追加訴訟の被告であった複数の後発医薬品メーカーは、和解契約の条項に従い、2023年2月20日以降、米国において「ラツーダ」の後発医薬品を販売することができることになります。
がん領域では、ボストン・バイオメディカル・インク(以下「ボストン・バイオメディカル社」)が、ナパブカシン(開発コード:BBI608)の早期上市を最優先課題と位置付け、事業活動を行うとともに、トレロ・ファーマシューティカルズ・インク(以下「トレロ社」)が、alvocidib(開発コード:DSP-2033)などの研究開発に注力しました。
中国においては、住友制葯(蘇州)有限公司が、「メロペン」などの売上拡大を図るべく事業活動を展開しました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度
(2018年3月期)
当連結会計年度
(2019年3月期)
増減増減率
(%)
売上収益4,6684,593△76△1.6
コア営業利益906773△133△14.7
営業利益882579△303△34.4
税引前当期利益849650△198△23.4
親会社の所有者に
帰属する当期利益
534486△48△9.0

■ 売上収益は4,593億円(前連結会計年度比1.6%減)となりました。
当社グループの収益の柱である「ラツーダ」や「アプティオム」の売上増加などにより北米セグメントは増収となりました。一方、昨年4月に実施された薬価改定の影響に加え、長期収載品の売上減少により日本セグメントが減収となったことなどから、売上収益は微減となりました。
■ コア営業利益は773億円(前連結会計年度比14.7%減)となりました。
日本セグメントにおいて薬価改定の影響などにより売上総利益が減少したことに加え、前連結会計年度には販売権の譲渡に伴うその他の収益の計上がありましたが、当連結会計年度にはこのような要因がないことから、コア営業利益は減益となりました。
■ 営業利益は579億円(前連結会計年度比34.4%減)となりました。
開発計画の見直しを含む事業計画の修正などに伴い、条件付対価公正価値の費用戻入が増加しましたが、無形資産である仕掛研究開発および販売権の減損損失や当社における生産拠点の統合などに伴う事業構造改善費用が発生したことなどにより、コア営業利益の減益に加え、営業利益はさらに減益となりました。
■ 税引前当期利益は650億円(前連結会計年度比23.4%減)となりました。
受取利息の増加に加え、当連結会計年度末は前連結会計年度末に比べ、為替換算レートが米ドルに対し円安に振れたことから、当社が保有する外貨建て金融資産において為替差益が発生しました。これらの結果、金融収益が増加しました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期利益は486億円(前連結会計年度比9.0%減)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益の売上収益に対する比率は10.6%となり、前連結会計年度に比べ0.8%減少しました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
【日本】
■ 売上収益は1,293億円(前連結会計年度比9.8%減)となりました。
「トルリシティ」、2型糖尿病治療剤「シュアポスト」、ファブリー病治療剤「リプレガル」などの売上は増加しましたが、薬価改定による影響に加え、新たに後発医薬品が発売された高血圧症治療剤「アイミクス」をはじめ長期収載品の売上減少が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント利益は251億円(前連結会計年度比37.6%減)となりました。
薬価改定や長期収載品の売上減少による売上総利益の減少の影響が大きく、大幅な減益となりました。
【北米】
■ 売上収益は2,525億円(前連結会計年度比4.9%増)となりました。
「ラツーダ」が堅調に推移したことに加え、「アプティオム」の売上が伸長したことなどから、増収となりました。
■ コアセグメント利益は1,145億円(前連結会計年度比4.6%増)となりました。
売上増加に伴う売上総利益の増加が大きく、増益となりました。
【中国】
■ 売上収益は247億円(前連結会計年度比5.6%増)となりました。
主力品である「メロペン」などの売上が増加したことにより、増収となりました。
■ コアセグメント利益は123億円(前連結会計年度比14.8%増)となりました。
売上増加に伴う売上総利益の増加により、増益となりました。
【海外その他】
■ 売上収益は143億円(前連結会計年度比13.2%減)となりました。
東南アジアにおける「メロペン」の売上は増加しましたが、その他の輸出が減少したことなどから、全体では減収となりました。
■ コアセグメント利益は50億円(前連結会計年度比2.3%減)となりました。
売上の減少などにより、微減となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品、診断薬などの販売を行っており、これらの売上収益は384億円(前連結会計年度比10.3%減)、コアセグメント利益は31億円(前連結会計年度比14.2%増)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本97,596△34.2
北米192,338△13.9
中国27,96923.4
海外その他11,028△8.5
その他36△64.4
合計328,967△19.1

(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。
2 セグメント間取引については相殺消去しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4 当連結会計年度において、日本セグメントにおける生産実績が著しく減少しました。これは、薬価改定による影響に加え、主に長期収載品の生産数量が減少したことによるものであります。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本16,92530.0
北米1,392△45.0
中国--
海外その他--
その他28,612△20.7
合計46,929△9.1

(注) 1 金額は仕入価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本129,287△9.8
北米252,5424.9
中国24,7495.6
海外その他14,287△13.2
その他38,402△10.3
合計459,267△1.6

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
マッケソン社(米国)82,50617.784,45318.4
カーディナル社(米国)64,30113.869,02515.0
アメリソースバーゲン社(米国)59,78312.866,69214.5

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(4) 財政状態
資産については、非流動資産は、繰延税金資産が増加したことに加え、のれんが為替換算により増加しましたが、減損損失の計上などにより無形資産が減少した結果、前連結会計年度末に比べ微増となりました。
流動資産は、現金及び現金同等物が減少し、その他の金融資産が大きく増加しました。また、棚卸資産や営業債権及びその他の債権が増加した結果、前連結会計年度末に比べ247億円増加しました。
これらの結果、総資産は前連結会計年度末に比べ250億円増加し、8,347億円となりました。
負債については、引当金が増加しましたが、社債の償還などによる有利子負債の減少に加え、営業債務及びその他の債務やその他の金融負債が減少した結果、前連結会計年度末に比べ204億円減少し、3,366億円となりました。
資本については、主に利益剰余金とその他の資本の構成要素における在外営業活動体の換算差額などが増加した結果、前連結会計年度末に比べ454億円増加し、4,981億円となりました。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は59.7%となりました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益が減益となったことに加え、営業債務及びその他の債務の減少などによるキャッシュの減少要因に加え、法人所得税の支払額が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ447億円収入が減少し、487億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、無形資産や投資の取得による支出が減少しましたが、短期貸付金の貸付が増加したことや事業譲渡による収入が当連結会計年度には発生しなかったことなどにより、前連結会計年度に比べ185億円支出が増加し、350億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額は増加しましたが、借入の返済による支出が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ微減の、286億円の支出となりました。
上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物の為替換算による影響額を加えた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,373億円となり、前連結会計年度末に比べ105億円減少しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより、必要資金を調達し、買収で取得した開発品への先行投資などを行っております。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することであります。
当社グループでは、現金及び現金同等物に短期貸付金を加えた金額を運用資金と定義しており、当連結会計年度末の運用資金は1,800億円であります。また、流動比率(流動資産/流動負債)は188.4%であり、高い資金の流動性を維持しております。
(6) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章および第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(のれんの償却)
日本基準では、のれんの償却は、その効果が発現すると見積られる期間(20年)にわたり均等償却を行っておりましたが、IFRSでは、のれんの償却は行われず、毎期減損テストを行っております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が6,700百万円減少(前連結会計年度は6,696百万円減少)しております。
(研究開発費の資産計上)
日本基準では、すべての研究開発費を費用処理しておりましたが、IFRSでは、これらのうち一定の要件を満たしたものを無形資産として計上し、見積耐用年数にわたって定額法で償却しております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が230百万円増加(前連結会計年度は364百万円増加)し、研究開発費が222百万円減少(前連結会計年度は5,100百万円減少)しております。
(条件付対価の負債計上)
日本基準では、買収時に日本基準による企業結合が適用された取引に係る条件付対価について、企業結合後にその交付または引渡しが確実となる時点まで負債を認識しておりませんでしたが、IFRSでは、条件付対価の公正価値を測定し、当該公正価値を金融負債として計上しております。当該金融負債の公正価値の増減については、販売費及び一般管理費として認識しております。
この結果、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が3,993百万円減少(前連結会計年度は14,744百万円減少)しております。