有価証券報告書-第119期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

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2019/03/26 16:30
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当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
(百万円)
1株当たり
当期純利益
(円)
潜在株式調整後
1株当たり
当期純利益
(円)
当連結会計年度1,094,825108,350109,48961,403153.74153.56
前連結会計年度1,005,06280,43780,32722,74956.9556.87
増減率8.9%34.7%36.3%169.9%170.0%170.0%
外貨増減率8.8%

当期の国内における景況感は、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、緩やかな回復基調が続きました。国内化粧品市場は、全体として回復基調が継続したことに加え、増加傾向が続く訪日外国人によるインバウンド需要もあり、堅調に推移しましたが、夏から秋にかけては、台風や地震の影響を受けました。海外化粧品市場は、国によりばらつきがみられる欧州は弱い成長にとどまり、米州は成長が鈍化しているものの、中国やその他アジアでは堅調な成長が継続しました。
資生堂グループは2015年に、100年先も輝き続ける企業となるため中長期戦略VISION 2020をスタートさせました。日本発のグローバルビューティーカンパニーとして競争に勝ち抜くため、すべての活動をお客さま起点とし、グローバルでブランド価値向上に取り組んでいます。
当連結会計年度は、VISION 2020の第2フェーズである後半3カ年の初年度であり、成長加速のための新戦略の実行に取り組みました。プレステージブランド事業を軸に積極的なマーケティング投資を継続しながら、デジタル化の加速や新規事業開発、さらにイノベーションによる新価値創造を進めました。また、日本、中国、トラベルリテール(空港免税店等)を一つの市場と捉え、主に中国のお客さまを対象としてアジア全域でクロスボーダーマーケティングを戦略的に実施しました。さらに、すべての価値を生み出す人材こそが成長の源泉と考え、人材への投資を積極的に行いました。
この結果、当連結会計年度の売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のすべてにおいて、過去最高を更新しました。2017年にVISION 2020の当初の売上高目標1兆円超を3年前倒しで達成したことに続き、当連結会計年度は営業利益目標1,000憶円超を2年前倒しで達成しました。
① 売上高
売上高は、戦略的に投資強化を続けているプレステージ領域が全体を牽引し、現地通貨ベースで前期比8.8%増、前期のZotos International Inc.(以下、ゾートス社)譲渡影響等を除く実質ベースでは前期比14%増となりました。円換算後では、前期比8.9%増の1兆948億円となりました。
② 売上原価
売上原価は、前期比0.3%増の2,319億円となりました。売上高に対する比率は前連結会計年度より1.8ポイント改善され、21.2%となりました。これは、主に事業ポートフォリオの見直し及びプレステージブランドの成長の効果によるものです。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、前期比8.8%増の7,545億円となりました。その内訳は次のとおりです。
(イ) マーケティングコスト
マーケティングコストの売上高に対する比率は、コアブランドへの投資を集中及び拡大したことにより、前期比0.9ポイント増の36.6%となりました。
(ロ) ブランド開発費・研究開発費
ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、前期比0.4ポイント増の5.8%となりました。
(ハ) 人件費
人件費の売上高に対する比率は、前期比0.9ポイント減の11.6%となりました。
(二) 経費
経費(その他の費用)の売上高に対する比率は、前期比0.5ポイント減の14.9%となりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は291億円となり、売上高に対する比率は2.7%となりました。
なお、研究開発活動についての詳細は、「5 研究開発活動」に記載しています。
④ 営業利益
営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、収益性の高いプレステージブランド等の好調によるコスト構造の改善などにより、前期比34.7%増の1,084億円となりました。
⑤ 営業外損益
営業外損益は、前期に対し12億円増の11億円の利益となりました。
⑥ 経常利益
経常利益は、営業利益が増加したことから、前期比36.3%増の1,095億円となりました。
⑦ 特別損益
一部ブランドの収束及び業務用化粧品販売事業等の撤退に関する費用の計上等により、52億円の損失となりました。なお、前連結会計年度は、米国のBare Escentuals, Inc.に係る無形固定資産等の減損損失を特別損失として計上しています。
⑧ 法人税等(法人税等調整額を含む)
法人税等は、利益の増加に加え、米国子会社において繰延税金資産に対する評価性引当金を計上したことなどにより、前期比198.5%増の394億円となりました。
⑨ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比169.9%増の614億円となりました。
当連結会計年度の連結売上高営業利益率は9.9%、連結ROE(自己資本当期純利益率)は14.1%、連結ROIC(投下資本利益率)は13.1%となりました。当連結会計年度における収益及び費用の主な為替換算レートは、1ドル=110.4円、1ユーロ=130.4円、1中国元=16.7円です。
(報告セグメントの業績)
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
売上高(外部顧客への売上高)
当連結会計年度
(百万円)
構成比(参考)
前連結会計年度
(百万円)
構成比増減
(百万円)
増減率外貨
増減率
日本事業454,55841.6%417,07441.4%37,4839.0%9.0%
中国事業190,79917.4%144,26614.4%46,53332.3%32.3%
アジアパシフィック事業68,1206.2%59,8196.0%8,30113.9%13.1%
米州事業131,73312.0%134,13013.3%△2,397△1.8%△0.4%
欧州事業113,16410.3%108,51710.8%4,6464.3%1.4%
トラベルリテール
事業
87,6218.0%65,0286.5%22,59234.7%35.4%
プロフェッショナル事業20,3241.9%47,9594.8%△27,635△57.6%△57.7%
その他28,5032.6%28,2652.8%2370.8%0.8%
合計1,094,825100.0%1,005,062100.0%89,7628.9%8.8%

(注) 報告セグメントごとの売上高は外部顧客への売上高です。
営業利益
当連結会計年度
(百万円)
売上比(参考)
前連結会計年度
(百万円)
売上比増減
(百万円)
増減率
日本事業91,43018.8%78,20717.5%13,22316.9%
中国事業24,51412.8%11,3297.8%13,185116.4%
アジアパシフィック事業7,80811.1%7,18311.7%6248.7%
米州事業△14,775△8.7%△11,768△7.7%△3,007
欧州事業△7,988△6.4%△5,822△4.9%△2,165
トラベルリテール
事業
17,60620.0%15,04623.0%2,56017.0%
プロフェッショナル事業8173.9%2,9586.1%△2,140△72.4%
その他△6,029△4.4%△7,979△7.6%1,949
113,3848.8%89,1547.8%24,23027.2%
調整額△5,034△8,7163,682
合計108,3509.9%80,4378.0%27,91234.7%

(注) 1 当連結会計年度より、当社グループ内の経営管理体制に合わせ、報告セグメントの区分方法を見直してい
ます。従来「欧州事業」に計上していたアジアパシフィックのフレグランス事業は「アジアパシフィック事業」へ、「欧州事業」に計上していたトラベルリテールのフレグランス事業は「トラベルリテール事業」へ、「その他」に計上していた「2e(ドゥーエ)」と「NAVISION」は「日本事業」へ計上しています。また、業績管理区分の一部見直しに伴い、「米州事業」に計上していた「NARS」「bareMinerals」「LAURA MERCIER」のうち各地域で展開している一部の代理店商流の事業については、「アジアパシフィック事業」「欧州事業」「トラベルリテール事業」へ計上しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 第3四半期連結会計期間より、当社グループ内の経営管理体制変更に合わせ、従来「日本事業」に計上して
いた㈱イプサの業績は「その他」へ計上しています。当連結会計年度及び前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
3 「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、生産事業、フロンティアサイエンス事業(化粧品原料、医療
用医薬品)及び飲食業などを含んでいます。
4 営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率
です。
5 営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
① 日本事業
日本事業は、マーケティング投資を強化してきた中高価格帯のブランドが好調を継続し日本のお客さまの売上が拡大したことに加え、アジア全域でのクロスボーダーマーケティングの強化により訪日外国人向けのインバウンド需要を確実に獲得したことなどから、市場を大きく上回る成長となりました。
持続的な成長に向けて、当社が強みを持つスキンケア、ベースメイクアップ、サンケアの“肌3分野”に引き続き注力しました。「SHISEIDO」では、美容液「アルティミューン」やメイクアップ商品をリニューアルするとともに、若年層に向けたマーケティング強化を行い、売上が大きく伸長しました。「エリクシール」では、前期に発売した、しわ改善クリームが新たなお客さまの拡大に貢献したほか、化粧水・乳液の売上拡大がブランド全体の力強い成長につながりました。
以上のことから、売上高は前期比9.0%増の4,546億円となりました。営業利益は、マーケティング投資を強化している一方、売上増に伴う差益増や原価率の低減などが寄与し、前期比16.9%増の914億円となりました。
② 中国事業
中国事業では、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「イプサ」、「NARS」などのプレステージブランドが高成長を持続したことに加え、コスメティクスブランドでは“メイド・イン・ジャパン”ブランドである「エリクシール」や「アネッサ」が大きく伸長しました。Eコマースは、プレステージやコスメティクスの商品を積極展開したことに加え、デジタルを活用したマーケティングの展開や、中国のネット通販大手との協業の強化などにより、大きく成長しました。中国現地のコスメティクスブランドについては、「オプレ」で成長性が高い中規模の3~4級都市への投資を強化したほか、前期に取引制度改定を行った「Za」や「ピュア&マイルド」ではセルフ販売チャネルを強化するなど収益性改善に向けて取り組みました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比32.3%増、円換算後では前期比32.3%増の1,908億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、マーケティング投資効率の向上などにより、前期比116.4%増の245億円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、プレステージブランドの「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」が韓国やタイを中心に大きく成長しました。東南アジア地域では、「NARS」の直営店展開を拡大し好調な実績となりました。コスメティクス・パーソナルケアの領域では、国や地域ごとに異なるお客さまの嗜好や生活習慣に合わせたマーケティングを強化し、アジア専用商品を発売した「SENKA」や、「アネッサ」の売上が伸長しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比13.1%増、円換算後では前期比13.9%増の681億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前期比8.7%増の78億円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、メイクアップやデジタル領域への投資を積極的に行い、「SHISEIDO」、「NARS」、「LAURA MERCIER」などのプレステージブランドが成長を継続したほか、フレグランスブランドの「Dolce&Gabbana」も好調に推移しました。一方、「bareMinerals」では、新たなブランド戦略のもと“THE POWER OF GOOD”をコンセプトとした新マーケティングをスタートし、ブランドの再生に取り組みました。収益性が低い直営店の閉鎖を進めたことにより、売上は前期を下回ったものの、売上・利益ともに期初の計画を達成しました。また、新たな価値創出を目指し、2018年1月にOlivo Laboratories, LLCの保有する最先端の人工皮膚形成技術“Second Skin”及び関連事業に関する資産を取得しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比0.4%減、事業譲渡影響等を除く実質ベースでは前期比4%増、円換算後では前期比1.8%減の1,317億円となりました。営業損失は前期に対し30億円増の148億円となりました。米州事業を機能別に分けると、米州における販売事業(コマーシャルベース)、グローバルで展開するメイクアップのブランドホルダー機能、メイクアップ、デジタル、テクノロジーの価値創造拠点となる“センター・オブ・エクセレンス”(注)機能を持ち、これらのグローバル機能の戦略的投資も負担しています。販売事業では1ケタ半ばの営業利益率となりましたが、現状では、ブランドホルダーの投資を吸収して、収益化はできていません。今後は、「bareMinerals」の構造改革を実現し収益性を改善していきます。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、持続的な成長性拡大に向けてマーケティング投資を強化した「Dolce&Gabbana」が好調に推移しました。一方、その他のフレグランスブランドの売上が前期を下回りました。「SHISEIDO」はスキンケア商品が好調に推移しシェアを拡大したほか、「NARS」も成長を継続しました。また、収益性改善に向け、欧州地域で統合した組織の最適化を進めました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比1.4%増、事業譲渡影響等を除く実質ベースでは前期比5%増、円換算後では前期比4.3%増の1,132億円となりました。営業損失は前期に対し22億円増の80億円となりました。欧州事業を機能別に分けると、欧州における販売事業(コマーシャルベース)、フレグランスのブランドホルダー機能、フレグランスの“センター・オブ・エクセレンス”機能を持ち、これらのグローバル機能の戦略的投資も負担しています。販売事業では1ケタ後半の営業利益率となりましたが、現状では、ブランドホルダーの投資を吸収して、収益化はできていません。今後は、売上を拡大することで収益性を改善していきます。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港免税店等での化粧品の販売)は、旅行者の増加に伴いアジアを中心に市場が拡大しています。当社は同事業について成長余地が大きいことから、グローバルプレステージ領域でのポジションを一層強化することをねらいに、最重要事業の一つとして積極的に取り組んでいます。
当期は、世界各地の空港での広告宣伝など積極的なマーケティング投資の効果により、韓国・中国・タイなどアジアを中心に「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」、「アネッサ」が前年を大きく上回る伸長を継続しました。成長加速に向け、新ブランドの導入や店頭対応力の向上に取り組んだほか、大手オペレーターとの関係強化にも努めました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比35.4%増、事業譲渡影響等を除く実質ベースでは前期比40%増、円換算後では前期比34.7%増の876億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前期比17.0%増の176億円となりました。
⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を販売しているほか、日本とタイでは直営美容室も展開しています。当期は、中国・アジアにおける成長加速を目指し、商品やマーケティングの強化に取り組みました。なお、グローバルでの事業・ブランドポートフォリオの再構築の中で、前期にサロン向けヘアケア事業をグローバルに展開していた子会社のゾートス社の株式及び関連資産をドイツのHenkel AG & Co. KGaAに譲渡しました。
以上のことから、売上高は上記譲渡の影響により現地通貨ベースで前期比57.7%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前期比1%増、円換算後では前期比57.6%減の203億円となりました。営業利益は売上減に伴う差益減などにより、前期比72.4%減の8億円となりました。
(注) “センター・オブ・エクセレンス”とは、スキンケアは日本、メイクアップとデジタルは米州、フレグラ
ンスは欧州といった、各カテゴリーにおいてグローバルで最先端の地域が、当社のグローバルな戦略立案・商品開発をリードする体制のことです。
(生産、受注及び販売の実績)
生産、受注及び販売の実績は次の通りです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業--
中国事業3,930△3.3
アジアパシフィック事業3,513△7.7
米州事業28,59333.9
欧州事業34,55116.1
トラベルリテール事業--
プロフェッショナル事業-△100.0
その他151,10716.1
合計221,6959.9

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 金額は製造原価によっています。
3 上記の金額には、消費税等は含まれていません
4 プロフェッショナル事業における減少は、子会社であるゾートス社の株式譲渡によります。
② 受注状況
当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業454,5589.0
中国事業190,79932.3
アジアパシフィック事業68,12013.9
米州事業131,733△1.8
欧州事業113,1644.3
トラベルリテール事業87,62134.7
プロフェッショナル事業20,324△57.6
その他28,5030.8
合計1,094,8258.9

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

(2) 財政状態
① 資金調達と流動性マネジメント
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、デット・エクイティ・レシオ0.3、EBITDA有利子負債倍率1.0倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力およびキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。
手元流動性については、連結売上高の1.5カ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金の総額は1,259億円となり、手元流動性は連結売上高(2018年1月1日から2018年12月31日までの期間)の1.4カ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は1,299億円となっています。国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,000億円、当社及び欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠300百万米ドル、並びに米国子会社のCPプログラムの未使用枠100百万米ドルなどを有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
② 格付け
当社グループは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、グローバルな資本市場から円滑な資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下「ムーディーズ」)及びスタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(以下「S&P」)の2社より格付けを取得しています。
2019年2月28日現在の債券格付けの状況(長期/短期)は以下のとおりです。
ムーディーズS&P
長期A2(見通し:安定的)A-(見通し:安定的)
短期P-1A-2

③ 資産及び負債・純資産
(資産)
当年連結会計年度末の総資産は、グローバルイノベーションセンターや那須工場の建設に伴う有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ602億円増の1兆96億円となりました。
(負債)
当年連結会計年度の負債は、那須工場建設に関する未払金の増加などにより376億円増の5,412億円となりました。
有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑤連結附属明細表」に記載しています。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、利益剰余金の増加などにより226億円増の4,685億円となります。
1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に対し63.35円増の1,123.19円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末比0.2ポイント減の44.4%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度
営業活動によるキャッシュ・フロー95,39292,577
投資活動によるキャッシュ・フロー△1,061△103,112
財務活動によるキャッシュ・フロー△53,117△29,722
現金及び現金同等物 期末残高156,834111,767

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ451億円減少し、1,118億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、たな卸資産の増加(243億円)、売上債権の増加(107億円)などの支出があった一方で、税金等調整前当期純利益(1,043億円)、減価償却費(420億円)、仕入債務の増加(139億円)などの収入により、926億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入(47億円)、有形固定資産の売却による収入(44億円)があった一方で、有形固定資産の取得による支出(806億円)、無形固定資産の取得による支出(171億円)、長期前払費用の取得による支出(81億円)、敷金・保証金取得による支出(40億円)などにより、1,031億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額(139億円)、短期借入金及びコマーシャルペーパーの減少(51億円)、非支配株主への配当金の支払額(41億円)などにより、297億円の支出となりました。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
① 有形固定資産
当社グループでは、有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価格に基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
② のれん、商標権及びその他の無形固定資産
当社グループでは、のれん、商標権及びその他の無形固定資産について、減損の判定を行っています。のれん、商標権及びその他の無形固定資産の公正価値の見積りや減損判定に当たっては、外部専門家などによる評価を活用しています。公正価値の見積りは、主に割引キャッシュ・フロー方式により行いますが、この方式では、将来キャッシュ・フロー、割引率など、多くの見積り・前提を使用しています。これらの見積り・前提は、減損判定や認識される減損損失計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。経営者は、当該判定における公正価値の見積りは合理的であると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、公正価値が下落し、減損損失が発生する可能性があります。
③ 有価証券
当社グループでは、その他有価証券のうち、取得原価に比べ時価又は実質価額が著しく下落したものについては、回復可能性があると判断される場合を除き、減損処理を行っています。時価のあるものについては、決算日現在の時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態及び経営成績を勘案し、回復可能性を判断しています。時価のないものについては、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合には、回復可能性があると判断できる場合を除き、減損処理を行っています。経営者は、回復可能性の判断が適切なものであると判断していますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落又は投資先の財政状態及び経営成績の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
⑤ 退職給付費用及び債務
当社グループの主要な退職給付制度は、日本における企業年金制度及び退職一時金制度です。従業員の退職給付費用及び債務は、割引率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率と長期期待運用収益率は、退職給付費用及び債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期社債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。長期期待運用収益率は年金資産の種類ごとに期待される収益率の加重平均に基づいて決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。