四半期報告書-第123期第1四半期(令和4年1月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/05/13 14:45
【資料】
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【項目】
37項目
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
なお、当社グループは当第1四半期連結累計期間より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前第1四半期連結累計期間および前連結会計年度の数値もIFRSベースに組み替えて比較分析を行っています。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
売上高
(百万円)
コア営業利益
(百万円)
営業利益
(△は損失)
(百万円)
税引前
四半期利益
(△は損失)
(百万円)
親会社の
所有者に
帰属する
四半期利益
(△は損失)(百万円)
EBITDA
(百万円)
2022年12月期第1四半期234,0234,3784,3768,1554,39917,109
2021年12月期第1四半期236,9869,171△6,497△5,937△11,13622,332
増減率△1.3%△52.3%△23.4%

外貨増減率△6.3%
実質増減率△0.9%

(注) 1 コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。
2 EBITDAは、コア営業利益に、減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)を加算しています。
3 売上高における実質増減率は、当第1四半期連結累計期間・前第1四半期連結累計期間におけるすべての事業譲渡影響および譲渡に係る移行期間中のサービス提供に関わる影響(以下、事業譲渡影響)を除いて計算しています。
当第1四半期連結累計期間(2022年1月1日~2022年3月31日)は、世界的に新型コロナウイルス感染症による影響が緩和される中で、全体として、景気に持ち直しの動きが見られました。一方で、新型コロナウイルス感染拡大の動向、経済への影響度は国・地域ごとに異なり、景況感にもばらつきが生じました。また、ウクライナ情勢の緊迫化や、資源価格の高騰、中国の上海を中心としたロックダウンなど、特に3月においては不透明感の高い経済環境となりました。
こうした中、国内化粧品市場は、広域にわたるまん延防止等重点措置の適用など長期化する新型コロナウイルス感染症の影響、化粧品に対する消費意欲回復の遅れを受け、昨年に引き続き低調に推移しました。海外化粧品市場は、中国では、Eコマースの活況さが継続する一方で、ゼロコロナ政策に伴う活動制限等から来店客数が減少し、厳しい市場環境となりました。一方、欧米では、感染拡大の鎮静化により消費回復が継続、化粧品市場も全カテゴリーで力強く成長しました。
資生堂グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、環境問題やダイバーシティ&インクルージョンの実現といった社会課題解決に向けたイノベーションに積極的に取り組み、2030年のビジョン「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指しています。
2021年に現在のコロナ禍の難局に対応する中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を策定し、当社の強みを活かしたスキンビューティー領域への注力、事業ポートフォリオの再構築や、欧米事業を中心とした収益性改善などを通じて、より収益性とキャッシュ・フローを重視した経営へと抜本的な改革を進めています。2年目となる当期は、「再び成長軌道へ」の年と位置付け、グローバルブランドの成長促進やDXの加速・進展に取り組んでいます。
当第1四半期連結累計期間の売上高は、米州事業、欧州事業、トラベルリテール事業においては、力強い成長を実現しました。注力しているスキンビューティーブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」や主力メイクアップブランド「NARS」が伸長したほか、Eコマース売上が成長しました。一方、市場の回復が遅れた日本や、ゼロコロナ政策・感染再拡大の影響を大きく受けた中国では前年を下回りました。
その結果として、売上高は前年比1.3%減の2,340億円、現地通貨ベースでは前年比6.3%減、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比0.9%減となりました。
コア営業利益は、構造改革を通じた固定費の低減や、プロダクトミックスの改善に加え、市場の変化に応じたコストマネジメントを推進したものの、日本、中国での売上減に伴う差益減などの影響により、前年比52.3%減の44億円となりました。
親会社の所有者に帰属する四半期利益は、前年に「DOLCE&GABBANA」に係る商標権の減損損失を計上したことなどから、前年比155億円増益の44億円となりました。
なお、EBITDAベースでは、7.3%のマージンとなりました。
当第1四半期連結累計期間における連結財務諸表項目(収益および費用)の主な為替換算レートは、1ドル=116.2円、1ユーロ=130.5円、1中国元=18.3円です。
各報告セグメントの経営成績は次のとおりです。なお、報告セグメントの区分方法の変更については「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記(5. 事業セグメント)」をご参照ください。
① 日本事業
日本事業では、コロナ禍で変化したお客さまニーズを捉え、スキンビューティー領域でのさらなるブランド価値強化、商品イノベーションによる愛用者基盤の拡大に取り組みました。創業 150 周年を記念したオイル状美容液「万物資生 LIFE DEW」の発売や、スキンビューティーブランド「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポーボーテ」などへの戦略的投資を強化し、中高価格帯においてシェアを拡大しました。併せて、フルカバー効果とスキンケア効果を兼ね備えた毛穴レス美容液リキッドファンデーション「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」、紫外線をカットするのみならず、太陽の光を美容効果のある「美肌光」に変換する「サンデュアルケア技術」を搭載した日中用美容乳液「アネッサ デイセラム」を発売するなど、イノベーションを通じて、お客さまへの新たな価値提供を推進しました。また、前年に引き続き、ライブコマースやWebカウンセリングを強化するなど、得意先と協働して店頭とオンラインの融合に取り組み、多くのお客さまとの接点を創出しました。これらにより、Eコマース売上は成長を継続しました。
一方、まん延防止等重点措置による外出自粛、買い回り時間の短縮などに伴い、来店客数や店舗滞在時間の低迷が続き、市場の回復は遅れました。
以上のことから、売上高は前年比18.3%減の571億円となりました。事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比2.8%減となりました。コア営業損失は、経費効率化や在庫縮減を進めたものの、売上減による差益減、パーソナルケア事業譲渡に伴う減益のほか、需要喚起に向けたマーケティング投資などにより、前年差82億円悪化の41億円となりました。
② 中国事業
中国事業では、主要プラットフォームへの展開拡大、婦人節のプロモーションなど、戦略的に投資を強化しているEコマースが好調に推移しました。「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」の力強い成長がけん引し、中国本土のEコマース売上高は20%を超える伸長を実現しました。一方、ゼロコロナ政策・感染再拡大に伴う活動制限等から来店客数が減少、一部の店舗が閉鎖や時短営業となるなど大きく影響を受けました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比28.5%減、円換算後では前年比20.6%減の519億円となりました。事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比14.4%減となりました。コア営業損失は、売上減による差益減、持続的成長に向けたマーケティング投資の継続などにより前年差49億円悪化の28億円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、一部の国・地域で新型コロナウイルス感染拡大の影響が続き、来店客数が減少しました。当社は各国・地域の主要Eコマースプラットフォームへの展開を強化、またデジタルを活用したお客さま接点の創出を推進し、アジア全体のEコマースでシェアを拡大しました。これにより、「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」などのプレステージブランドが堅調に成長しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比9.7%減、円換算後では前年比4.2%減の154億円となりました。事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年並みとなりました。コア営業利益は、主力ブランドへのマーケティング投資などにより、前年比41.4%減の12億円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場のモメンタム改善が継続しました。「NARS」は、新商品の好調さやデジタルマーケティング強化を通じたEコマースの力強い成長により、シェアを大幅に拡大しました。また、北米アンバサダーを新たに起用するなど現地ニーズをとらえたプロモーションを強化した「クレ・ド・ポー ボーテ」も好調に推移しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比5.3%減、円換算後では前年比3.3%増の252億円、事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比6.7%増となり、2019年を大きく上回る水準に成長しました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、構造改革を通じた固定費削減などにより、前年に対し32億円改善の11億円と黒字転換を果たしました。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、新型コロナウイルス感染症による影響の緩和に伴い、市場はフレグランス・メイクアップを中心に成長が継続しました。当社も需要の回復を確実に捉え、特に「narciso rodriguez」をはじめとするフレグランスブランドや、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」などのプレステージブランドが力強い成長を実現しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比14.2%増、円換算後では前年比16.6%増の285億円、事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比8.6%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、構造改革を通じた商標権償却負担減など固定費削減により、前年に対し27億円改善の20億円となりました。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)は、引き続き国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者減少などの影響を受けたものの、中国海南島を中心に「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「イプサ」、「NARS」などのプレステージブランドが力強く成長しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比23.9%増、円換算後では前年比34.3%増の372億円、事業譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比21.3%増となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比65.3%増の81億円となりました。
⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売しています。当期は、中国では感染再拡大に伴う影響があったものの、ヘアサロンへの来店客数の回復やEコマース展開強化などにより、売上高は現地通貨ベースで前年比1.0%増、円換算後では前年比5.5%増の39億円となりました。コア営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し1億円改善の6億円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物は、当連結会計年度期首残高1,565億円に比べ245億円減少し、1,320億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益(82億円)に減価償却費及び償却費(187億円)などの非資金費用があった一方、法人所得税の支払額(422億円)、営業債務の減少(40億円)、営業債権の増加(39億円)、棚卸資産の増加(31億円)などにより、前年同期に比べ653億円増加の348億円の支出となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入(28億円)があった一方、無形資産の取得による支出(63億円)、有形固定資産の取得による支出(55億円)、定期預金の預入による支出(37億円)などにより、前年同期に比べ295億円支出は減少し、92億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増加(344億円)があった一方、配当金の支払額(116億円)、リース負債の返済による支出(75億円)などにより、前年同期に比べ345億円増加の150億円の収入となりました。
(3) 経営方針・経営戦略等
有価証券報告書(2022年3月25日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
有価証券報告書(2022年3月25日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
(5) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、59億円(売上高比2.5%)です。なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6) 従業員数
当第1四半期連結累計期間において、従業員数に著しい増減はありません。
(7) 生産、受注及び販売の実績
当第1四半期連結累計期間において、生産、受注及び販売の実績について著しい変動はありません。
(8) 主要な設備
当第1四半期連結累計期間において、主要な設備の重要な異動または前連結会計年度末において計画中であったものに著しい変更はありません。
(9) 経営成績に重要な影響を与える要因及び経営戦略の現状と見通し
当社は、2022年第1四半期における要約四半期連結財務諸表から、IFRSを任意適用したことに伴い、有価証券報告書(2022年3月25日提出)において開示した日本基準による2022年12月期の連結業績予想を取り下げ、IFRSによる2022年12月期の連結業績予想を新たに設定しました。
1.2022年12月期 IFRSによる通期連結業績予想(2022年1月1日~2022年12月31日)
売上高コア営業利益税引前利益親会社の所有
者に帰属する
当期利益
基本的
1株当たり
当期利益
2022年度予想百万円百万円百万円百万円円 銭
1,075,00062,00068,70044,000110.13
(ご参考)
2021年度実績
1,009,96642,55399,11146,909117.43

(注)1. 2021年度実績については、IFRSによる金額を記載しています。
2. コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。
2.業績予想の概要
今回の開示は、有価証券報告書(2022年3月25日提出)において開示した日本基準による2022年12月期連結業績予想を取り下げ、IFRSによる2022年12月期連結業績予想を新たに設定したものであり、その実質的な内容については変更ありません。
今後の市場環境については、新型コロナウイルス感染拡大の動向、国際情勢の緊迫化、物価や為替の大幅な変動など不透明な経済環境の中で、現時点ではそれらの動向および影響額について見極めることが非常に困難な状況となっています。
現在、様々なシナリオに基づき、今後の外部環境や市場動向、当社事業に対する影響を検証していますが、さらに慎重に見極め、然るべきタイミングで業績見通しを改めて公表します。
(10) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金調達と流動性マネジメント
資金調達と流動性マネジメントの基本方針は、有価証券報告書(2022年3月25日提出)の記載から変更ありません。なお、金融機関と締結している1,000億円のコミットメントライン契約は2022年4月25日をもって契約期間満了となりました。当第1四半期連結会計期間末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は引き続き高いと考えています。
② 格付け
ムーディーズ・ジャパン株式会社より取得している2022年4月30日現在の発行体格付けはA2(見通し:ネガティブ)となっています。
③ 資産及び負債・純資産
当第1四半期連結会計期間末の総資産は、前年の事業譲渡に伴う法人税や配当金の支払いなどによる現金及び現金同等物の減少の一方で、円安による在外営業活動体の換算差額が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ16億円増の1兆3,025億円となりました。負債は、運転資本を使途とする短期借入金が増加した一方で、未払法人所得税等の減少、賞与の支払いに伴う流動負債の減少などにより119億円減の7,269億円となりました。資本は、在外営業活動体に関連した為替換算の影響などにより134億円増の5,756億円となりました。
また、自己資本に対する現預金を除いた有利子負債(リース負債除く)の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオは0.09倍となりました。