有価証券報告書-第71期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 9:44
【資料】
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【項目】
91項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりとなりました。
①財政状態及び経営成績の状況
(財政状態)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ458億円増の6,551億円となりました。
流動資産は、有価証券や現金及び現金同等物の減少などから148億円減の1,946億円となりました。
非流動資産は、長期性預金や有形固定資産の増加などから607億円増の4,604億円となりました。
負債は、未払法人所得税や引当金の増加などから127億円増の923億円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分は、その他の資本の構成要素の減少があったものの、利益剰余金の増加などから330億円増の5,574億円となりました。
(経営成績)
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度対前年度増減額対前年度増減率
売上収益261,836288,63426,79810.2%
営業利益60,68462,0101,3252.2%
税引前当期利益63,92265,1411,2191.9%
当期利益
(親会社の所有者帰属)
50,28451,5391,2552.5%

[売上収益]
売上収益は、前連結会計年度比268億円(10.2%)増加の2,886億円となりました。
・抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」は、薬価制度の抜本改革による薬価改定の影響を受けましたが、一昨年度に効能追加された腎細胞がん、頭頸部がん、昨年度に効能追加された胃がん等への使用が拡大したことにより、前連結会計年度比5億円(0.5%)増加の906億円となりました。
・その他の主要新製品では、2型糖尿病治療剤「グラクティブ錠」は269億円(前連結会計年度比1.8%減)、関節リウマチ治療剤「オレンシア皮下注」は174億円(同23.3%増)、2型糖尿病治療剤「フォシーガ錠」は145億円(同31.0%増)、抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐治療剤「イメンドカプセル」、「プロイメンド点滴静注用」は合わせて106億円(同6.6%増)、アルツハイマー型認知症治療剤「リバスタッチパッチ」は89億円(同0.2%増)、血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「パーサビブ静注透析用」は57億円(同66.8%増)、多発性骨髄腫治療剤「カイプロリス点滴静注用」は49億円(同11.1%減)となりました。
・長期収載品は、薬価改定および後発品使用促進策の影響を受け、末梢循環障害改善剤「オパルモン錠」は104億円(前連結会計年度比27.9%減)、骨粗鬆症治療剤「リカルボン錠」は73億円(同32.8%減)となりました。
・ロイヤルティ・その他は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社からの「オプジーボ点滴静注」のロイヤルティ収入が増加したことや、長期収載品(注射剤5ブランド11品目)を丸石製薬株式会社へ譲渡したことに伴う収益を計上したことなどにより、前連結会計年度比237億円(42.4%)増加の797億円となりました。
[営業利益]
営業利益は、前連結会計年度比13億円(2.2%)増加の620億円となりました。
・売上原価は、下記(注)にあるIFRS第15号適用の影響(従前会計基準比96億円増)に加え、オプジーボ原薬の安定供給を受けるための一時的な負担金が発生したことなどにより、前連結会計年度比184億円(28.2%)増加の838億円となりました。
・研究開発費は、「オプジーボ点滴静注」関連費用や創薬提携に係るライセンス料などが増加したことにより、前連結会計年度比12億円(1.7%)増加の700億円となりました。
・販売費及び一般管理費(研究開発費を除く)は、「オプジーボ点滴静注」や「フォシーガ錠」等の主要新製品に係る営業経費などが増加したことにより、前連結会計年度比20億円(2.9%)増加の700億円となりました。
・その他の費用に、特許関連訴訟についてファイザー社と和解したことによる和解金の支払いを計上しております。なお、前連結会計年度は、その他の収益に有形固定資産売却益29億円を計上しております。
[親会社の所有者に帰属する当期利益]
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前当期利益の増加に伴い、前連結会計年度比13億円(2.5%)増加の515億円となりました。
(注)当連結会計年度よりIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を適用しております。なお、当連結会計年度の連結損益計算書において、従前の会計基準を適用した場合と比較して、売上収益が8,889百万円、売上原価が9,553百万円それぞれ増加し、営業利益が664百万円、税引前当期利益が664百万円それぞれ減少しております。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度対前年度増減額
現金及び現金同等物の期首残高146,32365,273
営業活動によるキャッシュ・フロー15,72766,77451,047
投資活動によるキャッシュ・フロー△34,189△49,763△15,574
財務活動によるキャッシュ・フロー△62,549△22,27940,270
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△81,011△5,268
現金及び現金同等物に係る為替変動による影響額△40△24
現金及び現金同等物の期末残高65,27359,981

当連結会計年度における現金及び現金同等物の増減額は、53億円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益651億円などがあった結果、668億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動によるキャッシュ・フローは、投資の売却及び償還による収入271億円があった一方で、定期預金の預入による支出558億円、有形固定資産の取得による支出223億円などがあった結果、498億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額218億円などがあった結果、223億円の支出となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称生産高対前年度増減率
医薬品事業205,0110.7%
合計205,0110.7%

(注) 1 金額は、売価換算額(消費税等抜き)によっております。
2 連結会社間の取引は相殺消去しております。
3 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
(2) 受注状況
当社グループでは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これに基づき生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
セグメントの名称販売高対前年度増減率
医薬品事業288,63410.2%
合計288,63410.2%

(注) 1 連結会社間の取引は相殺消去しております。
2 当社グループのセグメントは、「医薬品事業」単一であります。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額割合金額割合
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社
およびそのグループ会社
43,66216.7%63,44222.0%
㈱スズケンおよびそのグループ会社45,66217.4%45,83215.9%
㈱メディパルホールディングス
およびそのグループ会社
48,93218.7%45,74415.8%
アルフレッサホールディングス㈱
およびそのグループ会社
31,98712.2%32,21311.2%
東邦ホールディングス㈱
およびそのグループ会社
31,39212.0%31,24210.8%

(注) 4 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容、資本の財源及び資金の流動性に関する状況は次のとおりであります。
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
医薬品業界においては、新薬創製の成功確率は年々低下し、研究開発費負担が増大するとともに、医療制度改革による種々の医療費抑制政策が強化されるなど、新薬開発型企業にとっては厳しい経営環境が続いています。このような経営環境の中、当社グループでは、(a)製品価値最大化、(b)研究開発体制の強化、(c)海外への挑戦、(d)企業基盤の強化、を経営上の重要課題と捉え、これらの課題を達成していくことにより、持続的な成長に努めています。
当社グループの収益は、医薬品事業の単一セグメントですが、売上収益の内訳としては、「製品商品」「ロイヤルティ・その他」に区分しています。
「製品商品」については、抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」の売上収益が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。「オプジーボ点滴静注」については、これまでの薬価の引き下げに加え、今後も競合他社製品との競争は激化すると予想されるものの、これまで承認取得したがん腫での使用拡大に加え、新たな適応がん腫の拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、持続的に伸長できると考えています。
「ロイヤルティ・その他」については、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社からの「オプジーボ点滴静注」に係るロイヤルティ収入等が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。引き続き、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社との協力関係を維持することで、グローバルにおいても、「オプジーボ点滴静注」のさらなる適応拡大と治療ラインの拡大、併用療法の開発等により使用対象患者数の拡大を見込んでおり、中期的に伸長できるものと考えています。
また、「オプジーボ点滴静注」の価値最大化に加え、「オプジーボ点滴静注」のような革新的新薬を継続的に創出できるような研究開発力の強化に取り組んでおり、研究開発費の増大が、経営成績に重要な影響を与えるものと認識しています。当社独自の化合物オリエントという創薬アプローチ法を基盤としつつ、いまだ満たされない医療ニーズの高い「がん」、「免疫」、「神経」の3つの重点領域に加え、その他の医療ニーズの高い領域を「スペシャリティ」と位置付けて経営資源を集中させ、効率的な経費支出に努めることで、利益の確保も図っていきます。
中期的には、研究開発費は増加するものの、売上収益の拡大により売上収益の20~25%程度を投資しつつ、かつ営業利益率20%以上を目指していきたいと考えています。また、これらの水準を目標としつつ、売上収益の拡大によって利益拡大を図ることがROEの水準を高めていくことにつながるものと考えています。なお、2019年3月期実績は、売上収益に対する研究開発費率24.3%(前連結会計年度26.3%)、営業利益率21.5%(前連結会計年度23.2%)、ROE9.5%(前連結会計年度9.6%)でありました。
②資本の財源及び資金の流動性に関する状況
当社グループは、円滑な事業活動に必要となる流動性の確保と財務の健全性及び安全性の確保を資金調達の基本方針としており、市場環境等を考慮した上で、有効かつ機動的な資金調達を実施していきます。資金需要としては、研究開発投資に加え、有形・無形の固定資産への投資が中心となりますが、当社グループでは以前より流動資産が流動負債を大きく上回っており、資金の源泉については、内部資金を充当しています。
当会計年度末の流動資産は、1,946億円(内、現金及び現金同等物は600億円)、流動負債は832億円であり、必要な流動性は十分に満たしていると認識しています。
(3)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSと日本基準との連結財務諸表における主要な項目の差異
[減価償却費]
主な有形固定資産の減価償却方法について、定率法(日本基準)から定額法(IFRS)に見直しています。また、特定の研究用機器については、取得時に、日本基準では研究開発費として処理していますが、IFRSにおいては固定資産として処理しています。これにより、日本基準に比べ減価償却費が、1,531百万円増加しています。
[契約一時金および開発マイルストン]
契約一時金および開発マイルストンについて、発生時に研究開発費(日本基準)として処理していますが、IFRSにおいては発生時に無形資産とし、製品発売時から特許満了まで、売上原価として償却しております。これにより、日本基準に比べ研究開発費が5,075百万円減少する一方で、償却費(売上原価)が、1,963百万円増加しています。
[退職給付費用]
数理計算上の差異について、日本基準においては、発生時にその他包括利益として認識し、翌期に一括償却することによって純損益へ振り替えていますが、IFRSにおいては、発生時にその他の包括利益として認識し、即座に利益剰余金に振り替えています。これにより、日本基準に比べ退職給付費用が、671百万円減少しています。