四半期報告書-第122期第3四半期(令和3年7月1日-令和3年9月30日)

【提出】
2021/11/11 14:50
【資料】
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【項目】
45項目
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
親会社株主に
帰属する
四半期純利益
又は
親会社株主に
帰属する
四半期純損失(△)
(百万円)
EBITDA
(百万円)
2021年12月期
第3四半期連結累計期間
745,37326,25329,67736,757142,576
2020年12月期
第3四半期連結累計期間
653,6758,9065,568△13,66843,400
増減率14.0%194.8%433.0%228.5%
外貨増減率10.2%
実質増減率13.4%

(注) 1 EBITDAは、特別損失に計上した「新型コロナウイルス感染症による損失」に含まれる減価償却費及び「減損損失」を含めています。
2 売上高における実質増減率は第3四半期連結会計期間のパーソナルケア事業譲渡影響を除いて計算しています。
当第3四半期連結累計期間(2021年1月1日~2021年9月30日)の景況感は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりグローバルで経済活動が停滞し、企業収益や雇用情勢の悪化等による消費マインドの低下など、厳しい状況が続きました。国内化粧品市場は、緊急事態宣言による小売店の時短営業や外出自粛等による来店客数減に加え、訪日外国人旅行者の減少に伴いインバウンド需要も影響を受けました。海外化粧品市場は、全体としては新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続しているものの、ワクチン接種の普及が進み、欧米を中心に厳しい状況が続いていたメイクアップカテゴリーを含め回復基調となりました。
資生堂グループは、当期より中長期経営戦略WIN 2023 and Beyondをスタートさせ、プレミアムスキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行しています。外部環境が急激に変化する中、これまでの売上拡大による成長重視から、収益性とキャッシュ・フロー重視の戦略へと転換し、スキンビューティーカンパニーとしての基盤を構築します。
当期は、WIN 2023実現に向けた“変革と次への準備”の年であり、With/Afterコロナへの対応・準備をしながら、事業ポートフォリオの再構築を中心とした構造改革、財務基盤の強化に取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間の売上高は、日本を除いた全ての地域で成長し、現地通貨ベースで前年比10.2%増、円換算後では前年比14.0%増の7,454億円となりました。パーソナルケア事業譲渡影響等を除く実質ベースでは、前年比13.4%増となりました。注力しているスキンビューティーブランドが成長をけん引し、Eコマースもプレステージを中心に引き続き伸長しました。
営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、適切なコストマネジメントなどにより、前年比194.8%増の263億円となりました。
親会社株主に帰属する四半期純利益は、特別損失として「DOLCE&GABBANA」に係る商標権の減損損失及び「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」の事業譲渡に伴うのれんの減損損失を計上した一方、営業増益及びパーソナルケア事業譲渡に伴う特別利益計上等により、前年に対し504億円増益の368億円となりました。
なお、EBITDAベースでは19.1%のマージンとなりました。
当第3四半期連結累計期間における財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは、1米ドル=108.7円、1ユーロ=129.9円、1中国元=16.8円です。
各報告セグメントの経営成績は次のとおりです。なお、報告セグメントの区分方法の変更については、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
①日本事業
日本事業では、コロナ禍で変化したお客さまニーズを捉え、スキンビューティー領域への戦略的投資を強化し、ベースメイクやサンケアのカテゴリーにおいてシェアを拡大しました。また、ライブコマースやWebカウンセリングを強化するなど、得意先と協働して店頭とオンラインの融合に取り組み、多くのお客さまとの接点を創出しました。これらにより、Eコマース売上は2桁成長しました。一方、緊急事態宣言による小売店の時短営業や外出自粛等による来店客数減に加え、訪日外国人旅行者の減少により、インバウンド需要も影響を受けました。
以上のことから、売上高は前年比7.3%減の2,103億円となりました。パーソナルケア事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比2.2%減となりました。営業利益は、上期の海外向け輸出事業の売上増に伴う差益増に加え、コスト効率化等に取り組み、前年比188.6%増の86億円となりました。
②中国事業
中国事業では、7月以降の記録的豪雨や、主要都市を中心とした新型コロナウイルス変異株の拡大に伴い、店舗の一部閉鎖及び来店客数減少等の影響を受けましたが、投資を強化しているEコマースは好調に推移しました。また、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」などプレステージブランドへの戦略的投資を継続することで高価格帯領域においてシェアを拡大しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比14.3%増、円換算後では前年比23.1%増の1,909億円となりました。パーソナルケア事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比25.1%増となりました。営業損失は、一部、原価悪化に加え、パーソナルケア事業譲渡影響等により前年に対し189億円減益の76億円となりました。
③アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、一部の国・地域で新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンの影響が続きましたが、当社はタイなど主要マーケットでプレステージを中心にシェアを拡大したほか、各地域の主要Eコマースプラットフォーマーへの展開強化により、Eコマース売上は「SHISEIDO」や「NARS」などのプレステージブランドが飛躍的に成長しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比5.4%増、円換算後では前年比11.2%増の481億円となりました。パーソナルケア事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比6.3%増となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比61.4%増の34億円となりました。
④米州事業
米州では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていますが、ワクチン接種の普及に伴い、回復が遅れていたメイクアップを含め化粧品市場のモメンタムが改善しました。その中で、「Drunk Elephant」は店舗数を拡大したほか、「NARS」はバーチャル新店舗をオープンさせるなどデジタルマーケティングを強化しシェアを拡大しました。また、プロモーションを強化した「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」に加え、フレグランスも好調に推移しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比34.3%増、円換算後では前年比36.3%増の898億円となり、2019年対比では新型コロナウイルス感染拡大前を上回る水準(2019年ASC606影響を除く)まで回復しました。営業損失は、売上増に伴う差益増に加え、販売事業での固定費削減による収益性改善が寄与したことなどにより、前年に対し103億円改善の97億円となりました。
⑤欧州事業
欧州では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていますが、ワクチン接種の普及に伴い、スキンケアやフレグランスを中心に市場は回復基調となりました。その中で、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「Drunk Elephant」の展開拡大に加え、オンラインカウンセリングやデジタルプロモーションの強化によりEコマース売上が引き続き大きく伸長するなど、需要回復を捉え確実に成長しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比22.8%増、円換算後では前年比31.9%増の795億円となりました。また、2019年対比で新型コロナウイルス感染拡大前と同程度の水準まで回復しました。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、販売事業での収益性改善が寄与したほか、デジタルメディア投資強化に伴う費用効率化や固定費削減等により、前年に対し108億円改善の23億円となり、黒字に転換しました。
⑥トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港・市中免税店等での化粧品・フレグランスの販売)は、引き続き国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者減少等の影響を受けました。中国海南島では、新型コロナウイルス変異株拡大に伴うフライトの減便等、移動制限の影響を受けたものの、Eコマース売上は大きく成長しました。また、主要ブランドの店舗数の拡大やプロモーションの強化などにより、アジアを中心に前年を上回る成長となりました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比15.5%増、円換算後では前年比17.3%増の886億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比24.2%増の149億円となりました。
⑦プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売しています。当期は、一部の国・地域では新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続きましたが、ヘアサロンへの来店客数の回復やEコマースでのプロモーション強化などにより、売上高は現地通貨ベースで前年比21.4%増、円換算後では前年比25.8%増の114億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比296.5%増の11億円となりました。
(2) 経営方針・経営戦略等
有価証券報告書(2021年3月25日提出)の記載から重要な変更はありません。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
有価証券報告書(2021年3月25日提出)の記載から重要な変更又は新たな発生はありません。
(4) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、183億円(売上高比2.5%)です。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 従業員数
当第3四半期連結累計期間において、従業員数に著しい増減はありません。
(6) 生産、受注及び販売の実績
当第3四半期連結累計期間において、生産、受注及び販売の実績について著しい変動はありません。
なお、パーソナルケア事業の譲渡に伴い商流を変更しています。詳細は、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
(7) 主要な設備
当第3四半期連結累計期間において、主要な設備の重要な変動又は前連結会計年度末において計画中であったものに著しい変更はありません。
(8) 経営成績に重要な影響を与える要因及び経営戦略の現状と見通し
2021年12月期の通期連結業績予想は、新型コロナウイルスのワクチン接種拡大に伴う緩やかな市場回復を前提としながら、先日公表した事業譲渡など構造改革及び為替影響を織り込み、前回公表した業績予想から修正しました。具体的には、ワクチン接種拡大に伴い2019年の売り上げ水準まで回復している欧米事業を中心に上方修正する一方、緊急事態宣言による影響を大きく受けた日本事業の見通しを下方修正するほか、中国における同ウイルスの変異株拡大・天候不良等のマイナス影響を織り込みました。さらに、メイクアップブランド「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」の事業譲渡(2021年12月上旬譲渡予定)及び移行サービス契約等に基づく売上高、営業利益影響を織り込みました。
以上のことから、売上高は230億円減額し1兆440億円となる一方、営業利益は、市場の変化に合わせて徹底したコスト効率化を進めたことなどから50億円増額し320億円となる見込みです。親会社株主に帰属する当期純利益については、営業増益及び税金費用改善の一方、上記メイクアップブランドの事業譲渡に伴うのれんの減損損失を特別損失として73億円計上したことなどから、前回予想を55億円減額し300億円となる見込みです。なお、今回織り込んだ一連の構造改革費用を除く親会社に帰属する当期純利益は、前回予想から実質110億円上方修正の465億円となる見込みです。為替レートは、通期平均1米ドル=110円、1ユーロ=130円、1中国元=17円を前提としています。
売上高営業利益経常利益親会社株主に
帰属する
当期純利益
又は
親会社株主に
帰属する
当期純損失(△)
1株当たり
当期純利益
又は
1株当たり
当期純損失(△)
2021年度予想百万円百万円百万円百万円円 銭
1,044,00032,00033,50030,00075.10
2020年度実績920,88814,9639,638△11,660△29.19

(9) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①資金調達と流動性マネジメント
資金調達と流動性マネジメントの基本方針は、有価証券報告書(2021年3月25日提出)の記載から変更ありません。なお、当第3四半期連結会計期間末現在において、金融機関と締結しているコミットメントライン契約の未使用額1,000億円を含む当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は引き続き高いと考えています。
②格付け
ムーディーズ・ジャパン株式会社より取得している2021年10月31日現在の発行体格付けはA2(見通し:ネガティブ)となっています。
③資産及び負債・純資産
総資産は、工場設備等への投資により有形固定資産が増加した一方、DOLCE&GABBANA S.R.L.とのライセンス契約解消に伴う商標権の減少に加え、メイクアップブランド譲渡に伴うのれんの減損損失影響などにより、前連結会計年度末に比べ221億円減の1兆1,821億円となりました。負債は、上記契約解消に伴う長期未払金の減少に加え、借入金の返済を進めたことなどにより、658億円減の6,318億円に、純資産は、利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加などにより437億円増の5,503億円となりました。
また、自己資本に対する純有利子負債の割合を示すNet D/Eレシオは0.14倍となりました。