有価証券報告書-第28期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、日本初の国際的なリーディングバイオベンチャーを目指しています。
英国ケンブリッジで開発されたStaR®技術及び構造ベースドラッグデザイン(SBDD)のプラットフォームを活用し、独自の研究開発を進めています。
当社グループの事業は、(ⅰ)大型新薬候補を大手製薬企業へ導出するモデル、(ⅱ)先駆的企業と共同で研究開発を推進するモデル、(ⅲ)候補薬の臨床開発から販売に至るまで当社独自で推進するモデルから構成されています。これら三つの事業モデルは、中期的な株主価値の創出につながると考えています。
大手製薬企業と提携に至ったプログラムは引き続き順調に推移しています。AstraZeneca UK Limitedは次世代のがん免疫療法薬の開発を、Allergan Pharmaceuticals International Limited はアルツハイマー病の新規治療薬の開発をそれぞれ進展させています。さらに当社グループは、アルツハイマー病の新規治療薬開発品の日本国内におけるレビー小体型認知症(DLB)を対象とした前期第II相臨床試験開始に向けた準備を進めています。この候補薬については、当社グループが開発・販売を日本で行う権利を保有しています。
当連結会計年度の業績は、売上収益6,955百万円(前期比63.2%減)、営業損失2,291百万円、税引前当期損失3,702百万円、当期損失2,654百万円、親会社の所有者に帰属する当期損失2,654百万円となりました。
当連結会計年度の経営成績及び分析は以下のとおりです。
(売上収益)
当連結会計年度のマイルストンに関する収益は、前連結会計年度と比べ11,780百万円減少(75.4%減)し、3,840百万円となりました。この減少は、主に2016年4月にAllergan Pharmaceuticals International Limitedへのパイプラインの導出により契約一時金125百万米ドルを受領したことによるものです。当連結会計年度におけるマイルストンに関する収益は、主に提携先であるAstraZeneca UK Limited、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.及びAllergan Pharmaceuticals International Limitedからの次の開発マイルストンによるものです。
2017年4月にAZD4635がアデノシンによるT細胞の機能抑制を解除し、T細胞の抗腫瘍免疫性を高めることを明確に示した前臨床試験が成功したことを契機に、12百万米ドルのマイルストンをAstraZeneca UK Limitedより受領しました。これにより、単剤で使用した場合や抗PD-L1チェックポイント阻害剤と併用した場合に、AZD4635によりA2Aシグナル伝達を遮断すると、腫瘍の増殖が低減することがわかりました。さらに、上皮成長因子受容体遺伝子変異陽性(EGFRm)非小細胞肺がんを対象とした新規併用療法の臨床試験が開始されました。
2017年5月にHeptares Therapeutics Ltd.が開発した前臨床開発候補薬カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬をTeva Pharmaceutical Industries Ltd.が片頭痛の治験薬として、前臨床試験を更に進める決定をしたことに伴い、同社より5百万米ドルを受領しました。その後、2018年3月にHeptares Therapeutics Ltd.がTeva Pharmaceutical Industries Ltd.から当該化合物の権利の返還を受けており、同社は2019年に独自に第Ⅰ相臨床試験を開始する予定です。
2017年9月にAllergan Pharmaceuticals International Limitedが第Ⅰ相臨床試験にてファースト・イン・クラス候補のムスカリンM4受容体作動薬であるHTL0016878を最初の被験者である健常人に投与したことに伴い、15百万米ドルの開発マイルストンを同社より受領しました。
当連結会計年度のロイヤリティに関する収益は、前連結会計年度に比べ357百万円減少(12.2%減)し、2,561百万円となりました。これは主に導出先であるNovartis International AGによるウルティブロ®ブリーズヘラー®及びシーブリ®ブリーズへラー®の売上に関連するものです。Novartis International AGの発表によると、2017年のウルティブロ®ブリーズヘラー®の売上高は2016年に比べ12%増(※)の411百万米ドル、シーブリ®ブリーズへラー®の売上高は2016年に比べ3%増(※)の151百万米ドルでした。ロイヤリティに関する収入が減少している要因は、前連結会計年度のロイヤリティ受取額が契約により調整されたことによるものです。
(注) (※)を付した数値は、為替変動の影響を除いた数値です。また、シーブリ®及びウルティブロ®の日本における製品名は、シーブリ®吸入用カプセル50㎍及びウルティブロ®吸入用カプセルで、日本以外における製品名は、シーブリ®ブリーズへラー®及びウルティブロ®ブリーズヘラー®であり、Novartis International AGの登録商標です。
(研究開発費)
当連結会計年度は、創薬力の拡大と臨床開発における活動を継続しました。当社グループの目標は、独自のStaR®構造ベースの薬物設計技術を利用することで、毎年3つの新薬候補を発見することができるプラットフォームを構築し、臨床試験に進展させることです。発見プラットフォームを構築し、臨床試験のための新薬候補を準備するための前臨床費の支出を含む研究開発活動を実施しています。加えて、当社グループでは臨床開発及びトランスレーショナル・サイエンス機能に関する能力を強化しています。
当社グループの研究開発費の大部分は英国で発生し、英ポンドの変動による為替変動により大きく影響を受けています。当連結会計年度の非現金支出費用を除く研究開発費は、前連結会計年度に比べ1,696百万円(54%増、為替変動の影響を除いた影響51%)増加し、4,818百万円となりました。前連結会計年度においては、Brexitの影響によるポンド安のため当社の報告通貨である円ベースでは研究開発費が減少する効果がありました。当連結会計年度の研究開発費の97%は英国で計上されています。
研究開発費の大半を占める当社グループ独自の化合物関連パイプラインが大幅に進展しました。特に、Allergan Pharmaceuticals International Limitedとのグローバルな協力によるM1ムスカリン受容体作動薬であるHTL0018318を用いたレビー小体型認知症の研究が進捗しました。人件費以外の研究開発費は前期に比べ67%増加し、研究開発費全体の73%の割合となっています。研究開発体制の強化に伴い、人件費も増加しました。
企業結合及び事業譲渡も研究開発費の増減に影響しています。2016年12月に買収したHeptares Therapeutics Zurich AGの損益は、前連結会計年度においては当社グループに帰属する期間のみの損益を取り込んでいますが、当連結会計年度は通年の損益を当社グループの損益に取り込んでいます。同様に2016年11月にJITSUBO株式会社を連結子会社から関連会社に移行したこと及び2017年8月に連結子会社であった株式会社アクティバスファーマの全株式を売却したことも、当連結会計年度の損益に影響しております。
(販売費及び一般管理費)
非現金支出費用を除く販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ598百万円増加し2,972百万円となりました。報告通貨ベースで25%増加し、現地通貨ベースでは23%増加しました。当社グループは、内部統制システム及びガバナンスシステムの改善に向けて、財務・税務会計・内部統制・インベスターリレーションズに関する上級幹部の雇用などの投資を継続しており、販売費及び一般管理費の増加額に占める人件費の増加額の割合は40%となっています。人件費以外の販売費及び一般管理費の増加には、当社グループ研究所の英国ケンブリッジへの移転関連費用並びにMiNA (Holdings) Limitedの持分25.6%の取得に関連した費用並びに新規採用費が含まれています。
(非現金支出費用)
非現金支出費用は主に、有形固定資産の減価償却費、無形資産の償却費及び株式報酬費用です。当連結会計年度の非現金支出費用は1,627百万円(前期1,296百万円)となりました。当連結会計年度の無形資産の償却額は、895百万円と前連結会計年度の819百万円に比べ増加しました。これは、Heptares Therapeutics Zurich AGの買収及び英ポンドの変動による為替変動の影響によるものです。当連結会計年度の有形固定資産の減価償却費は、134百万円で前連結会計年度の105百万円に比べ増加しました。
当連結会計年度の株式報酬費用は、597百万円と前連結会計年度の372百万円から増加しました。当社は、グローバルなバイオベンチャー企業になる過程において、優秀な人材を募り、確保するためには、従業員報酬においても業界内での競争力を高めることが必要であると考えております。競争力を高めるための報酬には、当期に公表いたしました株式報酬型ストックオプション制度が含まれています。このような報酬制度もグローバルなバイオベンチャー企業と比較して、株式の希薄化や損益への影響は小さいものとなっており、株主の皆様の利益にも合致するものと考えております。
研究開発費に含まれる非現金費用は、当連結会計年度は117百万円(前連結会計年度97百万円)、販売費及び一般管理費に含まれている非現金費用は、当連結会計年度1,510百万円(前連結会計年度1,199百万円)となりました。
(その他の収益)
その他の収益は前連結会計年度に比べ94百万円減少し565百万円となりました。主な内容は、英国での補助金収入235百万円(前期は218百万円)と株式会社アクティバスファーマの売却で得た収益326百万円です。
(その他の費用)
その他の費用は、前連結会計年度に比べ14百万円増加し394百万円となりました。主な内容は、Heptares Therapeutics Ltd.の買収時に評価されていたいくつかのプログラムが中止となったことによる無形資産の減損です。
(営業損益)
当連結会計年度の営業損益は、前連結会計年度に比べ14,680百万円減少し、2,291百万円の損失となりました。これは主に、Allergan Pharmaceuticals International Limitedからの契約一時金が減少したことによるものです。
(金融収益)
当連結会計年度の金融収益は、104百万円となりました。これは、報告通貨である円と比較してポンド高となったことにより、英国における外貨建資産の評価に影響を与えたことが主な要因です。
(金融費用)
当連結会計年度の金融費用は1,239百万円となりました。主なものは、Heptares Therapeutics Ltd.の取得に関連する条件付対価の公正価格の変動額655百万円、ポンド高による為替差損324百万円及びHeptares Therapeutics Ltd.とMiNA (Holdings) Limitedの取得に関する有利子負債に係る支払利息等260百万円です。
企業結合による条件付対価はHeptares Therapeutics Ltd.の取得にかかる追加の取得対価です。国際会計基準(IFRS)において、公正価値に基づいた評価損益は金融収益又は金融費用として扱われ、当連結会計年度は655百万円、前連結会計年度は287百万円、前々連結会計年度は3,816百万円をそれぞれ金融費用に計上しています。Heptares Therapeutics Ltd.の取得日時点での最大追加支払対価は220百万米ドルとなっており、現時点で66百万米ドルが支払われています。連結財政状態計算書における計上額は4,634百万円(44百万米ドル)です。
(法人所得税費用)
当連結会計年度の法人所得税費用の計上額は△1,048百万円(前連結会計年度3,331百万円)です。これは主に、過年度に支払った法人税等の還付によるものです。当連結会計年度において、当社は新たな税務アドバイザーからの助言に基づいて、修正事項を認識し速やかに、自発的に法人税の修正申告、追加納税を行いました。修正申告に伴い、会計監査人と協議の上、以前に提出した有価証券報告書等の訂正報告書を提出いたしました。当社グループは引き続き最適な国際税制の検討に取り組んでまいります。
(当期損益)
当連結会計年度の当期損益は、前連結会計年度と比べ11,806百万円減少し、2,654百万円の損失となりました。これは、前期においてAllergan Pharmaceuticals International Limitedからの契約一時金を受領した一方で、当期においては、独自のパイプラインへの投資が増加したほか、条件付対価の公正価格の変動、前期に著しく下落した英ポンドの当期における回復及び税金の還付によるものです。
(基本的1株当たり当期損益)
当連結会計年度の基本的1株当たり当期損失は150.19円となっており、前連結会計年度の基本的1株当たり当期利益551.18円から減少しています。当連結会計年度の発行済株式数の平均は17,671,803株となっており、前連結会計年度の16,893,424株より増加しております。
当連結会計年度末における財政状態は以下のとおりです。
(資産)
当連結会計年度末の資産は69,486百万円と、前連結会計年度末と比べ21,399百万円の増加となりました。主な増加要因は、2017年11月の海外募集による新株式の発行等により現金及び現金同等物が14,382百万円増加です。
(負債)
当連結会計年度末の負債は20,600百万円と、前連結会計年度末と比べ872百万円の増加となりました。主な増加要因は、MiNA (Holdings) Limitedの株式25.6%の取得に伴う銀行借入により長期有利子負債が4,890百万円増加した一方で、減少要因として長期有利子負債2,750百万円を返済したことです。
(資本)
当連結会計年度末の資本は48,886百万円と、前連結会計年度末と比べ20,527百万円の増加となりました。主な増加要因は、2017年11月の海外募集による新株式の発行等です。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ14,382百万円増加し、当連結会計年度末には28,281百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2,167百万円の支出となりました。これは主に、税引前当期損失の計上、法人所得税の支払いがあったこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは6,148百万円の支出となりました。これは主に、MiNA (Holdings) Limitedの25.6%の株式を取得したことによる支出が3,973百万円、MiNA (Holdings) Limitedの残りの株式を所定の対価で取得するための独占的オプション権の取得による支出が1,084百万円、Sosei RMF1投資事業有限責任組合の投資有価証券の取得による支出が490百万円あったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは22,641百万円の収入となりました。これは主に、海外募集による新株式の発行等による収入があったこと等によるものです。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、共同開発やライセンス契約に基づく、提携パートナー企業からのマイルストン収入及び契約一時金並びにロイヤリティ収入により運転資金を創出しています。また、持株会社である当社の新株発行及び借入れにより運転資金及び事業買収にかかる資金を調達しています。当連結会計年度においては、海外で実施したグローバル・オファリングにより十分な運転資金を調達いたしました。
当社の主な資金需要は継続的な候補薬の開発に関するものであり、現在保有している候補薬や将来における自社開発パイプラインの研究開発や臨床試験を進め、規制当局からの承認を得るために、研究開発活動への投資を継続していきます。なお現在、英国において仕掛中の研究開発施設への主な投資は、2018年12月期中の終了を予定しております。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a. 仕入実績
当社グループの売上収益は、主にマイルストン及びロイヤリティ収入によるものであるため、該当事項はありません。
b. 受注実績
当社グループの売上収益は、主にマイルストン及びロイヤリティ収入によるものであるため、該当事項はありません。
c. 販売実績
当社グループの事業は医薬事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は以下のとおりです。
注) 1.当連結会計年度より、従来のセグメントである「国内医薬事業」と「海外医薬事業」を、「医薬事業」の単一セグメントに変更しております。それに伴い、前年期同期比については前連結会計年度の数値を販売実績の内訳に組み替えた数値で比較しております。
2.医薬事業の販売実績は主に開発進捗に伴うマイルストン収入及び契約一時金並びにロイヤリティ収入であり、仕入及び受注との関連はありません。
3.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。
4.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(5) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況、1.連結財務諸表等、(1)連結財務諸表、連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載のとおりです。
(6) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
(開発費)
日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上要件を満たすことから、無形資産に計上しております。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べ研究開発費が88百万円減少し、同額の無形資産が増加しております。
(のれんの償却)
日本基準においてのれんは定額法により償却を行っていましたが、IFRSにおいてはのれんの償却は行わず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べ販売費及び一般管理費が957百万円、持分法による投資損失が22百万円減少しています。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、日本初の国際的なリーディングバイオベンチャーを目指しています。
英国ケンブリッジで開発されたStaR®技術及び構造ベースドラッグデザイン(SBDD)のプラットフォームを活用し、独自の研究開発を進めています。
当社グループの事業は、(ⅰ)大型新薬候補を大手製薬企業へ導出するモデル、(ⅱ)先駆的企業と共同で研究開発を推進するモデル、(ⅲ)候補薬の臨床開発から販売に至るまで当社独自で推進するモデルから構成されています。これら三つの事業モデルは、中期的な株主価値の創出につながると考えています。
大手製薬企業と提携に至ったプログラムは引き続き順調に推移しています。AstraZeneca UK Limitedは次世代のがん免疫療法薬の開発を、Allergan Pharmaceuticals International Limited はアルツハイマー病の新規治療薬の開発をそれぞれ進展させています。さらに当社グループは、アルツハイマー病の新規治療薬開発品の日本国内におけるレビー小体型認知症(DLB)を対象とした前期第II相臨床試験開始に向けた準備を進めています。この候補薬については、当社グループが開発・販売を日本で行う権利を保有しています。
当連結会計年度の業績は、売上収益6,955百万円(前期比63.2%減)、営業損失2,291百万円、税引前当期損失3,702百万円、当期損失2,654百万円、親会社の所有者に帰属する当期損失2,654百万円となりました。
当連結会計年度の経営成績及び分析は以下のとおりです。
(売上収益)
当連結会計年度のマイルストンに関する収益は、前連結会計年度と比べ11,780百万円減少(75.4%減)し、3,840百万円となりました。この減少は、主に2016年4月にAllergan Pharmaceuticals International Limitedへのパイプラインの導出により契約一時金125百万米ドルを受領したことによるものです。当連結会計年度におけるマイルストンに関する収益は、主に提携先であるAstraZeneca UK Limited、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.及びAllergan Pharmaceuticals International Limitedからの次の開発マイルストンによるものです。
2017年4月にAZD4635がアデノシンによるT細胞の機能抑制を解除し、T細胞の抗腫瘍免疫性を高めることを明確に示した前臨床試験が成功したことを契機に、12百万米ドルのマイルストンをAstraZeneca UK Limitedより受領しました。これにより、単剤で使用した場合や抗PD-L1チェックポイント阻害剤と併用した場合に、AZD4635によりA2Aシグナル伝達を遮断すると、腫瘍の増殖が低減することがわかりました。さらに、上皮成長因子受容体遺伝子変異陽性(EGFRm)非小細胞肺がんを対象とした新規併用療法の臨床試験が開始されました。
2017年5月にHeptares Therapeutics Ltd.が開発した前臨床開発候補薬カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬をTeva Pharmaceutical Industries Ltd.が片頭痛の治験薬として、前臨床試験を更に進める決定をしたことに伴い、同社より5百万米ドルを受領しました。その後、2018年3月にHeptares Therapeutics Ltd.がTeva Pharmaceutical Industries Ltd.から当該化合物の権利の返還を受けており、同社は2019年に独自に第Ⅰ相臨床試験を開始する予定です。
2017年9月にAllergan Pharmaceuticals International Limitedが第Ⅰ相臨床試験にてファースト・イン・クラス候補のムスカリンM4受容体作動薬であるHTL0016878を最初の被験者である健常人に投与したことに伴い、15百万米ドルの開発マイルストンを同社より受領しました。
当連結会計年度のロイヤリティに関する収益は、前連結会計年度に比べ357百万円減少(12.2%減)し、2,561百万円となりました。これは主に導出先であるNovartis International AGによるウルティブロ®ブリーズヘラー®及びシーブリ®ブリーズへラー®の売上に関連するものです。Novartis International AGの発表によると、2017年のウルティブロ®ブリーズヘラー®の売上高は2016年に比べ12%増(※)の411百万米ドル、シーブリ®ブリーズへラー®の売上高は2016年に比べ3%増(※)の151百万米ドルでした。ロイヤリティに関する収入が減少している要因は、前連結会計年度のロイヤリティ受取額が契約により調整されたことによるものです。
(注) (※)を付した数値は、為替変動の影響を除いた数値です。また、シーブリ®及びウルティブロ®の日本における製品名は、シーブリ®吸入用カプセル50㎍及びウルティブロ®吸入用カプセルで、日本以外における製品名は、シーブリ®ブリーズへラー®及びウルティブロ®ブリーズヘラー®であり、Novartis International AGの登録商標です。
(研究開発費)
当連結会計年度は、創薬力の拡大と臨床開発における活動を継続しました。当社グループの目標は、独自のStaR®構造ベースの薬物設計技術を利用することで、毎年3つの新薬候補を発見することができるプラットフォームを構築し、臨床試験に進展させることです。発見プラットフォームを構築し、臨床試験のための新薬候補を準備するための前臨床費の支出を含む研究開発活動を実施しています。加えて、当社グループでは臨床開発及びトランスレーショナル・サイエンス機能に関する能力を強化しています。
当社グループの研究開発費の大部分は英国で発生し、英ポンドの変動による為替変動により大きく影響を受けています。当連結会計年度の非現金支出費用を除く研究開発費は、前連結会計年度に比べ1,696百万円(54%増、為替変動の影響を除いた影響51%)増加し、4,818百万円となりました。前連結会計年度においては、Brexitの影響によるポンド安のため当社の報告通貨である円ベースでは研究開発費が減少する効果がありました。当連結会計年度の研究開発費の97%は英国で計上されています。
研究開発費の大半を占める当社グループ独自の化合物関連パイプラインが大幅に進展しました。特に、Allergan Pharmaceuticals International Limitedとのグローバルな協力によるM1ムスカリン受容体作動薬であるHTL0018318を用いたレビー小体型認知症の研究が進捗しました。人件費以外の研究開発費は前期に比べ67%増加し、研究開発費全体の73%の割合となっています。研究開発体制の強化に伴い、人件費も増加しました。
企業結合及び事業譲渡も研究開発費の増減に影響しています。2016年12月に買収したHeptares Therapeutics Zurich AGの損益は、前連結会計年度においては当社グループに帰属する期間のみの損益を取り込んでいますが、当連結会計年度は通年の損益を当社グループの損益に取り込んでいます。同様に2016年11月にJITSUBO株式会社を連結子会社から関連会社に移行したこと及び2017年8月に連結子会社であった株式会社アクティバスファーマの全株式を売却したことも、当連結会計年度の損益に影響しております。
(販売費及び一般管理費)
非現金支出費用を除く販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ598百万円増加し2,972百万円となりました。報告通貨ベースで25%増加し、現地通貨ベースでは23%増加しました。当社グループは、内部統制システム及びガバナンスシステムの改善に向けて、財務・税務会計・内部統制・インベスターリレーションズに関する上級幹部の雇用などの投資を継続しており、販売費及び一般管理費の増加額に占める人件費の増加額の割合は40%となっています。人件費以外の販売費及び一般管理費の増加には、当社グループ研究所の英国ケンブリッジへの移転関連費用並びにMiNA (Holdings) Limitedの持分25.6%の取得に関連した費用並びに新規採用費が含まれています。
(非現金支出費用)
非現金支出費用は主に、有形固定資産の減価償却費、無形資産の償却費及び株式報酬費用です。当連結会計年度の非現金支出費用は1,627百万円(前期1,296百万円)となりました。当連結会計年度の無形資産の償却額は、895百万円と前連結会計年度の819百万円に比べ増加しました。これは、Heptares Therapeutics Zurich AGの買収及び英ポンドの変動による為替変動の影響によるものです。当連結会計年度の有形固定資産の減価償却費は、134百万円で前連結会計年度の105百万円に比べ増加しました。
当連結会計年度の株式報酬費用は、597百万円と前連結会計年度の372百万円から増加しました。当社は、グローバルなバイオベンチャー企業になる過程において、優秀な人材を募り、確保するためには、従業員報酬においても業界内での競争力を高めることが必要であると考えております。競争力を高めるための報酬には、当期に公表いたしました株式報酬型ストックオプション制度が含まれています。このような報酬制度もグローバルなバイオベンチャー企業と比較して、株式の希薄化や損益への影響は小さいものとなっており、株主の皆様の利益にも合致するものと考えております。
研究開発費に含まれる非現金費用は、当連結会計年度は117百万円(前連結会計年度97百万円)、販売費及び一般管理費に含まれている非現金費用は、当連結会計年度1,510百万円(前連結会計年度1,199百万円)となりました。
(その他の収益)
その他の収益は前連結会計年度に比べ94百万円減少し565百万円となりました。主な内容は、英国での補助金収入235百万円(前期は218百万円)と株式会社アクティバスファーマの売却で得た収益326百万円です。
(その他の費用)
その他の費用は、前連結会計年度に比べ14百万円増加し394百万円となりました。主な内容は、Heptares Therapeutics Ltd.の買収時に評価されていたいくつかのプログラムが中止となったことによる無形資産の減損です。
(営業損益)
当連結会計年度の営業損益は、前連結会計年度に比べ14,680百万円減少し、2,291百万円の損失となりました。これは主に、Allergan Pharmaceuticals International Limitedからの契約一時金が減少したことによるものです。
(金融収益)
当連結会計年度の金融収益は、104百万円となりました。これは、報告通貨である円と比較してポンド高となったことにより、英国における外貨建資産の評価に影響を与えたことが主な要因です。
(金融費用)
当連結会計年度の金融費用は1,239百万円となりました。主なものは、Heptares Therapeutics Ltd.の取得に関連する条件付対価の公正価格の変動額655百万円、ポンド高による為替差損324百万円及びHeptares Therapeutics Ltd.とMiNA (Holdings) Limitedの取得に関する有利子負債に係る支払利息等260百万円です。
企業結合による条件付対価はHeptares Therapeutics Ltd.の取得にかかる追加の取得対価です。国際会計基準(IFRS)において、公正価値に基づいた評価損益は金融収益又は金融費用として扱われ、当連結会計年度は655百万円、前連結会計年度は287百万円、前々連結会計年度は3,816百万円をそれぞれ金融費用に計上しています。Heptares Therapeutics Ltd.の取得日時点での最大追加支払対価は220百万米ドルとなっており、現時点で66百万米ドルが支払われています。連結財政状態計算書における計上額は4,634百万円(44百万米ドル)です。
(法人所得税費用)
当連結会計年度の法人所得税費用の計上額は△1,048百万円(前連結会計年度3,331百万円)です。これは主に、過年度に支払った法人税等の還付によるものです。当連結会計年度において、当社は新たな税務アドバイザーからの助言に基づいて、修正事項を認識し速やかに、自発的に法人税の修正申告、追加納税を行いました。修正申告に伴い、会計監査人と協議の上、以前に提出した有価証券報告書等の訂正報告書を提出いたしました。当社グループは引き続き最適な国際税制の検討に取り組んでまいります。
(当期損益)
当連結会計年度の当期損益は、前連結会計年度と比べ11,806百万円減少し、2,654百万円の損失となりました。これは、前期においてAllergan Pharmaceuticals International Limitedからの契約一時金を受領した一方で、当期においては、独自のパイプラインへの投資が増加したほか、条件付対価の公正価格の変動、前期に著しく下落した英ポンドの当期における回復及び税金の還付によるものです。
(基本的1株当たり当期損益)
当連結会計年度の基本的1株当たり当期損失は150.19円となっており、前連結会計年度の基本的1株当たり当期利益551.18円から減少しています。当連結会計年度の発行済株式数の平均は17,671,803株となっており、前連結会計年度の16,893,424株より増加しております。
当連結会計年度末における財政状態は以下のとおりです。
(資産)
当連結会計年度末の資産は69,486百万円と、前連結会計年度末と比べ21,399百万円の増加となりました。主な増加要因は、2017年11月の海外募集による新株式の発行等により現金及び現金同等物が14,382百万円増加です。
(負債)
当連結会計年度末の負債は20,600百万円と、前連結会計年度末と比べ872百万円の増加となりました。主な増加要因は、MiNA (Holdings) Limitedの株式25.6%の取得に伴う銀行借入により長期有利子負債が4,890百万円増加した一方で、減少要因として長期有利子負債2,750百万円を返済したことです。
(資本)
当連結会計年度末の資本は48,886百万円と、前連結会計年度末と比べ20,527百万円の増加となりました。主な増加要因は、2017年11月の海外募集による新株式の発行等です。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ14,382百万円増加し、当連結会計年度末には28,281百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2,167百万円の支出となりました。これは主に、税引前当期損失の計上、法人所得税の支払いがあったこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは6,148百万円の支出となりました。これは主に、MiNA (Holdings) Limitedの25.6%の株式を取得したことによる支出が3,973百万円、MiNA (Holdings) Limitedの残りの株式を所定の対価で取得するための独占的オプション権の取得による支出が1,084百万円、Sosei RMF1投資事業有限責任組合の投資有価証券の取得による支出が490百万円あったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは22,641百万円の収入となりました。これは主に、海外募集による新株式の発行等による収入があったこと等によるものです。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、共同開発やライセンス契約に基づく、提携パートナー企業からのマイルストン収入及び契約一時金並びにロイヤリティ収入により運転資金を創出しています。また、持株会社である当社の新株発行及び借入れにより運転資金及び事業買収にかかる資金を調達しています。当連結会計年度においては、海外で実施したグローバル・オファリングにより十分な運転資金を調達いたしました。
当社の主な資金需要は継続的な候補薬の開発に関するものであり、現在保有している候補薬や将来における自社開発パイプラインの研究開発や臨床試験を進め、規制当局からの承認を得るために、研究開発活動への投資を継続していきます。なお現在、英国において仕掛中の研究開発施設への主な投資は、2018年12月期中の終了を予定しております。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a. 仕入実績
当社グループの売上収益は、主にマイルストン及びロイヤリティ収入によるものであるため、該当事項はありません。
b. 受注実績
当社グループの売上収益は、主にマイルストン及びロイヤリティ収入によるものであるため、該当事項はありません。
c. 販売実績
当社グループの事業は医薬事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は以下のとおりです。
区分 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
マイルストン収入及び契約一時金 | 3,840 | △75.4 |
ロイヤリティ収入 | 2,561 | △12.2 |
その他 | 554 | 53.2 |
合計 | 6,955 | △63.2 |
注) 1.当連結会計年度より、従来のセグメントである「国内医薬事業」と「海外医薬事業」を、「医薬事業」の単一セグメントに変更しております。それに伴い、前年期同期比については前連結会計年度の数値を販売実績の内訳に組み替えた数値で比較しております。
2.医薬事業の販売実績は主に開発進捗に伴うマイルストン収入及び契約一時金並びにロイヤリティ収入であり、仕入及び受注との関連はありません。
3.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2016年4月 1日 至 2017年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2017年4月 1日 至 2018年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
Novartis International AG | 3,363 | 17.8 | 2,459 | 35.4 |
Allergan Pharmaceuticals International Limited | 13,544 | 71.7 | 1,917 | 27.6 |
AstraZeneca UK Limited | 968 | 5.1 | 1,415 | 20.3 |
Teva Pharmaceutical Industries Ltd | 196 | 1.0 | 716 | 10.3 |
4.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(5) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況、1.連結財務諸表等、(1)連結財務諸表、連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載のとおりです。
(6) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
(開発費)
日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上要件を満たすことから、無形資産に計上しております。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べ研究開発費が88百万円減少し、同額の無形資産が増加しております。
(のれんの償却)
日本基準においてのれんは定額法により償却を行っていましたが、IFRSにおいてはのれんの償却は行わず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べ販売費及び一般管理費が957百万円、持分法による投資損失が22百万円減少しています。