有価証券報告書-第73期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりとなりました。
①財政状態及び経営成績の状況
(財政状態)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ734億円増の7,468億円となりました。 流動資産は、その他の金融資産や売上債権及びその他の債権、棚卸資産の増加などから224億円増の2,476億円となりました。 非流動資産は、その他の金融資産や投資有価証券の増加などから510億円増の4,992億円となりました。 負債は、退職給付に係る負債などの減少があったものの、仕入債務及びその他の債務の増加などから3億円増の1,057億円となりました。 親会社の所有者に帰属する持分は、利益剰余金やその他の資本の構成要素の増加などから731億円増の6,355億円となりました。
(経営成績)
(単位:百万円)
[売上収益]
売上収益は、前連結会計年度比169億円(5.8%)増加の3,093億円となりました。
・抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」は、競合環境が厳しくなるものの、食道がんへの使用が拡大したことなどにより、前連結会計年度比115億円(13.2%)増加の988億円となりました。
・その他の主要新製品では、2型糖尿病治療剤「グラクティブ錠」は255億円(前連結会計年度比2.1%減)、糖尿病および慢性心不全治療剤「フォシーガ錠」は224億円(同23.7%増)、関節リウマチ治療剤「オレンシア皮下注」は219億円(同10.4%増)、血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「パーサビブ静注透析用」は81億円(同13.9%増)、多発性骨髄腫治療剤「カイプロリス点滴静注用」は71億円(同18.8%増)となりました。
・長期収載品は、後発品使用促進策の影響を受け、アルツハイマー型認知症治療剤「リバスタッチパッチ」は66億円(前連結会計年度比22.5%減)、末梢循環障害改善剤「オパルモン錠」は55億円(同34.5%減)、骨粗鬆症治療剤「リカルボン錠」は29億円(同39.9%減)となりました。
・ロイヤルティ・その他は、前連結会計年度比79億円(9.1%)増加の947億円となりました。
[営業利益]
営業利益は、前連結会計年度比208億円(26.9%)増加の983億円となりました。
・売上原価は、製品商品の売上が増加したことに加え、無形資産償却費が増加したことなどにより、前連結会計年度比65億円(8.2%)増加の856億円となりました。
・研究開発費は、大学や研究機関との共同研究費やバイオベンチャーとの創薬提携にかかるマイルストンの支払いなどが増加しました。一方で、昨年6月以降、被験者登録を含めた開発活動を再開しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により治験費用が減少したことから、前連結会計年度比41億円(6.2%)減少の624億円となりました。
・販売費及び一般管理費(研究開発費を除く)は、新型コロナウイルス感染症の影響によるMRの医療機関訪問自粛などにより営業活動経費が減少しました。一方で、積極的なWeb講演会の実施、自社サイトのコンテンツ拡充や新たな営業プラットフォームの活用に伴う費用が増加するとともに、新製品上市および効能追加に係る費用やフォシーガ錠の売上拡大に伴うコプロフィーが増加したことなどにより、前連結会計年度比16億円(2.3%)増加の692億円となりました。
・その他の収益は、昨年11月にロシュ社から抗PD-L1抗体関連特許に関するライセンス契約締結に伴う契約一時金を得たことなどにより、前連結会計年度比73億円増加の82億円となりました。
[親会社の所有者に帰属する当期利益]
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前当期利益の増加に伴い、前連結会計年度比157億円(26.3%)増加の754億円となりました。
<新型コロナウイルス感染症拡大による事業および業績への影響>当社グループは、生命関連企業として医薬品の安定供給を図るため、関係会社や取引先とも連携し、安定供給を維持しており、当面の当社医薬品の生産および医療機関への供給体制に問題はありません。医療従事者への情報提供活動につきましては、感染拡大の防止を目的に、医療機関への訪問は自粛していましたが、昨年6月以降は、影響の少ない地域・医療機関から段階的に営業活動を再開し始め、従来の訪問形態に加え、Webを活用した面会やリモート講演会の企画など、新たな手段も取り入れながら情報提供活動に臨んでおります。また、在宅勤務の環境下でも医療従事者への情報提供、医薬品安全性情報の収集が実施できる体制へ移行しています。
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症拡大による業績への影響については、新規治験開始の延期や実施中の治験の中断およびMRの医療機関訪問自粛などがありましたが、営業利益に与える影響は軽微でした。翌連結会計年度の事業および業績への影響については、引き続き一定の活動制限が継続されることを想定しておりますが、営業利益に与える影響は引き続き軽微と見込んでおります。
なお、懸念される経営リスクについては、「2 事業等のリスク <主要なリスク>(17)新型コロナウイルス感染拡大について」に記載しています。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
当連結会計年度における現金及び現金同等物の増減額は、84億円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税等の支払額341億円などがあった一方で、税引前当期利益1,009億円などがあった結果、740億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出(純額)501億円や無形資産の取得による支出133億円などがあった結果、576億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額224億円などがあった結果、248億円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1 金額は、売価換算額(消費税等抜き)によっております。
2 連結会社間の取引は相殺消去しております。
3 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
(2) 受注状況
当社グループでは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これに基づき生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1 連結会社間の取引は相殺消去しております。
2 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 4 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容、資本の財源及び資金の流動性に関する状況は次のとおりであります。
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
医薬品業界においては、新薬創製の成功確率は年々低下し、研究開発費負担が増大するとともに、医療制度改革による種々の医療費抑制政策が強化されるなど、新薬開発型企業にとっては厳しい経営環境が続いています。このような経営環境の中、当社グループでは、「製品価値最大化」「研究開発体制の変革」「海外への挑戦」「企業基盤の強化」を経営上の重要課題と捉え、これらの課題を達成していくことにより、持続的な成長に努めています。
当社グループの収益は、医薬品事業の単一セグメントですが、売上収益の内訳としては、「製品商品」「ロイヤルティ・その他」に区分しています。
「製品商品」については、抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」の売上収益が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。「オプジーボ点滴静注」については、これまでの薬価の引き下げに加え、今後も競合他社製品との競争は激化すると予想されるものの、これまで承認取得したがん腫での使用拡大に加え、新たな適応がん腫の拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、持続的に伸長できると考えています。
「ロイヤルティ・その他」については、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社からの「オプジーボ点滴静注」に係るロイヤルティ収入等が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。引き続き、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社との協力関係を維持することで、グローバルにおいても、「オプジーボ点滴静注」のさらなる適応拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、中期的に伸長できるものと考えています。
また、「オプジーボ点滴静注」の価値最大化に加え、「オプジーボ点滴静注」のような革新的新薬を継続的に創出できるような研究開発力の強化に取り組んでおり、研究開発費の増大が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。当社独自の化合物オリエントという創薬アプローチ法を基盤としつつ、いまだ満たされない医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に据えて、経営資源を集中させ、効率的な経費支出に努めることで、利益の確保も図っていきます。
中期的には、研究開発費は増加するものの、売上収益の拡大により売上収益の20~25%程度を投資しつつ、かつ営業利益率20%以上を目指していきたいと考えています。また、これらの水準を目標としつつ、売上収益の拡大によって利益拡大を図ることがROEの水準を高めていくことにつながるものと考えています。なお、当連結会計年度は、売上収益に対する研究開発費率20.2%(前連結会計年度22.7%)、営業利益率31.8%(前連結会計年度26.4%)、ROE12.6%(前連結会計年度10.7%)でありました。
②資本の財源及び資金の流動性に関する状況
当社グループは、円滑な事業活動に必要となる流動性の確保と財務の健全性および安全性の確保を資金調達の基本方針としており、市場環境等を考慮した上で、有効かつ機動的な資金調達を実施していきます。資金需要としては、研究開発投資に加え、有形・無形の固定資産への投資が中心となりますが、当社グループでは以前より流動資産が流動負債を大きく上回っており、資金の源泉については、内部資金を充当しています。
当連結会計年度末の流動資産は、2,476億円(内、現金及び現金同等物は610億円)、流動負債は937億円であり、必要な流動性は十分に満たしていると認識しています。
③重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、収益および費用、資産および負債の測定に関する経営者の見積りおよび仮定を含んでおります。これらの見積りおよび仮定は過去の実績および決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積りおよび仮定とは異なる結果となる可能性があります。
見積りおよびその基礎となる仮定は経営者により継続して見直されております。これらの見積りおよび仮定の見直しによる影響は、その見積りおよび仮定を見直した期間およびそれ以降の期間において認識しております。
当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積りおよび仮定は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等、不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報をもとに検証を行っております。
(1)無形資産(特許権及びライセンス等)の減損
当社グループは、無形資産について、回収可能価額が帳簿価額を下回る兆候がある場合には、減損テストを実施しております。
減損テストを実施する契機となる重要な要素には、過去あるいは見込まれる営業成績に対しての著しい実績の悪化、取得した資産の用途の著しい変更ないし戦略全体の変更、業界トレンドや経済トレンドの著しい悪化等が含まれます。減損テストに使用する資産の回収可能価額は、適切な利率で割り引かれたリスク調整後の将来キャッシュ・フロー評価によって測定する使用価値を基礎に測定しております。将来キャッシュ・フローは事業予測に基づいて決定しております。将来の事象によって、減損テストに用いられた仮定が変更され、その結果、当社グループの将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)特許権等実施料引当金
当社グループは、第三者への特許権等実施料の支出に備えて、その発生額を見積り、認識・測定しております。なお、IAS第37号「引当金、偶発債務及び偶発資産」(以下、「IAS第37号」)の規定等で要求されている情報は、今後の協議等の結果に影響を与える可能性があるため個別に開示せず、IAS第37号第92項の規定に従って開示しています。
(3)繰延税金資産の回収可能性
資産および負債の会計上の帳簿価額と税務上の金額との間に生じる一時差異に係る税効果については、繰延税金資産を回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において、当該一時差異に適用される法定実効税率を使用して繰延税金資産を計上しております。
(4)退職給付会計の基礎率
当社グループは確定給付型を含む複数の退職給付制度を有しております。
確定給付制度債務の現在価値および関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定しております。数理計算上の仮定には、割引率や利息の純額等の変数についての見積りおよび判断が求められます。
当社グループは、これらの変数を含む数理計算上の仮定の適切性について、外部の年金数理人からの助言を得ております。
数理計算上の仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。
(5)偶発債務の将来の経済的便益の流出の可能性
当社グループは、製造または販売する製品が第三者の知的財産権に抵触した場合や、通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該債務を計上します。見積りを行う際には、当社グループが受けている訴訟の進捗および他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する事項を考慮します。発生した負債は見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。
引当金の認識基準を満たさない債務については、その発生可能性および金額的影響等を入手可能な情報に基づいて考慮した上で、偶発債務として注記しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりとなりました。
①財政状態及び経営成績の状況
(財政状態)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ734億円増の7,468億円となりました。 流動資産は、その他の金融資産や売上債権及びその他の債権、棚卸資産の増加などから224億円増の2,476億円となりました。 非流動資産は、その他の金融資産や投資有価証券の増加などから510億円増の4,992億円となりました。 負債は、退職給付に係る負債などの減少があったものの、仕入債務及びその他の債務の増加などから3億円増の1,057億円となりました。 親会社の所有者に帰属する持分は、利益剰余金やその他の資本の構成要素の増加などから731億円増の6,355億円となりました。
(経営成績)
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 対前年度増減額 | 対前年度増減率 | |
売上収益 | 292,420 | 309,284 | 16,865 | 5.8% |
営業利益 | 77,491 | 98,330 | 20,839 | 26.9% |
税引前当期利益 | 79,696 | 100,890 | 21,194 | 26.6% |
当期利益 (親会社の所有者帰属) | 59,704 | 75,425 | 15,721 | 26.3% |
[売上収益]
売上収益は、前連結会計年度比169億円(5.8%)増加の3,093億円となりました。
・抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」は、競合環境が厳しくなるものの、食道がんへの使用が拡大したことなどにより、前連結会計年度比115億円(13.2%)増加の988億円となりました。
・その他の主要新製品では、2型糖尿病治療剤「グラクティブ錠」は255億円(前連結会計年度比2.1%減)、糖尿病および慢性心不全治療剤「フォシーガ錠」は224億円(同23.7%増)、関節リウマチ治療剤「オレンシア皮下注」は219億円(同10.4%増)、血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「パーサビブ静注透析用」は81億円(同13.9%増)、多発性骨髄腫治療剤「カイプロリス点滴静注用」は71億円(同18.8%増)となりました。
・長期収載品は、後発品使用促進策の影響を受け、アルツハイマー型認知症治療剤「リバスタッチパッチ」は66億円(前連結会計年度比22.5%減)、末梢循環障害改善剤「オパルモン錠」は55億円(同34.5%減)、骨粗鬆症治療剤「リカルボン錠」は29億円(同39.9%減)となりました。
・ロイヤルティ・その他は、前連結会計年度比79億円(9.1%)増加の947億円となりました。
[営業利益]
営業利益は、前連結会計年度比208億円(26.9%)増加の983億円となりました。
・売上原価は、製品商品の売上が増加したことに加え、無形資産償却費が増加したことなどにより、前連結会計年度比65億円(8.2%)増加の856億円となりました。
・研究開発費は、大学や研究機関との共同研究費やバイオベンチャーとの創薬提携にかかるマイルストンの支払いなどが増加しました。一方で、昨年6月以降、被験者登録を含めた開発活動を再開しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により治験費用が減少したことから、前連結会計年度比41億円(6.2%)減少の624億円となりました。
・販売費及び一般管理費(研究開発費を除く)は、新型コロナウイルス感染症の影響によるMRの医療機関訪問自粛などにより営業活動経費が減少しました。一方で、積極的なWeb講演会の実施、自社サイトのコンテンツ拡充や新たな営業プラットフォームの活用に伴う費用が増加するとともに、新製品上市および効能追加に係る費用やフォシーガ錠の売上拡大に伴うコプロフィーが増加したことなどにより、前連結会計年度比16億円(2.3%)増加の692億円となりました。
・その他の収益は、昨年11月にロシュ社から抗PD-L1抗体関連特許に関するライセンス契約締結に伴う契約一時金を得たことなどにより、前連結会計年度比73億円増加の82億円となりました。
[親会社の所有者に帰属する当期利益]
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前当期利益の増加に伴い、前連結会計年度比157億円(26.3%)増加の754億円となりました。
<新型コロナウイルス感染症拡大による事業および業績への影響>当社グループは、生命関連企業として医薬品の安定供給を図るため、関係会社や取引先とも連携し、安定供給を維持しており、当面の当社医薬品の生産および医療機関への供給体制に問題はありません。医療従事者への情報提供活動につきましては、感染拡大の防止を目的に、医療機関への訪問は自粛していましたが、昨年6月以降は、影響の少ない地域・医療機関から段階的に営業活動を再開し始め、従来の訪問形態に加え、Webを活用した面会やリモート講演会の企画など、新たな手段も取り入れながら情報提供活動に臨んでおります。また、在宅勤務の環境下でも医療従事者への情報提供、医薬品安全性情報の収集が実施できる体制へ移行しています。
当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症拡大による業績への影響については、新規治験開始の延期や実施中の治験の中断およびMRの医療機関訪問自粛などがありましたが、営業利益に与える影響は軽微でした。翌連結会計年度の事業および業績への影響については、引き続き一定の活動制限が継続されることを想定しておりますが、営業利益に与える影響は引き続き軽微と見込んでおります。
なお、懸念される経営リスクについては、「2 事業等のリスク <主要なリスク>(17)新型コロナウイルス感染拡大について」に記載しています。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 対前年度増減額 | |
現金及び現金同等物の期首残高 | 59,981 | 69,005 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 74,157 | 73,977 | △180 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △10,234 | △57,586 | △47,351 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △54,721 | △24,754 | 29,967 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | 9,202 | △8,363 | |
現金及び現金同等物に係る為替変動による影響額 | △179 | 403 | |
現金及び現金同等物の期末残高 | 69,005 | 61,045 |
当連結会計年度における現金及び現金同等物の増減額は、84億円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税等の支払額341億円などがあった一方で、税引前当期利益1,009億円などがあった結果、740億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出(純額)501億円や無形資産の取得による支出133億円などがあった結果、576億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額224億円などがあった結果、248億円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称 | 生産高 | 対前年度増減率 |
医薬品事業 | 213,005 | 20.6% |
合計 | 213,005 | 20.6% |
(注) 1 金額は、売価換算額(消費税等抜き)によっております。
2 連結会社間の取引は相殺消去しております。
3 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
(2) 受注状況
当社グループでは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これに基づき生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称 | 販売高 | 対前年度増減率 |
医薬品事業 | 309,284 | 5.8% |
合計 | 309,284 | 5.8% |
(注) 1 連結会社間の取引は相殺消去しております。
2 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額 | 割合 | 金額 | 割合 | |
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社 およびそのグループ会社 | 66,826 | 22.9% | 65,470 | 21.2% |
㈱メディパルホールディングス およびそのグループ会社 | 46,295 | 15.8% | 47,577 | 15.4% |
㈱スズケンおよびそのグループ会社 | 45,828 | 15.7% | 46,404 | 15.0% |
アルフレッサホールディングス㈱ およびそのグループ会社 | 31,894 | 10.9% | 34,422 | 11.1% |
東邦ホールディングス㈱ およびそのグループ会社 | 30,637 | 10.5% | 32,596 | 10.5% |
(注) 4 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容、資本の財源及び資金の流動性に関する状況は次のとおりであります。
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
医薬品業界においては、新薬創製の成功確率は年々低下し、研究開発費負担が増大するとともに、医療制度改革による種々の医療費抑制政策が強化されるなど、新薬開発型企業にとっては厳しい経営環境が続いています。このような経営環境の中、当社グループでは、「製品価値最大化」「研究開発体制の変革」「海外への挑戦」「企業基盤の強化」を経営上の重要課題と捉え、これらの課題を達成していくことにより、持続的な成長に努めています。
当社グループの収益は、医薬品事業の単一セグメントですが、売上収益の内訳としては、「製品商品」「ロイヤルティ・その他」に区分しています。
「製品商品」については、抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」の売上収益が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。「オプジーボ点滴静注」については、これまでの薬価の引き下げに加え、今後も競合他社製品との競争は激化すると予想されるものの、これまで承認取得したがん腫での使用拡大に加え、新たな適応がん腫の拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、持続的に伸長できると考えています。
「ロイヤルティ・その他」については、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社からの「オプジーボ点滴静注」に係るロイヤルティ収入等が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。引き続き、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社との協力関係を維持することで、グローバルにおいても、「オプジーボ点滴静注」のさらなる適応拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、中期的に伸長できるものと考えています。
また、「オプジーボ点滴静注」の価値最大化に加え、「オプジーボ点滴静注」のような革新的新薬を継続的に創出できるような研究開発力の強化に取り組んでおり、研究開発費の増大が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。当社独自の化合物オリエントという創薬アプローチ法を基盤としつつ、いまだ満たされない医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に据えて、経営資源を集中させ、効率的な経費支出に努めることで、利益の確保も図っていきます。
中期的には、研究開発費は増加するものの、売上収益の拡大により売上収益の20~25%程度を投資しつつ、かつ営業利益率20%以上を目指していきたいと考えています。また、これらの水準を目標としつつ、売上収益の拡大によって利益拡大を図ることがROEの水準を高めていくことにつながるものと考えています。なお、当連結会計年度は、売上収益に対する研究開発費率20.2%(前連結会計年度22.7%)、営業利益率31.8%(前連結会計年度26.4%)、ROE12.6%(前連結会計年度10.7%)でありました。
②資本の財源及び資金の流動性に関する状況
当社グループは、円滑な事業活動に必要となる流動性の確保と財務の健全性および安全性の確保を資金調達の基本方針としており、市場環境等を考慮した上で、有効かつ機動的な資金調達を実施していきます。資金需要としては、研究開発投資に加え、有形・無形の固定資産への投資が中心となりますが、当社グループでは以前より流動資産が流動負債を大きく上回っており、資金の源泉については、内部資金を充当しています。
当連結会計年度末の流動資産は、2,476億円(内、現金及び現金同等物は610億円)、流動負債は937億円であり、必要な流動性は十分に満たしていると認識しています。
③重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、収益および費用、資産および負債の測定に関する経営者の見積りおよび仮定を含んでおります。これらの見積りおよび仮定は過去の実績および決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積りおよび仮定とは異なる結果となる可能性があります。
見積りおよびその基礎となる仮定は経営者により継続して見直されております。これらの見積りおよび仮定の見直しによる影響は、その見積りおよび仮定を見直した期間およびそれ以降の期間において認識しております。
当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積りおよび仮定は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等、不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報をもとに検証を行っております。
(1)無形資産(特許権及びライセンス等)の減損
当社グループは、無形資産について、回収可能価額が帳簿価額を下回る兆候がある場合には、減損テストを実施しております。
減損テストを実施する契機となる重要な要素には、過去あるいは見込まれる営業成績に対しての著しい実績の悪化、取得した資産の用途の著しい変更ないし戦略全体の変更、業界トレンドや経済トレンドの著しい悪化等が含まれます。減損テストに使用する資産の回収可能価額は、適切な利率で割り引かれたリスク調整後の将来キャッシュ・フロー評価によって測定する使用価値を基礎に測定しております。将来キャッシュ・フローは事業予測に基づいて決定しております。将来の事象によって、減損テストに用いられた仮定が変更され、その結果、当社グループの将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)特許権等実施料引当金
当社グループは、第三者への特許権等実施料の支出に備えて、その発生額を見積り、認識・測定しております。なお、IAS第37号「引当金、偶発債務及び偶発資産」(以下、「IAS第37号」)の規定等で要求されている情報は、今後の協議等の結果に影響を与える可能性があるため個別に開示せず、IAS第37号第92項の規定に従って開示しています。
(3)繰延税金資産の回収可能性
資産および負債の会計上の帳簿価額と税務上の金額との間に生じる一時差異に係る税効果については、繰延税金資産を回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において、当該一時差異に適用される法定実効税率を使用して繰延税金資産を計上しております。
(4)退職給付会計の基礎率
当社グループは確定給付型を含む複数の退職給付制度を有しております。
確定給付制度債務の現在価値および関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定しております。数理計算上の仮定には、割引率や利息の純額等の変数についての見積りおよび判断が求められます。
当社グループは、これらの変数を含む数理計算上の仮定の適切性について、外部の年金数理人からの助言を得ております。
数理計算上の仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。
(5)偶発債務の将来の経済的便益の流出の可能性
当社グループは、製造または販売する製品が第三者の知的財産権に抵触した場合や、通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該債務を計上します。見積りを行う際には、当社グループが受けている訴訟の進捗および他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する事項を考慮します。発生した負債は見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。
引当金の認識基準を満たさない債務については、その発生可能性および金額的影響等を入手可能な情報に基づいて考慮した上で、偶発債務として注記しております。