有価証券報告書-第203期(2022/04/01-2023/03/31)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しています。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりです。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける処分コスト控除後の公正価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用いて現在価値に割り引いて算定しています。将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる無形資産に関する開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、製品及び開発品の収益の予測、及び固定費の予測等の多くの前提条件が含まれていますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌期の連結財務諸表において、のれん及び無形資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しています。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しています。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて見積もった将来の各事業年度の課税所得を前提としています。当該将来の課税所得の見積りは、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌期の連結財務諸表において、繰延税金資産の金額に重要な影響を生じさせる可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和され、欧米を中心に景気の持ち直しが継続しましたが、ウクライナ情勢その他の地政学的リスクの高まり、エネルギー価格の高騰等による世界的な物価上昇の進行、金融引締めの進展などにより、不確実性が高まっています。わが国経済についても、不安定な為替動向や物価上昇などの影響を受けるなか、緩やかな持ち直しの動きが見られましたが、経済活動の本格的な正常化には至っていない状況です。
医薬品業界では、各国において薬剤費抑制策が一段と進むなど、依然として厳しい環境が続いています。
このような状況のもと、当社グループは、2018年度を起点とする5か年の「中期経営計画2022」の最終年度として、「成長エンジンの確立」と「柔軟で効率的な組織基盤づくり」を推進することにより、経営基盤の再構築に取り組んでまいりました。一方、今後の成長を目指す製品や開発品に注力すべく選択と集中を進めてまいりましたが、一部品目の事業予想や開発計画を見直した結果、特許権や仕掛研究開発などの無形資産において、減損損失を計上することとなりました。
日本においては、糖尿病領域では、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」の販売提携が2022年12月に終了しましたが、2022年9月に処方日数制限解除となった「ツイミーグ」ならびに「エクア」および「エクメット」の販売に引き続き注力しました。精神神経領域では、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」ならびに「ラツーダ」および「ロナセンテープ」を中心に情報提供活動に取り組みました。また、フロンティア事業では、株式会社メルティンMMIと共同開発した「MELTz 手指運動リハビリテーションシステム」の販売を開始しました。
北米においては、Sunovion Pharmaceuticals Inc.(以下「Sunovion 社」)は、「ラツーダ」の米国での独占販売期間が2023年2月に終了したことに加え、パーキンソン病のオフ症状治療剤「キンモビ」の販売中止の決定により、事業規模が大幅に縮小することとなりました。
Sumitovant Biopharma Ltd.(以下「Sumitovant 社」)においては、傘下の子会社が、「オルゴビクス」の販売拡大に注力するとともに、「マイフェンブリー」について、米国において、2022年8月に子宮内膜症に対する適応追加承認を取得しました。また、「ジェムテサ」の販売拡大に注力しました。なお、Sumitovant 社は、2023年3月にMyovant Sciences Ltd.(以下「Myovant 社」)を完全子会社化しました。
また、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了後の持続的成長に向けた取組の一環として、北米において分散していた機能と人材を集約し、より強固な事業基盤を構築する目的で、2023年7月に、米国グループ会社7法人をSunovion 社を存続会社として合併させることにより1つの事業会社に再編することを予定しており、当該再編に向けた準備を進めました。
中国においては、住友制葯(蘇州)有限公司が、主力製品である「メロペン」の販売に引き続き注力しました。
その他の事業においては、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を株式会社メディパルホールディングスに譲渡するための手続が2023年3月に完了しました。また、住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を三井物産株式会社に譲渡するための契約を2022年12月に締結しました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
■ 売上収益は、5,555億円(前連結会計年度比0.8%減)となりました。
北米、中国、海外その他の各セグメントは、為替換算の影響等により増収となりましたが、前連結会計年度におけるファブリー病治療剤「リプレガル」の販売移管および当連結会計年度における「トルリシティ」の販売提携終了や薬価改定の影響を受けた日本セグメントの減収が大きく、売上収益の合計では減収となりました。
■ コア営業利益は、164億円(前連結会計年度比72.0%減)となりました。
住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式譲渡、米国食品医薬品局(FDA)からの優先審査バウチャー※の売却や慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤「ブロバナ」および喘息治療剤「ゾペネックスHFA」の販売権譲渡等に伴うその他の収益の計上がありましたが、売上総利益の減少に加え、為替換算の影響等による販売費及び一般管理費や研究開発費の増加が大きく、コア営業利益は減益となりました。
※優先審査バウチャー:希少疾患等の開発困難な品目の承認取得企業に対し、当局から付与される他の品目における優先審査権
■ 営業損益は、770億円の損失(前連結会計年度比1,372億円の減益)となりました。
「キンモビ」の収益予測を見直したことにより、本製品に係る特許権(無形資産)を全額減損(554億円)しました。また、がん領域における開発品目dubermatinib(開発コード:TP-0903)の開発を中止したことにより、本開発品に係る仕掛研究開発(無形資産)を全額減損(206億円)するとともに、がん領域に係るのれんの一部についても減損(35億円)するなど、総額882億円の減損損失を計上しました。これに加えて、北米グループ会社における事業構造改善費用を計上したことにより、営業損失となりました。
■ 税引前当期損益は、479億円の損失(前連結会計年度比1,309億円の減益)となりました。
期末日の円安による為替差益の計上等により、金融収益から金融費用を差し引いた金融損益は増益となりましたが、営業損益の減益の影響が大きく、税引前当期損失となりました。
■ 当期損益は、967億円の損失(前連結会計年度比1,373億円の減益)となりました。
税引前当期損益が減益となったことにより、当期損益も減益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期損益は、745億円の損失(前連結会計年度比1,309億円の減益)となりました。
当期損益の減益の影響が大きく、非支配持分に帰属する損失を控除した親会社の所有者に帰属する当期損益も減益となりました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>■ 売上収益は、1,261億円(前連結会計年度比15.9%減)となりました。
「ラツーダ」や「ツイミーグ」など、市場浸透により売上が伸長している製品があるものの、「リプレガル」の販売移管および「トルリシティ」の販売提携終了や薬価改定の影響などにより、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、91億円(前連結会計年度比53.8%減)となりました。
減収による売上総利益の減少により、減益となりました。
<北米>■ 売上収益は、3,285億円(前連結会計年度比2.7%増)となりました。
前連結会計年度は、精神神経領域における大塚製薬株式会社との共同開発・販売提携に伴う契約一時金の収益計上がありましたが、当連結会計年度は、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了の影響を受けるなか、為替換算の影響に加え、「オルゴビクス」や「ジェムテサ」などのSumitovant 社グループ製品の売上伸長により、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、322億円(前連結会計年度比69.4%減)となりました。
売上総利益の減益に加え、Sumitovant 社グループの費用の増加や為替換算の影響により販売費及び一般管理費が増加したため、大幅な減益となりました。
<中国>■ 売上収益は、394億円(前連結会計年度比2.9%増)となりました。
薬剤費抑制策の影響を受けた「メロペン」の売上は減少しましたが、為替換算の影響等により、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、195億円(前連結会計年度比0.2%減)となりました。
販売費及び一般管理費の増加が売上総利益の増加を上回り、わずかに減益となりました。
<海外その他>■ 売上収益は、168億円(前連結会計年度比37.6%増)となりました。
選択的オレキシン2受容体作動薬(開発コード:DSP-0187)のライセンス契約の対価として受領した契約一時金を収益認識した影響が大きく、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、100億円(前連結会計年度比206.9%増)となりました。
増収による売上総利益の増加により、増益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品などの販売を行っており、これらの売上収益は448億円(前連結会計年度比12.5%増)、コアセグメント利益は24億円(前連結会計年度比32.2%減)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格により換算したものです。
2 セグメント間取引については相殺消去しています。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は仕入価格によっています。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っていません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
(4) 財政状態
資産については、前連結会計年度末に比べ1,733億円減少し、1兆1,347億円となりました。
非流動資産では、当社が保有する投資有価証券の公正価値評価の変動により、その他の金融資産が増加したことに加え、為替換算の影響によりのれんが増加しましたが、減損損失の計上による無形資産の減少が大きく、前連結会計年度末に比べ556億円減少しました。
Myovant 社の完全子会社化(以下「本完全子会社化」)の対価の総額は、約17億米ドルであり、これに係る資金については、手元資金およびブリッジローン(短期借入金)により、まかないました。これにより、流動資産では、現金及び現金同等物が減少したほか、営業債権及びその他の債権が減少した結果、前連結会計年度末に比べ1,177億円減少しました。
負債については、短期借入金が増加したことに加え、未払法人所得税や繰延税金負債が増加した結果、前連結会計年度末に比べ935億円増加し、7,280億円となりました。なお、社債及び借入金は合計で3,347億円となり、前連結会計年度末に比べ657億円増加しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、その他の資本の構成要素は増加しましたが、利益剰余金が親会社の所有者に帰属する当期損失の計上と本完全子会社化により大きく減少するとともに、資本剰余金も同じく本完全子会社化により減少したため、前連結会計年度末に比べ2,011億円減少し、4,067億円となりました。また、非支配持分は、本完全子会社化により前連結会計年度末に比べ656億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ2,668億円減少し、4,068億円となり、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は35.8%となりました。
また、連結子会社である住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡契約が第3四半期に締結されたことに伴い、関連する資産については売却目的で保有する資産、負債については売却目的で保有する資産に直接関連する負債、資本については売却目的で保有する資産に関連するその他の包括利益にそれぞれ分類しています。
なお、同じく第3四半期に株式譲渡契約が締結されていた連結子会社である住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式譲渡については、2023年3月31日付けで手続きが完了しました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益は減少しましたが、減損損失などの非資金損益項目の増加に加え、営業債権及びその他の債権の減少や法人所得税の支払額の減少などにより、119億円の収入となりましたが、前連結会計年度に比べ、収入は193億円減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式売却による子会社の支配喪失による増加に加え、投資の取得による支出の減少および無形資産の売却による収入などにより、前連結会計年度に比べ707億円収入が増加し、524億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、Myovant 社株式の取得による非支配持分からの子会社持分取得による支出の影響が大きく、前連結会計年度に比べ1,254億円支出が増加し、1,468億円の支出となりました。
上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物に係る換算差額を加え、売却目的で保有する資産への振替額を差し引いた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,435億円となり、前連結会計年度末に比べ595億円減少しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより必要資金を調達し、研究開発活動などを行っています。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することです。
現金及び現金同等物に短期貸付金等を加えた運用資金は1,580億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は102.5%です。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しています。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりです。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける処分コスト控除後の公正価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用いて現在価値に割り引いて算定しています。将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる無形資産に関する開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、製品及び開発品の収益の予測、及び固定費の予測等の多くの前提条件が含まれていますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌期の連結財務諸表において、のれん及び無形資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しています。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しています。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて見積もった将来の各事業年度の課税所得を前提としています。当該将来の課税所得の見積りは、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌期の連結財務諸表において、繰延税金資産の金額に重要な影響を生じさせる可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和され、欧米を中心に景気の持ち直しが継続しましたが、ウクライナ情勢その他の地政学的リスクの高まり、エネルギー価格の高騰等による世界的な物価上昇の進行、金融引締めの進展などにより、不確実性が高まっています。わが国経済についても、不安定な為替動向や物価上昇などの影響を受けるなか、緩やかな持ち直しの動きが見られましたが、経済活動の本格的な正常化には至っていない状況です。
医薬品業界では、各国において薬剤費抑制策が一段と進むなど、依然として厳しい環境が続いています。
このような状況のもと、当社グループは、2018年度を起点とする5か年の「中期経営計画2022」の最終年度として、「成長エンジンの確立」と「柔軟で効率的な組織基盤づくり」を推進することにより、経営基盤の再構築に取り組んでまいりました。一方、今後の成長を目指す製品や開発品に注力すべく選択と集中を進めてまいりましたが、一部品目の事業予想や開発計画を見直した結果、特許権や仕掛研究開発などの無形資産において、減損損失を計上することとなりました。
日本においては、糖尿病領域では、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」の販売提携が2022年12月に終了しましたが、2022年9月に処方日数制限解除となった「ツイミーグ」ならびに「エクア」および「エクメット」の販売に引き続き注力しました。精神神経領域では、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」ならびに「ラツーダ」および「ロナセンテープ」を中心に情報提供活動に取り組みました。また、フロンティア事業では、株式会社メルティンMMIと共同開発した「MELTz 手指運動リハビリテーションシステム」の販売を開始しました。
北米においては、Sunovion Pharmaceuticals Inc.(以下「Sunovion 社」)は、「ラツーダ」の米国での独占販売期間が2023年2月に終了したことに加え、パーキンソン病のオフ症状治療剤「キンモビ」の販売中止の決定により、事業規模が大幅に縮小することとなりました。
Sumitovant Biopharma Ltd.(以下「Sumitovant 社」)においては、傘下の子会社が、「オルゴビクス」の販売拡大に注力するとともに、「マイフェンブリー」について、米国において、2022年8月に子宮内膜症に対する適応追加承認を取得しました。また、「ジェムテサ」の販売拡大に注力しました。なお、Sumitovant 社は、2023年3月にMyovant Sciences Ltd.(以下「Myovant 社」)を完全子会社化しました。
また、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了後の持続的成長に向けた取組の一環として、北米において分散していた機能と人材を集約し、より強固な事業基盤を構築する目的で、2023年7月に、米国グループ会社7法人をSunovion 社を存続会社として合併させることにより1つの事業会社に再編することを予定しており、当該再編に向けた準備を進めました。
中国においては、住友制葯(蘇州)有限公司が、主力製品である「メロペン」の販売に引き続き注力しました。
その他の事業においては、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を株式会社メディパルホールディングスに譲渡するための手続が2023年3月に完了しました。また、住友ファーマアニマルヘルス株式会社の全株式を三井物産株式会社に譲渡するための契約を2022年12月に締結しました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度 (2022年3月期) | 当連結会計年度 (2023年3月期) | 増減 | 増減率 (%) | |
売上収益 | 5,600 | 5,555 | △45 | △0.8 |
コア営業利益 | 585 | 164 | △421 | △72.0 |
営業利益 | 602 | △770 | △1,372 | - |
税引前当期利益 | 830 | △479 | △1,309 | - |
当期利益 | 406 | △967 | △1,373 | - |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 | 564 | △745 | △1,309 | - |
■ 売上収益は、5,555億円(前連結会計年度比0.8%減)となりました。
北米、中国、海外その他の各セグメントは、為替換算の影響等により増収となりましたが、前連結会計年度におけるファブリー病治療剤「リプレガル」の販売移管および当連結会計年度における「トルリシティ」の販売提携終了や薬価改定の影響を受けた日本セグメントの減収が大きく、売上収益の合計では減収となりました。
■ コア営業利益は、164億円(前連結会計年度比72.0%減)となりました。
住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式譲渡、米国食品医薬品局(FDA)からの優先審査バウチャー※の売却や慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤「ブロバナ」および喘息治療剤「ゾペネックスHFA」の販売権譲渡等に伴うその他の収益の計上がありましたが、売上総利益の減少に加え、為替換算の影響等による販売費及び一般管理費や研究開発費の増加が大きく、コア営業利益は減益となりました。
※優先審査バウチャー:希少疾患等の開発困難な品目の承認取得企業に対し、当局から付与される他の品目における優先審査権
■ 営業損益は、770億円の損失(前連結会計年度比1,372億円の減益)となりました。
「キンモビ」の収益予測を見直したことにより、本製品に係る特許権(無形資産)を全額減損(554億円)しました。また、がん領域における開発品目dubermatinib(開発コード:TP-0903)の開発を中止したことにより、本開発品に係る仕掛研究開発(無形資産)を全額減損(206億円)するとともに、がん領域に係るのれんの一部についても減損(35億円)するなど、総額882億円の減損損失を計上しました。これに加えて、北米グループ会社における事業構造改善費用を計上したことにより、営業損失となりました。
■ 税引前当期損益は、479億円の損失(前連結会計年度比1,309億円の減益)となりました。
期末日の円安による為替差益の計上等により、金融収益から金融費用を差し引いた金融損益は増益となりましたが、営業損益の減益の影響が大きく、税引前当期損失となりました。
■ 当期損益は、967億円の損失(前連結会計年度比1,373億円の減益)となりました。
税引前当期損益が減益となったことにより、当期損益も減益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期損益は、745億円の損失(前連結会計年度比1,309億円の減益)となりました。
当期損益の減益の影響が大きく、非支配持分に帰属する損失を控除した親会社の所有者に帰属する当期損益も減益となりました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>■ 売上収益は、1,261億円(前連結会計年度比15.9%減)となりました。
「ラツーダ」や「ツイミーグ」など、市場浸透により売上が伸長している製品があるものの、「リプレガル」の販売移管および「トルリシティ」の販売提携終了や薬価改定の影響などにより、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、91億円(前連結会計年度比53.8%減)となりました。
減収による売上総利益の減少により、減益となりました。
<北米>■ 売上収益は、3,285億円(前連結会計年度比2.7%増)となりました。
前連結会計年度は、精神神経領域における大塚製薬株式会社との共同開発・販売提携に伴う契約一時金の収益計上がありましたが、当連結会計年度は、「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了の影響を受けるなか、為替換算の影響に加え、「オルゴビクス」や「ジェムテサ」などのSumitovant 社グループ製品の売上伸長により、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、322億円(前連結会計年度比69.4%減)となりました。
売上総利益の減益に加え、Sumitovant 社グループの費用の増加や為替換算の影響により販売費及び一般管理費が増加したため、大幅な減益となりました。
<中国>■ 売上収益は、394億円(前連結会計年度比2.9%増)となりました。
薬剤費抑制策の影響を受けた「メロペン」の売上は減少しましたが、為替換算の影響等により、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、195億円(前連結会計年度比0.2%減)となりました。
販売費及び一般管理費の増加が売上総利益の増加を上回り、わずかに減益となりました。
<海外その他>■ 売上収益は、168億円(前連結会計年度比37.6%増)となりました。
選択的オレキシン2受容体作動薬(開発コード:DSP-0187)のライセンス契約の対価として受領した契約一時金を収益認識した影響が大きく、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、100億円(前連結会計年度比206.9%増)となりました。
増収による売上総利益の増加により、増益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品などの販売を行っており、これらの売上収益は448億円(前連結会計年度比12.5%増)、コアセグメント利益は24億円(前連結会計年度比32.2%減)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 70,320 | △9.8 |
北米 | 249,739 | 19.5 |
中国 | 38,203 | 0.9 |
海外その他 | 6,910 | △23.7 |
その他 | 34 | 13.3 |
合計 | 365,206 | 9.3 |
(注) 1 金額は販売価格により換算したものです。
2 セグメント間取引については相殺消去しています。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 47,195 | △15.0 |
北米 | 8,442 | 2.0 |
中国 | - | - |
海外その他 | - | - |
その他 | 38,849 | 24.6 |
合計 | 94,486 | △0.5 |
(注) 金額は仕入価格によっています。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っていません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 126,106 | △15.9 |
北米 | 328,467 | 2.7 |
中国 | 39,397 | 2.9 |
海外その他 | 16,752 | 37.6 |
その他 | 44,822 | 12.5 |
合計 | 555,544 | △0.8 |
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
マッケソン社(米国) | 91,340 | 16.3 | 101,891 | 18.3 |
カーディナル社(米国) | 85,425 | 15.3 | 97,085 | 17.5 |
アメリソースバーゲン社(米国) | 73,745 | 13.2 | 86,375 | 15.5 |
(4) 財政状態
資産については、前連結会計年度末に比べ1,733億円減少し、1兆1,347億円となりました。
非流動資産では、当社が保有する投資有価証券の公正価値評価の変動により、その他の金融資産が増加したことに加え、為替換算の影響によりのれんが増加しましたが、減損損失の計上による無形資産の減少が大きく、前連結会計年度末に比べ556億円減少しました。
Myovant 社の完全子会社化(以下「本完全子会社化」)の対価の総額は、約17億米ドルであり、これに係る資金については、手元資金およびブリッジローン(短期借入金)により、まかないました。これにより、流動資産では、現金及び現金同等物が減少したほか、営業債権及びその他の債権が減少した結果、前連結会計年度末に比べ1,177億円減少しました。
負債については、短期借入金が増加したことに加え、未払法人所得税や繰延税金負債が増加した結果、前連結会計年度末に比べ935億円増加し、7,280億円となりました。なお、社債及び借入金は合計で3,347億円となり、前連結会計年度末に比べ657億円増加しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、その他の資本の構成要素は増加しましたが、利益剰余金が親会社の所有者に帰属する当期損失の計上と本完全子会社化により大きく減少するとともに、資本剰余金も同じく本完全子会社化により減少したため、前連結会計年度末に比べ2,011億円減少し、4,067億円となりました。また、非支配持分は、本完全子会社化により前連結会計年度末に比べ656億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ2,668億円減少し、4,068億円となり、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は35.8%となりました。
また、連結子会社である住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡契約が第3四半期に締結されたことに伴い、関連する資産については売却目的で保有する資産、負債については売却目的で保有する資産に直接関連する負債、資本については売却目的で保有する資産に関連するその他の包括利益にそれぞれ分類しています。
なお、同じく第3四半期に株式譲渡契約が締結されていた連結子会社である住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式譲渡については、2023年3月31日付けで手続きが完了しました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益は減少しましたが、減損損失などの非資金損益項目の増加に加え、営業債権及びその他の債権の減少や法人所得税の支払額の減少などにより、119億円の収入となりましたが、前連結会計年度に比べ、収入は193億円減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の株式売却による子会社の支配喪失による増加に加え、投資の取得による支出の減少および無形資産の売却による収入などにより、前連結会計年度に比べ707億円収入が増加し、524億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、Myovant 社株式の取得による非支配持分からの子会社持分取得による支出の影響が大きく、前連結会計年度に比べ1,254億円支出が増加し、1,468億円の支出となりました。
上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物に係る換算差額を加え、売却目的で保有する資産への振替額を差し引いた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,435億円となり、前連結会計年度末に比べ595億円減少しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより必要資金を調達し、研究開発活動などを行っています。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することです。
現金及び現金同等物に短期貸付金等を加えた運用資金は1,580億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は102.5%です。