訂正有価証券報告書-第204期(2023/04/01-2024/03/31)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(以下「IFRS」)に準拠して作成しています。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記3.重要性がある会計方針」に記載しています。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりです。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける処分コスト控除後の公正価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用いて現在価値に割り引いて算定しています。
上市後の無形資産の将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる製品の販売価格、関連する疾患領域における患者数及び当該製品のシェア等に基づく製品の収益予測及び固定費の予測等の多くの前提条件が含まれています。また、のれんを含む資金生成単位の将来キャッシュ・フローの見積りは、上述の前提条件に加え、開発品に係る研究開発活動の成功確率等を勘案した開発品の収益予測等の前提条件が含まれています。これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、のれん及び無形資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しています。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、引当金の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しています。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて見積もった将来の各事業年度の課税所得を前提としています。当該将来の課税所得の見積りは、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、繰延税金資産の金額に重要な影響を生じさせる可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症が収束し、経済活動の正常化が進むなか、米国では堅調な個人消費を背景に景気の回復が継続するなど、総じて持ち直しの動きが見られました。一方、地政学的リスクの高まりや、世界的な物価上昇、不安定な為替変動など、先行きが不透明な状況が続きました。わが国経済についても、景気は緩やかな回復基調を取り戻しましたが、物価上昇の影響により内需は力強さを欠く状況が続きました。
医薬品業界では、各国において薬剤費抑制策が一段と進むなか、新薬開発の難度の高まり、研究開発費の高騰、競争の激化などにより、事業の予見性が低下しています。
このような状況のもと、当社グループは、2023年度を起点とした2027年度までの5か年の「中期経営計画2027」を2023年4月に発表し、これに基づき事業活動を進めてまいりました。しかしながら、北米事業における基幹3製品の売上収益の伸びが想定を下回ったことにより、事業予想を見直した結果、特許権などの無形資産やのれんにおいて多額の減損損失を計上することとなりました。
日本においては、精神神経領域では、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」ならびに非定型抗精神病薬「ラツーダ」および「ロナセンテープ」を中心に情報提供活動に注力しました。糖尿病領域では、2型糖尿病治療剤「エクア」および「エクメット」の販売拡大に努めました。2型糖尿病治療剤「ツイミーグ」については、想定以上の需要の増加に伴い在庫が逼迫したため、2023年4月から限定出荷としましたが、生産体制の強化等の対応を行ったことにより、2023年12月に通常出荷を再開しました。また、住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を三井物産株式会社に譲渡する手続が2023年5月に完了しました。
北米においては、基幹3製品および他家培養胸腺組織「リサイミック」の販売に注力しました。また、分散していた機能と人材を集約し、より強固な事業基盤を構築する目的で2023年7月に米国グループ会社を再編し、人員削減を行いました。しかしながら、基幹3製品の売上収益の伸びが想定を下回る見込みとなったことから、組織運営の更なる効率化を図るため、2024年3月にSumitomo Pharma America, Inc.において追加の人員削減等の合理化を行いました。
アジアにおいては、主力製品であるカルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の販売に引き続き注力しました。また、中国では2023年11月に市中肺炎治療剤「ゼンレタ」の承認を取得しました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
■ 売上収益は、3,146億円(前連結会計年度比43.4%減)となりました。
基幹3製品の売上は増加しましたが、主力製品であった「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了による売上減少の影響が大きく、また、連結子会社であった住友ファーマフード&ケミカル株式会社および住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、当該2社が当社グループ傘下でなくなったことなどから、大幅な減収となりました。
■ コア営業損益は、1,330億円の損失(前連結会計年度は164億円の利益)となりました。
北米グループ会社の再編等により販売費及び一般管理費および研究開発費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、コア営業損失となりました。
■ 営業損益は、3,549億円の損失(前連結会計年度は770億円の損失)となりました。
北米事業の事業予想を見直したことにより、「マイフェンブリー」に係る特許権(無形資産)の一部およびのれんの一部について、それぞれ1,335億円および359億円を減損したことに加え、一部の開発品目の開発を中止したことにより、当該開発品に係る仕掛研究開発(無形資産)について106億円を減損するなど、総額1,809億円の減損損失を計上しました。また、北米グループ会社の再編および追加の合理化に伴う事業構造改善費用を計上しました。これらの非経常項目に加え、コア営業損失となったことにより、営業損失が大幅に増加しました。
■ 税引前当期損益は、3,231億円の損失(前連結会計年度は479億円の損失)となりました。
円安の進行による為替差益の計上等により、金融収益は増加しましたが、営業損失の増加の影響が大きく、税引前当期損失が増加しました。
■ 当期損益は、3,149億円の損失(前連結会計年度は967億円の損失)となりました。
税引前当期損失が増加したことにより、当期損失が増加しました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期損益は、3,150億円の損失(前連結会計年度は745億円の損失)となりました。
当期損失の増加の影響が大きく、非支配持分に帰属する利益を控除した親会社の所有者に帰属する当期損失が増加しました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更したことに伴い、前連結会計年度についても変更後の報告セグメント区分に組み替えて比較を行っています。当該報告セグメントの変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記4.事業セグメント (2) 報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。
<日本>■ 売上収益は、1,147億円(前連結会計年度比37.6%減)となりました。
「ラツーダ」や「ツイミーグ」などの売上が伸長しましたが、2022年12月に2型糖尿病治療剤「トルリシティ」の販売提携が終了したことや、前期にはライセンス契約の契約一時金の売上収益計上があったことに加え、国内連結子会社2社について、それぞれの全株式を譲渡したことに伴い、当該2社が当社グループ傘下でなくなったことなどから、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、134億円(前連結会計年度比31.6%減)となりました。
販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、減益となりました。
<北米>■ 売上収益は、1,590億円(前連結会計年度比51.6%減)となりました。
基幹3製品や「リサイミック」の売上は増加しましたが、主力製品であった「ラツーダ」の米国での独占販売期間が2023年2月に終了したことによる売上減少の影響が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント損益は、802億円の損失(前連結会計年度は322億円の利益)となりました。
「ラツーダ」の独占販売期間終了および北米グループ会社の再編等に伴い販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、コアセグメント損失となりました。
<アジア>■ 売上収益は、409億円(前連結会計年度比6.0%減)となりました。
東南アジアにおいて売上収益が増加しましたが、中国において薬剤費抑制策の対象となった「メロペン」の売上減少の影響が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、184億円(前連結会計年度比14.2%減)となりました。
減収による売上総利益の減少により、減益となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格により換算したものです。
2 セグメント間取引については相殺消去しています。
3 当連結会計年度において、北米セグメントにおける生産実績が著しく減少しました。これは、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了によるものです。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は仕入価格によっています。
2 当連結会計年度において、日本セグメントにおける仕入実績が著しく減少しました。これは、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社が当社グループ傘下でなくなったことに加え、当社において「トルリシティ」の販売提携が終了したことによるものです。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っていません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 当連結会計年度において、日本セグメントにおける販売実績が著しく減少しました。これは、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社が当社グループ傘下でなくなったことに加え、当社において「トルリシティ」の販売提携が終了したことによるものです。また、北米セグメントにおいても販売実績が著しく減少しました。これは、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了によるものです。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
(注) 当連結会計年度においてAmerisourceBergen Corporationから社名変更しています。
(4) 財政状態
資産については、前連結会計年度末に比べ2,272億円減少し、9,075億円となりました。
非流動資産では、当社が保有する投資有価証券の公正価値評価の変動等により、その他の金融資産が増加しましたが、減損損失の計上により無形資産やのれんが減少した結果、前連結会計年度末に比べ1,149億円減少しました。
流動資産では、現金及び現金同等物が減少したことに加え、営業債権及びその他の債権やその他の金融資産が減少した結果、前連結会計年度末に比べ1,123億円減少しました。
負債については、北米での売上割戻金にかかる引当金や未払法人所得税に加えて、その他の非流動負債やその他の流動負債等が減少しましたが、金融機関からの借入金等が増加した結果、前連結会計年度末に比べ234億円増加し、7,514億円となりました。なお、社債及び借入金は合計で4,189億円となり、前連結会計年度末に比べ842億円増加しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、保有投資有価証券の公正価値変動および円安の影響によりその他の資本の構成要素が増加しましたが、利益剰余金が親会社の所有者に帰属する当期損失の計上により大きく減少した結果、前連結会計年度末に比べ2,507億円減少し、1,561億円となりました。
この結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ2,506億円減少し、1,561億円となり、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は17.2%となりました。
また、当社大分工場の一部を親会社である住友化学株式会社に2024年4月に譲渡することに伴い、関連する資産については売却目的で保有する資産に分類しています。
なお、前連結会計年度に株式譲渡契約が締結されていた連結子会社住友ファーマアニマルヘルスの株式譲渡については、2023年5月31日付けで手続きが完了しました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失などの非資金損益項目を除いた当期損失の増加に加え、引当金の減少や法人所得税の支払額の増加などにより、前連結会計年度に比べ2,538億円収入が減少し、2,419億円の支出となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却や住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡に伴う子会社の支配喪失による増加、短期貸付金の減少等により、330億円の収入となりました。なお、前連結会計年度は当連結会計年度を上回る子会社の支配喪失による収入や無形資産の売却による収入などがあったため、前連結会計年度に比べ194億円収入が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの短期借入等により、779億円の収入となりました。なお、前連結会計年度はMyovant Sciences Ltd.の完全子会社化による非支配持分からの子会社持分取得による支出などがあったため、前連結会計年度に比べ2,247億円収入が増加しました。
上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物に係る換算差額および売却目的で保有する資産への振替額を加えた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は290億円となり、前連結会計年度末に比べ1,144億円減少しました。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(以下「IFRS」)に準拠して作成しています。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記3.重要性がある会計方針」に記載しています。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりです。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける処分コスト控除後の公正価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用いて現在価値に割り引いて算定しています。
上市後の無形資産の将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる製品の販売価格、関連する疾患領域における患者数及び当該製品のシェア等に基づく製品の収益予測及び固定費の予測等の多くの前提条件が含まれています。また、のれんを含む資金生成単位の将来キャッシュ・フローの見積りは、上述の前提条件に加え、開発品に係る研究開発活動の成功確率等を勘案した開発品の収益予測等の前提条件が含まれています。これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、のれん及び無形資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しています。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、引当金の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しています。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて見積もった将来の各事業年度の課税所得を前提としています。当該将来の課税所得の見積りは、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、繰延税金資産の金額に重要な影響を生じさせる可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症が収束し、経済活動の正常化が進むなか、米国では堅調な個人消費を背景に景気の回復が継続するなど、総じて持ち直しの動きが見られました。一方、地政学的リスクの高まりや、世界的な物価上昇、不安定な為替変動など、先行きが不透明な状況が続きました。わが国経済についても、景気は緩やかな回復基調を取り戻しましたが、物価上昇の影響により内需は力強さを欠く状況が続きました。
医薬品業界では、各国において薬剤費抑制策が一段と進むなか、新薬開発の難度の高まり、研究開発費の高騰、競争の激化などにより、事業の予見性が低下しています。
このような状況のもと、当社グループは、2023年度を起点とした2027年度までの5か年の「中期経営計画2027」を2023年4月に発表し、これに基づき事業活動を進めてまいりました。しかしながら、北米事業における基幹3製品の売上収益の伸びが想定を下回ったことにより、事業予想を見直した結果、特許権などの無形資産やのれんにおいて多額の減損損失を計上することとなりました。
日本においては、精神神経領域では、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」ならびに非定型抗精神病薬「ラツーダ」および「ロナセンテープ」を中心に情報提供活動に注力しました。糖尿病領域では、2型糖尿病治療剤「エクア」および「エクメット」の販売拡大に努めました。2型糖尿病治療剤「ツイミーグ」については、想定以上の需要の増加に伴い在庫が逼迫したため、2023年4月から限定出荷としましたが、生産体制の強化等の対応を行ったことにより、2023年12月に通常出荷を再開しました。また、住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を三井物産株式会社に譲渡する手続が2023年5月に完了しました。
北米においては、基幹3製品および他家培養胸腺組織「リサイミック」の販売に注力しました。また、分散していた機能と人材を集約し、より強固な事業基盤を構築する目的で2023年7月に米国グループ会社を再編し、人員削減を行いました。しかしながら、基幹3製品の売上収益の伸びが想定を下回る見込みとなったことから、組織運営の更なる効率化を図るため、2024年3月にSumitomo Pharma America, Inc.において追加の人員削減等の合理化を行いました。
アジアにおいては、主力製品であるカルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の販売に引き続き注力しました。また、中国では2023年11月に市中肺炎治療剤「ゼンレタ」の承認を取得しました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度 (2023年3月期) | 当連結会計年度 (2024年3月期) | 増減 | 増減率 (%) | |
売上収益 | 5,555 | 3,146 | △2,410 | △43.4 |
コア営業利益 | 164 | △1,330 | △1,493 | - |
営業利益 | △770 | △3,549 | △2,779 | - |
税引前当期利益 | △479 | △3,231 | △2,752 | - |
当期利益 | △967 | △3,149 | △2,182 | - |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | △745 | △3,150 | △2,405 | - |
■ 売上収益は、3,146億円(前連結会計年度比43.4%減)となりました。
基幹3製品の売上は増加しましたが、主力製品であった「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了による売上減少の影響が大きく、また、連結子会社であった住友ファーマフード&ケミカル株式会社および住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、当該2社が当社グループ傘下でなくなったことなどから、大幅な減収となりました。
■ コア営業損益は、1,330億円の損失(前連結会計年度は164億円の利益)となりました。
北米グループ会社の再編等により販売費及び一般管理費および研究開発費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、コア営業損失となりました。
■ 営業損益は、3,549億円の損失(前連結会計年度は770億円の損失)となりました。
北米事業の事業予想を見直したことにより、「マイフェンブリー」に係る特許権(無形資産)の一部およびのれんの一部について、それぞれ1,335億円および359億円を減損したことに加え、一部の開発品目の開発を中止したことにより、当該開発品に係る仕掛研究開発(無形資産)について106億円を減損するなど、総額1,809億円の減損損失を計上しました。また、北米グループ会社の再編および追加の合理化に伴う事業構造改善費用を計上しました。これらの非経常項目に加え、コア営業損失となったことにより、営業損失が大幅に増加しました。
■ 税引前当期損益は、3,231億円の損失(前連結会計年度は479億円の損失)となりました。
円安の進行による為替差益の計上等により、金融収益は増加しましたが、営業損失の増加の影響が大きく、税引前当期損失が増加しました。
■ 当期損益は、3,149億円の損失(前連結会計年度は967億円の損失)となりました。
税引前当期損失が増加したことにより、当期損失が増加しました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期損益は、3,150億円の損失(前連結会計年度は745億円の損失)となりました。
当期損失の増加の影響が大きく、非支配持分に帰属する利益を控除した親会社の所有者に帰属する当期損失が増加しました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更したことに伴い、前連結会計年度についても変更後の報告セグメント区分に組み替えて比較を行っています。当該報告セグメントの変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記4.事業セグメント (2) 報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。
<日本>■ 売上収益は、1,147億円(前連結会計年度比37.6%減)となりました。
「ラツーダ」や「ツイミーグ」などの売上が伸長しましたが、2022年12月に2型糖尿病治療剤「トルリシティ」の販売提携が終了したことや、前期にはライセンス契約の契約一時金の売上収益計上があったことに加え、国内連結子会社2社について、それぞれの全株式を譲渡したことに伴い、当該2社が当社グループ傘下でなくなったことなどから、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、134億円(前連結会計年度比31.6%減)となりました。
販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、減益となりました。
<北米>■ 売上収益は、1,590億円(前連結会計年度比51.6%減)となりました。
基幹3製品や「リサイミック」の売上は増加しましたが、主力製品であった「ラツーダ」の米国での独占販売期間が2023年2月に終了したことによる売上減少の影響が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント損益は、802億円の損失(前連結会計年度は322億円の利益)となりました。
「ラツーダ」の独占販売期間終了および北米グループ会社の再編等に伴い販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、コアセグメント損失となりました。
<アジア>■ 売上収益は、409億円(前連結会計年度比6.0%減)となりました。
東南アジアにおいて売上収益が増加しましたが、中国において薬剤費抑制策の対象となった「メロペン」の売上減少の影響が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、184億円(前連結会計年度比14.2%減)となりました。
減収による売上総利益の減少により、減益となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額 (百万円) | 前期比 (%) |
日本 | 83,021 | 7.5 |
北米 | 159,637 | △36.1 |
アジア | 40,595 | 6.3 |
合計 | 283,253 | △22.4 |
(注) 1 金額は販売価格により換算したものです。
2 セグメント間取引については相殺消去しています。
3 当連結会計年度において、北米セグメントにおける生産実績が著しく減少しました。これは、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了によるものです。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額 (百万円) | 前期比 (%) |
日本 | 30,285 | △64.8 |
北米 | 13,159 | 55.9 |
アジア | - | - |
合計 | 43,444 | △54.0 |
(注) 1 金額は仕入価格によっています。
2 当連結会計年度において、日本セグメントにおける仕入実績が著しく減少しました。これは、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社が当社グループ傘下でなくなったことに加え、当社において「トルリシティ」の販売提携が終了したことによるものです。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っていません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額 (百万円) | 前期比 (%) |
日本 | 114,657 | △37.6 |
北米 | 159,037 | △51.6 |
アジア | 40,864 | △6.0 |
合計 | 314,558 | △43.4 |
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 当連結会計年度において、日本セグメントにおける販売実績が著しく減少しました。これは、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社が当社グループ傘下でなくなったことに加え、当社において「トルリシティ」の販売提携が終了したことによるものです。また、北米セグメントにおいても販売実績が著しく減少しました。これは、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了によるものです。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額 (百万円) | 割合 (%) | 金額 (百万円) | 割合 (%) | |
Mckesson Corporation(米国) | 101,891 | 18.3 | 44,793 | 14.2 |
Cencora, Inc.(米国) (注) | 86,375 | 15.5 | 38,637 | 12.3 |
Cardinal Health, Inc.(米国) | 97,085 | 17.5 | 33,874 | 10.8 |
(注) 当連結会計年度においてAmerisourceBergen Corporationから社名変更しています。
(4) 財政状態
資産については、前連結会計年度末に比べ2,272億円減少し、9,075億円となりました。
非流動資産では、当社が保有する投資有価証券の公正価値評価の変動等により、その他の金融資産が増加しましたが、減損損失の計上により無形資産やのれんが減少した結果、前連結会計年度末に比べ1,149億円減少しました。
流動資産では、現金及び現金同等物が減少したことに加え、営業債権及びその他の債権やその他の金融資産が減少した結果、前連結会計年度末に比べ1,123億円減少しました。
負債については、北米での売上割戻金にかかる引当金や未払法人所得税に加えて、その他の非流動負債やその他の流動負債等が減少しましたが、金融機関からの借入金等が増加した結果、前連結会計年度末に比べ234億円増加し、7,514億円となりました。なお、社債及び借入金は合計で4,189億円となり、前連結会計年度末に比べ842億円増加しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、保有投資有価証券の公正価値変動および円安の影響によりその他の資本の構成要素が増加しましたが、利益剰余金が親会社の所有者に帰属する当期損失の計上により大きく減少した結果、前連結会計年度末に比べ2,507億円減少し、1,561億円となりました。
この結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ2,506億円減少し、1,561億円となり、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は17.2%となりました。
また、当社大分工場の一部を親会社である住友化学株式会社に2024年4月に譲渡することに伴い、関連する資産については売却目的で保有する資産に分類しています。
なお、前連結会計年度に株式譲渡契約が締結されていた連結子会社住友ファーマアニマルヘルスの株式譲渡については、2023年5月31日付けで手続きが完了しました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失などの非資金損益項目を除いた当期損失の増加に加え、引当金の減少や法人所得税の支払額の増加などにより、前連結会計年度に比べ2,538億円収入が減少し、2,419億円の支出となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却や住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡に伴う子会社の支配喪失による増加、短期貸付金の減少等により、330億円の収入となりました。なお、前連結会計年度は当連結会計年度を上回る子会社の支配喪失による収入や無形資産の売却による収入などがあったため、前連結会計年度に比べ194億円収入が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの短期借入等により、779億円の収入となりました。なお、前連結会計年度はMyovant Sciences Ltd.の完全子会社化による非支配持分からの子会社持分取得による支出などがあったため、前連結会計年度に比べ2,247億円収入が増加しました。
上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物に係る換算差額および売却目的で保有する資産への振替額を加えた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は290億円となり、前連結会計年度末に比べ1,144億円減少しました。