有価証券報告書-第201期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりであります。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける使用価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用い、現在価値に割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる無形資産に関する開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、製品及び開発品の収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産
公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する金融商品のうち、非上場株式の一部については、その公正価値を割引キャッシュ・フロー法により算定しております。割引キャッシュ・フロー法に用いる将来キャッシュ・フローの見積りには、非上場会社における開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しております。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・条件付対価の公正価値
企業結合により生じた条件付対価は、特定の開発品の開発進捗や販売後の売上収益に応じて支払う対価等であり、その公正価値は、それらが達成される可能性や時間的価値を考慮して算定しております。特定の開発品の開発進捗や将来の売上収益の予測等及び割引率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴い、日本を含む各国・地域において情報提供活動の制限や臨床試験の遅延など、当社グループの事業活動に様々な影響が生じております。
当社グループは、製品の安定供給に努めるとともに、患者さん、関係者および従業員の安全を最優先に事業活動を進めてまいりますが、今後もこの状況が続けば、事業活動がさらなる影響を受ける可能性があり、その場合は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により経済活動が大きく抑制されたことを受け、景気は大幅に落ち込み、全体として厳しい状況で推移しました。わが国経済についても、新型コロナウイルス感染症の影響により個人消費や輸出が大きく減少するなど、厳しい状況で推移し、依然として先行きは不透明な状況が続いています。
医薬品業界においては、日本において薬価中間年改定の対象範囲が拡大されるなど先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進が一段と進むなか、研究開発費は益々高騰し、競争は激化しています。一方で、デジタル創薬の取組強化や予防・未病領域の事業強化などが進展しています。
このような状況のもと、当社グループは、2018年度を起点とする5か年の「中期経営計画2022」に基づき、事業活動を進めてまいりました。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、当社グループが事業を展開する各国・地域において、情報提供活動の制限や臨床試験の遅延が生じるなど、事業活動に様々な影響が生じました。これに対して、当社グループは、原材料の確保から製品の製造および販売に至る各段階の活動が停滞しないよう細心の注意を払い、医薬品を患者さんのもとに確実に届けてまいりました。また、オンライン面談やデジタルツールを活用した情報提供活動等を行うなど、医療関係者、取引先、従業員等の安全を最優先に事業活動を進めてまいりました。
日本においては、「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」などの主力製品の売上拡大に努めるとともに、当連結会計年度に販売を開始した「ラツーダ」などの新製品の早期の市場浸透を図るべく、情報提供活動に注力しました。
北米においては、サノビオン社が、グローバル戦略品である「ラツーダ」の一層の売上拡大に取り組むとともに、他の主力製品や新製品の売上拡大に向けた事業活動を行いました。
スミトバント社においては、その子会社であるマイオバント社が、レルゴリクスについて、2020年12月に、ファイザー社との間で、がん領域および婦人科領域における北米での共同開発および共同販売に関する契約を締結しました。マイオバント社は、2021年1月に、「オルゴビクス」を米国において発売し、上記契約に基づきファイザー社とのコ・プロモーションを開始しました。
同じくスミトバント社の子会社であるユーロバント社が、2020年12月に「ジェムテサ」の米国での承認を取得しました。また、スミトバント社は、2021年3月にユーロバント社を完全子会社としました。
中国においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、「メロペン」の医療機関での使用機会が減少するなど、厳しい環境のなか、住友制葯(蘇州)有限公司が、「ラツーダ」等の売上拡大に向けた販売活動に取り組みました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
■ 売上収益は、5,160億円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。
日本セグメントにおいて「エクア」および「エクメット」の販売が通年で寄与したこと、また、北米セグメントにおいて「ラツーダ」などの売上が拡大したことやレルゴリクス関連の収益認識により、増収となりました。
■ コア営業利益は、696億円(前連結会計年度比3.3%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、スミトバント社およびその子会社の費用が通期での負担となり、コアベースの販売費及び一般管理費ならびに研究開発費が大きく増加したため、コア営業利益は減益となりました。
■ 営業利益は、712億円(前連結会計年度比14.4%減)となりました。
当連結会計年度は、がん領域におけるナパブカシンの開発中止や事業計画の見直しに伴い、条件付対価公正価値の減少による費用の戻入とそれを上回る無形資産の減損損失を計上しましたが、旧茨木工場の資産売却による固定資産売却益があり、営業利益はコア営業利益に比べ増加しました。前連結会計年度は、条件付対価公正価値の減少による費用の戻入が無形資産の減損損失を上回っていたこともあり、当連結会計年度の営業利益は前連結会計年度と比べ減益となりました。
■ 税引前当期利益は、779億円(前連結会計年度比7.3%減)となりました。
当連結会計年度末の円安による為替差益の計上により、金融収益が金融費用を上回ったことから、税引前当期利益は営業利益に比べ増加しました。
■ 当期利益は、368億円(前連結会計年度比2.5%増)となりました。
前連結会計年度は米国における繰延税金資産の取崩しがありましたが、当連結会計年度にはそのような要因がないことから法人所得税が減少し、当期利益は増益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、562億円(前連結会計年度比38.0%増)となりました。
スミトバント社傘下の子会社の損失を通期にわたって計上したことにより、当期利益から非支配持分に帰属する損失を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、大幅な増益となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する当期利益の売上収益に対する比率は10.9%となりました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>■ 売上収益は、1,525億円(前連結会計年度比9.2%増)となりました。
「エクア」および「エクメット」の売上高が通年で計上されたことに加え、「トルリシティ」の伸長や新製品「ラツーダ」の販売による増収が、長期収載品などの販売減少や薬価改定の影響を上回り、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、243億円(前連結会計年度比6.1%増)となりました。
増収による売上総利益の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、販売関連費用などの販売費及び一般管理費が減少したことから、増益となりました。
<北米>■ 売上収益は、2,815億円(前連結会計年度比7.3%増)となりました。
「ラツーダ」や、抗てんかん剤「アプティオム」が引き続き売上を伸ばしたことに加え、レルゴリクスの共同開発および共同販売に関する契約などに伴う収入の一部を売上収益に計上したことから、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、1,169億円(前連結会計年度比0.5%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、スミトバント社およびその子会社の費用が通期での負担となるなど、販売費及び一般管理費が増加したため、減益となりました。
<中国>■ 売上収益は、278億円(前連結会計年度比2.7%減)となりました。
「メロペン」の売上減少の影響が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、132億円(前連結会計年度比8.1%減)となりました。
減収による売上総利益の減少などにより、減益となりました。
<海外その他>■ 売上収益は、172億円(前連結会計年度比16.5%増)となりました。
東南アジアにおける「メロペン」の販売が減少しましたが、その他の輸出が増加し、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、87億円(前連結会計年度比35.9%増)となりました。
増収により売上総利益が増加したことなどから、増益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品などの販売を行っており、これらの売上収益は369億円(前連結会計年度比1.3%減)、コアセグメント利益は36億円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。
2 セグメント間取引については相殺消去しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4 当連結会計年度において、北米セグメントにおける生産実績が著しく減少しました。これは、「ラツーダ」等の在庫調整によるものであります。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は仕入価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当連結会計年度において、日本セグメントにおける仕入実績が著しく増加しました。これは、「トルリシティ」や、「エクア」および「エクメット」の売上高の増加等によるものであります。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(4) 財政状態
資産については、非流動資産では、無形資産が償却や減損により減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ441億円減少しました。
流動資産は、棚卸資産や現金及び現金同等物などの増加により、前連結会計年度末に比べ957億円増加しました。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ516億円増加し、1兆3,081億円となりました。
負債については、連結子会社における開発および販売提携契約の締結により、その他の非流動負債に含まれる前受収益が増加したことに加え、引当金などが増加しました。また、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を行った結果、非流動負債の社債及び借入金が増加し、流動負債の借入金が減少しました。
これらの結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ393億円増加し、6,599億円となりました。
資本については、親会社の所有者に帰属する持分は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ479億円増加し、5,806億円となりました。非支配持分は、スミトバント社傘下の子会社の業績が損失となったことに加え、当連結会計年度においてユーロバント社を完全子会社化したことにより、前連結会計年度末に比べ356億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ123億円増加し、6,482億円となりました。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は44.4%となりました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額が増加しましたが、引当金の増加などのキャッシュの増加要因や連結子会社における開発および販売提携契約の締結による契約一時金の受領などにより、前連結会計年度に比べ895億円収入が増加し、1,356億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当社旧茨木工場の譲渡により有形固定資産の売却による収入が増加しました。前連結会計年度には、ロイバント社株式の取得など、投資の取得による支出や、スミトバント社およびその傘下の子会社の支配獲得による支出があったため、前連結会計年度に比べ3,216億円支出が減少し、89億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度には、ロイバント社との戦略的提携の対価の支払いのため短期借入による資金調達を実施しました。一方、当連結会計年度には、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を実施したことや、ユーロバント社の完全子会社化により、非支配持分からの子会社持分取得による支出が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ2,883億円収入が減少し、572億円の支出となりました。
上記の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,937億円となり、前連結会計年度末に比べ920億円増加しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより、必要資金を調達し、買収で取得した開発品への先行投資などを行っております。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することであります。
当連結会計年度においては、財務の健全性維持を考慮した劣後特約付社債の発行による1,200億円の資金調達を行うとともに、金融機関から1,250億円の長期借入を実施し、前連結会計年度にロイバント社との戦略的提携に係る資金として調達した短期借入金(ブリッジローン)2,700億円の借換えを実施しました。
当社グループでは、現金及び現金同等物に短期貸付金を加えた金額を運用資金と定義しております。当連結会計年度末の運用資金は2,214億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は165.3%であります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりであります。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける使用価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用い、現在価値に割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる無形資産に関する開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、製品及び開発品の収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産
公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する金融商品のうち、非上場株式の一部については、その公正価値を割引キャッシュ・フロー法により算定しております。割引キャッシュ・フロー法に用いる将来キャッシュ・フローの見積りには、非上場会社における開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しております。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・条件付対価の公正価値
企業結合により生じた条件付対価は、特定の開発品の開発進捗や販売後の売上収益に応じて支払う対価等であり、その公正価値は、それらが達成される可能性や時間的価値を考慮して算定しております。特定の開発品の開発進捗や将来の売上収益の予測等及び割引率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴い、日本を含む各国・地域において情報提供活動の制限や臨床試験の遅延など、当社グループの事業活動に様々な影響が生じております。
当社グループは、製品の安定供給に努めるとともに、患者さん、関係者および従業員の安全を最優先に事業活動を進めてまいりますが、今後もこの状況が続けば、事業活動がさらなる影響を受ける可能性があり、その場合は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により経済活動が大きく抑制されたことを受け、景気は大幅に落ち込み、全体として厳しい状況で推移しました。わが国経済についても、新型コロナウイルス感染症の影響により個人消費や輸出が大きく減少するなど、厳しい状況で推移し、依然として先行きは不透明な状況が続いています。
医薬品業界においては、日本において薬価中間年改定の対象範囲が拡大されるなど先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進が一段と進むなか、研究開発費は益々高騰し、競争は激化しています。一方で、デジタル創薬の取組強化や予防・未病領域の事業強化などが進展しています。
このような状況のもと、当社グループは、2018年度を起点とする5か年の「中期経営計画2022」に基づき、事業活動を進めてまいりました。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、当社グループが事業を展開する各国・地域において、情報提供活動の制限や臨床試験の遅延が生じるなど、事業活動に様々な影響が生じました。これに対して、当社グループは、原材料の確保から製品の製造および販売に至る各段階の活動が停滞しないよう細心の注意を払い、医薬品を患者さんのもとに確実に届けてまいりました。また、オンライン面談やデジタルツールを活用した情報提供活動等を行うなど、医療関係者、取引先、従業員等の安全を最優先に事業活動を進めてまいりました。
日本においては、「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」などの主力製品の売上拡大に努めるとともに、当連結会計年度に販売を開始した「ラツーダ」などの新製品の早期の市場浸透を図るべく、情報提供活動に注力しました。
北米においては、サノビオン社が、グローバル戦略品である「ラツーダ」の一層の売上拡大に取り組むとともに、他の主力製品や新製品の売上拡大に向けた事業活動を行いました。
スミトバント社においては、その子会社であるマイオバント社が、レルゴリクスについて、2020年12月に、ファイザー社との間で、がん領域および婦人科領域における北米での共同開発および共同販売に関する契約を締結しました。マイオバント社は、2021年1月に、「オルゴビクス」を米国において発売し、上記契約に基づきファイザー社とのコ・プロモーションを開始しました。
同じくスミトバント社の子会社であるユーロバント社が、2020年12月に「ジェムテサ」の米国での承認を取得しました。また、スミトバント社は、2021年3月にユーロバント社を完全子会社としました。
中国においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、「メロペン」の医療機関での使用機会が減少するなど、厳しい環境のなか、住友制葯(蘇州)有限公司が、「ラツーダ」等の売上拡大に向けた販売活動に取り組みました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度 (2020年3月期) | 当連結会計年度 (2021年3月期) | 増減 | 増減率 (%) | |
売上収益 | 4,827 | 5,160 | 332 | 6.9 |
コア営業利益 | 720 | 696 | △24 | △3.3 |
営業利益 | 832 | 712 | △120 | △14.4 |
税引前当期利益 | 839 | 779 | △61 | △7.3 |
当期利益 | 359 | 368 | 9 | 2.5 |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 408 | 562 | 155 | 38.0 |
■ 売上収益は、5,160億円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。
日本セグメントにおいて「エクア」および「エクメット」の販売が通年で寄与したこと、また、北米セグメントにおいて「ラツーダ」などの売上が拡大したことやレルゴリクス関連の収益認識により、増収となりました。
■ コア営業利益は、696億円(前連結会計年度比3.3%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、スミトバント社およびその子会社の費用が通期での負担となり、コアベースの販売費及び一般管理費ならびに研究開発費が大きく増加したため、コア営業利益は減益となりました。
■ 営業利益は、712億円(前連結会計年度比14.4%減)となりました。
当連結会計年度は、がん領域におけるナパブカシンの開発中止や事業計画の見直しに伴い、条件付対価公正価値の減少による費用の戻入とそれを上回る無形資産の減損損失を計上しましたが、旧茨木工場の資産売却による固定資産売却益があり、営業利益はコア営業利益に比べ増加しました。前連結会計年度は、条件付対価公正価値の減少による費用の戻入が無形資産の減損損失を上回っていたこともあり、当連結会計年度の営業利益は前連結会計年度と比べ減益となりました。
■ 税引前当期利益は、779億円(前連結会計年度比7.3%減)となりました。
当連結会計年度末の円安による為替差益の計上により、金融収益が金融費用を上回ったことから、税引前当期利益は営業利益に比べ増加しました。
■ 当期利益は、368億円(前連結会計年度比2.5%増)となりました。
前連結会計年度は米国における繰延税金資産の取崩しがありましたが、当連結会計年度にはそのような要因がないことから法人所得税が減少し、当期利益は増益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、562億円(前連結会計年度比38.0%増)となりました。
スミトバント社傘下の子会社の損失を通期にわたって計上したことにより、当期利益から非支配持分に帰属する損失を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、大幅な増益となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する当期利益の売上収益に対する比率は10.9%となりました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>■ 売上収益は、1,525億円(前連結会計年度比9.2%増)となりました。
「エクア」および「エクメット」の売上高が通年で計上されたことに加え、「トルリシティ」の伸長や新製品「ラツーダ」の販売による増収が、長期収載品などの販売減少や薬価改定の影響を上回り、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、243億円(前連結会計年度比6.1%増)となりました。
増収による売上総利益の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、販売関連費用などの販売費及び一般管理費が減少したことから、増益となりました。
<北米>■ 売上収益は、2,815億円(前連結会計年度比7.3%増)となりました。
「ラツーダ」や、抗てんかん剤「アプティオム」が引き続き売上を伸ばしたことに加え、レルゴリクスの共同開発および共同販売に関する契約などに伴う収入の一部を売上収益に計上したことから、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、1,169億円(前連結会計年度比0.5%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、スミトバント社およびその子会社の費用が通期での負担となるなど、販売費及び一般管理費が増加したため、減益となりました。
<中国>■ 売上収益は、278億円(前連結会計年度比2.7%減)となりました。
「メロペン」の売上減少の影響が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、132億円(前連結会計年度比8.1%減)となりました。
減収による売上総利益の減少などにより、減益となりました。
<海外その他>■ 売上収益は、172億円(前連結会計年度比16.5%増)となりました。
東南アジアにおける「メロペン」の販売が減少しましたが、その他の輸出が増加し、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、87億円(前連結会計年度比35.9%増)となりました。
増収により売上総利益が増加したことなどから、増益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品などの販売を行っており、これらの売上収益は369億円(前連結会計年度比1.3%減)、コアセグメント利益は36億円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 92,651 | 6.8 |
北米 | 236,170 | △37.1 |
中国 | 33,482 | 20.4 |
海外その他 | 10,536 | 24.0 |
その他 | 12 | △75.5 |
合計 | 372,851 | △25.2 |
(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。
2 セグメント間取引については相殺消去しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4 当連結会計年度において、北米セグメントにおける生産実績が著しく減少しました。これは、「ラツーダ」等の在庫調整によるものであります。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 59,437 | 36.0 |
北米 | 7,813 | 226.4 |
中国 | - | - |
海外その他 | - | - |
その他 | 28,976 | △0.8 |
合計 | 96,226 | 27.8 |
(注) 1 金額は仕入価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当連結会計年度において、日本セグメントにおける仕入実績が著しく増加しました。これは、「トルリシティ」や、「エクア」および「エクメット」の売上高の増加等によるものであります。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 152,497 | 9.2 |
北米 | 281,493 | 7.3 |
中国 | 27,831 | △2.7 |
海外その他 | 17,233 | 16.5 |
その他 | 36,898 | △1.3 |
合計 | 515,952 | 6.9 |
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
マッケソン社(米国) | 87,812 | 18.2 | 95,732 | 18.6 |
カーディナル社(米国) | 75,502 | 15.6 | 82,143 | 15.9 |
アメリソースバーゲン社(米国) | 65,110 | 13.5 | 71,767 | 13.9 |
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(4) 財政状態
資産については、非流動資産では、無形資産が償却や減損により減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ441億円減少しました。
流動資産は、棚卸資産や現金及び現金同等物などの増加により、前連結会計年度末に比べ957億円増加しました。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ516億円増加し、1兆3,081億円となりました。
負債については、連結子会社における開発および販売提携契約の締結により、その他の非流動負債に含まれる前受収益が増加したことに加え、引当金などが増加しました。また、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を行った結果、非流動負債の社債及び借入金が増加し、流動負債の借入金が減少しました。
これらの結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ393億円増加し、6,599億円となりました。
資本については、親会社の所有者に帰属する持分は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ479億円増加し、5,806億円となりました。非支配持分は、スミトバント社傘下の子会社の業績が損失となったことに加え、当連結会計年度においてユーロバント社を完全子会社化したことにより、前連結会計年度末に比べ356億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ123億円増加し、6,482億円となりました。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は44.4%となりました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額が増加しましたが、引当金の増加などのキャッシュの増加要因や連結子会社における開発および販売提携契約の締結による契約一時金の受領などにより、前連結会計年度に比べ895億円収入が増加し、1,356億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当社旧茨木工場の譲渡により有形固定資産の売却による収入が増加しました。前連結会計年度には、ロイバント社株式の取得など、投資の取得による支出や、スミトバント社およびその傘下の子会社の支配獲得による支出があったため、前連結会計年度に比べ3,216億円支出が減少し、89億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度には、ロイバント社との戦略的提携の対価の支払いのため短期借入による資金調達を実施しました。一方、当連結会計年度には、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を実施したことや、ユーロバント社の完全子会社化により、非支配持分からの子会社持分取得による支出が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ2,883億円収入が減少し、572億円の支出となりました。
上記の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,937億円となり、前連結会計年度末に比べ920億円増加しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより、必要資金を調達し、買収で取得した開発品への先行投資などを行っております。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することであります。
当連結会計年度においては、財務の健全性維持を考慮した劣後特約付社債の発行による1,200億円の資金調達を行うとともに、金融機関から1,250億円の長期借入を実施し、前連結会計年度にロイバント社との戦略的提携に係る資金として調達した短期借入金(ブリッジローン)2,700億円の借換えを実施しました。
当社グループでは、現金及び現金同等物に短期貸付金を加えた金額を運用資金と定義しております。当連結会計年度末の運用資金は2,214億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は165.3%であります。