有価証券報告書-第29期(平成30年4月1日-平成30年12月31日)

【提出】
2019/03/28 14:55
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【項目】
57項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、臨床開発ステージへ移行した製品を有するバイオ医薬品企業であり、GPCRを標的とする高度に革新的な医薬品の研究開発を通じ、日本屈指の国際的なリーディングバイオ医薬品企業になることを目指しています。
当連結会計年度において、当社グループは独自のStaR®技術、SBDDプラットフォーム及び自社開発パイプラインを引き続き拡充しました。
当社グループ事業全般の強化の点で引き続き順調な進捗が見られ、多くの戦略機会を十分に活用していくための体制を維持することができました。
その結果、(ⅰ)大手グローバル製薬企業との提携、(ⅱ)他の革新的な製薬企業及びバイオ医薬品企業と行う研究開発活動における提携、(ⅲ)当社グループ独自で行う候補薬の開発、という当社グループの均衡の取れたビジネスモデル全ての分野で進展がありました。
当連結会計年度末現在、当社グループは15品目が創薬段階にあり、4品目が前臨床試験中、7品目が臨床試験中です。
大手グローバル製薬企業との提携は、引き続き順調に推移しています。戦略的パートナーであるAstraZeneca UK Limitedとの提携によって開発中の、次世代がん免疫療法を目的とした候補薬AZD4635が順調に進捗しました。
当社グループの独自開発については、複数の候補品を臨床試験に進めるべくパイプラインへの投資を継続しました。2018年9月、当社100%子会社である株式会社そーせいが口腔咽頭カンジダ症治療薬「オラビ錠®口腔用50mg」の国内製造販売承認を取得しました。さらに、2018年12月、当社グループは神経障害を対象とした新規低分子HTL0014242の開発において、健康成人被験者に初めての投与を行う第Ⅰ相臨床試験を開始したことを発表しました。
会計基準日の変更により、経過期間である当連結会計年度9ヵ月間の業績と前連結会計年度12ヵ月間の比較が影響を受けます。当連結会計年度の業績をご理解いただくため、会計監査を受けていない参考数値として、前年同一期間である2017年4月1日から2017年12月31日までの9ヵ月間の業績数値を併せて記載しています。当連結会計年度の業績の以下の説明は、前年同一期間の業績と比較したものです。
当連結会計年度の業績は、売上収益2,872百万円(前年同期比3,405百万円減少)、営業損失5,734百万円(前年同期比5,640百万円減少)、税引前当期損失7,243百万円(前年同期比5,344百万円減少)、当期損失5,978百万円(前年同期比4,265百万円減少)となりました。
(単位:百万円)

前連結会計年度比前年同期比
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2018年12月31日)
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2018年12月31日)
前第3四半期連結累計期間
(自 2017年4月1日
至 2017年12月31日)
売上収益2,8726,9552,8726,277
売上原価△335-△335-
研究開発費△5,384△4,935△5,384△3,456
販売費及び一般管理費△2,704△4,482△2,704△3,213
その他の収益及びその他の費用 ※2△183171△183298
営業損失(△)△5,734△2,291△5,734△94
金融収益及び金融費用 ※2△955△1,135△955△1,610
持分法投資損失△488△276△488△195
関連会社株式減損△66-△66-
税引前当期損失(△)△7,243△3,702△7,243△1,899
当期損失(△)△5,978△2,654△5,978△1,713

※1.費用及び損失は△で表示しております。
※2.その他の収益及びその他の費用並びに金融収益及び金融費用は純額で表示しております。
当連結会計年度の経営成績の分析は以下のとおりです。
(売上収益)
(単位:百万円)

当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2018年12月31日)
前第3四半期連結累計期間
(自 2017年4月1日
至 2017年12月31日)
前年同期比
ロイヤリティ収入2,1042,05351
マイルストン収入及び契約一時金3403,783△3,443
その他428441△13
合計2,8726,277△3,405

当連結会計年度のロイヤリティに関する収益は、前年同期比51百万円増加し、2,104百万円となりました。その大半は導出先であるNovartis International AG(※)によるウルティブロ及びシーブリの売上に関連するものです。
両剤の当連結会計年度(2018年4月から2018年12月)の売上は458百万米ドル(前年同期比5%増)となりました。
(※) グリコピロニウム臭化物とその製剤の独占的開発・販売権は、2005年4月に、当社グループ及び共同開発パートナーであるVectura Group PLCからNovartis International AGに導出しています。これらの製品は米国において、Utibron™ Neohaler®、Seebri™ Neohaler®の製品名で異なる用量・用法で販売されています。Sunovion Pharmaceuticals Inc.は、2016年12月21日に米国における販売権を取得しています。Sunovion Pharmaceuticals Inc.は2017年10月にSeebri™ Neohaler®の販売を開始しています。「シーブリ®ブリーズヘラー®」 「ウルティブロ®ブリーズヘラー®」 「Utibron™ Neohaler®」「Seebri™ Neohaler®」はNovartis International AGの登録商標です。
ウルティブロは長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の配合剤として引き続き欧州市場シェア1位となりました。さらに、Novartis International AGは2018年第4四半期決算説明資料で、第3四半期に公表した状況に変更なく、QVM149の喘息治療を追加適応とした第Ⅲ相臨床試験(IRIDIUM, PALLADIUM, QUARTZ)の被験者募集が完了していることを確認しました。当社グループが導出した医薬品であるグリコピロニウム臭化物を含む呼吸器疾患治療薬が同社へさらに寄与できることが確認されました。QVM149の喘息治療の追加適応を2020年に取得するため、2019年下期に承認申請が行われる予定です。なお、当社グループはQVM149の発売後は、販売高に応じた一定率のロイヤリティを受領できることになっています。
当連結会計年度のマイルストンに関する収益は、前年同期比3,443百万円減少し、340百万円となりました。前年同期にはAllergan Pharmaceuticals International Limitedから15百万米ドル、AstraZeneca UK Limitedから12百万米ドル、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.から5百万米ドルの重要なマイルストンを受領しましたが、当期には新規提携に伴う一時金及び研究開発に関する既存の提携先からの重要なマイルストンに関する収益がなかったことが、前年同期と比較したマイルストンに関する収益の減少の主たる要因です。なお、当社グループは一度に受領する金額が約5百万米ドル以上のものを「重要なマイルストンに関する収益」に分類しています。
(売上原価)
売上原価には、研究開発サービスに関する人件費及び直接経費が含まれております。
(研究開発費並びに販売費及び一般管理費)
(単位:百万円)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2018年12月31日)
前第3四半期連結累計期間
(自 2017年4月1日
至 2017年12月31日)
前年同期比
研究開発費5,3843,4561,928
(内訳)現金支出5,1873,3701,817
非現金費用19786111
販売費及び一般管理費2,7043,213△509
(内訳)現金支出1,6112,099△488
非現金費用1,0931,114△21

・研究開発費に係る現金支出
当連結会計年度の研究開発費に係る現金支出は、前年同期比1,817百万円増加し、5,187百万円となりました。この増加は主に、DLB患者を対象とした日本における前期第Ⅱ相試験(2018年9月18日より自主的な中断)準備のための支出の増加及び当社独自の開発プログラム、プラットフォーム及びトランスレーショナル・サイエンスにおける機能強化への継続投資によるものです。当連結会計年度においては、研究開発費全体の97%は英国における活動によるものです。
・販売費及び一般管理費に係る現金支出
当連結会計年度の販売費及び一般管理費に係る現金支出は、前年同期比488百万円減少し、1,611百万円となりました。この減少は主に、株式報酬に関連した英国の社会保険料の未払い費用の減少及び厳格なコスト管理によるものです。
・非現金支出費用
非現金支出費用は、有形固定資産の減価償却費、無形資産の償却費及び株式報酬費用です。当連結会計年度の非現金支出費用は、前年同期比90百万円増加し、1,290百万円となりました。全体で、有形固定資産の減価償却費は前年同期比107百万円増加の205百万円、無形資産の償却費は前年同期比2百万円減少の664百万円、株式報酬費用は前年同期比15百万円減少の421百万円となりました。
(その他の収益及びその他の費用)
当連結会計年度のその他の収益及び費用は、前年同期比481百万円減少し、△183百万円となりました。当連結会計年度のその他の費用には無形資産の減損が含まれ、その他の収益に含まれる補助金収入がその一部を相殺しています。無形資産の減損は、Heptares社買収時に評価されていたプログラムの一つが中止になったことによるものです。また、前年同期においてその他収益に、当社の子会社であった株式会社アクディバスファーマ全株式の売却益326百万円を計上しております。
(営業損益)
当連結会計年度の営業損益は、前年同期比5,640百万円減少し、5,734百万円の損失となりました。これは主に、上述の売上収益の減少及び研究開発費の増加によるものです。
(金融収益及び金融費用)
当連結会計年度の金融収益及び金融費用の純額は、前年同期比655百万円損失が減少し、△955百万円となりました。金融損益には、支払利息、為替差損益、及び、金融資産及び負債の公正価値変動額が含まれます。また、当連結会計年度には、MiNA (Holdings) Limited株式追加取得に係る独占的オプション権の不行使損1,121百万円が含まれます。当連結会計年度の減少は主に、企業結合による条件付対価の減少、及び、日本円、米ドル、英ポンドの為替レートが前連結会計年度に比べ安定していたことによるものです。なお、企業結合による条件付対価はHeptares社の取得にかかる追加の取得対価です。Heptares社の取得日時点での最大追加支払対価は220百万米ドルとなっており、現時点で66百万米ドルが支払われています。
(当期損益)
当連結会計年度の当期損益は、前年同期比4,265百万円減少し、5,978百万円の損失となりました。これは主に、上述の売上収益の減少及び研究開発費の増加によるものです。当連結会計年度末における財政状態は以下のとおりです。
当連結会計年度の財政状態の分析は以下のとおりです。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ10,499百万円減少し、58,987百万円となりました。これは主に、営業活動による支出並びに負債の返済等により現金及び現金同等物が9,521百万円減少したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,193百万円減少し、17,407百万円となりました。これは主に、有利子負債の減少2,209百万円、企業結合による条件付対価に係る公正価値減少額454百万円並びに繰延税金負債の減少535百万円によるものです。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ7,306百万円減少し、41,580百万円となりました。これは主に、当期損失の計上5,978百万円、及び在外営業活動体の為替換算差額の影響1,641百万円によるものです。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末に比べ0.2ポイント上昇し、70.5%となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ9,521百万円減少し、当連結会計年度末は18,760百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、3,995百万円の支出となりました。これは主に、研究開発活動等による支出等による税引前当期損失の計上があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは2,808百万円の支出となりました。これは主に、英国ケンブリッジ市グランタパークに新設した研究施設等に係る有形固定資産の取得による支出が1,807百万円あったこと、及び、当社グループの100%子会社であるSosei RMF1投資事業有限責任組合が650百万円の投資を行ったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは2,268百万円の支出となりました。これは主に、有利子負債の返済が2,255百万円あったことによるものです。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、共同開発やライセンス契約に基づく、提携パートナー企業からのマイルストン収入及び契約一時金並びにロイヤリティ収入により運転資金を創出しています。また、持株会社である当社の新株発行及び借入れにより運転資金及び事業買収にかかる資金を調達しています。
当社の主な資金需要は継続的な候補薬の開発に関するものであり、現在保有している候補薬や将来における自社開発パイプラインの研究開発や臨床試験を進め、規制当局からの承認を得るために、研究開発活動への投資を継続していきます。なお、当連結会計年度において、英国における研究開発施設への投資は完了しております。
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 9.金融商品 (1) 資本管理」に、資本管理に関する定量的情報を記載しております。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a. 仕入実績
当社グループの売上収益は、主にロイヤリティ収入並びにマイルストン収入及び契約一時金によるものであるため、該当事項はありません。
b. 受注実績
当社グループの売上収益は、主にロイヤリティ収入並びにマイルストン収入及び契約一時金によるものであるため、該当事項はありません。
c. 販売実績
当社グループの事業は医薬事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は以下のとおりです。
区分当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2018年12月31日)
前第3四半期連結累計期間
(自 2017年4月1日
至 2018年12月31日)
前年同期比
(%)
ロイヤリティ収入2,1042,0532.5
マイルストン収入及び契約一時金3403,783△91.0
その他428441△2.9
合計2,8726,277△54.2

(注)1.医薬事業の販売実績は主に開発進捗に伴うロイヤリティ収入並びにマイルストン収入及び契約一時金であり、仕入及び受注との関連はありません。
2.当連結会計年度より決算期を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い、当連結会計年度は2018年4月1日から2018年12月31日までの9ヵ月間となっています。このため、前年同一期間である2017年4月1日から2017年12月31日までの9ヵ月間の数値を比較対象として記載しています。
3.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。
相手先当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2018年12月31日)
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
Novartis International AG2,03570.92,45935.4
第一三共株式会社29410.21642.4
Allergan Pharmaceuticals
International Limited
1776.21,91727.6
AstraZeneca UK Limited--1,41520.3
Teva Pharmaceutical Industries Ltd--71610.3

4.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(5) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況、1.連結財務諸表等、(1) 連結財務諸表、連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
(6) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
(のれんの償却)
日本基準においてのれんは定額法により償却を行っていましたが、IFRSにおいてはのれんの償却は行わず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べ販売費及び一般管理費が714百万円、持分法による投資損失が17百万円減少しています。