四半期報告書-第34期第1四半期(2023/01/01-2023/03/31)

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2023/05/12 15:32
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34項目
文中の将来に関する事項は、当第1四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1) 経営成績の状況
当社グループは、サイエンスとテクノロジーに立脚し、医薬品の研究(創薬)から初期の臨床開発に特化した企業です。世界をリードするサイエンスによって人生を変える医薬品を生み出すことをミッションとし、日本発の国際的なリーディングバイオ医薬品企業になることを目指しています。独自のStaR®(Stabilized Receptor)技術及び構造ベース創薬(以下「SBDD」)に基づき、革新的で生産性の高い創薬プラットフォームを確立しており、創薬ターゲットとして最大のタンパク質ファミリーであり、多くの疾患に関連することが知られている「Gタンパク質共役受容体」に対して、前例のないレベルでの創薬を可能とします。このプラットフォームを応用することで、多くの開発品を創出しており、提携先のグローバルバイオ医薬品企業及び自社での開発が進められています。2022年に発足した新経営体制のもと、独自の創薬プラットフォーム及びパイプラインを起点とし、世界と日本の両面から事業を成長させる、明確で進化した新たな戦略を打ち出しています。
この戦略では、以下の4つを柱としています。
(1) 社内での継続的なイノベーションと、それを補完する優れたテクノロジーを持つ他社との提携を通じ、世界をリードするStaR®/SBDDに基づく創薬プラットフォームの競争優位性を、さらに拡大・強化する。
(2) グローバル製薬企業との既存の提携を前進させ、加えて価値の高い新規提携を行うことで、契約一時金、開発マイルストン、上市品の売上から得られるロイヤリティなどから、継続的な売上を確保する。
(3) 研究開発体制のプログラム重視型モデルへの転換、ターゲットの機能への深い理解、トランスレーショナルメディシンへの注力を通じて迅速に臨床POCを確立することで、開発品の品質と投資対効果を向上させ、より高い価値でのライセンスと、日本での自社開発を見据えた重厚なパイプライン構築を目指す。
(4) 日本での臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築し、日本という大きく魅力的な市場で、見逃されている市場の発掘に取り組む。まずは、開発リスクの低い、海外で承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品の導入から始め、中長期的には自社品の開発によりパイプラインの拡充を図る。
(1) 世界をリードするStaR®及びSBDD創薬力の拡大・強化
世界をリードするStaR®/SBDDの強化については、大手バイオ医薬品企業の創薬・開発パートナーとして選ばれ続けるという戦略を実現し続けるために、これまで行った提携を通じた取り組みを進めるとともに、新たな提携についても模索しています。
(2) 大手グローバル製薬企業との既存の提携の推進及び継続的な収益確保への取り組み
当社グループは、2023年1月に開催された第41回J.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスにおいて、当社社長CEOのクリストファー・カーギルがプレゼンテーションを行うとともに、多くの大手グローバル製薬企業やバイオ医薬品企業との関係強化及び構築のための個別ミーティングを実施しました。
2023年1月5日、当社グループは、提携先のTempero Bio Inc.(以下「Tempero Bio社」)がFDAに対して、アルコールとその他の物質使用障害(Substance Use Disorder:SUD)を対象としたTMP-301のINDを行い、承認されたことを発表しました。TMP-301(旧開発コード:HTL0014242)は、当社グループが創出しTempero Bio社に導出した、新規の選択的mGluR5 NAM候補化合物です。Tempero Bio社は、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)から最近交付された530万米ドルの助成金を活用し、2023年にTMP-301の健常人を対象とする第Ⅰ相臨床試験を開始する予定です。
2023年3月30日、Centessa Pharmaceuticals Limited(以下「Centessa社」)は、2022年12月期の事業進捗および業績の報告において、当社グループのSBDDプラットフォームを利用して開発中の、経口投与が可能なオレキシン受容体2(OX2R)の選択的作動薬であるORX750について、ナルコレプシー及びその他の睡眠障害に対するベストインクラスとなる可能性がある新薬開発候補品として選定したことを発表しました。また、Centessa社は、ORX750がNT1モデルマウスと野生型マウスにおいて覚醒時間の増加を示したことを発表しました。ORX750は、現在、前臨床開発及び新薬臨床試験開始申請(IND)に向けた研究開発活動を実施中です。
(3) 生産性と付加価値、そして成功確率を高めるために、研究開発体制をプログラム重視型モデルに転換
2023年は、2つ以上の自社開発プログラムの臨床試験を開始するという目標を掲げており、その実現のための研究開発体制の強化に引き続き注力しています。
(1) 当社グループが創出した新規EP4拮抗薬であり、他の免疫療法との併用で幅広いがんを治療できる可能性があるHTL0039732の第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験。当社グループとCancer Research UKとの間で締結された臨床試験及びライセンス契約に基づき実施される予定
(2) 統合失調症の治療薬として開発中の選択的かつ強力なGPR52作動薬の臨床試験
(4) 日本における有数の商業化ビジネスの構築
2023年4月1日、当社グループは、当社社長CEOのクリストファー・カーギルが同日付で株式会社そーせいの代表取締役社長に就任することを決定し、当社グループの戦略目標達成のための日本事業の強化を見据え、当社CEOが直轄で同社の事業運営を行っていく体制に変更しました。
なお、株式会社東京証券取引所の承認を受け、2023年3月15日、当社株式は東証グロース市場から東証プライム市場へ上場市場区分を変更しました。当社グループは、東証プライム市場への上場市場区分変更により、国内外の機関投資家を通じたより大きく長期的な資本へのアクセスを可能とし、グローバルに事業を展開する当社グループの特性に見合ったものへと株主基盤が強化されることで、当社グループのビジョン達成の助けとなることを期待しています。2023年4月27日、当社株式は日本の重要な株価指数である東証株価指数(TOPIX)に採用されました。
当社グループの当第1四半期連結累計期間の経営成績
2023年3月31日現在、当社グループの従業員数は207人(2022年12月31日時点比5名増)です。
当第1四半期連結累計期間の業績は、売上収益943百万円(前年同四半期比176百万円減少)、営業損失1,964百万円(前年同四半期は2,206百万円の損失)、税引前四半期損失1,863百万円(前年同四半期は2,497百万円の損失)、四半期損失1,402百万円(前年同四半期は2,070百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
当第1四半期連結累計期間
(自 2023年1月1日
至 2023年3月31日)
前第1四半期連結累計期間
(自 2022年1月1日
至 2022年3月31日)
増減
売上収益9431,119△176
売上原価△92△288196
研究開発費△1,957△1,804△153
販売費及び一般管理費△1,109△1,354245
営業費用合計△3,158△3,446288
その他の収益及びその他の費用251121130
営業損失(△)△1,964△2,206242
金融収益及び金融費用101△71172
持分法による投資損益-△220220
税引前四半期損失(△)△1,863△2,497634
法人所得税費用46142734
四半期損失(△)△1,402△2,070668
代替業績評価指標
(コア営業損益)(注)1
営業損失(△)△1,964△2,206242
調整額
有形固定資産の減価償却費1401391
無形資産の償却費19718314
株式報酬費用 (注)2109111△2
構造改革費用 (注)253533△480
コア営業損失(△)△1,465△1,240△225
USD:JPY(期中平均為替レート)132.32116.1916.13
GBP:JPY(期中平均為替レート)160.66155.874.79

(注)1 コア営業損益は営業損益(IFRS)+重要な非現金支出費用+重要な一時的支出費用で定義され、事業の潜在的な経常キャッシュ創出能力を表しております。
2 構造改革に係る株式報酬費用の加速償却による影響額は構造改革費用に含まれております。
当社グループは、医薬事業の単一セグメントであるため、報告セグメント別の記載は省略しています。
(売上収益)
(単位:百万円)
当第1四半期連結累計期間
(自 2023年1月1日
至 2023年3月31日)
前第1四半期連結累計期間
(自 2022年1月1日
至 2022年3月31日)
増減
契約一時金及びマイルストン収入230121109
契約一時金収入(契約開始時認識額)---
マイルストン収入(条件達成時認識額)-29△29
前受収益振替額 (注)23092138
ロイヤリティ収入627747△120
その他86251△165
合計9431,119△176

(注) 第4 経理の状況 8.売上収益(4) 契約残高 ②契約負債に含まれている前受収益より取り崩したものになります。
当第1四半期連結累計期間の売上収益は、前年同四半期に比べ176百万円減少し、943百万円となりました。
当第1四半期連結累計期間の契約一時金及びマイルストンに関する収益は、前年同四半期比109百万円増加し、230百万円となりました。契約一時金及びマイルストン収入は、契約一時金収入、マイルストン収入及び前受収益振替額で構成されています。契約一時金及びマイルストン収入は、新規提携契約が締結できるかどうか、あるいはあらかじめ定められた成果(マイルストン)を達成できるかどうかによって、四半期ごとに変動する可能性があります。当第1四半期連結累計期間の契約一時金及びマイルストン収入の増加は、マイルストン収入が減少したものの、前受収益振替額が増加したことによるものです。前受収益振替額の増加の要因は、前第1四半期連結累計期間は2件の契約が振替の対象であったのに対し、当第1四半期連結累計期間では4件の契約が前受収益から売上収益へ振替対象となったことによるものです。
当第1四半期連結累計期間のロイヤリティに関する収益は、前年同四半期比120百万円減少し、627百万円となりました。当社グループのロイヤリティに関する収益は導出先であるNovartis International AG(以下「ノバルティス社」)(注)によるウルティブロ® ブリーズヘラー®、シーブリ® ブリーズヘラー®及びエナジア® ブリーズヘラー®の売上に関連するものです。
(注) グリコピロニウム臭化物とその製剤の独占的開発・販売権は、2005年4月に、当社グループ及び共同開発パートナーであるVectura社からノバルティス社に導出しています。シーブリ®、ウルティブロ®、エナジア®及びブリーズヘラー®はノバルティス社の登録商標です。
当第1四半期連結累計期間のその他に関する収益は、前年同四半期比165百万円減少し、86百万円となりました。その他に関する収益は、提携先の研究開発の受託から発生しますが、研究開発の進捗に伴い受託開発が減少したこと、また昨年締結した2件の新規契約では研究開発受託は発生せず、前受収益振替額が発生するものであるためです。
(営業費用)
売上原価
当第1四半期連結累計期間の売上原価は、前年同四半期比196百万円減少し、92百万円となりました。売上原価は顧客に向けた研究開発受託サービスに係る内部コストであり、研究開発受託契約に基づく収入の減少に伴い減少しております。
研究開発費
当第1四半期連結累計期間の研究開発費は、前年同四半期比153百万円増加し、1,957百万円となりました。これは主に、研究開発体制の強化に伴う支出の増加によるものですが、円安も影響しております。
当第1四半期連結累計期間においては、研究開発費全体の98%は英国における活動によるものです。
販売費及び一般管理費
当第1四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、前年同四半期比245百万円減少し、1,109百万円となりました。これは主に、構造改革費用が減少したことによるものです。
その他の収益及びその他の費用
当第1四半期連結累計期間のその他の収益及びその他の費用の純額は、前年同四半期比130百万円増加し、251百万円の収益となりました。これは主に、当第1四半期連結累計期間において英国における研究開発税額控除が増加したことによります。
(営業損益)
当第1四半期連結累計期間の営業損益は、1,964百万円の損失(前年同四半期は2,206百万円の損失)となりました。営業損失が減少した主な要因は、売上収益が減少し研究開発費が増加したものの、売上原価、販売費及び一般管理費の減少、並びにその他の収益が増加したことによるものです。
金融収益及び金融費用
当第1四半期連結累計期間の金融収益及び金融費用の純額は、前年同四半期比172百万円増加し、101百万円の収益となりました。これは主に、英国において金利が大幅に上昇したことに伴い、預金利息が増加したことによるものです。
持分法による投資損益
2022年10月にMiNA (Holdings) Limitedを持分法適用の関連会社から除いたことに伴い、当第1四半期連結累計期間での持分法による投資損益の発生はありません。
(税引前四半期損益)
当第1四半期連結累計期間の税引前四半期損益は、1,863百万円の損失(前年同四半期は2,497百万円の損失)となりました。これは上述で説明した複合的な影響によるものです。
法人所得税費用
当第1四半期連結累計期間の法人所得税費用は461百万円(前年同四半期は427百万円)となりました。法人所得税費用に関しましては、グループ会社各社ごとに見積実効税率を適用しております。
(四半期損益)
当第1四半期連結累計期間の四半期損益は、1,402百万円の損失(前年同四半期は2,070百万円の損失)となりました。これは主に、上述で説明した複合的な影響によるものです。
(代替業績評価指標:コア営業損益)
コア営業損益は、中核事業の潜在的な経常キャッシュ創出能力を示すために、重要な非現金支出費用及び一時的な費用を調整した代替的な業績評価指標です。
当第1四半期連結累計期間のコア営業損益は、1,465百万円の損失(前年同四半期は1,240百万円の損失)となりました。
コア営業損益はIFRSの営業損益に対して以下の調整を行い算出しております。
・ 有形固定資産の減価償却費140百万円(前年同四半期比1百万円増加)
・ 無形資産の償却費197百万円(前年同四半期比14百万円増加)
・ 株式報酬費用109百万円(前年同四半期比2百万円減少)
・ 構造改革費用53百万円(前年同月比480百万円減少)
うち26百万円(前年同四半期158百万円)は構造改革に係る株式報酬費用の加速償却の影響によるものです。
構造改革費用は子会社の執行体制の変更に伴う費用となります。
(2) 財政状態の状況
(資産)
当第1四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べ698百万円減少し、98,719百万円となりました。これは主に、営業費用に係る支払いに伴い現金及び現金同等物が減少したことによるものです。
(負債)
当第1四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末に比べ976百万円減少し、40,505百万円となりました。これは主に、営業債務の減少及び賞与の支給により引当金が減少したことによるものです。
(資本)
当第1四半期連結会計期間末における資本は、前連結会計年度末に比べ278百万円増加し、58,214百万円となりました。これは主に、在外営業活動体の為替換算差額の増加によりその他の資本の構成要素が1,545百万円増加、及び株式報酬費用により資本剰余金が135百万円増加した一方で、四半期損失1,402百万円を計上したことによるものです。
なお、現金及び現金同等物並びに有利子負債の総資産に占める比率及び親会社所有者帰属持分比率は、それぞれ67.0%、30.3%及び59.0%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ419百万円減少し、66,138百万円となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは1,157百万円の支出となりました。これは主に、営業に関する現金支出が売上に関する現金収入を上回ったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは130百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは51百万円の支出となりました。これはリース負債の返済による支出によるものです。
(現金及び現金同等物の為替変動による影響)
当第1四半期連結累計期間の現金及び現金同等物の為替変動による影響は919百万円の増加となりました。これは主に、円安ポンド高・ドル高の影響によるものです。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。なお、当社グループは財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針は定めておりません。
(5) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間の研究開発費は、前第1四半期連結累計期間に比べ153百万円増加し、1,957百万円となりました。なお、詳細につきましては、(1)経営成績の状況に記載しております。