有価証券報告書-第125期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大や深刻化した米中対立等の影響を大きく受けました。一方、社会経済活動や生産活動が徐々に再開されたことに伴い、回復基調が続きました。
当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場を概観しますと、自動車市場においては、当第1四半期連結会計期間に各国のロックダウン措置により需要が大きく低迷しましたが、当第2四半期連結会計期間から受注が急回復し、その後も好調に推移しました。自動車の生産台数は前連結会計年度の水準を下回ったものの、電装化の進展や電気自動車の比率拡大により、部品搭載点数増加の傾向が継続しました。ICT(情報通信技術)市場においては、テレワークやオンライン授業の導入が急速に進み、ノートパソコンやタブレット端末の需要が大幅に拡大しました。さらに5G(第5世代移動通信システム)関連の需要も堅調に推移し、スマートフォンの生産台数は前連結会計年度の水準まで回復しました。
このような経営環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
2021年3月31日現在の資産合計は、前連結会計年度末に比べ458,054百万円増加し、1,943,379百万円から2,401,433百万円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ300,321百万円増加し、1,094,815百万円から1,395,136百万円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ157,733百万円増加し、848,564百万円から1,006,297百万円となりました。
b.経営成績
当社の連結業績は、売上高1,479,008百万円(前連結会計年度1,363,037百万円、前連結会計年度比8.5%増)、営業利益111,535百万円(同97,870百万円、同比14.0%増)、税引前当期純利益121,904百万円(同95,876百万円、同比27.1%増)、当社株主に帰属する当期純利益79,340百万円(同57,780百万円、同比37.3%増)、1株当たり当社株主に帰属する当期純利益628円8銭(同457円47銭)となりました。
当連結会計年度における対米ドル及びユーロの平均為替レートは、106円5銭及び123円67銭と前連結会計年度に比べ対米ドルで2.5%の円高、対ユーロで2.3%の円安となりました。これらを含め全体の為替変動により、約217億円の減収、営業利益で約81億円の減益となりました。
当社グループの事業セグメントは、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」及び「エナジー応用製品」の4つの報告セグメント及びそれらに属さない「その他」に分類されます。
受動部品セグメントの連結業績は、売上高は407,126百万円(同395,456百万円、同比3.0%増)、セグメント利益は40,201百万円(同39,072百万円、同比2.9%増)となりました。
センサ応用製品セグメントの連結業績は、売上高は81,345百万円(同77,938百万円、同比4.4%増)、セグメント損失は24,872百万円(同25,024百万円)となりました。
磁気応用製品セグメントの連結業績は、売上高は199,253百万円(同219,668百万円、同比9.3%減)、セグメント損失は2,382百万円(同利益425百万円)となりました。
エナジー応用製品セグメントの連結業績は、売上高は740,227百万円(同597,698百万円、同比23.8%増)、セグメント利益は147,375百万円(同124,149百万円、同比18.7%増)となりました。
4つの報告セグメントに属さないその他は、売上高は51,057百万円(同72,277百万円、同比29.4%減)、セグメント損失は16,058百万円(同8,590百万円)となりました。
地域別売上高の状況は、次のとおりであります。 国内における売上高は、前連結会計年度の110,403百万円から6.2%増の117,205百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 米州地域における売上高は、前連結会計年度の96,135百万円から0.6%増の96,666百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 欧州地域における売上高は、前連結会計年度の148,254百万円から0.1%増の148,443百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 中国における売上高は、前連結会計年度の714,011百万円から17.7%増の840,129百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 アジア他の地域における売上高は、前連結会計年度の294,234百万円から6.0%減の276,565百万円となりました。磁気応用製品セグメントが減少しました。 この結果、海外売上高の合計は、前連結会計年度の1,252,634百万円から8.7%増の1,361,803百万円となり、連結売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度の91.9%から0.2ポイント増加し92.1%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得たキャッシュ・フローは、222,814百万円となり、前連結会計年度比424百万円増加しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用したキャッシュ・フローは、231,488百万円となり、前連結会計年度比189,524百万円増加しました。これは主に、関連会社の売却による収入の減少によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得たキャッシュ・フローは、29,193百万円となり、前連結会計年度の財務活動に使用したキャッシュ・フローとの差は150,962百万円となりました。これは主に、社債発行に伴う借入債務の増加によるものです。
これらに為替変動の影響を加味した結果、2021年3月31日現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比47,670百万円増加して380,387百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
(注)1.金額は販売価格により算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
(注)金額は販売価格により算出しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、2021年3月31日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
重要な会計方針とは、その適用にあたり不確実な事象について見積りを要し、経営者の主体的、複雑かつ高度な判断が要求される会計方針であります。
以下は、会計方針を網羅的に記載したものではありません。主要な会計方針については、連結財務諸表の注記(注1)に詳しく開示しております。多くの場合、特定取引の会計処理方法は米国において一般に公正妥当と認められる会計原則で規定され、経営者の判断は必要とされません。また、経営者の判断の余地があっても、その選択の結果で大きな違いは生じません。
当社グループは、重要な会計方針として長期性資産の減損、たな卸資産の評価、企業結合の会計、のれん及びその他の無形固定資産、年金費用、並びに繰延税金資産の評価を認識しております。
会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定につきましては、連結財務諸表の注記(注1)(14)見積りの使用(追加情報)をご参照ください。
長期性資産の減損
2020年3月31日及び2021年3月31日現在、当社グループの有形固定資産及び償却無形固定資産の総額はそれぞれ686,910百万円及び854,009百万円であり、総資産のそれぞれ35.3%及び35.6%に相当します。当社グループは、その回収可能性が経営成績に及ぼす影響の大きさを考慮し、長期性資産の減損は当社の連結財務諸表にとって重要であると認識しております。
当社グループは、有形固定資産及び特定の認識可能で償却期間の定めのある無形固定資産につき、資産の簿価が回収できないという兆候が生じた場合に減損の有無を検討しております。この検討は見積り将来キャッシュ・フローを使用して行われます。資産が減損したと認められた場合、当該資産の簿価が公正価値を上回る金額が減損額として認識されます。経営者は、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積りは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積りを下回った場合、長期性資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。当社グループは、製品の将来の収益性や回収可能性を十分考慮した上で投資を行っております。
たな卸資産の評価
たな卸資産は、低価法により評価しております。予想される陳腐化について、将来の需要予測に基づき、取得価格と見積り市場価格の差額がたな卸資産の簿価から減額されます。当社グループは、過去の需要や将来の予測に基づき、たな卸資産の過剰及び陳腐化の可能性を考慮し簿価の見直しを行っております。さらに、既存及び予想される技術革新の要求は、たな卸資産の評価に影響を与えます。見積り(たな卸資産陳腐化による簿価調整の基礎となるもの)の変動が当社グループの経営成績に影響を与えるため、たな卸資産の評価は重要な会計方針とみなされます。実際の需要が予想されたものより著しく低い場合は、たな卸資産の過剰及び陳腐化に関するたな卸資産の評価について追加的な調整が必要となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に著しく不利な影響を及ぼす可能性があります。
過去の見積りの妥当性について、当社グループは複数のシナリオを立てる方法ではなく、四半期毎に見積りと実績を比較し再評価する方法をとっております。例えば、特に技術革新がめまぐるしい一部の事業の運営においては、顧客が求める高性能製品へのタイムリーな対応が求められており、たな卸資産の陳腐化評価を行い四半期毎に見直しております。
企業結合の会計
当社グループは、取得法を用いて企業結合の会計処理を行っております。取得法では、被結合会社の資産及び負債を取得日のそれぞれの公正価値で計上する必要があります。取得したそれぞれの資産に割り当てられた見積公正価値及び資産償却年数の決定に関する判断は償却費用を通じ、また、その資産が減損している場合には減損損失の計上により、取得後の期間の利益に重大な影響を及ぼします。
当社グループは、無形固定資産の見積公正価値の決定において収益予測を通常利用しています。これに際しては、キャッシュ・フローの動向によるリスクファクターに照らし、最適な割引率を用いた予測将来キャッシュ・フローの割引を採用しています。
無形固定資産の耐用年数の決定に当たっては、区分の異なる無形固定資産はそれぞれの耐用年数を有し、耐用年数が特定できない資産は償却対象外とする必要があります。耐用年数が特定できない無形固定資産は、米国財務会計基準審議会会計基準編纂書 350 に規定された要因に止まらず、当社グループの資産運用状況、有効期間ないしは実負担なしの更新や延長に影響を与える法律ないし契約上の条件、及び需要や競合、その他経済要因に基づいて定期的に再評価されます。
のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数を特定できないその他の無形固定資産は償却することなく、年に一度、もしくはのれんの報告単位及びその他の無形固定資産の公正価値が簿価を下回る兆候や状況の変化が生じた都度、減損テストが実施され、帳簿価額が公正価値を上回っている場合、減損損失が認識されます。公正価値は、主に承認された事業計画に基づく割引キャッシュ・フローを用いて決定されます。経営者は、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積りは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積りを下回った場合、のれん及びその他の無形固定資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
年金費用
従業員の年金費用及び給付債務は、保険数理人がそれらの数値を計算する際に使用する基礎率に基づいております。基礎率には、割引率、退職率、死亡率、昇給率、長期期待収益率等が含まれます。使用した基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。すなわち、通常、将来期間における費用認識及び帳簿上の債務に影響を与えます。当社グループはこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果及び基礎率の変更による差異は将来における年金費用及び給付債務に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成において、当社グループは割引率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ0.7%及び1.8%、また、長期期待収益率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ2.0%及び6.1%に設定しております。割引率を設定するにあたっては、現在発行され、かつ予想される年金受給期日に流通している安全性の高い企業発行の債券利回りを参考にしております。当社グループは、投資対象の様々な資産カテゴリーの長期期待運用収益見込みに基づき、長期期待収益率を設定しております。その設定にあたっては、資産カテゴリー別に将来収益に対する予測や過去の運用実績を考慮しております。
割引率の減少は、年金給付債務を増加させ、数理計算上の差異の償却により年金費用の増加をもたらす可能性があります。長期期待収益率の増加は、期待運用収益の増加により年金費用の減少をもたらす可能性があります。また、期待運用収益と実際運用収益に差異が発生した場合は、次年度以降の利益を増減させる可能性があります。
繰延税金資産の評価
当社グループは、実現可能性の評価に基づいて多額の繰延税金資産を有しております。繰延税金資産の実現可能性を評価するに当たって、当社グループは、繰延税金資産の一部、あるいはすべてが実現しない見込が、実現する見込より大きいかどうかを考慮します。最終的な繰延税金資産の実現は、一時差異が減算できる期間の将来の課税所得の発生に依存します。当社グループは、実現可能性の評価に当たって繰延税金負債の解消の予定、将来の課税所得の見通し及び税計画戦略を考慮しております。過去の課税所得の水準及び繰延税金資産が減算できる期間における将来の課税所得の見通しを考えますと、当社グループは、評価性引当金控除後の繰延税金資産は、実現する見込が実現しない見込より大きいと考えております。しかしながら、将来の利益計画が実現できない、もしくは達成できない場合、または当社グループがその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性評価を変更した場合、繰延税金資産が実現しないと判断され、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績及び経営成績に重要な影響を与えた要因
当連結会計年度の業績は、連結売上高が前連結会計年度比8.5%増の1,479,008百万円、営業利益が同比14.0%増の111,535百万円となりました。当社株主に帰属する当期純利益が同比37.3%増の79,340百万円となりました。
2021年3月期における世界経済は、新型コロナウィルス感染症の感染再拡大や深刻化した米中対立等の影響を大きく受けましたが、当第2四半期連結会計期間以降各国において社会経済活動や生産活動が徐々に再開されたことに伴い、エレクトロニクス需要の回復基調が続きました。特にDXやEX関連の需要が期初想定以上に拡大、旺盛な受注に適時対応したことによって、前連結会計年度比で売上高は8.5%の増収、営業利益は14.0%の増益となり、売上高、営業利益とも過去最高を更新することができました。
当第2四半期連結会計期間より急回復した自動車市場向けの受注は引き続き好調に推移し、xEVやADAS等自動車の電装化の加速も相まって受動部品を中心に販売が拡大しました。またICT市場向けではDX関連需要が期初より好調に推移し、二次電池、受動部品、センサの販売がPCやタブレット、5Gスマートフォン向けに拡大しました。産業機器市場では再生可能エネルギー向け需要が増加し、EX関連需要回復も鮮明になりました。
エレクトロニクスを取り巻く環境は大きな変革期を迎えており、今後もDX、EXの潮流はますます加速して行くことが想定されます。そのような成長の機会を確実に捉え、より高効率で競争力のある事業運営を行っていくため、需要動向変化を見据えた拠点再編や設備の減損等の資産効率向上に向けた構造改革を当第4四半期連結会計期間に実施しました。
対ドル等の為替変動により、売上高で約217億円の減収、営業利益で約81億円の減益影響がありました。それらを含み、売上高は1兆4,790億円、前連結会計年度比1,160億円、8.5%の増収、営業利益は構造改革等一時発生費用約△176億円も含み、1,115億円、前連結会計年度比136億円、14.0%の増益、税引前当期純利益は1,219億円、当社株主に帰属する当期純利益は793億円、1株当たり利益は628円8銭となりました。
為替の感応度は、営業利益で円とドルの関係において1円の変動で前連結会計年度と同様年間約12億円、円とユーロの関係において約2億円と試算しています。
営業利益136億円増益の主な要因は、次のとおりであります。
二次電池を中心とした売上拡大による売上数量増加で493億円の増益効果となりました。売価値引き影響約△287億円があったものの、合理化コストダウン効果約264億円、構造改革効果約19億円で吸収しました。InvenSenseの買収関連費用は約11億円減少、二次電池の事業拡大に伴う販売管理費やパワーセル開発加速による開発費増加、また前連結会計年度まで発生していたフィルターフィーの受け取りが終了したことで販売管理費が約290億円増加しました。前連結会計年度約183億円の減損損失が当連結会計年度約73億円となり前連結会計年度比約110億円の損失減少、拠点再編・資産処分等の一時費用の発生により約103億円の減益、為替変動による減益約81億円で、トータル136億円の増益となりました。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金、短期投資、有価証券等を含む流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めております。具体的には日本、米国、欧州、中国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金効率の向上を図ると共に、コミットメントライン契約などにより流動性を担保しております。2021年3月31日現在の流動性資金の残高は円換算で446,329百万円であり、月平均売上高の3.6ヶ月相当の流動性を確保しております。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種浸透に伴い、米国、中国を中心に景気回復局面に入りつつある中で、世界的な感染拡大や変異ウイルスの脅威は継続しており、本格的な経済活動回復への不確実性等で当社グループの資金繰りに及ぼす影響に備え、流動性資金の拡充や金融機関からの借入金長期化、社債の発行など、対策を講じております。
当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、さらには継続的な新製品開発に向けた研究開発費用であります。また、長期性の資金需要は、エレクトロニクス市場における急速な技術革新や販売競争の激化に的確に対応するための設備投資や更なる成長戦略に向けたM&A等によるものです。
資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債等での調達を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びファイナンス・リース債務を含む有利子負債の残高は483,336百万円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが描いた成長戦略を、財務・資本戦略はもとより、現場の施策にいたるまで有機的につなげながら、その実現を図るための取り組みの一環として業績管理フレームワークの強化を進めています。当社グループは、当社グループ独自の付加価値指標として、利払前税引後利益と各事業の事業用資産に対して最低限求められる収益(株主資本コスト)を比較するTVA(TDK Value Added)を採用しています。このTVAに結びつくロジックツリーで、各事業の収益性評価や事業資産の効率性評価、キャッシュの獲得能力の評価などを実施するとともに、現場の各種施策及び特性に合わせたKPIにまで要素分解しモニタリングします。これによって成長戦略を全社一丸となって推進していくと同時に、投資効率の管理強化により設備投資の選択と集中につなげながら、2024年3月期を最終年度とする中期3か年計画で14%以上の株主資本利益率(ROE)を実現できる体質の構築を目指しております。
当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度の6.7%から1.9ポイント改善し、8.6%となりました。
前連結会計年度比でのROEの改善要因の分析として、ROEを売上高利益率(ROS)、総資産回転率、財務レバレッジの要素に分解して検討すると、総資産回転率、財務レバレッジはおおむね横ばいに推移しており、有価証券関連損益が増加したことによるROSの上昇が寄与しました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(受動部品セグメント)
受動部品セグメントは、①コンデンサ ②インダクティブデバイス ③その他受動部品 で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は407,126百万円(前連結会計年度395,456百万円、前連結会計年度比3.0%増)、セグメント利益は40,201百万円(同39,072百万円、同比2.9%増)、セグメント資産は626,120百万円(同566,577百万円、同比10.5%増)となりました。
当セグメントの売上概況を事業別にみますと、次のとおりであります。
コンデンサは、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ及びフィルムコンデンサから構成され、売上高は、158,182百万円(同153,882百万円、同比2.8%増)となりました。インダクティブデバイスの売上高は、139,990百万円(同137,572百万円、同比1.8%増)となりました。その他受動部品は、高周波部品及び圧電材料部品・回路保護部品で構成されており、売上高は、108,954百万円(同104,002百万円、同比4.8%増)となりました。
自動車市場の需要が当第2四半期連結会計期間から急速に回復、ICT市場の需要も5G関連を中心に堅調に推移し、産業機器市場における需要も再生可能エネルギー関連等が増加した結果、すべての重点市場で売上が増加しました。営業利益は402億円、前連結会計年度比2.9%の増益、当第4四半期連結会計期間に拠点再編等の一時発生費用を約37億円計上したことにより、営業利益率は前連結会計年度実績と同水準の9.9%となりました。
事業別では、セラミックコンデンサが、当第1四半期連結会計期間におけるロックダウンによる自動車市場向け需要減少の影響が残り、増収ながら減益となりました。アルミ電解コンデンサ・フィルムコンデンサは、再生可能エネルギー向けを中心に産業機器市場向け売上が大きく増加し、収益も改善しました。インダクティブデバイスは、自動車市場向け需要の増加に加えスマートフォン向け等ICT市場向け販売が増加し、増収増益となりました。高周波部品は5G関連需要が好調に推移し増収増益となりました。圧電材料部品・回路保護部品は、再生可能エネルギー関連等の産業機器向けの販売が増加、また巣ごもり需要によりゲーム機向けや家電向けの販売も増加し、増益となりました。
(センサ応用製品セグメント)
センサ応用製品セグメントは、温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は81,345百万円(同77,938百万円、同比4.4%増)、セグメント損失は24,872百万円(同25,024百万円)、セグメント資産は220,585百万円(同219,485百万円、同比0.5%増)となりました。
上半期において自動車市場向け販売が大きく減少したものの、下半期には自動車市場の需要回復や、戦略製品の顧客基盤とアプリケーションの拡大効果によって売上を大きく挽回し、当第4四半期連結会計期間は四半期ベースで最高の売上水準に達しました。
当第4四半期連結会計期間に拠点再編や資産処分で約41億円の構造改革費用を計上しましたが、開発効率化やコスト改善施策効果により、赤字ながら全体的に収益改善が進みました。TMRセンサはICT市場向け販売の拡大によって大幅に増収となり、収益を大きく伸ばしました。MEMSセンサは、モーションセンサの顧客基盤拡大、MEMSマイクロフォンの新規ビジネス立上げにより、売上が拡大しました。
(磁気応用製品セグメント)
磁気応用製品セグメントは、HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、マグネットで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は199,253百万円(同219,668百万円、同比9.3%減)、セグメント損失は2,382百万円(同セグメント利益425百万円)、セグメント資産は382,892百万円(同358,422百万円、同比6.8%増)となりました。
HDDヘッドにおいては、当第1四半期連結会計期間に発生した主要顧客の工場閉鎖の影響で販売数量が大幅に減少したことに加え、新製品の投入がなかったことにより従来製品の売価が下がった影響もあり、収益が大幅に悪化しました。一方HDDサスペンションは、主要顧客のデータセンター向けニアラインHDDが好調に推移し、μDSA製品の販売拡大により増収増益を確保しました。マグネットは再生可能エネルギー関連等産業機器市場向け販売が増加したものの、上半期の自動車市場向け需要減少の影響により減収となった一方、前連結会計年度に計上した減損損失の減少等により損失額は縮小しました。
(エナジー応用製品セグメント)
エナジー応用製品セグメントは、エナジーデバイス(二次電池)、電源で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は740,227百万円(同597,698百万円、同比23.8%増)、セグメント利益は147,375百万円(同124,149百万円、同比18.7%増)、セグメント資産は1,229,118百万円(同805,366百万円、同比52.6%増)となりました。
エナジーデバイス(二次電池)においてパワーセル新製品の立上げに向けた先行投資を実施したため、売上の増加に対して営業利益の増益率は若干低下しました。
エナジーデバイス(二次電池)は、スマートフォン、タブレットやノートPCといったモバイル用途向け販売が期初から好調に推移し、特にタブレット、ノートPC向けはリモート需要の拡大により大きく売上を伸ばしました。またゲーム機向けやミニセル製品の販売も拡大、さらに今後の成長を期待している家庭用蓄電システム、電動二輪車向け等のパワーセル製品の販売が本格化し、前連結会計年度から大きく売上を伸ばしました。
電源は半導体製造装置等産業機器市場向け需要回復により増収増益を確保しました。EV電源においてはDC-DCコンバータの売上が着実に伸びましたが、インバータの売上減少により減収となりました。
(その他)
4つの報告セグメントに属さないその他は、メカトロニクス(製造設備)、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータ等で構成され、売上高は51,057百万円(同72,277百万円、同比29.4%減)、セグメント損失は16,058百万円(同8,590百万円)、セグメント資産は82,608百万円(同88,342百万円、同比6.5%減)となりました。
メカトロニクスは、産業機器市場向けの販売が増加しました。スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータは、ICT市場における中国大手得意先向けの販売が大幅に減少したことから、当第4四半期連結会計期間に減損損失を計上し、減収減益となりました。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大や深刻化した米中対立等の影響を大きく受けました。一方、社会経済活動や生産活動が徐々に再開されたことに伴い、回復基調が続きました。
当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場を概観しますと、自動車市場においては、当第1四半期連結会計期間に各国のロックダウン措置により需要が大きく低迷しましたが、当第2四半期連結会計期間から受注が急回復し、その後も好調に推移しました。自動車の生産台数は前連結会計年度の水準を下回ったものの、電装化の進展や電気自動車の比率拡大により、部品搭載点数増加の傾向が継続しました。ICT(情報通信技術)市場においては、テレワークやオンライン授業の導入が急速に進み、ノートパソコンやタブレット端末の需要が大幅に拡大しました。さらに5G(第5世代移動通信システム)関連の需要も堅調に推移し、スマートフォンの生産台数は前連結会計年度の水準まで回復しました。
このような経営環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
2021年3月31日現在の資産合計は、前連結会計年度末に比べ458,054百万円増加し、1,943,379百万円から2,401,433百万円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ300,321百万円増加し、1,094,815百万円から1,395,136百万円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ157,733百万円増加し、848,564百万円から1,006,297百万円となりました。
b.経営成績
当社の連結業績は、売上高1,479,008百万円(前連結会計年度1,363,037百万円、前連結会計年度比8.5%増)、営業利益111,535百万円(同97,870百万円、同比14.0%増)、税引前当期純利益121,904百万円(同95,876百万円、同比27.1%増)、当社株主に帰属する当期純利益79,340百万円(同57,780百万円、同比37.3%増)、1株当たり当社株主に帰属する当期純利益628円8銭(同457円47銭)となりました。
当連結会計年度における対米ドル及びユーロの平均為替レートは、106円5銭及び123円67銭と前連結会計年度に比べ対米ドルで2.5%の円高、対ユーロで2.3%の円安となりました。これらを含め全体の為替変動により、約217億円の減収、営業利益で約81億円の減益となりました。
当社グループの事業セグメントは、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」及び「エナジー応用製品」の4つの報告セグメント及びそれらに属さない「その他」に分類されます。
受動部品セグメントの連結業績は、売上高は407,126百万円(同395,456百万円、同比3.0%増)、セグメント利益は40,201百万円(同39,072百万円、同比2.9%増)となりました。
センサ応用製品セグメントの連結業績は、売上高は81,345百万円(同77,938百万円、同比4.4%増)、セグメント損失は24,872百万円(同25,024百万円)となりました。
磁気応用製品セグメントの連結業績は、売上高は199,253百万円(同219,668百万円、同比9.3%減)、セグメント損失は2,382百万円(同利益425百万円)となりました。
エナジー応用製品セグメントの連結業績は、売上高は740,227百万円(同597,698百万円、同比23.8%増)、セグメント利益は147,375百万円(同124,149百万円、同比18.7%増)となりました。
4つの報告セグメントに属さないその他は、売上高は51,057百万円(同72,277百万円、同比29.4%減)、セグメント損失は16,058百万円(同8,590百万円)となりました。
地域別売上高の状況は、次のとおりであります。 国内における売上高は、前連結会計年度の110,403百万円から6.2%増の117,205百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 米州地域における売上高は、前連結会計年度の96,135百万円から0.6%増の96,666百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 欧州地域における売上高は、前連結会計年度の148,254百万円から0.1%増の148,443百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 中国における売上高は、前連結会計年度の714,011百万円から17.7%増の840,129百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが増加しました。 アジア他の地域における売上高は、前連結会計年度の294,234百万円から6.0%減の276,565百万円となりました。磁気応用製品セグメントが減少しました。 この結果、海外売上高の合計は、前連結会計年度の1,252,634百万円から8.7%増の1,361,803百万円となり、連結売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度の91.9%から0.2ポイント増加し92.1%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得たキャッシュ・フローは、222,814百万円となり、前連結会計年度比424百万円増加しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用したキャッシュ・フローは、231,488百万円となり、前連結会計年度比189,524百万円増加しました。これは主に、関連会社の売却による収入の減少によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって得たキャッシュ・フローは、29,193百万円となり、前連結会計年度の財務活動に使用したキャッシュ・フローとの差は150,962百万円となりました。これは主に、社債発行に伴う借入債務の増加によるものです。
これらに為替変動の影響を加味した結果、2021年3月31日現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比47,670百万円増加して380,387百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
| 事業の種類別セグメントの名称 | 生産実績 (百万円) | 前連結会計年度比増減(%) |
| 受動部品 | 402,043 | 1.1 |
| センサ応用製品 | 79,609 | 4.0 |
| 磁気応用製品 | 198,484 | △11.9 |
| エナジー応用製品 | 786,463 | 31.5 |
| その他 | 50,425 | △31.2 |
| 合計 | 1,517,024 | 10.7 |
(注)1.金額は販売価格により算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
| 事業の種類別セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前連結会計 年度比増減 (%) | 受注残高 (百万円) | 前連結会計 年度末比増減 (%) |
| 受動部品 | 496,920 | 25.6 | 182,993 | 58.4 |
| センサ応用製品 | 107,093 | 43.3 | 47,975 | 135.2 |
| 磁気応用製品 | 197,557 | △9.4 | 19,695 | 38.5 |
| エナジー応用製品 | 898,452 | 20.9 | 179,578 | 36.0 |
| その他 | 41,779 | △36.1 | 8,434 | 16.7 |
| 合計 | 1,741,801 | 16.3 | 438,675 | 51.6 |
(注)金額は販売価格により算出しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
| 事業の種類別セグメントの名称 | 販売実績 (百万円) | 前連結会計年度比増減(%) |
| 受動部品 | 407,126 | 3.0 |
| センサ応用製品 | 81,345 | 4.4 |
| 磁気応用製品 | 199,253 | △9.3 |
| エナジー応用製品 | 740,227 | 23.8 |
| その他 | 51,057 | △29.4 |
| 合計 | 1,479,008 | 8.5 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、2021年3月31日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
重要な会計方針とは、その適用にあたり不確実な事象について見積りを要し、経営者の主体的、複雑かつ高度な判断が要求される会計方針であります。
以下は、会計方針を網羅的に記載したものではありません。主要な会計方針については、連結財務諸表の注記(注1)に詳しく開示しております。多くの場合、特定取引の会計処理方法は米国において一般に公正妥当と認められる会計原則で規定され、経営者の判断は必要とされません。また、経営者の判断の余地があっても、その選択の結果で大きな違いは生じません。
当社グループは、重要な会計方針として長期性資産の減損、たな卸資産の評価、企業結合の会計、のれん及びその他の無形固定資産、年金費用、並びに繰延税金資産の評価を認識しております。
会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定につきましては、連結財務諸表の注記(注1)(14)見積りの使用(追加情報)をご参照ください。
長期性資産の減損
2020年3月31日及び2021年3月31日現在、当社グループの有形固定資産及び償却無形固定資産の総額はそれぞれ686,910百万円及び854,009百万円であり、総資産のそれぞれ35.3%及び35.6%に相当します。当社グループは、その回収可能性が経営成績に及ぼす影響の大きさを考慮し、長期性資産の減損は当社の連結財務諸表にとって重要であると認識しております。
当社グループは、有形固定資産及び特定の認識可能で償却期間の定めのある無形固定資産につき、資産の簿価が回収できないという兆候が生じた場合に減損の有無を検討しております。この検討は見積り将来キャッシュ・フローを使用して行われます。資産が減損したと認められた場合、当該資産の簿価が公正価値を上回る金額が減損額として認識されます。経営者は、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積りは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積りを下回った場合、長期性資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。当社グループは、製品の将来の収益性や回収可能性を十分考慮した上で投資を行っております。
たな卸資産の評価
たな卸資産は、低価法により評価しております。予想される陳腐化について、将来の需要予測に基づき、取得価格と見積り市場価格の差額がたな卸資産の簿価から減額されます。当社グループは、過去の需要や将来の予測に基づき、たな卸資産の過剰及び陳腐化の可能性を考慮し簿価の見直しを行っております。さらに、既存及び予想される技術革新の要求は、たな卸資産の評価に影響を与えます。見積り(たな卸資産陳腐化による簿価調整の基礎となるもの)の変動が当社グループの経営成績に影響を与えるため、たな卸資産の評価は重要な会計方針とみなされます。実際の需要が予想されたものより著しく低い場合は、たな卸資産の過剰及び陳腐化に関するたな卸資産の評価について追加的な調整が必要となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に著しく不利な影響を及ぼす可能性があります。
過去の見積りの妥当性について、当社グループは複数のシナリオを立てる方法ではなく、四半期毎に見積りと実績を比較し再評価する方法をとっております。例えば、特に技術革新がめまぐるしい一部の事業の運営においては、顧客が求める高性能製品へのタイムリーな対応が求められており、たな卸資産の陳腐化評価を行い四半期毎に見直しております。
企業結合の会計
当社グループは、取得法を用いて企業結合の会計処理を行っております。取得法では、被結合会社の資産及び負債を取得日のそれぞれの公正価値で計上する必要があります。取得したそれぞれの資産に割り当てられた見積公正価値及び資産償却年数の決定に関する判断は償却費用を通じ、また、その資産が減損している場合には減損損失の計上により、取得後の期間の利益に重大な影響を及ぼします。
当社グループは、無形固定資産の見積公正価値の決定において収益予測を通常利用しています。これに際しては、キャッシュ・フローの動向によるリスクファクターに照らし、最適な割引率を用いた予測将来キャッシュ・フローの割引を採用しています。
無形固定資産の耐用年数の決定に当たっては、区分の異なる無形固定資産はそれぞれの耐用年数を有し、耐用年数が特定できない資産は償却対象外とする必要があります。耐用年数が特定できない無形固定資産は、米国財務会計基準審議会会計基準編纂書 350 に規定された要因に止まらず、当社グループの資産運用状況、有効期間ないしは実負担なしの更新や延長に影響を与える法律ないし契約上の条件、及び需要や競合、その他経済要因に基づいて定期的に再評価されます。
のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数を特定できないその他の無形固定資産は償却することなく、年に一度、もしくはのれんの報告単位及びその他の無形固定資産の公正価値が簿価を下回る兆候や状況の変化が生じた都度、減損テストが実施され、帳簿価額が公正価値を上回っている場合、減損損失が認識されます。公正価値は、主に承認された事業計画に基づく割引キャッシュ・フローを用いて決定されます。経営者は、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積りは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積りを下回った場合、のれん及びその他の無形固定資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。
年金費用
従業員の年金費用及び給付債務は、保険数理人がそれらの数値を計算する際に使用する基礎率に基づいております。基礎率には、割引率、退職率、死亡率、昇給率、長期期待収益率等が含まれます。使用した基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。すなわち、通常、将来期間における費用認識及び帳簿上の債務に影響を与えます。当社グループはこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果及び基礎率の変更による差異は将来における年金費用及び給付債務に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成において、当社グループは割引率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ0.7%及び1.8%、また、長期期待収益率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ2.0%及び6.1%に設定しております。割引率を設定するにあたっては、現在発行され、かつ予想される年金受給期日に流通している安全性の高い企業発行の債券利回りを参考にしております。当社グループは、投資対象の様々な資産カテゴリーの長期期待運用収益見込みに基づき、長期期待収益率を設定しております。その設定にあたっては、資産カテゴリー別に将来収益に対する予測や過去の運用実績を考慮しております。
割引率の減少は、年金給付債務を増加させ、数理計算上の差異の償却により年金費用の増加をもたらす可能性があります。長期期待収益率の増加は、期待運用収益の増加により年金費用の減少をもたらす可能性があります。また、期待運用収益と実際運用収益に差異が発生した場合は、次年度以降の利益を増減させる可能性があります。
繰延税金資産の評価
当社グループは、実現可能性の評価に基づいて多額の繰延税金資産を有しております。繰延税金資産の実現可能性を評価するに当たって、当社グループは、繰延税金資産の一部、あるいはすべてが実現しない見込が、実現する見込より大きいかどうかを考慮します。最終的な繰延税金資産の実現は、一時差異が減算できる期間の将来の課税所得の発生に依存します。当社グループは、実現可能性の評価に当たって繰延税金負債の解消の予定、将来の課税所得の見通し及び税計画戦略を考慮しております。過去の課税所得の水準及び繰延税金資産が減算できる期間における将来の課税所得の見通しを考えますと、当社グループは、評価性引当金控除後の繰延税金資産は、実現する見込が実現しない見込より大きいと考えております。しかしながら、将来の利益計画が実現できない、もしくは達成できない場合、または当社グループがその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性評価を変更した場合、繰延税金資産が実現しないと判断され、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績及び経営成績に重要な影響を与えた要因
当連結会計年度の業績は、連結売上高が前連結会計年度比8.5%増の1,479,008百万円、営業利益が同比14.0%増の111,535百万円となりました。当社株主に帰属する当期純利益が同比37.3%増の79,340百万円となりました。
2021年3月期における世界経済は、新型コロナウィルス感染症の感染再拡大や深刻化した米中対立等の影響を大きく受けましたが、当第2四半期連結会計期間以降各国において社会経済活動や生産活動が徐々に再開されたことに伴い、エレクトロニクス需要の回復基調が続きました。特にDXやEX関連の需要が期初想定以上に拡大、旺盛な受注に適時対応したことによって、前連結会計年度比で売上高は8.5%の増収、営業利益は14.0%の増益となり、売上高、営業利益とも過去最高を更新することができました。
当第2四半期連結会計期間より急回復した自動車市場向けの受注は引き続き好調に推移し、xEVやADAS等自動車の電装化の加速も相まって受動部品を中心に販売が拡大しました。またICT市場向けではDX関連需要が期初より好調に推移し、二次電池、受動部品、センサの販売がPCやタブレット、5Gスマートフォン向けに拡大しました。産業機器市場では再生可能エネルギー向け需要が増加し、EX関連需要回復も鮮明になりました。
エレクトロニクスを取り巻く環境は大きな変革期を迎えており、今後もDX、EXの潮流はますます加速して行くことが想定されます。そのような成長の機会を確実に捉え、より高効率で競争力のある事業運営を行っていくため、需要動向変化を見据えた拠点再編や設備の減損等の資産効率向上に向けた構造改革を当第4四半期連結会計期間に実施しました。
対ドル等の為替変動により、売上高で約217億円の減収、営業利益で約81億円の減益影響がありました。それらを含み、売上高は1兆4,790億円、前連結会計年度比1,160億円、8.5%の増収、営業利益は構造改革等一時発生費用約△176億円も含み、1,115億円、前連結会計年度比136億円、14.0%の増益、税引前当期純利益は1,219億円、当社株主に帰属する当期純利益は793億円、1株当たり利益は628円8銭となりました。
為替の感応度は、営業利益で円とドルの関係において1円の変動で前連結会計年度と同様年間約12億円、円とユーロの関係において約2億円と試算しています。
営業利益136億円増益の主な要因は、次のとおりであります。
二次電池を中心とした売上拡大による売上数量増加で493億円の増益効果となりました。売価値引き影響約△287億円があったものの、合理化コストダウン効果約264億円、構造改革効果約19億円で吸収しました。InvenSenseの買収関連費用は約11億円減少、二次電池の事業拡大に伴う販売管理費やパワーセル開発加速による開発費増加、また前連結会計年度まで発生していたフィルターフィーの受け取りが終了したことで販売管理費が約290億円増加しました。前連結会計年度約183億円の減損損失が当連結会計年度約73億円となり前連結会計年度比約110億円の損失減少、拠点再編・資産処分等の一時費用の発生により約103億円の減益、為替変動による減益約81億円で、トータル136億円の増益となりました。資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金、短期投資、有価証券等を含む流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めております。具体的には日本、米国、欧州、中国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金効率の向上を図ると共に、コミットメントライン契約などにより流動性を担保しております。2021年3月31日現在の流動性資金の残高は円換算で446,329百万円であり、月平均売上高の3.6ヶ月相当の流動性を確保しております。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種浸透に伴い、米国、中国を中心に景気回復局面に入りつつある中で、世界的な感染拡大や変異ウイルスの脅威は継続しており、本格的な経済活動回復への不確実性等で当社グループの資金繰りに及ぼす影響に備え、流動性資金の拡充や金融機関からの借入金長期化、社債の発行など、対策を講じております。
当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、さらには継続的な新製品開発に向けた研究開発費用であります。また、長期性の資金需要は、エレクトロニクス市場における急速な技術革新や販売競争の激化に的確に対応するための設備投資や更なる成長戦略に向けたM&A等によるものです。
資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債等での調達を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びファイナンス・リース債務を含む有利子負債の残高は483,336百万円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが描いた成長戦略を、財務・資本戦略はもとより、現場の施策にいたるまで有機的につなげながら、その実現を図るための取り組みの一環として業績管理フレームワークの強化を進めています。当社グループは、当社グループ独自の付加価値指標として、利払前税引後利益と各事業の事業用資産に対して最低限求められる収益(株主資本コスト)を比較するTVA(TDK Value Added)を採用しています。このTVAに結びつくロジックツリーで、各事業の収益性評価や事業資産の効率性評価、キャッシュの獲得能力の評価などを実施するとともに、現場の各種施策及び特性に合わせたKPIにまで要素分解しモニタリングします。これによって成長戦略を全社一丸となって推進していくと同時に、投資効率の管理強化により設備投資の選択と集中につなげながら、2024年3月期を最終年度とする中期3か年計画で14%以上の株主資本利益率(ROE)を実現できる体質の構築を目指しております。
当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度の6.7%から1.9ポイント改善し、8.6%となりました。
前連結会計年度比でのROEの改善要因の分析として、ROEを売上高利益率(ROS)、総資産回転率、財務レバレッジの要素に分解して検討すると、総資産回転率、財務レバレッジはおおむね横ばいに推移しており、有価証券関連損益が増加したことによるROSの上昇が寄与しました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(受動部品セグメント)
受動部品セグメントは、①コンデンサ ②インダクティブデバイス ③その他受動部品 で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は407,126百万円(前連結会計年度395,456百万円、前連結会計年度比3.0%増)、セグメント利益は40,201百万円(同39,072百万円、同比2.9%増)、セグメント資産は626,120百万円(同566,577百万円、同比10.5%増)となりました。
当セグメントの売上概況を事業別にみますと、次のとおりであります。
コンデンサは、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ及びフィルムコンデンサから構成され、売上高は、158,182百万円(同153,882百万円、同比2.8%増)となりました。インダクティブデバイスの売上高は、139,990百万円(同137,572百万円、同比1.8%増)となりました。その他受動部品は、高周波部品及び圧電材料部品・回路保護部品で構成されており、売上高は、108,954百万円(同104,002百万円、同比4.8%増)となりました。
自動車市場の需要が当第2四半期連結会計期間から急速に回復、ICT市場の需要も5G関連を中心に堅調に推移し、産業機器市場における需要も再生可能エネルギー関連等が増加した結果、すべての重点市場で売上が増加しました。営業利益は402億円、前連結会計年度比2.9%の増益、当第4四半期連結会計期間に拠点再編等の一時発生費用を約37億円計上したことにより、営業利益率は前連結会計年度実績と同水準の9.9%となりました。
事業別では、セラミックコンデンサが、当第1四半期連結会計期間におけるロックダウンによる自動車市場向け需要減少の影響が残り、増収ながら減益となりました。アルミ電解コンデンサ・フィルムコンデンサは、再生可能エネルギー向けを中心に産業機器市場向け売上が大きく増加し、収益も改善しました。インダクティブデバイスは、自動車市場向け需要の増加に加えスマートフォン向け等ICT市場向け販売が増加し、増収増益となりました。高周波部品は5G関連需要が好調に推移し増収増益となりました。圧電材料部品・回路保護部品は、再生可能エネルギー関連等の産業機器向けの販売が増加、また巣ごもり需要によりゲーム機向けや家電向けの販売も増加し、増益となりました。
(センサ応用製品セグメント)
センサ応用製品セグメントは、温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は81,345百万円(同77,938百万円、同比4.4%増)、セグメント損失は24,872百万円(同25,024百万円)、セグメント資産は220,585百万円(同219,485百万円、同比0.5%増)となりました。
上半期において自動車市場向け販売が大きく減少したものの、下半期には自動車市場の需要回復や、戦略製品の顧客基盤とアプリケーションの拡大効果によって売上を大きく挽回し、当第4四半期連結会計期間は四半期ベースで最高の売上水準に達しました。
当第4四半期連結会計期間に拠点再編や資産処分で約41億円の構造改革費用を計上しましたが、開発効率化やコスト改善施策効果により、赤字ながら全体的に収益改善が進みました。TMRセンサはICT市場向け販売の拡大によって大幅に増収となり、収益を大きく伸ばしました。MEMSセンサは、モーションセンサの顧客基盤拡大、MEMSマイクロフォンの新規ビジネス立上げにより、売上が拡大しました。
(磁気応用製品セグメント)
磁気応用製品セグメントは、HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、マグネットで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は199,253百万円(同219,668百万円、同比9.3%減)、セグメント損失は2,382百万円(同セグメント利益425百万円)、セグメント資産は382,892百万円(同358,422百万円、同比6.8%増)となりました。
HDDヘッドにおいては、当第1四半期連結会計期間に発生した主要顧客の工場閉鎖の影響で販売数量が大幅に減少したことに加え、新製品の投入がなかったことにより従来製品の売価が下がった影響もあり、収益が大幅に悪化しました。一方HDDサスペンションは、主要顧客のデータセンター向けニアラインHDDが好調に推移し、μDSA製品の販売拡大により増収増益を確保しました。マグネットは再生可能エネルギー関連等産業機器市場向け販売が増加したものの、上半期の自動車市場向け需要減少の影響により減収となった一方、前連結会計年度に計上した減損損失の減少等により損失額は縮小しました。
(エナジー応用製品セグメント)
エナジー応用製品セグメントは、エナジーデバイス(二次電池)、電源で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は740,227百万円(同597,698百万円、同比23.8%増)、セグメント利益は147,375百万円(同124,149百万円、同比18.7%増)、セグメント資産は1,229,118百万円(同805,366百万円、同比52.6%増)となりました。
エナジーデバイス(二次電池)においてパワーセル新製品の立上げに向けた先行投資を実施したため、売上の増加に対して営業利益の増益率は若干低下しました。
エナジーデバイス(二次電池)は、スマートフォン、タブレットやノートPCといったモバイル用途向け販売が期初から好調に推移し、特にタブレット、ノートPC向けはリモート需要の拡大により大きく売上を伸ばしました。またゲーム機向けやミニセル製品の販売も拡大、さらに今後の成長を期待している家庭用蓄電システム、電動二輪車向け等のパワーセル製品の販売が本格化し、前連結会計年度から大きく売上を伸ばしました。
電源は半導体製造装置等産業機器市場向け需要回復により増収増益を確保しました。EV電源においてはDC-DCコンバータの売上が着実に伸びましたが、インバータの売上減少により減収となりました。
(その他)
4つの報告セグメントに属さないその他は、メカトロニクス(製造設備)、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータ等で構成され、売上高は51,057百万円(同72,277百万円、同比29.4%減)、セグメント損失は16,058百万円(同8,590百万円)、セグメント資産は82,608百万円(同88,342百万円、同比6.5%減)となりました。
メカトロニクスは、産業機器市場向けの販売が増加しました。スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータは、ICT市場における中国大手得意先向けの販売が大幅に減少したことから、当第4四半期連結会計期間に減損損失を計上し、減収減益となりました。