有価証券報告書-第120期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/25 14:40
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当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
親会社株主に
帰属する
当期純利益
(百万円)
1株当たり
当期純利益
(円)
当連結会計年度1,131,547113,831108,73973,562184.18
前連結会計年度1,094,825108,350109,48961,403153.74
増減率3.4%5.1%△0.7%19.8%19.8%
外貨増減率5.7%
実質増減率6.8%

当連結会計年度の国内における景況感は、雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな回復基調で推移したものの、10月以降は消費税増税や台風などの自然災害影響等により、個人消費は先行き不透明な状況が続きました。国内化粧品市場は、消費税増税前の駆け込み需要や増税後の反動はあったものの、増加傾向が続く訪日外国人によるインバウンド需要もあり、全体として緩やかな回復基調が継続しました。海外化粧品市場は、国によりばらつきがみられる欧州は弱い成長にとどまり、メイクアップ市場のマイナス成長が続いた米州も低調に推移しました。一方、中国を含むアジアでは、香港などでの厳しい市場環境による影響があったものの、全体としては堅調に成長しました。
資生堂グループは2015年に、100年先も輝き続ける企業となるため中長期戦略VISION 2020をスタートさせました。日本発のグローバルビューティーカンパニーとして競争に勝ち抜くため、全ての活動をお客さま起点とし、グローバルでブランド価値向上に取り組んでいます。
当連結会計年度は、VISION 2020の第2フェーズである後半3カ年の2年目であり、成長加速のための新戦略の実行に取り組みました。成長をけん引するプレステージブランドやメイド・イン・ジャパンのコスメティクスブランドにマーケティング投資を集中するとともに、デジタルマーケティングやイノベーション創出への投資強化も進めました。加えて、課題であるサプライチェーンの基盤構築、米州・欧州の収益性向上に取り組みました。
この結果、当連結会計年度の売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益において、過去最高を更新しました。
① 売上高
売上高は、戦略的に投資強化を続けているプレステージ領域が全体を牽引し、現地通貨ベースで前期比5.7%増、円換算後では、前年比3.4%増の1兆1,315億円となりました。前年のアメニティグッズ事業の撤退影響や当期の米国会計基準ASC第606号適用影響及び米国スキンケアブランド「Drunk Elephant」買収影響等を除く実質ベースでは、前年比6.8%増となりました。

※1各ブランドの前年比は、期初想定の為替レートベースにて算出。為替換算および米国会計基準ASC第606号の適用影響除く※2「為替影響等」は、為替影響△261億円、2019年の米国会計基準ASC第606号の適用影響、日本における2019年の皮膚用薬ブランド「フェルゼア」「エンクロン」の事業譲渡影響
ブランド別には、これまで取り組んできたブランドの選択と集中により、主力グローバル8ブランド合計でプラス12%伸長して、0.2ポイントの営業利益率改善に貢献しました。なお、「実質前年比」の比較からは除いていますが、昨年11月に買収を完了した「Drunk Elephant」の売上は、直近2ヶ月分が計上されています。「SHISEIDO」ブランドは、2019年に当社初の2,000億円ブランドになりました。世界で151もの賞を受賞している革新的な製品である「アルティミューン」や、デジタルプロモーションを活用したクロスボーダーマーケティングが成長を牽引して、18%成長しました。
2016年に買収したメイクアップブランド「LAURA MERCIER」は、米国発のブランドでありながら、すでに売上全体に占める米国以外の国や地域の比率が50%を超えています。世界中に展開された資生堂グループのプラットフォームを活用することで、短期間で真のグローバルブランドへと成長を遂げました。当社は引き続き、ブランドポートフォリオの最適化を進め、収益性のさらなる向上を目指してまいります。

※1各事業の外貨前年比は、実勢の為替レートベースにて算出※2セグメント変更については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
※3「為替影響等」には、為替影響△261億円、2019年の米州における米国会計基準(ASC606)の適用影響、日本における2019年の皮膚用薬ブランド「フェルゼア」「エンクロン」の撤退影響
地域別では、中国、トラベルリテール、アジアパシフィック、そして欧州は、マクロ経済の不透明感に直面しながらも堅調な成長を遂げました。一方、日本は成長が鈍化し、米州はメイクアップ市場の減速や構造改革により、為替変動影響等を除く実質ベースでも若干の減収となりました。
② 売上原価
売上原価は、前年比9.9%増の2,548億円となりました。売上高に対する比率は、「プレステージ」ブランドの力強い成長によりブランドミックスが改善しましたが、米国における新会計基準適用の影響、那須工場稼働に伴う減価償却費の増加や米中関税の増加、また在庫及び外注委託費用の増加により前連結会計年度と比べ1.3ポイント増加し、22.5%となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、前年比1.1%増の7,629億円となりました。その内訳は次のとおりです。
(イ)マーケティングコスト
マーケティングコストの売上高に対する比率は、主力ブランドへの安定的かつ戦略的な投資を継続した結果、現地通貨ベースの絶対額は増加しましたが、香港、韓国の市況に合わせてコストを最適化したほか、デジタルへのシフトにより、前年比0.9ポイント減の25.0%となりました。※
(ロ)ブランド開発費・研究開発費
ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、グローバルイノベーションセンターの稼働に伴う費用の増加があったものの、調査に伴う費用の減少があったため、前年と同じ5.8%となりました。
(ハ)人件費
人件費の売上高に対する比率は、bareMinerals直営店の閉鎖などにより前年比1.6ポイント減の20.7%となりました。※
(ニ)経費
経費(その他の費用)の売上高に対する比率は、物流費の増加、「Drunk Elephant」買収に係る一時費用およびのれん等償却費の増加により、前年比1.0ポイント増の15.9%となりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は317億円となり、売上高に対する比率は2.8%となりました。
なお、研究開発活動についての詳細は、「5 研究開発活動」に記載しています。
※マーケティングコストは、BC(ビューティーコンサルタント)関連諸費用を含めた場合は、売上高に対する比率は34.4%となりました。人件費は、当該費用を除いた場合は、売上高に対する比率は11.3%となりました。
④ 営業利益
営業利益は、上記の結果、前年比5.1%増の1,138億円となりました。
⑤ 経常利益
営業利益が増加したものの、経常利益は、為替差損の増加、補助金収入の減少、借入金の増加に伴う支払利息の増加により、前年比0.7%減の1,087億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が前年に比べ減少し、固定資産売却益の減少などによる特別利益の減少があったものの、特別損失の前年に比べての減少、さらに税金費用の減少により前年比19.8%増の736億円となりました。
連結売上高営業利益率は10.1%、連結ROE(自己資本当期純利益率)は15.6%、連結ROIC(投下資本利益率)は12.9%となりました。
当連結会計年度における財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは、1米ドル=109.1円、1ユーロ=122.1円、1中国元=15.8円です。

(報告セグメントの業績)
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
売上高(外部顧客への売上高)
当連結会計年度
(百万円)
構成比(参考)
前連結会計年度
(百万円)
構成比増減
(百万円)
増減率外貨
増減率
日本事業451,58739.9%454,53541.5%△2,948△0.6%△0.6%
中国事業216,24119.1%190,79917.4%25,44113.3%19.0%
アジアパシフィック事業69,8356.2%68,1206.2%1,7152.5%5.8%
米州事業124,32311.0%131,73312.0%△7,409△5.6%△3.9%
欧州事業118,41710.5%113,16410.3%5,2534.6%11.8%
トラベルリテール
事業
102,2049.0%87,6218.0%14,58216.6%19.4%
プロフェッショナル事業14,6851.3%14,1451.3%5393.8%6.0%
その他34,2523.0%34,7043.3%△451△1.3%△1.3%
合計1,131,547100.0%1,094,825100.0%36,7223.4%5.7%

(注) 報告セグメントごとの売上高は外部顧客への売上高です。
営業利益
当連結会計年度
(百万円)
売上比(参考)
前連結会計年度
(百万円)
売上比増減
(百万円)
増減率
日本事業91,09418.3%91,32618.8%△232△0.3%
中国事業29,22513.5%24,51412.8%4,71019.2%
アジアパシフィック事業7,42610.2%7,80811.1%△381△4.9%
米州事業△11,385△6.9%△14,775△8.7%3,389-
欧州事業△2,187△1.7%△7,988△6.4%5,801-
トラベルリテール
事業
22,09121.5%17,60620.0%4,48525.5%
プロフェッショナル事業3362.2%4002.7%△63△15.9%
その他△11,148△7.1%△5,508△3.9%△5,640-
125,4539.2%113,3848.8%12,06810.6%
調整額△11,621-△5,034-△6,586-
合計113,83110.1%108,3509.9%5,4815.1%

(注)1 当社グループの米国会計基準適用子会社は、当連結会計年度の連結財務諸表からASC第606号「顧客との契約から生じる収益」を適用しています。本基準を適用する対象子会社は、米国において非公開企業であるため、米国基準で定められている当連結会計年度の連結財務諸表からの適用としています。本基準により、従来、販売費及び一般管理費として処理していた顧客に対する一部の支払いを、当連結会計年度より、売上高から控除しています。また、従来、販売費及び一般管理費として処理していた一部費用を売上原価及び棚卸資産に計上しています。本基準の適用にあたっては、経過措置として認められている本基準適用の影響を適用開始日に認識する方法を採用しており、比較年度の修正は行っていません。
2 当連結会計年度より、当社グループ内の経営管理体制に合わせ、報告セグメントの区分方法を見直しています。従来「プロフェッショナル事業」に計上していた資生堂美容室㈱は「その他」へ、「日本事業」に計上していた資生堂アステック㈱と花椿ファクトリー㈱は「その他」へ計上しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
3 「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、資生堂美容室㈱、生産事業、フロンティアサイエンス事業及び飲食業などを含んでいます。
4 営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。
5 営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
① 日本事業
日本事業では、持続的な成長に向けて、当社が強みを持つスキンケア、ベースメイク、サンケアの“肌3分野”に引き続き注力しました。「SHISEIDO」では、美容液「アルティミューン」やファンデーションが好調に推移し、売上が大きく伸長しました。また、素肌までキレイにする薬用スキンケア効果と美しい仕上がりを両立させる“薬用 ケアハイブリッドファンデ”を発売した「HAKU」や「dプログラム」が成長しました。加えて、アジア全域でのクロスボーダーマーケティングの強化により、拡大する訪日外国人のインバウンド需要を確実に獲得しました。また、消費税増税前の駆け込み需要はあったものの、増税後の消費マインドの弱さの影響に加え、天候不順の影響を受けました。以上のことから、売上高は前期比0.6%減の4,516億円となりました。前期のアメニティグッズ事業の撤退影響等を除いた実質ベースでは前期比0.7%増となりました。営業利益は、売上減に伴う差益減や投資強化などにより、前期比0.3%減の911億円となりました。
② 中国事業
中国事業では、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「イプサ」、「NARS」などのプレステージブランドが高成長を持続したことに加え、コスメティクスブランドでは“メイド・イン・ジャパン”ブランドである「エリクシール」や「アネッサ」が大きく伸長しました。Eコマースは、 プレステージやコスメティクスの商品を積極展開したことに加え、デジタルを活用したマーケティングの展開や、中国のネット通販大手との協業の強化などにより、大きく成長しました。2019年後半は、香港での厳しい市場環境による影響があったものの、中国本土では高い消費者需要が続きました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比19.0%増、円換算後では前期比13.3%増の2,162億円となりました。営業利益は、デジタルマーケティング投資を強化した一方、売上増に伴う差益増などにより、前期比19.2%増の292億円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、不透明な経済環境の中で、プレステージブランドの「LAURA MERCIER」や「クレ・ド・ポー ボーテ」が好調を継続したことに加え、「エリクシール」、「アネッサ」、フレグランスブランドの「Dolce&Gabbana」が大きく伸長しました。韓国は市場環境の変化を受け厳しい状況となったものの、東南アジア地域では、直営店展開の 拡大やマーケティング投資の強化を進め、好調に推移しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比5.8%増、円換算後では前期比 2.5%増の698億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増があった一方、マーケティング投資の強化などにより、前期比4.9%減の74億円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、厳しい市場環境の中、「SHISEIDO」や「Dolce&Gabbana」が成長を継続しました。「bareMinerals」では、収益性が低い直営店の閉鎖など構造改革を引き続き進めました。また、2019年11月に米国市場を中心に急成長しているスキンケアブランド「Drunk Elephant」を買収しました。グローバルで需要拡大が見込める米国発の同ブランドを加えることにより、主力であるプレステージ・スキンケア事業にさらに注力し、発展させるとともに、米州事業の収益基盤を強化します。以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比3.9%減、米国会計基準ASC第606号適用影響および「Drunk Elephant」買収影響を除く実質ベースでは、前期比0.3%減となりました。円換算後では前期比5.6%減の1,243億円となりました。構造改革費用の減少などにより、営業損失は前期に対し34億円改善の114億円となりました。米州事業を機能別に分けると、米州における販売事業、グローバルで展開するメイクアップのブランドホルダー機能、メイクアップ、デジタル、テクノロジーの価値創造の拠点となる“センター・オブ・エクセレンス”(注)機能を持ち、このグローバル機能の戦略的投資も負担しています。販売事業では1桁後半の営業利益率となり、当期よりブランドホルダーコストを吸収して、収益化を実現しました。今後は「bareMinerals」の構造改革や「Drunk Elephant」の育成を進め、収益性を一層改善していきます。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、新製品が好調に推移した「Dolce&Gabbana」や「narciso rodriguez」などのフレグランスブランドが伸長しました。「SHISEIDO」はメイクアップ商品が好調に推移したほか、「NARS」も成長を継続しました。「クレ・ド・ポー ボーテ」は10月にイギリスのロンドンに出店し、今後も欧州での展開を強化していきます。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比11.8%増、円換算後では前期比 4.6%増の1,184億円となりました。売上増に伴う差益増などにより、営業損失は前期に対し58億円減の22億円と大きく改善しました。欧州事業を機能別に分けると、欧州における販売事業、フレグランスのブランドホルダー機能、フレグランスの“センター・オブ・エクセレンス”機能を持ち、このグローバル機能の戦略的投資も負担しています。販売事業では2桁の営業利益率となり、当期はブランドホルダーコストを吸収してブレークイーブンの水準まで改善することができました。今後は、フレグランスに加え、スキンケアの展開を加速しながら売上を拡大することで収益性を一層改善していきます。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港免税店等での化粧品・フレグランスの販売)は、旅行者の増加に伴いアジアを中心に市場が拡大しています。当社は同事業について成長余地が大きいことから、グローバルプレステージ領域でのポジションを一層強化することをねらいに、最重要事業の一つとして積極的に取り組んでいます。当期は、世界各地の空港での広告宣伝など積極的なマーケティング投資の効果により、韓国、中国、タイなどアジアを中心に「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」、「アネッサ」が前年を大きく上回る伸長を継続しました。また、成長加速に向け、「イプサ」や「エリクシール」の導入拡大や戦略的な店頭カウンター強化に取り組みました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比19.4%増、円換算後では前期比16.6%増の1,022億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前期比25.5%増の221億円となりました。

⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を販売しています。当期は、商品やマーケティングの強化に取り組み、中国で大きく成長したほか、マレーシアやシンガポールなども好調に推移しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比6.0%増、円換算後では前期比3.8%増の147億円となりました。営業利益は、マーケティング投資の強化などにより、前期比15.9%減の3億円となりました。
(注) “センター・オブ・エクセレンス”とは、スキンケアは日本、メイクアップ、デジタル、テクノロジーは米州、フレグランスは欧州といった、各カテゴリーにおいてグローバルで最先端の地域が、当社のグローバルな戦略立案・商品開発をリードする体制のことです。
(生産、受注及び販売の実績)
生産、受注及び販売の実績は次の通りです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業--
中国事業4,2488.1
アジアパシフィック事業3,510△0.1
米州事業35,28323.4
欧州事業34,5370.0
トラベルリテール事業--
プロフェッショナル事業--
その他169,26812.0
合計246,84811.3

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 金額は製造原価によっています。
3 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注状況
当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業451,587△0.6
中国事業216,24113.3
アジアパシフィック事業69,8352.5
米州事業124,323△5.6
欧州事業118,4174.6
トラベルリテール事業102,20416.6
プロフェッショナル事業14,6853.8
その他34,252△1.3
合計1,131,5473.4

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

(2) 財政状態
① 資金調達と流動性マネジメント
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、デット・エクイティ・レシオ0.3、EBITDA有利子負債倍率1.0倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力およびキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。
手元流動性については、連結売上高の1.5カ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金の総額は1,103億円となり、手元流動性は連結売上高(2019年1月1日から2019年12月31日までの期間)の1.2カ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は2,985億円となっています。国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,000億円、当社及び欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠300百万米ドルを有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
② 格付け
当社グループは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、社債による資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社より格付けを取得しています。
2020年2月29日現在の発行体格付けはA2(見通し:安定的)となっています。
③ 資産及び負債・純資産
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、国内新工場やグローバルイノベーションセンターへの設備投資及び当連結会計年度からIFRS第16号「リース」を適用したこと、Drunk Elephant Holdings, LLCの買収によるのれんの計上などにより、前連結会計年度末に比べ2,092億円増の1兆2,188億円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、借入金の増加などにより1,598億円増の7,009億円となりました。
有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑤連結附属明細表」に記載しています。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、利益剰余金の増加などにより494億円増の5,179億円となりました。
1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に対し119.66円増の1,242.85円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末比3.7ポイント減の40.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度
営業活動によるキャッシュ・フロー92,57775,562
投資活動によるキャッシュ・フロー△103,112△202,823
財務活動によるキャッシュ・フロー△29,722113,678
現金及び現金同等物 期末残高111,76797,466

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ143億円減少し、975億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額(517億円)、たな卸資産の増加(312億円)、売上債権の増加(92億円)などの支出があった一方で、税金等調整前当期純利益(1,074億円)、減価償却費(557億円)、仕入債務の増加(102億円)などの収入により、756億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入(102億円)、有形及び無形固定資産の売却による収入(12億円)があった一方で、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出(918億円)、有形固定資産の取得による支出(922億円)、無形固定資産の取得による支出(196億円)、長期前払費用の取得による支出(83億円)、敷金及び保証金の差入による支出(20億円)などにより、2,028億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及びコマーシャルペーパーの増加による収入(1,178億円)、長期借入れによる収入(436億円)などがあった一方で、配当金の支払額(220億円)、社債の償還による支出(100億円)、リース債務の返済による支出(83億円)、非支配株主への配当金の支払額(51億円)などにより、1,137億円の支出となりました。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
① 有形固定資産
当社グループでは、有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価格に基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
② のれん、商標権及びその他の無形固定資産
当社グループでは、のれん、商標権及びその他の無形固定資産について、減損の判定を行っています。のれん、商標権及びその他の無形固定資産の公正価値の見積りや減損判定に当たっては、外部専門家などによる評価を活用しています。公正価値の見積りは、主に割引キャッシュ・フロー方式により行いますが、この方式では、将来キャッシュ・フロー、割引率など、多くの見積り・前提を使用しています。これらの見積り・前提は、減損判定や認識される減損損失計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。経営者は、当該判定における公正価値の見積りは合理的であると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、公正価値が下落し、減損損失が発生する可能性があります。
③ 有価証券
当社グループでは、その他有価証券のうち、取得原価に比べ時価又は実質価額が著しく下落したものについては、回復可能性があると判断される場合を除き、減損処理を行っています。時価のあるものについては、決算日現在の時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態及び経営成績を勘案し、回復可能性を判断しています。時価のないものについては、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合には、回復可能性があると判断できる場合を除き、減損処理を行っています。経営者は、回復可能性の判断が適切なものであると判断していますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落又は投資先の財政状態及び経営成績の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
⑤ 退職給付費用及び債務
当社グループの主要な退職給付制度は、日本における企業年金制度及び退職一時金制度です。従業員の退職給付費用及び債務は、割引率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率と長期期待運用収益率は、退職給付費用及び債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期社債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。長期期待運用収益率は年金資産の種類ごとに期待される収益率の加重平均に基づいて決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。