有価証券報告書-第150期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/25 15:11
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当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績
売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
親会社株主に帰属
する当期純利益
(百万円)
当連結会計年度3,107,027127,216130,49872,720
前連結会計年度3,177,985166,260188,649118,063
増減率(%)△2.2△23.5△30.8△38.4

当連結会計年度の世界経済は、第3四半期までは米国の着実な景気回復などにより概ね緩やかな拡大傾向を
保っておりましたが、2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症が世界的な大流行となり、経済活動が急激に縮小しました。日本経済につきましても、前半は雇用環境などの改善により個人消費が回復したものの、2019年10月の消費税率引上げにより消費支出は減少に転じ、また、第4四半期は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、一層厳しさを増す展開となりました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、自動車生産やスマートフォン販売の減少、光ファイバ・
ケーブルの価格低下や円高・銅価格下落の影響、また、第4四半期には新型コロナウイルス感染症による経済活動の急減速も加わり、非常に厳しい状況となりました。このような環境のもと、当連結会計年度の連結決算は、売上高は、3,107,027百万円(前連結会計年度3,177,985百万円、2.2%減)と前連結会計年度比で減収となりました。営業利益は、グローバルでのコスト低減に最大限注力しましたが、売上減少に加えて、将来に向けた減価償却費の増加、自動車関連事業における価格低下や一部製品の生産立上げ時のコスト増加、また、新型コロナウイルス感染症の拡大による生産急減に伴う収益性悪化もあり、127,216百万円(前連結会計年度166,260百万円、23.5%減)と前連結会計年度に比べ減益、営業利益率は4.1%(前連結会計年度5.2%、1.1ポイント低下)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の減少などにより18,278百万円減の26,997百万円、営業外費用は、支払利息の増加などにより829百万円増の23,715百万円となり、経常利益は130,498百万円(前連結会計年度188,649百万円、30.8%減)と前連結会計年度に比べ減益となりました。特別利益では投資有価証券売却益9,844百万円、退職給付信託返還益2,627百万円に加え、負ののれん発生益10,395百万円を計上し、合計では22,866百万円となりました。特別損失では、固定資産除却損2,867百万円、減損損失7,603百万円、事業構造改善費用3,124百万円に加え、段階取得に係る差損6,572百万円を計上し、合計では20,166百万円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は133,198百万円となりました。ここから法人税等44,764百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益15,714百万円を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は72,720百万円(前連結会計年度118,063百万円、38.4%減)と前連結会計年度に比べ減益となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
売上高営業利益又は営業損失
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減率
(%)
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減率
(%)
自動車1,709,4261,683,630△1.584,66968,213△19.4
情報通信208,420217,4014.316,39817,8358.8
エレクトロニクス228,933252,17010.27,016536△92.4
環境エネルギー759,786712,543△6.230,06227,114△9.8
産業素材他357,824331,350△7.428,19313,425△52.4
合計3,264,3893,197,094△2.1166,338127,123△23.6
調整額△86,404△90,067-△7893-
連結損益計算書
計上額
3,177,9853,107,027△2.2166,260127,216△23.5

自動車関連事業は、ワイヤーハーネスや自動車電装部品で積極的に拡販を進めましたが、第4四半期に新型コロナウイルス感染症の影響で需要が大きく落ち込んだため、売上高は1,683,630百万円と25,796百万円(前連結会計年度比1.5%)の減収となりました。営業利益は、価格低下や新興国での賃金上昇、将来に向けた減価償却費の増加に加えて、一部製品の生産立上げ時のコスト増加や円高の影響があったほか、新型コロナウイルス感染症の拡大による生産急減に伴う収益性悪化もあり、68,213百万円と16,456百万円の減益となりました。売上高営業利益率は4.1%と0.9ポイント低下しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ17,622百万円増加の1,404,625百万円となりました。
情報通信関連事業は、携帯基地局用GaNデバイスやデータセンター関連製品、アクセス系ネットワーク機器などの需要増により、売上高は217,401百万円と8,981百万円(4.3%)の増収となりました。営業利益は、売上増加と生産性改善によるコスト低減によって光ファイバ・ケーブルの価格低下を吸収し、17,835百万円と1,437百万円の増益となりました。売上高営業利益率は8.2%と0.3ポイント上昇しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ2,042百万円増加の245,950百万円となりました。
エレクトロニクス関連事業は、携帯機器用FPCは不採算部位からの撤退や需要の落ち込みにより減少しましたが、㈱テクノアソシエを当連結会計年度に子会社化したことにより、売上高は252,170百万円と23,237百万円(10.2%)の増収となりました。営業利益は、携帯機器用FPCの売上減少と競争激化に伴う価格低下に加えて、第4四半期の新型コロナウイルス感染症の影響で需要が落ち込んだこともあり、536百万円と6,480百万円の減益となりました。売上高営業利益率は0.2%と2.9ポイント低下しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ50,821百万円増加の231,079百万円となりました。
環境エネルギー関連事業は、国内の電力ケーブルと住友電設㈱の工事案件の売上は増加しましたが、海外の大型電力ケーブル案件と日新電機㈱のビーム・真空応用装置が出荷の端境期で減少したことに加え、銅価格下落の影響もあり、売上高は712,543百万円と47,243百万円(6.2%)の減収となりました。営業利益は、売上減少により、27,114百万円と2,948百万円の減益となりました。売上高営業利益率は3.8%と0.2ポイント低下しました。なお、工事・プラント受注高は314,177百万円と、前連結会計年度比27,118百万円(9.4%)増加しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ11,770百万円減少の666,581百万円となりました。
産業素材関連事業他は、超硬工具やダイヤ・CBN工具、自動車用焼結部品、半導体放熱基板などの需要が減少し、売上高は331,350百万円と26,474百万円(7.4%)の減収となりました。営業利益は、売上減少に加えて、工場の稼働率が低下したことに伴う収益性の悪化もあり、13,425百万円と14,768百万円の減益となりました。売上高営業利益率は4.1%と3.8ポイント低下しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ10,209百万円増加の658,173百万円となりました。
なお、各セグメントの営業利益又は営業損失は、連結損益計算書の営業利益又は営業損失に対応しております。
② 財政状態
資産合計
(百万円)
負債合計
(百万円)
純資産合計
(百万円)
自己資本比率
(%)
当連結会計年度末3,084,5171,317,6871,766,83049.2
前連結会計年度末3,053,2631,276,9501,776,31350.8
増減31,25440,737△9,483△1.6

当連結会計年度末の資産合計は、保有株式の売却並びに時価下落や㈱テクノアソシエを子会社化したことに伴う投資有価証券の減少に加え、退職給付信託の一部返還などにより退職給付に係る資産が減少した一方、現金及び預金の増加や、IFRS第16号「リース」を適用した影響並びに設備投資による有形固定資産の増加により、前連結会計年度末に比べ31,254百万円増加し、3,084,517百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、主に社債や借入金の増加により、前連結会計年度末に比べ40,737百万円増加し1,317,687百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上の一方、配当金の支払やその他有価証券評価差額金並びに為替換算調整勘定の減少により、前連結会計年度末に比べ9,483百万円減少し1,766,830百万円となりました。自己資本比率は49.2%と、前連結会計年度末対比1.6ポイント低下しております。
③ キャッシュ・フロー
営業活動による
キャッシュ・フロー
(百万円)
投資活動による
キャッシュ・フロー
(百万円)
財務活動による
キャッシュ・フロー
(百万円)
現金及び現金同等物の残高
(百万円)
当連結会計年度264,608△178,020△1,277249,011
前連結会計年度177,656△184,601△4,324168,873
増減86,9526,5813,04780,138

まず、営業活動によるキャッシュ・フローで264,608百万円の資金を獲得(前連結会計年度比86,952百万円の収入増加)しました。これは、税金等調整前当期純利益133,198百万円と減価償却費163,581百万円との合計、すなわち事業の生み出したキャッシュ・フローが296,779百万円あり、これに運転資本の増減などを差し引いた結果であります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、178,020百万円の資金を使用(前連結会計年度比6,581百万円の支出減少)しました。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出192,874百万円などがあったことによるものであります。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・
キャッシュ・フローは、86,588百万円のプラス(前連結会計年度は6,945百万円のマイナス)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、1,277百万円の資金の減少(前連結会計年度は4,324百万円の資金の減少)となりました。これは、借入金の増加額や社債の発行による収入から、配当金の支払を差し引いたことなどによるものであります。
以上により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不測の事態への備えもあり、前連結会計年度末より80,138百万円(47.5%)増加し249,011百万円となりました。また、当連結会計年度末における有利子負債は、前連結会計年度末より78,215百万円増加し618,960百万円となり、有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いたネット有利子負債は、1,923百万円減少し369,949百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社及び連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績」に記載のセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績等の状況の分析
当社グループは、中期経営計画「22VISION」において、経営上の目標の達成状況を、売上高、営業利益、ROIC及びROEを重要な指標として測定することとしております。
当連結会計年度における「売上高」は3,107,027百万円(前連結会計年度比70,958百万円減)、「営業利益」は127,216百万円(前連結会計年度比39,044百万円減)、「ROIC」は5.4%(前連結会計年度比1.9ポイント低下)、「ROE」は4.7%(前連結会計年度比2.9ポイント低下)と、いずれの指標も前年を下回る結果となりました。なお、営業利益の前連結会計年度比での増減要因は以下のとおりとなっております。
前期営業利益166,260百万円
売値の低下・品種構成の変化△34,600
減価償却費の増加△14,700(うちIFRS第16号「リース」適用の影響は△9,900)
為替・銅価変動の影響△4,100
新型コロナウイルス感染症の影響△20,000
売上数量の増加10,100
原価の低減22,500
その他1,756
当期営業利益127,216

② キャッシュ・フローの状況の分析、資本の財源及び資金の流動性に係る状況
当社グループの資金需要のうち主なものは、事業運営に必要な設備資金や運転資金であり、必要資金については自己資金の充当及び金融機関からの借入や社債発行等により調達しております。
当社グループは、中期経営計画「22VISION」において、健全かつ強固な財務体質を維持することを基本方針とし、自己資本比率を50%水準に維持することとしております。また、資金の流動性を確保するために、金融機関とコミットメントライン契約を締結するとともに、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「AA(長期)、J-1+(短期)」、格付投資情報センター(R&I)より「AA-(長期)、a-1+(短期)」の格付を取得しております。
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フロー」に記載のとおりです。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表を作成する際には、当連結会計年度末日時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「重要な会計方針」に記載しておりますが、特に次の重要な会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
(固定資産の減損)
当社グループは、主として事業部別にグルーピングを行っており、また、処分予定又は遊休状態にある資産については個々の資産グループとしております。減損の兆候がある資産グループについては、当該資産グループから得られる将来キャッシュ・フローを見積もり、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合には回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度においては、主としてエレクトロニクス関連事業セグメントにおける一部資産グループについて、入手可能な市場情報及び顧客からの内示情報や新製品の開発・拡販並びにコスト低減に向けた活動等を元に策定した中期事業計画等に基づき将来キャッシュ・フローの見積りを実施しておりますが、当該セグメントは最終製品の市場トレンドや需要の変動が大きいことから、将来の予測不能な事業環境の変化に伴う将来キャッ
シュ・フローの減少が固定資産の減損判定に重要な影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行に伴い、自動車メーカー向けを中心とした需要減少や、各国政府の感染防止対策による当社グループ並びに顧客の工場の操業停止又は縮小が発生しております。当社グ
ループでは、将来キャッシュ・フローの見積りに関し、顧客からの内示情報など当連結会計年度末時点で入手可能な外部の情報等を踏まえ、翌連結会計年度の一定期間にわたり当該影響が継続しつつ段階的に需要が回復していくとの仮定のもと、会計上の見積りを行っております。ただし、新型コロナウイルス感染症の拡大による今後の経済並びに企業活動への影響は極めて不透明であるため、上記仮定に変化が生じた場合は、翌連結会計年度の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。