有価証券報告書-第121期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

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2021/03/25 15:11
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当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
親会社株主に
帰属する
当期純利益又は
親会社株主に
帰属する
当期純損失(△)
(百万円)
EBITDA
(百万円)
当連結会計年度920,88814,9639,638△11,66071,393
前連結会計年度1,131,547113,831108,73973,562169,348
増減率△18.6%△86.9%△91.1%△57.8%
外貨増減率△17.8%
実質増減率△18.8%

(注)EBITDAには、特別損失に計上した「新型コロナウイルス感染症による損失」に含まれる減価償却費及び「減損損失」を含めています。
当連結会計年度の景況感は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりグローバルで経済活動が停滞し、企業収益や雇用情勢の悪化等による消費マインドの低下など、厳しい状況が続きました。国内化粧品市場は、緊急事態宣言による小売店の臨時休業、同解除後も続く時短営業や外出自粛等による来店客数減に加え、日本政府による約150の国や地域を対象とした査証の無効化などの入国制限、国際航空便減便の継続等により、インバウンド需要も大きく影響を受けました。海外化粧品市場は、アジア地域は2月から、欧米では3月から急激に減速しました。同感染症の新規感染者数は、夏場に一時落ち着きが見られましたが、欧米を中心に9月以降再び増加に転じ、経済活動を制限する施策が再度強化される中、厳しい環境が継続しました。一方、中国では、3月下旬以降、感染者数増加に歯止めがかかり、外出制限が緩和されたことなどから4月以降、市況が回復に転じました。
資生堂グループは2015年に、100年先も輝き続ける企業となるため中長期戦略VISION 2020をスタートさせました。日本発のグローバルビューティーカンパニーとして競争に勝ち抜くため、全ての活動を生活者起点とし、グローバルでブランド価値向上に取り組んでいます。
当連結会計年度は、VISION 2020の最終年度ですが、上記のとおり大変厳しい経営環境となりました。そうした環境下にあっても、事業・ブランドの選択と集中を進め、持続的成長に向けて注力ブランドへの投資は継続し、年間の費用をゼロベースで見直しながら、業績回復に向けた対応策の策定及び実行に取り組みました。
① 売上高
売上高は、成長戦略領域への投資による、中国プレステージ及びトラベルリテールアジアの成長拡大、スキンビューティーブランドの成長によるスキンケア売上比率の向上、Eコマース売上の拡大があったものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、現地通貨ベースで前年比17.8%減、「Drunk Elephant」買収影響等を除く実質ベースでは前年比18.8%減となりました。円換算後では、前年比18.6%減の9,209億円となりました。

ブランド別には、2019年11月に買収を完了した「Drunk Elephant」及び2020年1月より売上が計上されている「Tory Burch」を除いた「実質前年比」の比較において、主要ブランドは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、前年に対して売上が減少しています。このうち、「SHISEIDO」及び「クレ・ド・ポー ボーテ」のプレステージブランドは、3月下旬以降、新型コロナウイルスの感染者数が減少し、回復基調が続いた中国において販売好調であったものの、緊急事態宣言による小売店の臨時休業、消費者の外出自粛等による来店客数減の影響に加えて、訪日外国人旅行者の大幅な減少によりインバウンド需要の激減等による日本事業の売上減少の影響が大きく、それぞれ前年比12%減、17%減となりました。
② 売上原価
売上原価は、前年比6.5%減の2,384億円となりました。売上高に対する比率は、プロダクトミックスの悪化や在庫償却関連費用の増加などにより前年比3.4ポイント増の25.9%となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、前年比12.5%減の6,675億円となりました。その内訳は次のとおりです。
なお、グローバルPL体系の見直しに伴い、当連結会計年度より、「販売費及び一般管理費」の表示方法を一部変更しており、以下の前年比較については、前年の数値を変更後の体系に組み替えた数値で比較しています。
(イ) マーケティングコスト※
マーケティングコストの売上高に対する比率は、売上変動に合わせたコスト効率化を徹底した一方、中国やEコマースなど成長領域へのマーケティング投資を継続強化したことにより、前年比1.8ポイント増の28.6%となりました。
(ロ) ブランド開発費・研究開発費
ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、前年にグローバルイノベーションセンターの稼働に伴う費用が一時的に発生したため当期は費用が減少しましたが、それ以上に売上高の減少が大きいため、前年比0.3ポイント増の4.3%となりました。
(ハ) 人件費※
人件費の売上高に対する比率は、業績に応じて支給される報酬が減少したものの、それ以上に売上高が減少したことによる影響が大きく前年比1.3ポイント増の22.0%となりました。
(ニ) 経費
経費(その他費用)の売上高に対する比率は、新型コロナウイルスの感染拡大による旅費交通費の減少と、コスト削減による業務委託費等が減少したものの、それ以上に売上高が減少したことから前年比1.8ポイント増の17.6%となりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は270億円となり、売上高に対する比率は2.9%となりました。
なお、研究開発活動についての詳細は、「5 研究開発活動」に記載しています。
※マーケティングコストは、BC(ビューティーコンサルタント)関連諸費用を含めた場合は、売上高に対する比率は37.9%となりました。人件費は、当該費用を除いた場合は、売上高に対する比率は12.7%となりました。
④ 営業利益
営業利益は、上記の結果、前年比86.9%減の150億円となりました。
⑤ 経常利益
経常利益は、営業利益の減少により、前年比91.1%減の96億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、営業減益に加え、休業中の従業員給与、店舗・工場維持費等、新型コロナウイルス感染症による特別損失を計上したことなどから、117億円の損失となりました。
連結売上高営業利益率は1.6%、連結ROE(自己資本当期純利益率)は△2.4%、連結ROIC(投下資本利益率)は1.3%となりました。
当連結会計年度における財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは、1米ドル=106.8円、1ユーロ=121.8円、1中国元=15.5円です。

(報告セグメントの業績)
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
売上高(外部顧客への売上高)
当連結会計年度
(百万円)
構成比(参考)
前連結会計年度
(百万円)
構成比増減
(百万円)
増減率外貨
増減率
日本事業303,03532.9%430,99838.1%△127,962△29.7%△29.7%
中国事業235,80425.6%216,24119.1%19,5639.0%11.0%
アジアパシフィック事業59,1736.4%69,8356.2%△10,661△15.3%△14.7%
米州事業91,4109.9%123,00410.9%△31,593△25.7%△23.8%
欧州事業94,28010.3%118,41710.5%△24,137△20.4%△20.2%
トラベルリテール
事業
98,50110.7%122,79310.8%△24,291△19.8%△18.2%
プロフェッショナル事業12,7551.4%14,6851.3%△1,930△13.1%△12.2%
その他25,9272.8%35,5723.1%△9,645△27.1%△27.1%
合計920,888100.0%1,131,547100.0%△210,658△18.6%△17.8%

(注) 報告セグメントごとの売上高は外部顧客への売上高です。
営業利益
当連結会計年度
(百万円)
売上比(参考)
前連結会計年度
(百万円)
売上比増減
(百万円)
増減率
日本事業10,4733.2%76,50316.7%△66,029△86.3%
中国事業18,3867.8%29,22513.5%△10,838△37.1%
アジアパシフィック事業3,2485.3%7,42610.2%△4,178△56.3%
米州事業△22,254△18.8%△7,570△4.6%△14,684-
欧州事業△13,231△12.9%△2,187△1.7%△11,044-
トラベルリテール
事業
14,64014.8%31,29525.4%△16,654△53.2%
プロフェッショナル事業△34△0.3%3362.2%△371-
その他3,4752.0%△9,871△5.6%13,346-
14,7021.3%125,1579.2%△110,454△88.3%
調整額261-△11,325-11,586-
合計14,9631.6%113,83110.1%△98,867△86.9%

(注)1 当連結会計年度より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「日本事業」に計上していた㈱ザ・ギンザにおける日本国内の空港免税事業等の業績は「トラベルリテール事業」へ計上し、同子会社のブランド「THE GINZA」のブランドホルダー機能に係る業績は「その他」に計上しています。また、従来「米州事業」に計上していた日本国内で事業運営するベアエッセンシャル㈱の業績とTechnology Acceleration Hub の業績は「その他」へ計上しています。また、資生堂ジャパン㈱から㈱資生堂への「エリクシール」及び「アネッサ」ブランドのブランドホルダー機能の移管に伴い、従来「日本事業」に計上していた両ブランドのブランドホルダー機能に係る業績は「その他」へ計上しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、資生堂美容室㈱、生産事業、フロンティアサイエンス事業及び飲食業などを含んでいます。
3 営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。
4 営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
① 日本事業
日本事業では、生活者の価値観や購買行動の変化を確実に捉えられるようお客さま起点の活動を徹底し、コロナ禍で変化したお客さまのニーズに対応したマスクにつきにくいBBクリーム(日中用色つき美容液)や、需要が増えているハンドクリームなどの新製品の発売や美容情報の発信等を強化するとともに、在庫適正化など事業基盤の再構築を確実に進めました。また、デジタルを活用したマーケティングの強化を通じてオムニチャネル化などに取り組み、Eコマース売上は二桁成長しました。一方、新型コロナウイルスの感染拡大により、緊急事態宣言による小売店の臨時休業、同解除後も続く時短営業や消費者の外出自粛等による来店客数減の影響も受け、プレステージブランドやプレミアムブランドを中心に減収となりました。加えて、訪日外国人旅行者の大幅な減少により、インバウンド需要も激減しました。
以上のことから、売上高は前期比29.7%減の3,030億円となりました。営業利益は、徹底したコスト削減に取り組んだものの、売上減に伴う差益減やプロダクトミックスの悪化に加え、在庫適正化に向けた管理強化に伴う在庫評価額の見直しなどにより、前期比86.3%減の105億円となりました。
② 中国事業
中国事業は、新型コロナウイルスの感染拡大により、1月後半から大きな影響を受けましたが、3月下旬以降は感染者数が減少し、中国本土を中心に回復基調が続きました。「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「イプサ」、「NARS」などのプレステージブランドは、実店舗での展開拡大に加え、Eコマースへの投資強化などにより、大きく成長し、シェアを拡大しました。中国最大のEコマースイベントである“ダブルイレブン”で前年に対して2倍超の売上を達成したことなどにより、中国事業におけるEコマース売上比率は40%を超えました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比11.0%増、円換算後では前期比9.0%増の2,358億円となりました。営業利益は、マーケティング投資の強化などにより、前期比37.1%減の184億円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、東南アジア地域において日本発ブランドの展開や店舗の拡大を進めました。また、各地域の主要Eコマースプラットフォーマーとの連携強化により、Eコマースは「SHISEIDO」や「SENKA」などがけん引し大きく成長しました。しかし、全体としては、韓国やタイ等を中心に新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けました。ベトナムは同影響が比較的小さく、回復基調が続いたことから前年を上回りました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比14.7%減、円換算後では前期比15.3%減の592億円となりました。営業利益は、売上減に伴う差益減などにより、前期比56.3%減の32億円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、「bareMinerals」において不採算直営店舗の閉鎖など構造改革を進めたことに加え、前期に買収したプレステージ・スキンケアブランド「Drunk Elephant」のマーケティングを強化し、収益基盤の強化に取り組みました。しかし、3月以降の新型コロナウイルスの感染拡大による都市封鎖や外出制限、小売事業者のチャプター11(米連邦破産法第11条)の申請増加等により、特に実店舗が大きな影響を受けました。また、カテゴリーではメイクアップがより厳しい環境となりました。一方、Eコマースは、「Drunk Elephant」がけん引し大きく成長しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比23.8%減、円換算後では前期比25.7%減の914億円となりました。「Drunk Elephant」買収影響等を除く実質ベースでは、前期比33.7%減となりました。営業損失は、売上減に伴う差益減に加え、買収に伴うのれん償却費の費用増などにより、前期に対し147億円増の223億円となりました。
⑤ 欧州事業
欧州では、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は、夏場に一時落ち着きが見られたものの、9月以降再び増加に転じ、都市封鎖や夜間外出禁止等、経済活動を制限する施策が再度強化されました。そのような中、化粧品市場は、Eコマースが大きく伸長しており、当社のEコマースは、さらに市場を上回って伸長、特に「SHISEIDO」のスキンケアが好調に推移しました。また、「クレ・ド・ポー ボーテ」はイタリアやスペインへ、「Drunk Elephant」はドイツへ展開を拡大し、伸長しました。しかし、全体としては、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を大きく受けました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比20.2%減、円換算後では前期比20.4%減の943億円となりました。営業損失は、売上減に伴う差益減などにより、前期に対し110億円増の132億円となりました。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港・市中免税店等での化粧品・フレグランスの販売)は、当期より日本の空港免税店等におけるビジネスも統合し、全世界のトラベルリテール事業が連携できる体制となりました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者の減少等の影響を受けました。一方、中国海南島への国内旅行者の数や、韓国市中免税店やEコマース売上が高水準で推移したことに加え、「イプサ」や「エリクシール」などの店頭カウンターの展開強化に取り組んだことなどにより、アジアでは前年を上回る成長となりました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比18.2%減、円換算後では前期比19.8%減の985億円となりました。営業利益は、売上減に伴う差益減や在庫償却関連費用の増加などにより、前期比53.2%減の146億円となりました。
⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売しています。当期は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や、ヘアサロンの休業等の影響を受けました。その中、中国では、Eコマース強化などにより好調に推移しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前期比12.2%減、円換算後では前期比13.1%減の128億円となりました。営業損失は、売上減に伴う差益減などにより、0.3億円となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
生産、受注及び販売の実績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業
中国事業4,221△0.7
アジアパシフィック事業3,7526.9
米州事業27,584△21.8
欧州事業25,691△25.6
トラベルリテール事業
プロフェッショナル事業
その他152,859△9.7
合計214,109△13.3

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 金額は製造原価によっています。
3 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注状況
当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業303,035△29.7
中国事業235,8049.0
アジアパシフィック事業59,173△15.3
米州事業91,410△25.7
欧州事業94,280△20.4
トラベルリテール事業98,501△19.8
プロフェッショナル事業12,755△13.1
その他25,927△27.1
合計920,888△18.6

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 財政状態
① 資金調達と流動性マネジメント
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、デット・エクイティ・レシオ0.3倍、EBITDA有利子負債倍率1.0倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力及びキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑨WIN 2023 財務戦略 株主還元」に記載の株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。
手元流動性については、連結売上高の1.5カ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金、有価証券の総額は1,510億円となり、手元流動性は連結売上高(2020年1月1日から2020年12月31日までの期間)の2.0カ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は3,767億円となっています。金融機関と締結しているコミットメントライン契約の未使用額1,000億円、国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,700億円、当社及び欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠300百万米ドルを有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
② 格付け
当社グループは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、社債による資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社より格付けを取得しています。
2021年3月8日現在の発行体格付けはA2(見通し:ネガティブ)となっています。
③ 資産及び負債・純資産
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、工場設備等への投資などによる固定資産の増加の一方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による売上減に伴う流動資産の減少や、当社及び一部の国内連結子会社における退職金制度改訂に伴う繰延税金資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ146億円減の1兆2,042億円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、社債の発行や運転資金の調達を目的とした借入などによる増加の一方で、上記退職金制度改訂に伴う退職給付に係る負債の減少などにより33億円減の6,976億円となりました。
有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑤連結附属明細表」に記載しています。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、利益剰余金の減少及び為替換算調整勘定の減少などにより113億円減の5,066億円となりました。
1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に対し30.51円減の1,212.34円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末比0.5ポイント減の40.2%となりました。また、自己資本に対する有利子負債の割合を示すデット・エクイティ・レシオ※は0.67倍となりました。
※デット・エクイティ・レシオの計算における有利子負債は社債、借入金、リース債務です。
(3) キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度
営業活動によるキャッシュ・フロー75,56264,045
投資活動によるキャッシュ・フロー△202,823△70,084
財務活動によるキャッシュ・フロー113,67846,880
現金及び現金同等物 期末残高97,466136,347

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ389億円増加し、1,363億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費(604億円)などの非資金費用、売上債権の減少(285億円)、たな卸資産の減少(108億円)があった一方、仕入債務の減少(397億円)、賞与引当金の減少(99億円)などにより、前年同期に比べ115億円減少の640億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の売却による収入(104億円)などがあった一方で、有形固定資産の取得による支出(564億円)、無形固定資産の取得による支出(171億円)、長期前払費用の取得による支出(64億円)などにより、前年同期に比べ1,327億円支出は減少し、701億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入(1,100億円)、社債の発行による収入(500億円)などがあった一方で、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少による支出(635億円)、配当金の支払額(200億円)、社債の償還による支出(150億円)、リース債務の返済による支出(94億円)などにより、前年同期に比べ668億円減少の469億円の収入となりました。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
① 有形固定資産
当社グループでは、有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価格に基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
なお、当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係) ※6 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失944百万円を計上しています。回収可能価額は正味売却価額により測定しており、売却が困難であることから、回収可能価額を零として評価しています。
② のれん、商標権及びその他の無形固定資産
当社グループでは、耐用年数が確定できない商標権については、毎期減損の判定を行っており、それ以外ののれん、商標権及びその他の無形固定資産については、減損の兆候が発生した場合に減損の判定を行っています。のれん、商標権及びその他の無形固定資産の公正価値・使用価値の見積りや減損判定に当たっては、外部専門家などによる評価を活用しています。公正価値・使用価値の見積りは、主に割引キャッシュ・フロー方式により行いますが、この方式では、将来キャッシュ・フロー、割引率、長期成長率など、多くの見積り・前提を使用しており、将来キャッシュ・フローの基礎となる将来計画は過去の実績、現在及び見込まれる経済状況、市場データなどを考慮しています。これらの見積り・前提は、減損判定や認識される減損損失計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、売上高及び営業利益の実績が計画に未達または不確実な状況になっていることから、一部ののれん、商標権及びその他の無形固定資産について減損の兆候を認識し、減損判定を行いましたが、いずれの場合においても公正価値・使用価値は帳簿価額を超過していたため、のれん、商標権及びその他の無形資産の減損損失を認識することはありませんでした。経営者は、当該判定における公正価値・使用価値の見積りは合理的であると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、公正価値・使用価値が下落し、減損損失が発生する可能性があります。
③ 有価証券
当社グループでは、その他有価証券のうち、取得原価に比べ時価又は実質価額が著しく下落したものについては、回復可能性があると判断される場合を除き、減損処理を行っています。時価のあるものについては、決算日現在の時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態及び経営成績を勘案し、回復可能性を判断しています。時価のないものについては、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合には、回復可能性があると判断できる場合を除き、減損処理を行っています。経営者は、回復可能性の判断が適切なものであると判断していますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落又は投資先の財政状態及び経営成績の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
⑤ 退職給付費用及び債務
当社グループの主要な退職給付制度は、日本における企業年金制度及び退職一時金制度です。従業員の退職給付費用及び債務は、割引率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率と長期期待運用収益率は、退職給付費用及び債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期社債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。長期期待運用収益率は年金資産の種類ごとに期待される収益率の加重平均に基づいて決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおり、当社及び一部の国内連結子会社は、2020年10月に退職金制度の改訂を決定し、主要な退職給付制度である日本における退職一時金制度は、企業年金制度へ移行しています。これに伴い、第4四半期連結会計期間において、過去勤務費用(退職給付債務の減額)25,828百万円が発生しています。
⑥ 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについて
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。