訂正有価証券報告書-第122期(2021/01/01-2021/12/31)

【提出】
2023/03/24 14:47
【資料】
PDFをみる
【項目】
158項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
親会社株主に
帰属する
当期純利益又は
親会社株主に
帰属する
当期純損失(△)
(百万円)
EBITDA
(百万円)
当連結会計年度1,035,16541,58644,83542,439172,556
前連結会計年度920,88814,9639,638△11,66071,393
増減率12.4%177.9%365.2%141.7%
外貨増減率7.8%
実質増減率11.9%

(注)1 EBITDAは、特別損失に計上した「減損損失」および「新型コロナウイルス感染症による損失」に含まれる減価償却費を含めています。
2 売上高における実質増減率は、パーソナルケア事業およびプレステージメイクアップ3ブランド(「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」)の譲渡影響などを除いて計算しています。
当連結会計年度の景況感は、新型コロナウイルス感染症拡大によりグローバルで経済活動が停滞し、企業収益や雇用情勢の悪化などによる消費マインドの低下など、厳しい状況が続きました。国内化粧品市場は、断続的な緊急事態宣言による小売店の時短営業や外出自粛などによる来店客数減少に加え、訪日外国人旅行者の減少に伴い、インバウンド需要も影響を受けました。海外化粧品市場は、全体として新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続しているものの、ワクチン接種の普及が進み、欧米を中心に回復基調となりました。
当社は、急激に変化する外部環境やこれまでの中長期戦略を踏まえ、プレミアムスキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行し、2030年までにこの領域における世界No.1の企業になることを目指す中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」を遂行しています。2021年~2023年の3年間は、これまでの売上拡大による成長重視から、収益性とキャッシュ・フロー重視の戦略へと転換し、“スキンビューティーカンパニー”としての盤石な基盤を構築します。
初年度である当連結会計年度は、「変革と次への準備」の期間と位置づけ、Withコロナへの対応と準備をしながら、事業ポートフォリオの再構築を中心とした構造改革および財務基盤の強化に取り組みました。具体的には、パーソナルケア事業やプレステージメイクアップ3ブランド(「bareMinerals」、「BUXOM」、「Laura Mercier」)の譲渡、Dolce&Gabbana S.r.l.とのグローバルライセンス契約の解消などを実行しました。また、DXの推進については、アクセンチュア株式会社との合弁会社資生堂インタラクティブビューティー株式会社を設立し、グローバルではデジタルマーケティング戦略強化のため、中国テクノロジー大手Tencent(テンセント)グループとの戦略的パートナーシップを締結しました。加えて、生産・物流体制を強化する大阪茨木工場および西日本物流センターも本格稼働しています。
当連結会計年度は、すべての地域で新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けましたが、日本を除く各地域では売上高を大きく回復させることができました。特に注力しているスキンビューティーブランドおよびEコマースの拡大が全社の成長に大きく貢献しています。
① 売上高
売上高は、すべての地域で新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けましたが、市場環境が厳しい日本を除く、各地域では売上高を大きく回復させることができました。特に注力しているスキンビューティーブランドへの戦略投資およびEコマースの拡大により、売上高は前年比 12.4%増の 1 兆 352 億円、現地通貨ベースでは前年比 7.8%増、事業譲渡などの影響を除く実質ベースでは前年比 11.9%増となりました。

ブランド別には、事業譲渡および事業譲渡に伴う製品供給等の影響を除いた「実質外貨前年比」の比較において、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」および「NARS」の売り上げは、中国事業において中国最大のEコマースイベントである“ダブルイレブン”で市場を大きく上回る売上成長を達成したことなどに加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続しているものの、ワクチン接種の普及が進み、欧米を中心に市場が回復したことによりそれぞれ前年比15%増、21%増、39%増となりました。
② 売上原価
売上原価は、前年比10.3%増の2,630億円となりました。売上高に対する比率は、事業譲渡に伴う製品供給による原価率上昇はあったものの、 事業譲渡に伴うプロダクトミックスの好転、国内工場の生産性向上や在庫償却関連費用の減少などにより前年比0.5ポイント減の25.4%となりました。なお、事業譲渡に伴う製品供給による原価率上昇を除いた実質の原価率は前年比2.0ポイント減の23.9%となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、前年比9.5%増の7,306億円となりました。その内訳は次のとおりです。
(イ) マーケティングコスト※
マーケティングコストの売上高に対する比率は、デジタルコミュニケーションの強化、市場回復に向けた投資強化、中国・トラベルリテール事業でのクロスボーダーマーケティングを含めた戦略的投資により、前年比0.7ポイント増の29.3%となりました。
(ロ) ブランド開発費・研究開発費
ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、前年比0.8ポイント減の3.5%となりました。
(ハ) 人件費※
人件費の売上高に対する比率は、業績に応じて支給される賞与が増加したものの、欧米を中心とした不採算カウンター数減・構造改革等による人件費の適正化を進めた結果、前年比0.7ポイント減の21.3%となりました。
(ニ) 経費
経費(その他費用)の売上高に対する比率は、ゼロベースでのコスト見直しにより、前年比1.1ポイント減の16.5%になりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は256億円となり、売上高に対する比率は2.5%となりました。
なお、研究開発活動についての詳細は、「5 研究開発活動」に記載しています。
※マーケティングコストは、BC(ビューティーコンサルタント)関連諸費用を含めた場合は、売上高に対する比率は38.2%となりました。人件費は、当該費用を除いた場合は、売上高に対する比率は12.4%となりました。
④ 営業利益
営業利益は、売上増に伴う差益増、プロダクトミックスの改善に加え、市場の変化に合わせた適切なコストマネジメントを実施したことなどにより、前年比177.9%増の416億円となりました。
⑤ 経常利益
経常利益は、営業利益の増加に加え、為替差益が増加したことにより、前年比365.2%増の448億円となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、「DOLCE&GABBANA」に係る商標権の減損損失およびプレステージメイクアップ3ブランドの譲渡に伴うのれんの減損損失を計上した一方、営業増益およびパーソナルケア事業譲渡による特別利益計上などにより、前年に対し541億円増益の424億円となりました。
連結売上高営業利益率は4.0%、連結ROE(自己資本当期純利益率)は8.2%、連結ROIC(投下資本利益率)は3.3%となりました。
当連結会計年度における財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは、1米ドル=110.0円、1ユーロ=129.9円、1中国元=17.0円です。

(報告セグメントの業績)
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
売上高(外部顧客への売上高)
当連結会計年度
(百万円)
構成比(参考)
前連結会計
年度
(百万円)
構成比増減
(百万円)
増減率外貨
増減率
実質
増減率
日本事業276,17326.7%303,03532.9%△26,862△8.9%△8.9%△1.4%
中国事業274,72126.6%235,80425.6%38,91716.5%7.0%19.1%
アジアパシフィック事業65,0036.3%59,1736.4%5,8299.9%3.8%5.8%
米州事業121,36911.7%91,4109.9%29,95832.8%28.4%29.9%
欧州事業117,04011.3%94,28010.3%22,76024.1%16.4%16.5%
トラベルリテール事業120,46011.6%98,50110.7%21,95922.3%18.4%18.4%
プロフェッショナル事業15,8661.5%12,7551.4%3,11124.4%19.6%19.6%
その他44,5284.3%25,9272.8%18,60171.7%70.8%2.1%
合計1,035,165100.0%920,888100.0%114,27612.4%7.8%11.9%

(注)1 報告セグメントごとの売上高は外部顧客への売上高です。
2 売上高における実質増減率はパーソナルケア事業およびプレステージメイクアップ3ブランドの譲渡影響などを除いて計算しています。
営業利益 (参考)
当連結会計年度
(百万円)
売上比(参考)
前連結会計年度
(百万円)
売上比増減
(百万円)
増減率セグメント間の内部売上高
又は振替高を含めた売上高
2021年
12月期
2020年
12月期
日本事業9,5793.2%9,6712.9%△91△0.9%300,938329,382
中国事業1,1770.4%18,3867.8%△17,209△93.6%275,830236,808
アジアパシフィック事業3,7375.6%3,2485.3%48915.1%67,16661,090
米州事業△13,207△8.9%△22,699△19.5%9,492147,849116,300
欧州事業2,4611.9%△13,231△12.9%15,693126,939102,500
トラベルリテール事業21,95018.2%14,64014.8%7,30949.9%120,61598,812
プロフェッショナル事業7574.6%△34△0.3%79116,47413,359
その他30,97713.3%4,7222.7%26,255556.0%233,367174,434
57,4344.5%14,7021.3%42,731290.6%1,289,1821,132,686
調整額△15,847261△16,109△254,016△211,798
合計41,5864.0%14,9631.6%26,622177.9%1,035,165920,888

(注)1 当連結会計年度より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「米州事業」に計上していたデジタル戦略に係るグローバルサービス機能の業績を「その他」に計上しています。また、「その他」に計上していたサプライネットワーク機能の業績を「日本事業」へ計上しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 従来「日本事業」、「中国事業」および「アジアパシフィック事業」に計上していた各地域販売子会社のパーソナルケア事業に係る売上高は、パーソナルケア事業の譲渡および商流変更に伴い、2021年7月1日以降、一部を除き発生していません。一方で、当社および当社製造子会社による㈱ファイントゥデイ資生堂およびその関係会社への売上は同日以降「その他」に計上しています。
3「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、資生堂美容室㈱、生産事業および飲食業などを含んでいます。
4 営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。
5 営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
① 日本事業
日本事業では、コロナ禍で変化したお客さまニーズを捉え、スキンビューティー領域への戦略的投資を強化し、ベースメイクやサンケアなどのカテゴリーにおいてシェアを拡大しました。また、ライブコマースやWebカウンセリングを強化するなど、得意先と協働して店頭とオンラインの融合に取り組み、多くのお客さまとの接点を創出しました。これらにより、Eコマース売上は2桁成長しました。前年に引き続き、お客さまのニーズに対応したマスクにつかない商品の迅速な開発・導入に取り組んだほか、「Second Skin」技術を搭載した画期的な新製品の発売など、お客さまへの提供価値の最大化を追求しました。また、全国の医療従事者の方々に敬意と感謝の意を伝えることを目的とした「資生堂 Hand in Hand Project」を展開し、感染拡大防止と寄付や商品の提供により医療現場の方々をサポートしました。
一方、緊急事態宣言による小売店の時短営業や外出自粛などに伴い来店客数が減少したことに加え、訪日外国人旅行者の減少によりインバウンド需要も低調でした。
以上のことから、売上高は前年比8.9%減の2,762億円となりました。パーソナルケア事業の譲渡影響を除く実質ベースでは、前年比1.4%減となりました。営業利益は、上期の海外向け輸出事業の売上増に伴う差益増に加え、市場の変化に合わせコスト効率化を進めたものの、売上減による差益減があり、前年比0.9%減の96億円となりました。
② 中国事業
中国事業では、第3四半期の記録的豪雨や、主要都市を中心とした新型コロナウイルス変異株の拡大に伴い、店舗の一部閉鎖や来店客数減少などの影響を受けましたが、戦略的に投資を強化しているEコマースは好調に推移しました。中国最大のEコマースイベントである“ダブルイレブン”で市場を大きく上回る売上成長を達成したことなどにより、Eコマース売上比率は40%台後半に達しました。プレステージブランドへの戦略的投資を継続することで、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」など、高価格帯領域においてシェアを拡大しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比7.0%増、円換算後では前年比16.5%増の2,747億円となりました。パーソナルケア事業の譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比19.1%増となりました。営業利益は、注力ブランドへのマーケティング投資を強化したほか、一部、原価悪化に加え、パーソナルケア事業譲渡影響などにより前年比93.6%減の12億円となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業では、一部の国・地域で新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの影響が続きましたが、当社は各地域の主要Eコマースプラットフォーマーへの展開を強化したほか、「SHISEIDO」や「NARS」などのプレステージブランドが飛躍的に成長したことにより、アジア全体のEコマースでシェアを拡大しました。また、「Drunk Elephant」の展開拡大に加え、各国・地域で母の日キャンペーンを行うなど積極的なプロモーションを行いました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比3.8%増、円換算後では前年比9.9%増の650億円となりました。パーソナルケア事業譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比5.8%増となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比15.1%増の37億円となりました。
④ 米州事業
米州事業では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていましたが、ワクチン接種の普及に伴い、回復が遅れていたメイクアップを含め化粧品市場のモメンタムが改善しました。その中で、米国発のスキンケアブランド「Drunk Elephant」は店舗数を拡大したほか、「NARS」はバーチャル新店舗をオープンさせるなどデジタルマーケティングを強化しシェアを拡大しました。また、プロモーションを強化した「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」に加え、フレグランスブランドも好調に推移しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比28.4%増、円換算後では前年比32.8%増の1,214億円、プレステージメイクアップ3ブランドの譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比29.9%増となり、2019年を上回る水準に回復しました。営業損失は、売上増に伴う差益増に加え、販売事業での固定費削減による収益性改善が寄与したことなどにより、前年に対し95億円改善の132億円となりました。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていましたが、ワクチン接種の普及に伴い、スキンケアやフレグランスを中心に市場は回復基調となりました。その中で、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「Drunk Elephant」の展開拡大に加え、オンラインカウンセリングやデジタルプロモーションの強化によりEコマース売上も伸長するなど、需要回復を捉え、全カテゴリーでシェアを拡大しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比16.4%増、円換算後では前年比24.1%増の1,170億円、プレステージメイクアップ3ブランドの譲渡影響などを除く実質ベースでは、前年比16.5%増となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、販売事業での収益性改善が寄与したほか、デジタルメディア投資強化に伴う費用効率化や固定費削減などにより、前年に対し157億円改善の25億円となり、黒字に転換しました。
⑥ トラベルリテール事業
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)は、引き続き国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者減少などの影響を受けました。中国海南島においても、新型コロナウイルス変異株拡大に伴うフライトの減便など、移動制限の影響を受けましたが、Eコマース売上を中心に大きく成長しました。また、「Drunk Elephant」の展開強化に加え、主要ブランドの海南島での店頭カウンター数の拡大などにより、アジアを中心に力強い成長を実現しました。
以上のことから、売上高は現地通貨ベースで前年比18.4%増、円換算後では前年比22.3%増の1,205億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年比49.9%増の220億円となりました。
⑦ プロフェッショナル事業
プロフェッショナル事業は、ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売しています。当期は、一部の国・地域では新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続きましたが、ヘアサロンへの来店客数の回復やEコマースでのプロモーション強化、新プレミアムヘアカラーブランド「ULTIST」、サステナブルな取り組みのもとに作られたサロン向け新ヘアケアブランド「HAIR KITCHEN」の貢献などにより、売上高は現地通貨ベースで前年比19.6%増、円換算後では前年比24.4%増の159億円となりました。営業利益は、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し8億円改善の8億円となり、黒字に転換しました。
(生産、受注及び販売の実績)
生産、受注及び販売の実績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業
中国事業4,91416.4
アジアパシフィック事業4,60522.7
米州事業32,26617.0
欧州事業31,00220.7
トラベルリテール事業
プロフェッショナル事業
その他158,0823.4
合計230,8717.8

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 金額は製造原価によっています。
3 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注状況
当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)
日本事業276,173△8.9
中国事業274,72116.5
アジアパシフィック事業65,0039.9
米州事業121,36932.8
欧州事業117,04024.1
トラベルリテール事業120,46022.3
プロフェッショナル事業15,86624.4
その他44,52871.7
合計1,035,16512.4

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 財政状態
① 資金調達と流動性マネジメント
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、ネットデット・エクイティ・レシオ0.2倍、ネットEBITDA有利子負債倍率0.5倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力及びキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑤株主還元と創業150周年記念配当」に記載の株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。
手元流動性については、連結売上高の1.5カ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金の総額は1,721億円となり、手元流動性は連結売上高(2021年1月1日から2021年12月31日までの期間)の2.0カ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は1,934億円となっています。金融機関と締結しているコミットメントライン契約の未使用額1,000億円、国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,700億円、当社及び欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠300百万米ドルを有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
② 格付け
当社グループは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、社債による資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社より格付けを取得しています。
2022年2月28日現在の発行体格付けはA2(見通し:ネガティブ)となっています。
③ 資産及び負債・純資産
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、事業譲渡に伴うたな卸資産および無形固定資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ249億円減の1兆1,794億円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、事業譲渡で得た資金を有利子負債の返済に充当し857億円減の6,119億円となりました。
有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑤連結附属明細表」に記載しています。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上および円安による為替換算調整勘定の増加などにより608億円増の5,674億円となりました。
1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に対し151.94円増の1,364.28円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末比6.0ポイント増の46.2%となりました。また、自己資本に対する現預金を除いた有利子負債の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオ※およびEBITDAに対する現預金を除いた有利子負債の割合を示すネットEBITDA有利子負債倍率は以下のとおりです。
※ネットデット・エクイティ・レシオの計算における有利子負債は社債、借入金、リース債務です。
2020年12月期2021年12月期
ネットデット・エクイティ・レシオ (Net D/E ratio)0.4倍0.03倍
ネットEBITDA有利子負債倍率 (Net D/EBITDA ratio)2.4倍0.1倍


(3) キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度
営業活動によるキャッシュ・フロー64,045122,887
投資活動によるキャッシュ・フロー△70,08463,739
財務活動によるキャッシュ・フロー46,880△176,222
現金及び現金同等物 期末残高136,347156,503

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ202億円増加し、1,565億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、事業譲渡益(740億円)、法人税等の支払額(239億円)、構造改革費用の支払額(220億円)などがあった一方、税金等調整前当期純利益(733億円)、減価償却費(630億円)などの非資金費用、仕入債務の増加(340億円)などにより、前年同期に比べ588億円増加の1,229億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出(725億円)、無形固定資産の取得による支出(199億円)などがあった一方で、事業譲渡による収入(1,499億円)などにより、前年同期に比べ1,338億円増加の637億円の収入となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入(100億円)などがあった一方で、長期借入金の返済による支出(947億円)、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少による支出(579億円)、配当金の支払額(160億円)、リース債務の返済による支出(105億円)などにより、前年同期に比べ2,231億円支出は増加し1,762億円の支出となりました。

(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
① 有形固定資産
当社グループでは、有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価格に基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フローおよび回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
なお、当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係) ※8 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失26,463百万円を計上しています。
② のれん、商標権およびその他の無形固定資産
当社グループでは、のれん、商標権およびその他の無形固定資産について、減損の判定を行っています。のれん、商標権およびその他の無形固定資産の公正価値の見積りや減損判定に当たっては、外部専門家などによる評価を活用しています。公正価値の見積りは、主に割引キャッシュ・フロー方式により行いますが、この方式では、将来キャッシュ・フロー、割引率など、多くの見積り・前提を使用しています。これらの見積り・前提は、減損判定や認識される減損損失計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。経営者は、当該判定における公正価値の見積りは合理的であると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、公正価値が下落し、減損損失が発生する可能性があります。なお、「資生堂アメリカズCorp.」報告単位に関するのれんの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、地域および事業によって異なるものの、2022年下期から回復基調となり、2023年に本格回復するという一定の前提をおいています。
③ 有価証券
当社グループでは、その他有価証券のうち、取得原価に比べ時価又は実質価額が著しく下落したものについては、回復可能性があると判断される場合を除き、減損処理を行っています。時価のあるものについては、決算日現在の時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態および経営成績を勘案し、回復可能性を判断しています。時価のないものについては、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合には、回復可能性があると判断できる場合を除き、減損処理を行っています。経営者は、回復可能性の判断が適切なものであると判断していますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落又は投資先の財政状態および経営成績の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
⑤ 退職給付費用および債務
当社グループの主要な退職給付制度は、日本における企業年金制度です。従業員の退職給付費用および債務は、割引率、退職率、死亡率および年金資産の長期期待運用収益率等を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率と長期期待運用収益率は、退職給付費用および債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期社債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。長期期待運用収益率は年金資産の種類ごとに期待される収益率の加重平均に基づいて決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用および債務に影響を及ぼす可能性があります。