有価証券報告書-第78期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 16:50
【資料】
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【項目】
153項目
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、相次ぐ自然災害の影響などで弱さがみられる中、雇用・所得環境の改善等を背景に緩やかな回復基調で推移いたしましたが、足元では新型コロナウイルス感染症の影響により、大変厳しい状況にあります。化粧品業界におきましては、2019年度の経済産業省化粧品出荷統計(暦年)によりますと、販売個数・販売金額ともに前年と比べ増加いたしました。また、海外において当社グループが主に事業展開しているアジア・米国経済につきましては、アジアでは一部で景気減速もみられましたが、米国では景気回復の動きが続きました。このような市場環境の中、当社グループは、創業80周年に向けて更なる成長ステージを目指した中長期ビジョン「VISION 2026」を掲げ、企業の成長を支える強い経営基盤をベースとしながら、そのリソースを最大限に活用し、独自の価値創造を絶えず行っていくことにより、グローバルかつボーダレスな成長を目指してまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ8,443百万円増加し、308,606百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ6,917百万円減少し、68,403百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ15,361百万円増加し、240,202百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における当社グループの業績につきましては、アジアの販売は引き続き好調に推移いたしましたが、日本においてインバウンド売上の減少や消費増税に伴う駆け込み需要の反動減に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより、売上高は前年同期比1.6%減の327,724百万円(為替の影響を除くと0.5%減)となりました。なお、連結売上高に占める海外売上高の割合は32.1%となりました。利益につきましては、売上高の減少と販売費及び一般管理費は増加いたしましたが、厳しい環境下でも利益を確保できるよう努めた結果、営業利益は40,231百万円(前年同期比23.2%減)となりました。また、為替差損が発生した一方で、受取利息、還付消費税等の発生により、経常利益は40,932百万円(同24.2%減))、親会社株主に帰属する当期純利益は26,682百万円(同27.9%減)となりました。
1)化粧品事業
化粧品事業につきましては、ハイプレステージ領域において、「コスメデコルテ」「インフィニティ」「雪肌精みやび」等はプラス成長となりましたが、㈱アルビオン及び米国タルト社がマイナス成長となりました。また、プレステージ領域におきましては、メイクブランドの「エスプリーク」はプラス成長となりましたが、「雪肌精」等がマイナス成長となりました。これらの結果、当事業の売上高は251,894百万円(前年同期比1.2%減)、営業利益は44,663百万円(同13.1%減)となりました。
2)コスメタリー事業
コスメタリー事業につきましては、「スティーブンノル ニューヨーク」及びコーセーコスメポート㈱が展開するヘアケアブランド「ビオリス」やエイジングケアブランド「グレイスワン」等は好調に推移いたしましたが、「クリアターン」のインバウンド売上が減少、「リンメル」の販売ライセンス終了による影響や、「ヴィセ」等のメイクブランドがマイナス成長となった結果、売上高は71,912百万円(前年同期比3.6%減)、営業利益は売上原価及び販売費が増加したことにより211百万円(同95.8%減)なりました。
3)その他
その他の事業につきましては、アメニティ製品の販売やOEM生産の受注が増加した結果、売上高は3,916百万円(前年同期比15.3%増)、営業利益は1,283百万円(同16.5%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より6,019百万円増加し70,284百万円(前年同期比9.4%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、37,090百万円の収入(同12.4%増)となりました。主な要因は税金等調整前当期純利益40,365百万円、非資金費用である減価償却費8,838百万円、たな卸資産の増加822百万円、売上債権の減少6,252百万円、その他の資産の減少1,389百万円、仕入債務の減少6,121百万円、その他負債の増加3,037百万円及び法人税等の支払い17,150百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、19,006百万円の支出(同8.0%減)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出17,980百万円、定期預金の減少による純収入2,805百万円、無形固定資産の取得による支出1,894百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、11,448百万円の支出(同9.8%増)となりました。主な要因は配当金の支払い11,322百万円等であります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)前年同期比(%)
化粧品事業228,99890.1
コスメタリー事業50,51882.7
その他3,173151.4
合計282,69089.0

(注)1.金額は製造会社販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
重要な受注生産を行っておりませんので記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)前年同期比(%)
化粧品事業251,89498.8
コスメタリー事業71,91296.4
その他3,916115.3
合計327,72498.4

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は下記のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。なお、本表作成に際しては経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告に影響を与える見積りが必要ですが、この判断及び見積りには過去の実績を勘案するなど、可能な限り合理的な根拠を有した基準を設定した上で実施しております。しかしながら、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点の見積りと異なる場合も考えられます。
当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表]の[注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しておりますが、以下に掲げる会計方針は連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えますので、特に記述いたします。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定及び連結財務諸表への影響については、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表]の[注記事項] (追加情報)」に記載しております。
a. 収益の認識基準
当社グループでは、化粧品等は製商品の出荷時点、役務の提供については当該役務を提供した時点で収益を認識しております。
b. 返品調整引当金の計上基準
返品調整引当金は、取引先との間の商慣習により生じる返品について翌期以降に発生する損失見込額を引当計上しております。
c. たな卸資産の評価基準等及び廃棄判断の基準
たな卸資産の評価基準及び評価方法は主として総平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しております。また、たな卸資産は滞留期間・将来の出荷可能性等を勘案し、一定の基準に基づき廃棄判断をしております。
d. 退職給付費用の計上基準
親会社及び国内連結子会社は、2003年4月1日よりキャッシュ・バランス型の企業年金制度に移行いたしました。2001年3月期の退職給付会計適用以後は、退職給付債務の現在価値を毎期見積り、将来給付予想額を支払可能とする勤務費用・利息費用から年金資産の期待運用収益を減じた金額を費用計上しております。また、年金資産の運用利差損益及び給付債務予測額の差異等により発生した未認識数理計算上の差異等は、税効果を調整の上、純資産の部におけるその他の包括利益累計額の退職給付に係る調整累計額に計上しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
1)財政状態
当連結会計年度末の流動比率は342.6%、当座比率は227.8%であり、前連結会計年度末に比べそれぞれ32.1ポイントの増加、17.3ポイントの増加となりました。主な理由は下記のとおりであります。
資産は、前連結会計年度末に比べ8,443百万円の増加となりました。現金及び預金の増加3,171百万円、受取手形及び売掛金の減少6,401百万円等により当座資産は3,230百万円減少し、流動資産は802百万円減少いたしました。有形固定資産の増加9,125百万円、無形固定資産の減少895百万円、投資その他の資産の増加1,015百万円により固定資産が9,246百万円増加いたしました。
負債は、前連結会計年度末に比べ6,917百万円の減少となりました。支払手形及び買掛金の減少3,567百万円、電子記録債務の減少3,572百万円、未払費用の増加1,580百万円、未払法人税等の減少3,429百万円等により流動負債が6,430百万円減少いたしました。固定負債は、リース債務の減少124百万円等により486百万円の減少となりました。
なお、有利子負債残高は1,654百万円、デット・エクイティ・レシオは0.01倍となりました。
2)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、327,724百万円(前年同期比1.6%減、5,271百万円減)となりました。
これをセグメントごとに分析すると、当社グループの主力事業である化粧品事業及びコスメタリー事業の売上高がそれぞれ251,894百万円(同1.2%減、3,071百万円減)、71,912百万円(同3.6%減、2,719百万円減)となりました。その他の事業の売上高は3,916百万円(同15.3%増、518百万円増)となりました。
(営業費用)
当連結会計年度の売上原価は、88,703百万円(前年同期比0.1%増、95百万円増)となりました。
販売費及び一般管理費は、198,789百万円(同3.5%増、6,810百万円増)となりました。厳しい環境下でも利益を確保できるように努めた結果、販売費及び一般管理費の売上高比率は3.0ポイント増加いたしました。
(営業外損益)
当連結会計年度の営業外損益は、700百万円の利益(前年同期比55.3%減、867百万円減)となりました。前連結会計年度は為替差益を計上いたしましたが、当連結会計年度は為替差損を計上しております。
(特別損益)
当連結会計年度の特別損益は、566百万円の損失(前期973百万円の利益)となりました。固定資産処分損419百万円、投資有価証券評価損147百万円を特別損失に計上しております。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より6,019百万円増加し70,284百万円(前年同期比9.4%増)となりました。当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。
当社グループは「VISION 2026」実現に向け、生産設備の新設及び更新、新規市場進出のための投資、デジタルトランスフォーメーション推進への投資などを実施してまいります。それぞれの投資のタイミングにつきましては、資金残高及び資金調達のバランスを検証し、優先順位をつけて実施してまいります。
実質的な無借金経営を実現しており、自己資金による事業運営、設備投資、株式投資、配当などを行っておりますが、金融機関とは7,000百万円のコミットメントラインを締結しており、事業運営上必要な投資などへの資金につきましては、外部調達も可能となっております。
当社グループの財務状況、安定した業績については、金融機関及び金融市場からの評価は高く、自己資金が不足した場合においても外部調達は可能と判断しております。また、今般の新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響による資金需要に備え、金融機関とはコミットメントラインの増額を検討しております。
利益配分につきましては安定配当を基本としておりますが、今後の事業拡大のための内部資金の確保に配慮しつつ、財政状態、業績、配当性向などを勘案し、配当金額を決定しております。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
化粧品市場においては、国内外におけるEコマース売上規模の拡大、交通インフラの発展や、経済成長に伴う所得水準の上昇による、国境を跨いだ活発な人の移動により、各国でのトラベルリテール事業の売上も増加しました。
今後につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、消費マインドや、雇用・所得環境の悪化により、経済低迷の長期化も懸念されているため、市場変化に対するタイムリーな対応の成否が、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼすことが想定されます。
c. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金調達の状況につきましては、事業継続に必要と考える資金は確保していると認識しております。
今後の資金使途につきましては、内部留保により財務体質の強化を図る一方、設備投資やM&Aに取り組むことで将来のキャッシュ・フローの創出につなげ、資本効率の向上を図ってまいります。また、一時的な余剰資金の運用につきましても、安全性を第一に考慮し運用商品の選定を行ってまいります。
d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上高営業利益率、総資産事業利益率(ROA)及び自己資本当期純利益率(ROE)の向上を重要な経営指標としております。総資産事業利益率(ROA)及び自己資本当期純利益率(ROE)の前連結会計年度、当連結会計年度推移と「VISION 2026」でのそれぞれの目標に対する進捗については、以下のとおりです。
前連結会計年度当連結会計年度「VISION 2026」
総資産事業利益率(ROA)18.6%13.4%18%以上
自己資本当期純利益率(ROE)18.8%12.3%15%以上
売上高営業利益率15.7%12.3%16%以上

当連結会計年度の数値は、全て前連結会計年度を下回りました。その要因は、経営成績が前連結会計年度を下回ったことによります。当連結会計年度における各重要な経営指標につきましては、第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況で述べたとおりであります。
(注) 総資産事業利益率=(営業利益+受取利息・配当金)/総資産(期首期末平均)×100
自己資本当期純利益率=親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)×100
e. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態
(化粧品事業)
セグメント資産は、現金及び預金の増加1,179百万円、売掛金及び受取手形の減少4,264百万円、たな卸資産の増加765百万円、有形固定資産の増加9,463百万円、無形固定資産の減少1,111百万円等により、前連結会計年度末に比べ5,830百万円増加の204,326百万円となりました。
(コスメタリー事業)
セグメント資産は、現金及び預金の減少822百万円、売掛金及び受取手形の減少1,658百万円、有形固定資産の減少691百万円等により、前連結会計年度末に比べ2,933百万円減少の48,703百万円となりました。
(その他)
セグメント資産は、現金及び預金の増加1,243百万円等により、前連結会計年度末に比べ668百万円増加の5,335百万円となりました。
2)経営成績
当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績につきましては、第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b. 経営成績で述べたとおりであります。