四半期報告書-第29期第2四半期(平成30年7月1日-平成30年9月30日)
文中の将来に関する事項は、当第2四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1) 経営成績の状況
当社グループは、臨床開発ステージへ移行した製品を有するバイオ医薬品企業であり、Gタンパク質共役受容体(以下「GPCR」)を標的とする高度に革新的な医薬品の研究開発を通じ、日本初の国際的なリーディングバイオ製薬企業になることを目指しています。
当第2四半期連結累計期間において、当社グループは独自のStaR®(Stabilized Receptor)技術、構造ベース創薬(以下「SBDD」)プラットフォーム及び自社開発パイプラインを引き続き拡充しました。
9月に発表したHTL0018318の臨床開発の自主的な中断は、当四半期連結会計期間における注目点となりましたが、当社グループ事業全般の強化の点で順調な進捗が見られ、いくつかの戦略機会を十分に活用していくための体制を整えることができました。
(1) 大手グローバル製薬企業との提携、(2) 革新的なバイオ医薬品企業との研究開発活動における提携、(3) 当社の開発品を独自で開発、という当社グループの均衡の取れたビジネスモデル全ての分野で進展がありました。
当第2四半期連結会計期間末現在、当社グループは15品目が創薬段階にあり、そのうち5品目が前臨床試験中、6品目(注)が臨床試験中です。
(注) 複数の進行性固形がんを対象としたAZD4635、上皮成長因子受容体遺伝子変異陽性(EGFRm)進行性非小細胞肺がん(NSCLC)を対象としたAZD4635、アルツハイマー病(AD)の神経行動学的症状を対象としたHTL0016878、ADを対象としたHTL0018318(自主的に中断)、レビー小体型認知症(DLB)を対象としたHTL0018318(自主的に中断)及び喘息を対象としたQVM149を含む。
大手グローバル製薬企業と提携した品目の中では、次世代がん免疫療法を目的とした候補薬AZD4635の患者を対象にした臨床試験において、進捗がありました。
2018年4月18日、当社グループ及び提携企業であるAstraZeneca UK Limitedは、AZD4635が、前臨床モデルにおいて単剤投与時及び抗PD-L1抗体との併用時に、抗腫瘍免疫性を高めることを示す新たなデータを発表しました。AZD4635は強力かつ選択性の高い拮抗作用を有する、経口投与可能な低分子アデノシンA2a受容体拮抗薬です。AZD4635は当社100%子会社であるHeptares Therapeutics Ltd.により創製され、2015年にAstraZeneca UK Limitedにそのグローバルでの独占的権利を譲渡しました。同社によりAZD4635の人における有用性を詳細に調査するため、現在以下の試験を実施しています:
• 進行性固形がん患者を対象とした安全性、忍容性、薬物動態及び生物学的活性を評価する第Ⅰb相試験(NCT#02740985)
• EGFRm NSCLCの患者を対象とした新規併用療法の安全性、忍容性及び抗腫瘍活性を評価する第Ⅰb/Ⅱ相試験(NCT#03381274)
2018年9月18日、当社グループ及びHTL0018318のライセンスパートナーであるAllergan Pharmaceuticals International Limitedは、サルを対象にした長期毒性試験において予期しない毒性所見が見出されたため、その詳細を把握するまでの間、HTL0018318の臨床開発を自主的に中断することを決定致しました。この度の中断は患者さまを対象とした臨床試験における有害事象に基づくものではありません。当社グループ及びAllergan Pharmaceuticals International Limitedは、患者さまの安全を最も重要と考えます。今回見られた所見の発生原因は不明ですが、当社グループ及びAllergan Pharmaceuticals International Limitedの研究者が試験結果の精査を行っています。本調査により実施が予定されていたAD患者を対象とする第Ⅱ相試験は最短でも6ヵ月延期されます。
革新的なバイオ医薬品企業との共同研究開発活動でも、効果的な進展がありました。
2018年5月24日、当社グループはペプチドリーム株式会社との提携について最新情報を発表しました。同社とは2017年に、炎症性疾患に重要な役割を果たすGPCRであるプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を標的とする新規治療薬の研究開発・商業化を目的とした戦略的提携契約を締結しましたが、安定化された受容体の精製、分離が可能な当社グループ独自のStaR®技術とペプチドリーム株式会社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を組み合わせることにより、PAR2に対し高い親和性と選択性を有するペプチド拮抗薬を同定することが可能となりました。現在は、最も有望なリード化合物を早期に臨床開発段階へ進められるよう、本ペプチドの特性分析と最適化を鋭意行っています。契約に従い、コストを分担しながら両社は共同で創薬・開発を行い、得られた成果物を共同所有できます。
当社グループの独自開発については、複数の候補品を臨床試験に進めるべくパイプラインへの投資を継続しました。
2018年6月18日、DLB患者を対象とした新規ムスカリンM1受容体作動薬HTL0018318の安全性、忍容性及び有効性を評価する前期第Ⅱ相試験の開始準備が整いました。しかし前述のHTL0018318の臨床開発の自主的な中断に伴い、被験者の募集も中断しました。
2018年9月25日、当社グループは、100%子会社である株式会社そーせいが「オラビ®錠口腔用 50mg」(以下、「オラビ®」)の日本における製造販売承認を取得したことを発表しました。「オラビ®」は免疫機能の低下した患者さま等に発症する口腔咽頭カンジダ症を治療する1日1回投与の口腔粘膜付着型の抗真菌剤である日局ミコナゾールの新剤形医薬品です。「オラビ®」の開発に使用された独自の技術は Lauriad™と呼ばれ、高濃度の活性成分を直接局所部位に供給するために開発されました。「オラビ®」の国内販売については、富士フイルム株式会社のグループ会社に独占販売権を付与しております。当該企業より承認取得時のマイルストンとして2億円を受領することとなっており、さらに販売開始後、ロイヤリティ及び予め決定された販売目標達成時に、マイルストン収入を別途受領できる権利を持っています。
他の当社グループ保有の研究開発品目も順調に進捗しました。
2018年9月19日、当社グループは、当社持分法適用関連会社であるMiNA Therapeutics Limited(MiNA社)が、進行肝がん患者を対象とした小分子活性化RNA(saRNA)候補薬MTL-CEBPAの進行中の第Ⅰ相臨床試験についての最新情報を報告したと発表しました。報告によると、MTL-CEBPA投与後に承認済み肝がん治療を行った三人の肝がん患者において腫瘍縮小効果が観察されました。今回のケースは事例に過ぎず、MTL-CEBPAを単剤として評価する第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験(OUTREACH)のデータには含まれません。この観察は非常に興味深いものであり、MTL-CEBPAが他のがん療法の効果を増強し、腫瘍微小環境を調節する可能性を示すものです。この観察を受けて、MiNA社はこれらの所見の調査に最大限の努力を払っていきます。チロシン・キナーゼ阻害剤であるソラフェニブ併用での臨床試験の登録は、2018年第4四半期に開始される予定です。MTL-CEBPAを単剤として評価する臨床試験への登録は既に完了しています。
当第2四半期連結会計期間末現在、当社グループの従業員数は169人(前年同四半期末比25人増)です。
以上の結果、当第2四半期連結累計期間の業績は、売上収益1,803百万円(前年同四半期比3,511百万円減少)、営業利益△3,753百万円(前年同四半期比5,197百万円減少)、税引前四半期利益△4,142百万円(前年同四半期比3,608百万円減少)、四半期利益△3,327百万円(前年同四半期比2,649百万円減少)、親会社の所有者に帰属する四半期利益△3,327百万円(前年同四半期比2,649百万円減少)となりました。
2018年9月30日以降、以下の事象が発生しました。
• 2018年10月18日、当社グループは、MiNA社の親会社であるMiNA (Holdings) Limitedの株式追加取得の独占的オプション権を行使しないことを発表しました。当社の今般の決定は、(1)MiNA 社が肝細胞がんを対象に開発したMTL-CEPBAの第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験(OUTREACH)の中間データを綿密に分析した評価結果並びに(2)提携及び自社開発によるGタンパク質共役受容体(GPCR)を標的とした候補薬ポートフォリオへの資源配分を優先することで、価値創造できる可能性がより高くなるとの判断に基づくものです。MiNA社のソラフェニブ併用での試験は最も期待が持てる臨床開発戦略であり、当社は同社の25.6%を保有する重要な株主として引き続き同社をしっかりと支持していきます。
• 2018年11月1日、当社はクリス・カーギルを同日付で執行役副社長CFOに任命したことを発表しました。
当社グループは、医薬事業の単一セグメントであるため、報告セグメント別の記載は省略しております。
(売上収益、売上総利益)
当第2四半期連結累計期間の売上収益は、前年同四半期に比べ3,511百万円減少し、1,803百万円となりました。
売上区分別の状況は以下のとおりです。
当第2四半期連結累計期間のロイヤリティに関する収益は、前年同四半期比65百万円減少し、1,211百万円となりました。その大半は導出先であるNovartis International AG(注)1によるウルティブロⓇブリーズヘラーⓇ(以下「ウルティブロ」)及びシーブリⓇブリーズヘラーⓇ(以下「シーブリ」)の売上に関連するものです。この微減はNovartis International AGとの契約に基づく減額が当第2四半期連結累計期間に含まれることによるものです。
2018年10月18日のNovartis International AGの発表によると、両剤の2018年第3四半期(2018年7月から2018年9月)の売上は144百万米ドル(前年同四半期比6百万米ドル増加)となりました。Novartis International AGによる2018年第3四半期の製品別の売上は以下のとおりです:
• 「ウルティブロ」(売上110百万米ドル、前年同四半期比11%増(注)2)LABA/LAMAの配合剤であるウルティブロは当四半期において、FLAME、CLAIM studyの良好な結果、並びに慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断・ケア・予防に関する世界的な指針となる2018年版GOLDレポート、さらにSUNSET studyに後押しされ、売上は二桁の伸びとなりました。
• 「シーブリ」(売上34百万米ドル、前年同四半期比3%減(注)2)LAMAの単剤であるシーブリの当四半期の売上は、欧州での競争のために微減となりました。
(注)1 グリコピロニウム臭化物とその製剤の独占的開発・販売権は、2005年4月に、当社及び共同開発パートナーであるVectura Group PLCからNovartis International AGに導出しています。これらの製品は米国において、Utibron™ NeohalerⓇ、Seebri™ NeohalerⓇの製品名で異なる用量・用法で販売されています。Sunovion Pharmaceuticals Inc.は、2016年12月21日に米国における販売権を取得しています。Sunovion Pharmaceuticals Inc.は2017年10月にSeebri™ NeohalerⓇの販売を開始しています。「シーブリⓇブリーズヘラーⓇ」 「ウルティブロⓇブリーズヘラーⓇ」 「Utibron™ NeohalerⓇ」「Seebri™ NeohalerⓇ」はノバルティス社の登録商標です。
(注)2 為替変動の影響を除いた数値です。
ウルティブロは長時間作用性β2刺激薬(LABA)長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の配合剤として引き続き欧州市場シェア1位となりました。さらに、Novartis International AGは2018年第3四半期決算説明資料で、QVM149の喘息治療を追加適応とした第Ⅲ相臨床試験(IRIDIUM, PALLADIUM, QUARTZ)の被験者募集が完了したことを公表しました。当社が導出した医薬品であるグリコピロニウム臭化物を含む呼吸器疾患治療薬が同社へさらに寄与できることが確認されました。QVM149の喘息治療の追加適応を2020年に取得するため、2019年に承認申請が行われる予定です。なお、当社はQVM149の発売後は、販売高に応じた一定率のロイヤリティを受領できることになっております。
当第2四半期連結累計期間のマイルストンに関する収益は、前年同四半期比3,416百万円減少し、310百万円となりました。前年同四半期にはAllergan Pharmaceuticals International Limitedから15百万米ドル、AstraZeneca UK Limitedから12百万米ドル、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.から5百万米ドルの重要なマイルストンを受領しましたが、当第2四半期連結累計期間には新規提携に伴う一時金及び研究開発に関する既存の提携先からの重要なマイルストンに関する収益がなかったことが、前年同四半期と比較したマイルストンに関する収益の減少の主たる要因です。なお、当社グループは一度に受領する金額が約5百万米ドル以上のものを「重要なマイルストンに関する収益」に分類しています。
(研究開発費、販売費及び一般管理費)
研究開発費、販売費及び一般管理費の内訳
(単位:百万円)
(研究開発費)
当第2四半期連結累計期間の研究開発費に係る現金支出は、前年同四半期比1,945百万円増加し、4,116百万円となりました。この増加は主に、DLB患者を対象とした日本における前期第Ⅱ相試験(2018年9月18日より自主的に中断)準備のための支出の増加及び当社グループ独自の開発プログラム、プラットフォーム及びトランスレーショナル・サイエンスにおける機能強化への継続投資によるものです。当第2四半期連結累計期間においては、研究開発費全体の98%は英国における活動によるものです。
(販売費及び一般管理費)
当第2四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費に係る現金支出は、前年同四半期比475百万円減少し、896百万円となりました。2018年9月のHTL0018318に関する予期せぬ発表を受け、販売費及び一般管理費の支出はより慎重に行っていきます。
(非現金費用)
当第2四半期連結累計期間の非現金費用は、有形固定資産の減価償却費、無形資産の償却費及び株式報酬費用です。当第2四半期連結累計期間の非現金費用は、前年同四半期比100百万円減少し、657百万円となりました。無形資産の償却費は前年同四半期比4百万円増加し443百万円に、有形固定資産の減価償却費は前年同四半期比28百万円増加し85百万円に、株式報酬費用は前年同四半期比132百万円減少し129百万円となりました。株式報酬費用の主な減少要因は、12月期決算への変更に合わせて長期インセンティブブランの見直しを行ったことによるものです。
(営業損益)
当第2四半期連結累計期間の営業損益は、前年同四半期比5,197百万円減少し、3,753百万円の損失となりました。これは主に、上述の売上収益の減少及び研究開発費の増加によるものです。
(金融損益)
当第2四半期連結累計期間の金融収益及び金融費用の合計である金融損益は、前年同四半期比1,513百万円損失が減少し、△231百万円となりました。これは主に、企業結合による条件付対価の減少、日本円、米ドル、英ポンドの為替レートが前年同四半期に比べ安定していたこと、及び、MiNA (Holdings) Limitedの株式追加取得の独占的オプション権不行使に係る評価損1,112百万円の計上によるものです。なお、企業結合による条件付対価はHeptares Therapeutics Ltd.の取得にかかる追加の取得対価です。Heptares Therapeutics Ltd.の取得日時点での最大追加支払対価は220百万米ドルとなっており、現時点で66百万米ドルが支払われています。
(四半期損益)
当第2四半期連結累計期間の四半期損益は、前年同四半期比2,649百万円減少し、3,327百万円の損失となりました。これは主に、上述の売上収益の減少及び研究開発費の増加によるものです。
(2) 財政状態の状況
当第2四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べ6,081百万円減少し、63,405百万円となりました。これは主に、研究開発費等の営業キャッシュ・フローの使用による支出及び有利子負債の返済による支出等により現金及び現金同等物が6,954百万円減少したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末に比べ2,818百万円減少し、17,782百万円となりました。これは主に、有利子負債1,423百万円、企業結合による条件付対価826百万円並びに営業債務及びその他の債務395百万円の減少によるものです。
当第2四半期連結会計期間末における資本は、前連結会計年度末に比べ3,263百万円減少し、45,623百万円となりました。主な減少要因は、四半期損失の計上3,327百万円です。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末に比べ1.6ポイント増加し、71.9%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ6,954百万円減少し、当第2四半期連結会計年度末は21,327百万円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは3,561百万円の支出となりました。これは主に、研究開発活動等による支出等による税引前四半期損失の計上があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは1,939百万円の支出となりました。これは主に、英国ケンブリッジのグランタパークに新設した研究施設等に係る有形固定資産の取得による支出が1,374百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは1,520百万円の支出となりました。これは主に、有利子負債の返済が1,500百万円があったことによるものです。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。なお、当社グループは財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針は定めておりません。
(5) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間の研究開発費は、前第2四半期連結累計期間に比べ1,958百万円増加し、4,179百万円となりました。詳細については、(1)経営成績の状況に記載しています。
(1) 経営成績の状況
当社グループは、臨床開発ステージへ移行した製品を有するバイオ医薬品企業であり、Gタンパク質共役受容体(以下「GPCR」)を標的とする高度に革新的な医薬品の研究開発を通じ、日本初の国際的なリーディングバイオ製薬企業になることを目指しています。
当第2四半期連結累計期間において、当社グループは独自のStaR®(Stabilized Receptor)技術、構造ベース創薬(以下「SBDD」)プラットフォーム及び自社開発パイプラインを引き続き拡充しました。
9月に発表したHTL0018318の臨床開発の自主的な中断は、当四半期連結会計期間における注目点となりましたが、当社グループ事業全般の強化の点で順調な進捗が見られ、いくつかの戦略機会を十分に活用していくための体制を整えることができました。
(1) 大手グローバル製薬企業との提携、(2) 革新的なバイオ医薬品企業との研究開発活動における提携、(3) 当社の開発品を独自で開発、という当社グループの均衡の取れたビジネスモデル全ての分野で進展がありました。
当第2四半期連結会計期間末現在、当社グループは15品目が創薬段階にあり、そのうち5品目が前臨床試験中、6品目(注)が臨床試験中です。
(注) 複数の進行性固形がんを対象としたAZD4635、上皮成長因子受容体遺伝子変異陽性(EGFRm)進行性非小細胞肺がん(NSCLC)を対象としたAZD4635、アルツハイマー病(AD)の神経行動学的症状を対象としたHTL0016878、ADを対象としたHTL0018318(自主的に中断)、レビー小体型認知症(DLB)を対象としたHTL0018318(自主的に中断)及び喘息を対象としたQVM149を含む。
大手グローバル製薬企業と提携した品目の中では、次世代がん免疫療法を目的とした候補薬AZD4635の患者を対象にした臨床試験において、進捗がありました。
2018年4月18日、当社グループ及び提携企業であるAstraZeneca UK Limitedは、AZD4635が、前臨床モデルにおいて単剤投与時及び抗PD-L1抗体との併用時に、抗腫瘍免疫性を高めることを示す新たなデータを発表しました。AZD4635は強力かつ選択性の高い拮抗作用を有する、経口投与可能な低分子アデノシンA2a受容体拮抗薬です。AZD4635は当社100%子会社であるHeptares Therapeutics Ltd.により創製され、2015年にAstraZeneca UK Limitedにそのグローバルでの独占的権利を譲渡しました。同社によりAZD4635の人における有用性を詳細に調査するため、現在以下の試験を実施しています:
• 進行性固形がん患者を対象とした安全性、忍容性、薬物動態及び生物学的活性を評価する第Ⅰb相試験(NCT#02740985)
• EGFRm NSCLCの患者を対象とした新規併用療法の安全性、忍容性及び抗腫瘍活性を評価する第Ⅰb/Ⅱ相試験(NCT#03381274)
2018年9月18日、当社グループ及びHTL0018318のライセンスパートナーであるAllergan Pharmaceuticals International Limitedは、サルを対象にした長期毒性試験において予期しない毒性所見が見出されたため、その詳細を把握するまでの間、HTL0018318の臨床開発を自主的に中断することを決定致しました。この度の中断は患者さまを対象とした臨床試験における有害事象に基づくものではありません。当社グループ及びAllergan Pharmaceuticals International Limitedは、患者さまの安全を最も重要と考えます。今回見られた所見の発生原因は不明ですが、当社グループ及びAllergan Pharmaceuticals International Limitedの研究者が試験結果の精査を行っています。本調査により実施が予定されていたAD患者を対象とする第Ⅱ相試験は最短でも6ヵ月延期されます。
革新的なバイオ医薬品企業との共同研究開発活動でも、効果的な進展がありました。
2018年5月24日、当社グループはペプチドリーム株式会社との提携について最新情報を発表しました。同社とは2017年に、炎症性疾患に重要な役割を果たすGPCRであるプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を標的とする新規治療薬の研究開発・商業化を目的とした戦略的提携契約を締結しましたが、安定化された受容体の精製、分離が可能な当社グループ独自のStaR®技術とペプチドリーム株式会社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を組み合わせることにより、PAR2に対し高い親和性と選択性を有するペプチド拮抗薬を同定することが可能となりました。現在は、最も有望なリード化合物を早期に臨床開発段階へ進められるよう、本ペプチドの特性分析と最適化を鋭意行っています。契約に従い、コストを分担しながら両社は共同で創薬・開発を行い、得られた成果物を共同所有できます。
当社グループの独自開発については、複数の候補品を臨床試験に進めるべくパイプラインへの投資を継続しました。
2018年6月18日、DLB患者を対象とした新規ムスカリンM1受容体作動薬HTL0018318の安全性、忍容性及び有効性を評価する前期第Ⅱ相試験の開始準備が整いました。しかし前述のHTL0018318の臨床開発の自主的な中断に伴い、被験者の募集も中断しました。
2018年9月25日、当社グループは、100%子会社である株式会社そーせいが「オラビ®錠口腔用 50mg」(以下、「オラビ®」)の日本における製造販売承認を取得したことを発表しました。「オラビ®」は免疫機能の低下した患者さま等に発症する口腔咽頭カンジダ症を治療する1日1回投与の口腔粘膜付着型の抗真菌剤である日局ミコナゾールの新剤形医薬品です。「オラビ®」の開発に使用された独自の技術は Lauriad™と呼ばれ、高濃度の活性成分を直接局所部位に供給するために開発されました。「オラビ®」の国内販売については、富士フイルム株式会社のグループ会社に独占販売権を付与しております。当該企業より承認取得時のマイルストンとして2億円を受領することとなっており、さらに販売開始後、ロイヤリティ及び予め決定された販売目標達成時に、マイルストン収入を別途受領できる権利を持っています。
他の当社グループ保有の研究開発品目も順調に進捗しました。
2018年9月19日、当社グループは、当社持分法適用関連会社であるMiNA Therapeutics Limited(MiNA社)が、進行肝がん患者を対象とした小分子活性化RNA(saRNA)候補薬MTL-CEBPAの進行中の第Ⅰ相臨床試験についての最新情報を報告したと発表しました。報告によると、MTL-CEBPA投与後に承認済み肝がん治療を行った三人の肝がん患者において腫瘍縮小効果が観察されました。今回のケースは事例に過ぎず、MTL-CEBPAを単剤として評価する第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験(OUTREACH)のデータには含まれません。この観察は非常に興味深いものであり、MTL-CEBPAが他のがん療法の効果を増強し、腫瘍微小環境を調節する可能性を示すものです。この観察を受けて、MiNA社はこれらの所見の調査に最大限の努力を払っていきます。チロシン・キナーゼ阻害剤であるソラフェニブ併用での臨床試験の登録は、2018年第4四半期に開始される予定です。MTL-CEBPAを単剤として評価する臨床試験への登録は既に完了しています。
当第2四半期連結会計期間末現在、当社グループの従業員数は169人(前年同四半期末比25人増)です。
以上の結果、当第2四半期連結累計期間の業績は、売上収益1,803百万円(前年同四半期比3,511百万円減少)、営業利益△3,753百万円(前年同四半期比5,197百万円減少)、税引前四半期利益△4,142百万円(前年同四半期比3,608百万円減少)、四半期利益△3,327百万円(前年同四半期比2,649百万円減少)、親会社の所有者に帰属する四半期利益△3,327百万円(前年同四半期比2,649百万円減少)となりました。
2018年9月30日以降、以下の事象が発生しました。
• 2018年10月18日、当社グループは、MiNA社の親会社であるMiNA (Holdings) Limitedの株式追加取得の独占的オプション権を行使しないことを発表しました。当社の今般の決定は、(1)MiNA 社が肝細胞がんを対象に開発したMTL-CEPBAの第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験(OUTREACH)の中間データを綿密に分析した評価結果並びに(2)提携及び自社開発によるGタンパク質共役受容体(GPCR)を標的とした候補薬ポートフォリオへの資源配分を優先することで、価値創造できる可能性がより高くなるとの判断に基づくものです。MiNA社のソラフェニブ併用での試験は最も期待が持てる臨床開発戦略であり、当社は同社の25.6%を保有する重要な株主として引き続き同社をしっかりと支持していきます。
• 2018年11月1日、当社はクリス・カーギルを同日付で執行役副社長CFOに任命したことを発表しました。
当社グループは、医薬事業の単一セグメントであるため、報告セグメント別の記載は省略しております。
(売上収益、売上総利益)
当第2四半期連結累計期間の売上収益は、前年同四半期に比べ3,511百万円減少し、1,803百万円となりました。
売上区分別の状況は以下のとおりです。
(単位:百万円) |
当第2四半期 連結累計期間 | 前第2四半期 連結累計期間 | 前年同期比 | |
ロイヤリティ収入 | 1,211 | 1,276 | △65 |
マイルストン収入及び契約一時金 | 310 | 3,726 | △3,416 |
その他 | 282 | 312 | △30 |
合計 | 1,803 | 5,314 | △3,511 |
当第2四半期連結累計期間のロイヤリティに関する収益は、前年同四半期比65百万円減少し、1,211百万円となりました。その大半は導出先であるNovartis International AG(注)1によるウルティブロⓇブリーズヘラーⓇ(以下「ウルティブロ」)及びシーブリⓇブリーズヘラーⓇ(以下「シーブリ」)の売上に関連するものです。この微減はNovartis International AGとの契約に基づく減額が当第2四半期連結累計期間に含まれることによるものです。
2018年10月18日のNovartis International AGの発表によると、両剤の2018年第3四半期(2018年7月から2018年9月)の売上は144百万米ドル(前年同四半期比6百万米ドル増加)となりました。Novartis International AGによる2018年第3四半期の製品別の売上は以下のとおりです:
• 「ウルティブロ」(売上110百万米ドル、前年同四半期比11%増(注)2)LABA/LAMAの配合剤であるウルティブロは当四半期において、FLAME、CLAIM studyの良好な結果、並びに慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断・ケア・予防に関する世界的な指針となる2018年版GOLDレポート、さらにSUNSET studyに後押しされ、売上は二桁の伸びとなりました。
• 「シーブリ」(売上34百万米ドル、前年同四半期比3%減(注)2)LAMAの単剤であるシーブリの当四半期の売上は、欧州での競争のために微減となりました。
(注)1 グリコピロニウム臭化物とその製剤の独占的開発・販売権は、2005年4月に、当社及び共同開発パートナーであるVectura Group PLCからNovartis International AGに導出しています。これらの製品は米国において、Utibron™ NeohalerⓇ、Seebri™ NeohalerⓇの製品名で異なる用量・用法で販売されています。Sunovion Pharmaceuticals Inc.は、2016年12月21日に米国における販売権を取得しています。Sunovion Pharmaceuticals Inc.は2017年10月にSeebri™ NeohalerⓇの販売を開始しています。「シーブリⓇブリーズヘラーⓇ」 「ウルティブロⓇブリーズヘラーⓇ」 「Utibron™ NeohalerⓇ」「Seebri™ NeohalerⓇ」はノバルティス社の登録商標です。
(注)2 為替変動の影響を除いた数値です。
ウルティブロは長時間作用性β2刺激薬(LABA)長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の配合剤として引き続き欧州市場シェア1位となりました。さらに、Novartis International AGは2018年第3四半期決算説明資料で、QVM149の喘息治療を追加適応とした第Ⅲ相臨床試験(IRIDIUM, PALLADIUM, QUARTZ)の被験者募集が完了したことを公表しました。当社が導出した医薬品であるグリコピロニウム臭化物を含む呼吸器疾患治療薬が同社へさらに寄与できることが確認されました。QVM149の喘息治療の追加適応を2020年に取得するため、2019年に承認申請が行われる予定です。なお、当社はQVM149の発売後は、販売高に応じた一定率のロイヤリティを受領できることになっております。
当第2四半期連結累計期間のマイルストンに関する収益は、前年同四半期比3,416百万円減少し、310百万円となりました。前年同四半期にはAllergan Pharmaceuticals International Limitedから15百万米ドル、AstraZeneca UK Limitedから12百万米ドル、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.から5百万米ドルの重要なマイルストンを受領しましたが、当第2四半期連結累計期間には新規提携に伴う一時金及び研究開発に関する既存の提携先からの重要なマイルストンに関する収益がなかったことが、前年同四半期と比較したマイルストンに関する収益の減少の主たる要因です。なお、当社グループは一度に受領する金額が約5百万米ドル以上のものを「重要なマイルストンに関する収益」に分類しています。
(研究開発費、販売費及び一般管理費)
研究開発費、販売費及び一般管理費の内訳
(単位:百万円)
当第2四半期 連結累計期間 | 前第2四半期 連結累計期間 | 前年同期比 | |
研究開発費 | 4,179 | 2,221 | 1,958 |
(内訳)現金支出 | 4,116 | 2,171 | 1,945 |
非現金費用 | 63 | 50 | 13 |
販売費及び一般管理費 | 1,490 | 2,078 | △588 |
(内訳)現金支出 | 896 | 1,371 | △475 |
非現金費用 | 594 | 707 | △113 |
(研究開発費)
当第2四半期連結累計期間の研究開発費に係る現金支出は、前年同四半期比1,945百万円増加し、4,116百万円となりました。この増加は主に、DLB患者を対象とした日本における前期第Ⅱ相試験(2018年9月18日より自主的に中断)準備のための支出の増加及び当社グループ独自の開発プログラム、プラットフォーム及びトランスレーショナル・サイエンスにおける機能強化への継続投資によるものです。当第2四半期連結累計期間においては、研究開発費全体の98%は英国における活動によるものです。
(販売費及び一般管理費)
当第2四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費に係る現金支出は、前年同四半期比475百万円減少し、896百万円となりました。2018年9月のHTL0018318に関する予期せぬ発表を受け、販売費及び一般管理費の支出はより慎重に行っていきます。
(非現金費用)
当第2四半期連結累計期間の非現金費用は、有形固定資産の減価償却費、無形資産の償却費及び株式報酬費用です。当第2四半期連結累計期間の非現金費用は、前年同四半期比100百万円減少し、657百万円となりました。無形資産の償却費は前年同四半期比4百万円増加し443百万円に、有形固定資産の減価償却費は前年同四半期比28百万円増加し85百万円に、株式報酬費用は前年同四半期比132百万円減少し129百万円となりました。株式報酬費用の主な減少要因は、12月期決算への変更に合わせて長期インセンティブブランの見直しを行ったことによるものです。
(営業損益)
当第2四半期連結累計期間の営業損益は、前年同四半期比5,197百万円減少し、3,753百万円の損失となりました。これは主に、上述の売上収益の減少及び研究開発費の増加によるものです。
(金融損益)
当第2四半期連結累計期間の金融収益及び金融費用の合計である金融損益は、前年同四半期比1,513百万円損失が減少し、△231百万円となりました。これは主に、企業結合による条件付対価の減少、日本円、米ドル、英ポンドの為替レートが前年同四半期に比べ安定していたこと、及び、MiNA (Holdings) Limitedの株式追加取得の独占的オプション権不行使に係る評価損1,112百万円の計上によるものです。なお、企業結合による条件付対価はHeptares Therapeutics Ltd.の取得にかかる追加の取得対価です。Heptares Therapeutics Ltd.の取得日時点での最大追加支払対価は220百万米ドルとなっており、現時点で66百万米ドルが支払われています。
(四半期損益)
当第2四半期連結累計期間の四半期損益は、前年同四半期比2,649百万円減少し、3,327百万円の損失となりました。これは主に、上述の売上収益の減少及び研究開発費の増加によるものです。
(2) 財政状態の状況
当第2四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べ6,081百万円減少し、63,405百万円となりました。これは主に、研究開発費等の営業キャッシュ・フローの使用による支出及び有利子負債の返済による支出等により現金及び現金同等物が6,954百万円減少したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末に比べ2,818百万円減少し、17,782百万円となりました。これは主に、有利子負債1,423百万円、企業結合による条件付対価826百万円並びに営業債務及びその他の債務395百万円の減少によるものです。
当第2四半期連結会計期間末における資本は、前連結会計年度末に比べ3,263百万円減少し、45,623百万円となりました。主な減少要因は、四半期損失の計上3,327百万円です。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末に比べ1.6ポイント増加し、71.9%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ6,954百万円減少し、当第2四半期連結会計年度末は21,327百万円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは3,561百万円の支出となりました。これは主に、研究開発活動等による支出等による税引前四半期損失の計上があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは1,939百万円の支出となりました。これは主に、英国ケンブリッジのグランタパークに新設した研究施設等に係る有形固定資産の取得による支出が1,374百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは1,520百万円の支出となりました。これは主に、有利子負債の返済が1,500百万円があったことによるものです。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。なお、当社グループは財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針は定めておりません。
(5) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間の研究開発費は、前第2四半期連結累計期間に比べ1,958百万円増加し、4,179百万円となりました。詳細については、(1)経営成績の状況に記載しています。