有価証券報告書-第124期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米中貿易摩擦問題の顕在化等により、中国経済の減速傾向が鮮明となり、比較的堅調に推移していた欧米や日本の経済にも景気悪化の影響が及びました。さらに当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、中国をはじめ各国で都市封鎖等の感染拡大防止のための大規模な措置が取られ、実体経済に大きな影響を及ぼしました。
当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場においても、米中貿易摩擦問題や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、需要の落ち込み、生産活動の制限等が見られました。自動車市場では、電装化の進展による部品搭載点数増加の傾向は見られたものの、最大市場の中国をはじめ世界的に販売台数が前連結会計年度比で減少いたしました。ICT(情報通信技術)市場では、5G(第5世代移動通信システム)関連の需要の立上りが見られましたが、スマートフォンの生産台数は前連結会計年度の水準を下回りました。また、HDD(ハードディスクドライブ)の生産は前連結会計年度比で減少いたしましたが、このうちデータセンター向けの生産は増加いたしました。
このような経営環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
2020年3月31日現在の資産合計は、前連結会計年度末に比べ49,101百万円減少し、1,992,480百万円から1,943,379百万円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ13,909百万円減少し、1,108,724百万円から1,094,815百万円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ35,192百万円減少し、883,756百万円から848,564百万円となりました。
b.経営成績
当社の連結業績は、売上高1,363,037百万円(前連結会計年度1,381,806百万円、前連結会計年度比1.4%減)、営業利益97,870百万円(同107,823百万円、同比9.2%減)、税引前当期純利益95,876百万円(同115,554百万円、同比17.0%減)、当社株主に帰属する当期純利益57,780百万円(同82,205百万円、同比29.7%減)、1株当たり当社株主に帰属する当期純利益457円47銭(同651円02銭)となりました。
当連結会計年度における対米ドル及びユーロの平均為替レートは、108円82銭及び120円92銭と前連結会計年度に比べ対米ドルで1.9%、対ユーロで5.9%の円高となりました。この為替変動により、約407億円の減収、営業利益で約31億円の減益となりました。
当社グループの事業セグメントは、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」及び「エナジー応用製品」の4つの報告セグメント及びそれらに属さない「その他」に分類されます。
受動部品セグメントの連結業績は、売上高は395,456百万円(同433,406百万円、同比8.8%減)、セグメント利益は39,072百万円(同58,438百万円、同比33.1%減)となりました。
センサ応用製品セグメントの連結業績は、売上高は77,938百万円(同76,467百万円、同比1.9%増)、セグメント損失は25,024百万円(同22,125百万円)となりました。
磁気応用製品セグメントの連結業績は、売上高は219,668百万円(同272,807百万円、同比19.5%減)、セグメント利益は425百万円(同17,022百万円、同比97.5%減)となりました。
エナジー応用製品セグメントの連結業績は、売上高は597,698百万円(同537,502百万円、同比11.2%増)、セグメント利益は124,149百万円(同91,036百万円、同比36.4%増)となりました。
4つの報告セグメントに属さないその他は、売上高は72,277百万円(同61,624百万円、同比17.3%増)、セグメント損失は8,590百万円(同6,727百万円)となりました。
地域別売上高の状況は、次のとおりであります。 国内における売上高は、前連結会計年度の113,369百万円から2.6%減の110,403百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが減少しました。 米州地域における売上高は、前連結会計年度の110,169百万円から12.7%減の96,135百万円となりました。受動部品及び磁気応用製品セグメントが減少しました。 欧州地域における売上高は、前連結会計年度の167,285百万円から11.4%減の148,254百万円となりました。受動部品及びセンサ応用製品セグメントが減少しました。 中国における売上高は、前連結会計年度の732,455百万円から2.5%減の714,011百万円となりました。受動部品及び磁気応用製品セグメントが減少しました。 アジア他の地域における売上高は、前連結会計年度の258,528百万円から13.8%増の294,234百万円となりました。磁気応用製品セグメントが減少しましたが、エナジー応用製品セグメントが増加しました。 この結果、海外売上高の合計は、前連結会計年度の1,268,437百万円から1.2%減の1,252,634百万円となりましたが、国内における売上高の減少及び中国におけるエナジー応用製品セグメントの売上高増加により、連結売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度の91.8%から0.1ポイント増加し91.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得たキャッシュ・フローは、222,390百万円となり、前連結会計年度比82,116百万円増加しました。これは主に、仕入債務の増加及び未払費用等の増加によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用したキャッシュ・フローは、41,964百万円となり、前連結会計年度比98,215百万円減少しました。これは主に、関連会社の売却によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用したキャッシュ・フローは、121,769百万円となり、前連結会計年度の財務活動によって得たキャッシュ・フローとの差は131,204百万円となりました。これは主に、借入債務の返済によるものです。
これらに為替変動の影響を加味した結果、2020年3月31日現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比43,542百万円増加して332,717百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
(注)1.金額は販売価格により算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
(注)金額は販売価格により算出しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、2020年3月31日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積もり
重要な会計方針とは、その適用にあたり不確実な事象について見積もりを要し、経営者の主体的、複雑かつ高度な判断が要求される会計方針であります。
以下は、会計方針を網羅的に記載したものではありません。主要な会計方針については、連結財務諸表の注記(注1)に詳しく開示しております。多くの場合、特定取引の会計処理方法は米国において一般に公正妥当と認められる会計原則で規定され、経営者の判断は必要とされません。また、経営者の判断の余地があっても、その選択の結果で大きな違いは生じません。
当社グループは、重要な会計方針として長期性資産の減損、たな卸資産の評価、企業結合の会計、のれん及びその他の無形固定資産、年金費用、並びに繰延税金資産の評価を認識しております。
会計上の見積もりを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定につきましては、連結財務諸表の注記(注1)(14)見積もりの使用(追加情報)をご参照ください。
長期性資産の減損
2019年3月31日及び2020年3月31日現在、当社グループの有形固定資産及び償却無形固定資産の総額はそれぞれ687,764百万円及び686,910百万円であり、総資産のそれぞれ34.5%及び35.3%に相当します。当社グループは、その回収可能性が経営成績に及ぼす影響の大きさを考慮し、長期性資産の減損は当社の連結財務諸表にとって重要であると認識しております。
当社グループは、有形固定資産及び特定の認識可能で償却期間の定めのある無形固定資産につき、資産の簿価が回収できないという兆候が生じた場合に減損の有無を検討しております。この検討は見積もり将来キャッシュ・フローを使用して行われます。資産が減損したと認められた場合、当該資産の簿価が公正価値を上回る金額が減損額として認識されます。経営者は、キャッシュ・フロー及び公正価値は合理的に見積もられていると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積もりを下回った場合、長期性資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。当社グループは、製品の将来の収益性や回収可能性を十分考慮した上で投資を行っております。
たな卸資産の評価
たな卸資産は、低価法により評価しております。予想される陳腐化について、将来の需要予測に基づき、取得価格と見積もり市場価格の差額がたな卸資産の簿価から減額されます。当社グループは、過去の需要や将来の予測に基づき、たな卸資産の過剰及び陳腐化の可能性を考慮し簿価の見直しを行っております。さらに、既存及び予想される技術革新の要求は、たな卸資産の評価に影響を与えます。見積もり(たな卸資産陳腐化による簿価調整の基礎となるもの)の変動が当社グループの経営成績に影響を与えるため、たな卸資産の評価は重要な会計方針とみなされます。実際の需要が予想されたものより著しく低い場合は、たな卸資産の過剰及び陳腐化に関するたな卸資産の評価について追加的な調整が必要となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に著しく不利な影響を及ぼす可能性があります。
過去の見積もりの妥当性について、当社グループは複数のシナリオを立てる方法ではなく、四半期毎に見積もりと実績を比較し再評価する方法をとっております。例えば、特に技術革新がめまぐるしい一部の事業の運営においては、顧客が求める高性能製品へのタイムリーな対応が求められており、たな卸資産の陳腐化評価を行い四半期毎に見直しております。
企業結合の会計
当社グループは、取得法を用いて企業結合の会計処理を行っております。取得法では、被結合会社の資産及び負債を取得日のそれぞれの公正価値で計上する必要があります。取得したそれぞれの資産に割り当てられた見積公正価値及び資産償却年数の決定に関する判断は償却費用を通じ、また、その資産が減損している場合には減損損失の計上により、取得後の期間の利益に重大な影響を及ぼします。
当社グループは、無形固定資産の見積公正価値の決定において収益予測を通常利用しています。これに際しては、キャッシュ・フローの動向によるリスクファクターに照らし、最適な割引率を用いた予測将来キャッシュ・フローの割引を採用しています。
無形固定資産の耐用年数の決定に当たっては、区分の異なる無形固定資産はそれぞれの耐用年数を有し、耐用年数が特定できない資産は償却対象外とする必要があります。耐用年数が特定できない無形固定資産は、米国財務会計基準審議会会計基準編纂書 350 に規定された要因に止まらず、当社グループの資産運用状況、有効期間ないしは実負担なしの更新や延長に影響を与える法律ないし契約上の条件、及び需要や競合、その他経済要因に基づいて定期的に再評価されます。
のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数を特定できないその他の無形固定資産は償却することなく、年に一度、もしくは公正価値が簿価を下回る兆候や状況の変化が生じた都度、減損テストが実施されます。これら資産の公正価値は、承認された事業計画に基づく割引キャッシュ・フローを用いて決定されます。経営者は、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積もりは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積もりを下回った場合、当該資産の評価に不利な影響が生じる可能性があります。
年金費用
従業員の年金費用及び給付債務は、保険数理人がそれらの数値を計算する際に使用する基礎率に基づいております。基礎率には、割引率、退職率、死亡率、昇給率、長期期待収益率等が含まれます。使用した基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。すなわち、通常、将来期間における費用認識及び帳簿上の債務に影響を与えます。当社グループはこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果及び基礎率の変更による差異は将来における年金費用及び給付債務に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成において、当社グループは割引率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ0.7%及び2.1%、また、長期期待収益率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ2.3%及び6.1%に設定しております。割引率を設定するにあたっては、現在発行され、かつ予想される年金受給期日に流通している安全性の高い企業発行の債券利回りを参考にしております。当社グループは、投資対象の様々な資産カテゴリーの長期期待運用収益見込みに基づき、長期期待収益率を設定しております。その設定にあたっては、資産カテゴリー別に将来収益に対する予測や過去の運用実績を考慮しております。
割引率の減少は、年金給付債務を増加させ、数理計算上の差異の償却により年金費用の増加をもたらす可能性があります。長期期待収益率の増加は、期待運用収益の増加により年金費用の減少をもたらす可能性があります。また、期待運用収益と実際運用収益に差異が発生した場合は、次年度以降の利益を増減させる可能性があります。
繰延税金資産の評価
当社グループは、実現可能性の評価に基づいて多額の繰延税金資産を有しております。繰延税金資産の実現可能性を評価するに当たって、当社グループは、繰延税金資産の一部、あるいはすべてが実現しない見込が、実現する見込より大きいかどうかを考慮します。最終的な繰延税金資産の実現は、一時差異が減算できる期間の将来の課税所得の発生に依存します。当社グループは、実現可能性の評価に当たって繰延税金負債の解消の予定、将来の課税所得の見通し及び税計画戦略を考慮しております。過去の課税所得の水準及び繰延税金資産が減算できる期間における将来の課税所得の見通しを考えますと、当社グループは、評価性引当金控除後の繰延税金資産は、実現する見込が実現しない見込より大きいと考えております。しかしながら、将来の利益計画が実現できない、もしくは達成できない場合、または当社グループがその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性評価を変更した場合、繰延税金資産が実現しないと判断され、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績及び経営成績に重要な影響を与えた要因
当連結会計年度の業績は、連結売上高が前連結会計年度比1.4%減の1,363,037百万円、営業利益が同比9.2%減の97,870百万円となりました。当社株主に帰属する当期純利益が同比29.7%減の57,780百万円となりました。
米中関係の悪化により、昨年末に向かって日を追うごとにその影響が激化し、中国をはじめ世界経済の減速が鮮明になっていた中、当第4四半期連結会計期間には新型コロナウイルス感染症の感染拡大により各国の経済活動が停滞し、電子機器の生産や電子部品の需要に期初想定を上回る大きな影響が及びました。その結果、売上高は前連結会計年度比1.4%の減収、営業利益は前連結会計年度比9.2%の減益となりました。
年間を通して世界的に厳しい需要環境においても、エナジーデバイス(二次電池)は期初からICT市場の需要を確実に取り込み、またアプリケーションの拡大によって販売拡大を続けた結果、エナジー応用製品セグメントは増収増益を確保し、売上・営業利益とも過去最高を更新しました。
米中貿易摩擦に大きく影響を受けた自動車市場・産業機器市場では需要が低迷し、期初から想定を大きく下回る水準で推移した結果、受動部品セグメントにおける多くの製品の売上や、センサ応用製品セグメントの中でも特にコンベンショナルなセンサ製品の売上に大きく影響が出ました。一方で、ICT市場の需要は堅調に推移し、ICT市場向けの売上は前連結会計年度比で増加しました。5G向け需要増加を背景に、エナジーデバイス(二次電池)や高周波部品等はスマートフォンおよび基地局向けの販売が拡大し、増収増益を確保し全社収益を牽引しました。
当第4四半期連結会計期間には、自動車市場・産業機器市場における需要低迷が長期化しており、短期的には収益の大幅回復が困難な状況と判断し、マグネットおよびアルミ電解コンデンサの製造設備等の減損損失を約165億円計上、さらに開発体制の見直しにより余剰設備約18億円の減損損失を計上しました。
対ドル等の円高為替により、売上高で約407億円の減収影響、営業利益で約31億円の減益影響を受け、売上高は1兆3,630億円、前連結会計年度比△188億円と△1.4%の微減、営業利益は減損損失185億円を含み979億円、同比△99億円と△9.2%の減益、税引前当期純利益は959億円、当社株主に帰属する当期純利益は578億円、1株当たり利益は457円47銭となりました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、当第4四半期連結会計期間において工場稼働停止や出荷停止等で売上高が約△280億円、営業利益が約△120億円の影響を受けたと試算しています。
為替の感応度は、営業利益で円とドルの関係において1円の変動で年間約12億円、円とユーロの関係において約2億円と試算しています。
営業利益99億円減益の主な要因は、次のとおりであります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響による減益約△120億円を含んでおりますが、売上数量増加で約115億円の増益となりました。売価値引き影響約△150億円を合理化コストダウン約191億円によって吸収し、約16億円の構造改革効果とともに体質強化によって収益向上に貢献しました。InvenSenseの買収関連費用は当連結会計年度で約54億円となり、前連結会計年度から増減はありません。エナジーデバイス(二次電池)の事業拡大に伴う管理費および開発費が△104億円増加、為替変動による減益約△31億円、減損損失の増加約△136億円により、最終的に△99億円の減益となりました。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金、短期投資、有価証券等を含む流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めております。具体的には日本、米国、欧州、中国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金効率の向上を図ると共に、コミットメントライン契約などにより流動性を担保しております。2020年3月31日現在の流動性資金の残高は円換算で365,267百万円であり、月平均売上高の3.2ヶ月相当の流動性を確保しております。なお、昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による、世界的な経済活動の停滞やその長期化等で当社グループの資金繰りに及ぼす影響に備え、流動性資金を拡充し、また、金融機関からの借入金長期化や社債発行、コミットメントライン契約増額の検討など、対策を講じております。
当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、さらには継続的な新製品開発に向けた研究開発費用であります。また、長期性の資金需要は、エレクトロニクス市場における急速な技術革新や販売競争の激化に的確に対応するための設備投資や更なる成長戦略に向けたM&A等によるものです。
資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債等での調達を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びファイナンス・リース債務を含む有利子負債の残高は424,690百万円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが描いた成長戦略を、財務・資本戦略はもとより、現場の施策にいたるまで有機的につなげながら、その実現を図るための取り組みの一環として業績管理フレームワークの強化を進めています。当社グループは、1999年に導入した資本コスト(加重平均資本コスト×投下資本)に対するリターンを比較したTVA(TDK Value Added)を採用しています。このTVAに結びつくロジックツリーで、各事業の収益性評価や事業資産の効率性評価、キャッシュの獲得能力の評価などを実施するとともに、現場の各種施策及び特性に合わせたKPIにまで要素分解しモニタリングします。これによって成長戦略を全社一丸となって推進していくと同時に、投資効率の管理強化により設備投資の選択と集中につなげながら、中期で14%以上の株主資本利益率(ROE)を実現できる体質の構築を目指しております。
当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度の9.7%から3.0ポイント低下し、6.7%となりました。
前連結会計年度比でのROEの低下要因の分析として、ROEの構成要素の株主資本については過去3か年の利益を反映したその他の利益剰余金の増加により、ROEの低下要因となりました。また、もう一つのROEの構成要素の当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益も減少し、ROEの低下要因となりました。これはICT市場向けの売上増加の一方、自動車市場・産業機器市場向けの売上減少、売価値引や減損損失などの増加による営業利益の減少、関連会社利益持分の減少などによるものです。
2021年3月期を最終年度とする中期3か年計画では、ROE14%以上を目標に掲げ、主要事業に対する投資に加え、新製品開発・新規事業への投資を効率的に実施しながら、当社グループ全体の収益性、資本効率向上を図っております。直近の業績予想では2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による世界的な経済活動の停滞の影響により、エレクトロニクス市場にも大きな影響が出るものと予測しております。自動車やスマートフォンの生産台数も前連結会計年度比でマイナスと見ており、電子部品需要の落ち込みも避けられないものと予測しており、直近の業績予想ではROE14%以上の目標達成は困難と考えております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、当連結会計年度における製品群の再定義により、従来インダクティブデバイスに属していた一部製品をその他受動部品に区分変更するとともに、前連結会計年度の数値についても変更後の区分に組替えております。
(受動部品セグメント)
受動部品セグメントは、①コンデンサ ②インダクティブデバイス ③その他受動部品 で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は395,456百万円(前連結会計年度433,406百万円、前連結会計年度比8.8%減)、セグメント利益は39,072百万円(同58,438百万円、同比33.1%減)、セグメント資産は566,577百万円(同651,154百万円、同比13.0%減)となりました。
当セグメントの売上概況を事業別にみますと、次のとおりであります。
コンデンサは、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ及びフィルムコンデンサから構成され、売上高は、153,882百万円(同173,331百万円、同比11.2%減)となりました。インダクティブデバイスの売上高は、137,572百万円(同149,991百万円、同比8.3%減)となりました。その他受動部品は、高周波部品及び圧電材料部品・回路保護部品で構成されており、売上高は、104,002百万円(同110,084百万円、同比5.5%減)となりました。
期初より継続した米中貿易摩擦の影響で自動車市場・産業機器市場の需要が低迷、また欧米大手代理店の在庫調整の影響も加わり、自動車市場・産業機器市場向けにおいて売上構成比率の高いコンデンサ、インダクタ、圧電材料部品・回路保護部品、またアルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサの売上が伸び悩み減益となりました。アルミ電解コンデンサは需要低下による生産能力余剰で、当第4四半期連結会計期間に減損損失約21億円を計上しました。
一方、ICT市場の需要は期初から好調に推移しました。中国を中心とした5Gの立ち上がりも本格化してきており、当第4四半期連結会計期間に新型コロナウイルス感染拡大の影響で数量減少となったものの、高周波部品は増収増益を確保しました。
(センサ応用製品セグメント)
センサ応用製品セグメントは、温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は77,938百万円(同76,467百万円、同比1.9%増)、セグメント損失は25,024百万円(同22,125百万円)、セグメント資産は219,485百万円(同226,520百万円、同比3.1%減)となりました。
当セグメントは、成長戦略事業として売上拡大を目指してきましたが、全体の売上は前連結会計年度比で1.9%の微増にとどまり、赤字が拡大しました。
当セグメントの製品は、景気に大きく左右され減収となった製品と、成長戦略に乗って売上を伸ばした製品の2つに大きく分かれます。自動車市場・産業機器市場における世界的な需要低迷の影響により、温度センサやHallセンサといったコンベンショナルなセンサの売上が低調に推移し、前連結会計年度から売上が大きく減少し収益も悪化、事業全体の損益に大きな影響を及ぼしました。一方、成長を期待している戦略製品であるTMRセンサは自動車向けの採用も進み、数量増加で着実に売上が拡大しました。スマートフォン向けにおいては新モデルへの採用も確実に進捗し、売上が拡大して黒字が定着してきています。またMEMSセンサでは、モーションセンサの新規顧客への売上が着実に増加、MEMSマイクロフォンもスマートフォン向けやIoT向け等に売上を伸ばしましたが、十分な売上拡大、収益貢献には至りませんでした。
(磁気応用製品セグメント)
磁気応用製品セグメントは、HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、マグネットで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は219,668百万円(同272,807百万円、同比19.5%減)、セグメント利益は425百万円(同17,022百万円、同比97.5%減)、セグメント資産は358,422百万円(同373,085百万円、同比3.9%減)となりました。
HDDヘッド・HDDサスペンションにおいては、HDD総需要の減少に伴いHDDヘッドの数量が約4%減少、HDD組立の一部製品終息等により、HDDヘッド・サスペンション全体で約18%減収し減益となりましたが、高付加価値製品の増加もあり収益性は前連結会計年度から向上しました。
マグネットにおいてはHDD用マグネットの撤退、産業用ロボットや工作機械向け等の産業機器市場および自動車市場の需要低迷の影響により売上が減少し、収益は厳しい状況が続き、当第4四半期連結会計期間に減損損失約144億円を計上しました。
(エナジー応用製品セグメント)
エナジー応用製品セグメントは、エナジーデバイス(二次電池)、電源で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は597,698百万円(同537,502百万円、同比11.2%増)、セグメント利益は124,149百万円(同91,036百万円、同比36.4%増)、セグメント資産は805,366百万円(同661,595百万円、同比21.7%増)となりました。
エナジーデバイス(二次電池)はスマートフォン向けの売上が大幅に増加、またタブレットやノートPC向けも堅調に推移、さらにワイヤレスイヤホン等ウェラブル向けのミニセルの販売も順調に拡大し、前連結会計年度比約15%の増収となり収益性も向上しました。
産業機器用電源は景気減速により設備投資需要減少の影響を大きく受け、産業機器市場向けの売上が減少し減益となりました。
(その他)
4つの報告セグメントに属さないその他は、メカトロニクス(製造設備)等で構成され、売上高は72,277百万円(同61,624百万円、同比17.3%増)、セグメント損失は8,590百万円(同6,727百万円)、セグメント資産は88,342百万円(同71,811百万円、同比23.0%増)となりました。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米中貿易摩擦問題の顕在化等により、中国経済の減速傾向が鮮明となり、比較的堅調に推移していた欧米や日本の経済にも景気悪化の影響が及びました。さらに当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、中国をはじめ各国で都市封鎖等の感染拡大防止のための大規模な措置が取られ、実体経済に大きな影響を及ぼしました。
当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場においても、米中貿易摩擦問題や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、需要の落ち込み、生産活動の制限等が見られました。自動車市場では、電装化の進展による部品搭載点数増加の傾向は見られたものの、最大市場の中国をはじめ世界的に販売台数が前連結会計年度比で減少いたしました。ICT(情報通信技術)市場では、5G(第5世代移動通信システム)関連の需要の立上りが見られましたが、スマートフォンの生産台数は前連結会計年度の水準を下回りました。また、HDD(ハードディスクドライブ)の生産は前連結会計年度比で減少いたしましたが、このうちデータセンター向けの生産は増加いたしました。
このような経営環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
2020年3月31日現在の資産合計は、前連結会計年度末に比べ49,101百万円減少し、1,992,480百万円から1,943,379百万円となりました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ13,909百万円減少し、1,108,724百万円から1,094,815百万円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ35,192百万円減少し、883,756百万円から848,564百万円となりました。
b.経営成績
当社の連結業績は、売上高1,363,037百万円(前連結会計年度1,381,806百万円、前連結会計年度比1.4%減)、営業利益97,870百万円(同107,823百万円、同比9.2%減)、税引前当期純利益95,876百万円(同115,554百万円、同比17.0%減)、当社株主に帰属する当期純利益57,780百万円(同82,205百万円、同比29.7%減)、1株当たり当社株主に帰属する当期純利益457円47銭(同651円02銭)となりました。
当連結会計年度における対米ドル及びユーロの平均為替レートは、108円82銭及び120円92銭と前連結会計年度に比べ対米ドルで1.9%、対ユーロで5.9%の円高となりました。この為替変動により、約407億円の減収、営業利益で約31億円の減益となりました。
当社グループの事業セグメントは、「受動部品」、「センサ応用製品」、「磁気応用製品」及び「エナジー応用製品」の4つの報告セグメント及びそれらに属さない「その他」に分類されます。
受動部品セグメントの連結業績は、売上高は395,456百万円(同433,406百万円、同比8.8%減)、セグメント利益は39,072百万円(同58,438百万円、同比33.1%減)となりました。
センサ応用製品セグメントの連結業績は、売上高は77,938百万円(同76,467百万円、同比1.9%増)、セグメント損失は25,024百万円(同22,125百万円)となりました。
磁気応用製品セグメントの連結業績は、売上高は219,668百万円(同272,807百万円、同比19.5%減)、セグメント利益は425百万円(同17,022百万円、同比97.5%減)となりました。
エナジー応用製品セグメントの連結業績は、売上高は597,698百万円(同537,502百万円、同比11.2%増)、セグメント利益は124,149百万円(同91,036百万円、同比36.4%増)となりました。
4つの報告セグメントに属さないその他は、売上高は72,277百万円(同61,624百万円、同比17.3%増)、セグメント損失は8,590百万円(同6,727百万円)となりました。
地域別売上高の状況は、次のとおりであります。 国内における売上高は、前連結会計年度の113,369百万円から2.6%減の110,403百万円となりました。エナジー応用製品セグメントが減少しました。 米州地域における売上高は、前連結会計年度の110,169百万円から12.7%減の96,135百万円となりました。受動部品及び磁気応用製品セグメントが減少しました。 欧州地域における売上高は、前連結会計年度の167,285百万円から11.4%減の148,254百万円となりました。受動部品及びセンサ応用製品セグメントが減少しました。 中国における売上高は、前連結会計年度の732,455百万円から2.5%減の714,011百万円となりました。受動部品及び磁気応用製品セグメントが減少しました。 アジア他の地域における売上高は、前連結会計年度の258,528百万円から13.8%増の294,234百万円となりました。磁気応用製品セグメントが減少しましたが、エナジー応用製品セグメントが増加しました。 この結果、海外売上高の合計は、前連結会計年度の1,268,437百万円から1.2%減の1,252,634百万円となりましたが、国内における売上高の減少及び中国におけるエナジー応用製品セグメントの売上高増加により、連結売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度の91.8%から0.1ポイント増加し91.9%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得たキャッシュ・フローは、222,390百万円となり、前連結会計年度比82,116百万円増加しました。これは主に、仕入債務の増加及び未払費用等の増加によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用したキャッシュ・フローは、41,964百万円となり、前連結会計年度比98,215百万円減少しました。これは主に、関連会社の売却によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用したキャッシュ・フローは、121,769百万円となり、前連結会計年度の財務活動によって得たキャッシュ・フローとの差は131,204百万円となりました。これは主に、借入債務の返済によるものです。
これらに為替変動の影響を加味した結果、2020年3月31日現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比43,542百万円増加して332,717百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
| 事業の種類別セグメントの名称 | 生産実績 (百万円) | 前連結会計年度比増減(%) |
| 受動部品 | 397,495 | △ 7.7 |
| センサ応用製品 | 76,521 | △ 5.7 |
| 磁気応用製品 | 225,393 | △16.0 |
| エナジー応用製品 | 598,198 | 7.0 |
| その他 | 73,258 | 20.3 |
| 合計 | 1,370,865 | △ 2.1 |
(注)1.金額は販売価格により算出しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
| 事業の種類別セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前連結会計 年度比増減 (%) | 受注残高 (百万円) | 前連結会計 年度末比増減 (%) |
| 受動部品 | 395,535 | △ 9.9 | 115,528 | △ 8.4 |
| センサ応用製品 | 74,711 | △ 5.7 | 20,398 | △ 9.4 |
| 磁気応用製品 | 218,099 | △ 18.1 | 14,216 | △ 29.1 |
| エナジー応用製品 | 743,363 | 16.0 | 132,055 | 44.9 |
| その他 | 65,407 | 24.3 | 7,229 | △ 8.8 |
| 合計 | 1,497,115 | 1.3 | 289,426 | 8.1 |
(注)金額は販売価格により算出しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、下表のとおりであります。
| 事業の種類別セグメントの名称 | 販売実績 (百万円) | 前連結会計年度比増減(%) |
| 受動部品 | 395,456 | △ 8.8 |
| センサ応用製品 | 77,938 | 1.9 |
| 磁気応用製品 | 219,668 | △ 19.5 |
| エナジー応用製品 | 597,698 | 11.2 |
| その他 | 72,277 | 17.3 |
| 合計 | 1,363,037 | △ 1.4 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、2020年3月31日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積もり
重要な会計方針とは、その適用にあたり不確実な事象について見積もりを要し、経営者の主体的、複雑かつ高度な判断が要求される会計方針であります。
以下は、会計方針を網羅的に記載したものではありません。主要な会計方針については、連結財務諸表の注記(注1)に詳しく開示しております。多くの場合、特定取引の会計処理方法は米国において一般に公正妥当と認められる会計原則で規定され、経営者の判断は必要とされません。また、経営者の判断の余地があっても、その選択の結果で大きな違いは生じません。
当社グループは、重要な会計方針として長期性資産の減損、たな卸資産の評価、企業結合の会計、のれん及びその他の無形固定資産、年金費用、並びに繰延税金資産の評価を認識しております。
会計上の見積もりを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定につきましては、連結財務諸表の注記(注1)(14)見積もりの使用(追加情報)をご参照ください。
長期性資産の減損
2019年3月31日及び2020年3月31日現在、当社グループの有形固定資産及び償却無形固定資産の総額はそれぞれ687,764百万円及び686,910百万円であり、総資産のそれぞれ34.5%及び35.3%に相当します。当社グループは、その回収可能性が経営成績に及ぼす影響の大きさを考慮し、長期性資産の減損は当社の連結財務諸表にとって重要であると認識しております。
当社グループは、有形固定資産及び特定の認識可能で償却期間の定めのある無形固定資産につき、資産の簿価が回収できないという兆候が生じた場合に減損の有無を検討しております。この検討は見積もり将来キャッシュ・フローを使用して行われます。資産が減損したと認められた場合、当該資産の簿価が公正価値を上回る金額が減損額として認識されます。経営者は、キャッシュ・フロー及び公正価値は合理的に見積もられていると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積もりを下回った場合、長期性資産の評価に不利な影響が、また、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。当社グループは、製品の将来の収益性や回収可能性を十分考慮した上で投資を行っております。
たな卸資産の評価
たな卸資産は、低価法により評価しております。予想される陳腐化について、将来の需要予測に基づき、取得価格と見積もり市場価格の差額がたな卸資産の簿価から減額されます。当社グループは、過去の需要や将来の予測に基づき、たな卸資産の過剰及び陳腐化の可能性を考慮し簿価の見直しを行っております。さらに、既存及び予想される技術革新の要求は、たな卸資産の評価に影響を与えます。見積もり(たな卸資産陳腐化による簿価調整の基礎となるもの)の変動が当社グループの経営成績に影響を与えるため、たな卸資産の評価は重要な会計方針とみなされます。実際の需要が予想されたものより著しく低い場合は、たな卸資産の過剰及び陳腐化に関するたな卸資産の評価について追加的な調整が必要となり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に著しく不利な影響を及ぼす可能性があります。
過去の見積もりの妥当性について、当社グループは複数のシナリオを立てる方法ではなく、四半期毎に見積もりと実績を比較し再評価する方法をとっております。例えば、特に技術革新がめまぐるしい一部の事業の運営においては、顧客が求める高性能製品へのタイムリーな対応が求められており、たな卸資産の陳腐化評価を行い四半期毎に見直しております。
企業結合の会計
当社グループは、取得法を用いて企業結合の会計処理を行っております。取得法では、被結合会社の資産及び負債を取得日のそれぞれの公正価値で計上する必要があります。取得したそれぞれの資産に割り当てられた見積公正価値及び資産償却年数の決定に関する判断は償却費用を通じ、また、その資産が減損している場合には減損損失の計上により、取得後の期間の利益に重大な影響を及ぼします。
当社グループは、無形固定資産の見積公正価値の決定において収益予測を通常利用しています。これに際しては、キャッシュ・フローの動向によるリスクファクターに照らし、最適な割引率を用いた予測将来キャッシュ・フローの割引を採用しています。
無形固定資産の耐用年数の決定に当たっては、区分の異なる無形固定資産はそれぞれの耐用年数を有し、耐用年数が特定できない資産は償却対象外とする必要があります。耐用年数が特定できない無形固定資産は、米国財務会計基準審議会会計基準編纂書 350 に規定された要因に止まらず、当社グループの資産運用状況、有効期間ないしは実負担なしの更新や延長に影響を与える法律ないし契約上の条件、及び需要や競合、その他経済要因に基づいて定期的に再評価されます。
のれん及びその他の無形固定資産
のれん及び耐用年数を特定できないその他の無形固定資産は償却することなく、年に一度、もしくは公正価値が簿価を下回る兆候や状況の変化が生じた都度、減損テストが実施されます。これら資産の公正価値は、承認された事業計画に基づく割引キャッシュ・フローを用いて決定されます。経営者は、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積もりは合理的であると判断しておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積もりを下回った場合、当該資産の評価に不利な影響が生じる可能性があります。
年金費用
従業員の年金費用及び給付債務は、保険数理人がそれらの数値を計算する際に使用する基礎率に基づいております。基礎率には、割引率、退職率、死亡率、昇給率、長期期待収益率等が含まれます。使用した基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。すなわち、通常、将来期間における費用認識及び帳簿上の債務に影響を与えます。当社グループはこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果及び基礎率の変更による差異は将来における年金費用及び給付債務に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表の作成において、当社グループは割引率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ0.7%及び2.1%、また、長期期待収益率を国内の制度及び海外の制度においてそれぞれ2.3%及び6.1%に設定しております。割引率を設定するにあたっては、現在発行され、かつ予想される年金受給期日に流通している安全性の高い企業発行の債券利回りを参考にしております。当社グループは、投資対象の様々な資産カテゴリーの長期期待運用収益見込みに基づき、長期期待収益率を設定しております。その設定にあたっては、資産カテゴリー別に将来収益に対する予測や過去の運用実績を考慮しております。
割引率の減少は、年金給付債務を増加させ、数理計算上の差異の償却により年金費用の増加をもたらす可能性があります。長期期待収益率の増加は、期待運用収益の増加により年金費用の減少をもたらす可能性があります。また、期待運用収益と実際運用収益に差異が発生した場合は、次年度以降の利益を増減させる可能性があります。
繰延税金資産の評価
当社グループは、実現可能性の評価に基づいて多額の繰延税金資産を有しております。繰延税金資産の実現可能性を評価するに当たって、当社グループは、繰延税金資産の一部、あるいはすべてが実現しない見込が、実現する見込より大きいかどうかを考慮します。最終的な繰延税金資産の実現は、一時差異が減算できる期間の将来の課税所得の発生に依存します。当社グループは、実現可能性の評価に当たって繰延税金負債の解消の予定、将来の課税所得の見通し及び税計画戦略を考慮しております。過去の課税所得の水準及び繰延税金資産が減算できる期間における将来の課税所得の見通しを考えますと、当社グループは、評価性引当金控除後の繰延税金資産は、実現する見込が実現しない見込より大きいと考えております。しかしながら、将来の利益計画が実現できない、もしくは達成できない場合、または当社グループがその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性評価を変更した場合、繰延税金資産が実現しないと判断され、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績及び経営成績に重要な影響を与えた要因
当連結会計年度の業績は、連結売上高が前連結会計年度比1.4%減の1,363,037百万円、営業利益が同比9.2%減の97,870百万円となりました。当社株主に帰属する当期純利益が同比29.7%減の57,780百万円となりました。
米中関係の悪化により、昨年末に向かって日を追うごとにその影響が激化し、中国をはじめ世界経済の減速が鮮明になっていた中、当第4四半期連結会計期間には新型コロナウイルス感染症の感染拡大により各国の経済活動が停滞し、電子機器の生産や電子部品の需要に期初想定を上回る大きな影響が及びました。その結果、売上高は前連結会計年度比1.4%の減収、営業利益は前連結会計年度比9.2%の減益となりました。
年間を通して世界的に厳しい需要環境においても、エナジーデバイス(二次電池)は期初からICT市場の需要を確実に取り込み、またアプリケーションの拡大によって販売拡大を続けた結果、エナジー応用製品セグメントは増収増益を確保し、売上・営業利益とも過去最高を更新しました。
米中貿易摩擦に大きく影響を受けた自動車市場・産業機器市場では需要が低迷し、期初から想定を大きく下回る水準で推移した結果、受動部品セグメントにおける多くの製品の売上や、センサ応用製品セグメントの中でも特にコンベンショナルなセンサ製品の売上に大きく影響が出ました。一方で、ICT市場の需要は堅調に推移し、ICT市場向けの売上は前連結会計年度比で増加しました。5G向け需要増加を背景に、エナジーデバイス(二次電池)や高周波部品等はスマートフォンおよび基地局向けの販売が拡大し、増収増益を確保し全社収益を牽引しました。
当第4四半期連結会計期間には、自動車市場・産業機器市場における需要低迷が長期化しており、短期的には収益の大幅回復が困難な状況と判断し、マグネットおよびアルミ電解コンデンサの製造設備等の減損損失を約165億円計上、さらに開発体制の見直しにより余剰設備約18億円の減損損失を計上しました。
対ドル等の円高為替により、売上高で約407億円の減収影響、営業利益で約31億円の減益影響を受け、売上高は1兆3,630億円、前連結会計年度比△188億円と△1.4%の微減、営業利益は減損損失185億円を含み979億円、同比△99億円と△9.2%の減益、税引前当期純利益は959億円、当社株主に帰属する当期純利益は578億円、1株当たり利益は457円47銭となりました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、当第4四半期連結会計期間において工場稼働停止や出荷停止等で売上高が約△280億円、営業利益が約△120億円の影響を受けたと試算しています。
為替の感応度は、営業利益で円とドルの関係において1円の変動で年間約12億円、円とユーロの関係において約2億円と試算しています。
営業利益99億円減益の主な要因は、次のとおりであります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響による減益約△120億円を含んでおりますが、売上数量増加で約115億円の増益となりました。売価値引き影響約△150億円を合理化コストダウン約191億円によって吸収し、約16億円の構造改革効果とともに体質強化によって収益向上に貢献しました。InvenSenseの買収関連費用は当連結会計年度で約54億円となり、前連結会計年度から増減はありません。エナジーデバイス(二次電池)の事業拡大に伴う管理費および開発費が△104億円増加、為替変動による減益約△31億円、減損損失の増加約△136億円により、最終的に△99億円の減益となりました。資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金、短期投資、有価証券等を含む流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めております。具体的には日本、米国、欧州、中国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金効率の向上を図ると共に、コミットメントライン契約などにより流動性を担保しております。2020年3月31日現在の流動性資金の残高は円換算で365,267百万円であり、月平均売上高の3.2ヶ月相当の流動性を確保しております。なお、昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による、世界的な経済活動の停滞やその長期化等で当社グループの資金繰りに及ぼす影響に備え、流動性資金を拡充し、また、金融機関からの借入金長期化や社債発行、コミットメントライン契約増額の検討など、対策を講じております。
当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、さらには継続的な新製品開発に向けた研究開発費用であります。また、長期性の資金需要は、エレクトロニクス市場における急速な技術革新や販売競争の激化に的確に対応するための設備投資や更なる成長戦略に向けたM&A等によるものです。
資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債等での調達を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びファイナンス・リース債務を含む有利子負債の残高は424,690百万円となっております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが描いた成長戦略を、財務・資本戦略はもとより、現場の施策にいたるまで有機的につなげながら、その実現を図るための取り組みの一環として業績管理フレームワークの強化を進めています。当社グループは、1999年に導入した資本コスト(加重平均資本コスト×投下資本)に対するリターンを比較したTVA(TDK Value Added)を採用しています。このTVAに結びつくロジックツリーで、各事業の収益性評価や事業資産の効率性評価、キャッシュの獲得能力の評価などを実施するとともに、現場の各種施策及び特性に合わせたKPIにまで要素分解しモニタリングします。これによって成長戦略を全社一丸となって推進していくと同時に、投資効率の管理強化により設備投資の選択と集中につなげながら、中期で14%以上の株主資本利益率(ROE)を実現できる体質の構築を目指しております。
当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度の9.7%から3.0ポイント低下し、6.7%となりました。
前連結会計年度比でのROEの低下要因の分析として、ROEの構成要素の株主資本については過去3か年の利益を反映したその他の利益剰余金の増加により、ROEの低下要因となりました。また、もう一つのROEの構成要素の当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益も減少し、ROEの低下要因となりました。これはICT市場向けの売上増加の一方、自動車市場・産業機器市場向けの売上減少、売価値引や減損損失などの増加による営業利益の減少、関連会社利益持分の減少などによるものです。
2021年3月期を最終年度とする中期3か年計画では、ROE14%以上を目標に掲げ、主要事業に対する投資に加え、新製品開発・新規事業への投資を効率的に実施しながら、当社グループ全体の収益性、資本効率向上を図っております。直近の業績予想では2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による世界的な経済活動の停滞の影響により、エレクトロニクス市場にも大きな影響が出るものと予測しております。自動車やスマートフォンの生産台数も前連結会計年度比でマイナスと見ており、電子部品需要の落ち込みも避けられないものと予測しており、直近の業績予想ではROE14%以上の目標達成は困難と考えております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、当連結会計年度における製品群の再定義により、従来インダクティブデバイスに属していた一部製品をその他受動部品に区分変更するとともに、前連結会計年度の数値についても変更後の区分に組替えております。
(受動部品セグメント)
受動部品セグメントは、①コンデンサ ②インダクティブデバイス ③その他受動部品 で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は395,456百万円(前連結会計年度433,406百万円、前連結会計年度比8.8%減)、セグメント利益は39,072百万円(同58,438百万円、同比33.1%減)、セグメント資産は566,577百万円(同651,154百万円、同比13.0%減)となりました。
当セグメントの売上概況を事業別にみますと、次のとおりであります。
コンデンサは、セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ及びフィルムコンデンサから構成され、売上高は、153,882百万円(同173,331百万円、同比11.2%減)となりました。インダクティブデバイスの売上高は、137,572百万円(同149,991百万円、同比8.3%減)となりました。その他受動部品は、高周波部品及び圧電材料部品・回路保護部品で構成されており、売上高は、104,002百万円(同110,084百万円、同比5.5%減)となりました。
期初より継続した米中貿易摩擦の影響で自動車市場・産業機器市場の需要が低迷、また欧米大手代理店の在庫調整の影響も加わり、自動車市場・産業機器市場向けにおいて売上構成比率の高いコンデンサ、インダクタ、圧電材料部品・回路保護部品、またアルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサの売上が伸び悩み減益となりました。アルミ電解コンデンサは需要低下による生産能力余剰で、当第4四半期連結会計期間に減損損失約21億円を計上しました。
一方、ICT市場の需要は期初から好調に推移しました。中国を中心とした5Gの立ち上がりも本格化してきており、当第4四半期連結会計期間に新型コロナウイルス感染拡大の影響で数量減少となったものの、高周波部品は増収増益を確保しました。
(センサ応用製品セグメント)
センサ応用製品セグメントは、温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は77,938百万円(同76,467百万円、同比1.9%増)、セグメント損失は25,024百万円(同22,125百万円)、セグメント資産は219,485百万円(同226,520百万円、同比3.1%減)となりました。
当セグメントは、成長戦略事業として売上拡大を目指してきましたが、全体の売上は前連結会計年度比で1.9%の微増にとどまり、赤字が拡大しました。
当セグメントの製品は、景気に大きく左右され減収となった製品と、成長戦略に乗って売上を伸ばした製品の2つに大きく分かれます。自動車市場・産業機器市場における世界的な需要低迷の影響により、温度センサやHallセンサといったコンベンショナルなセンサの売上が低調に推移し、前連結会計年度から売上が大きく減少し収益も悪化、事業全体の損益に大きな影響を及ぼしました。一方、成長を期待している戦略製品であるTMRセンサは自動車向けの採用も進み、数量増加で着実に売上が拡大しました。スマートフォン向けにおいては新モデルへの採用も確実に進捗し、売上が拡大して黒字が定着してきています。またMEMSセンサでは、モーションセンサの新規顧客への売上が着実に増加、MEMSマイクロフォンもスマートフォン向けやIoT向け等に売上を伸ばしましたが、十分な売上拡大、収益貢献には至りませんでした。
(磁気応用製品セグメント)
磁気応用製品セグメントは、HDD用ヘッド、HDD用サスペンション、マグネットで構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は219,668百万円(同272,807百万円、同比19.5%減)、セグメント利益は425百万円(同17,022百万円、同比97.5%減)、セグメント資産は358,422百万円(同373,085百万円、同比3.9%減)となりました。
HDDヘッド・HDDサスペンションにおいては、HDD総需要の減少に伴いHDDヘッドの数量が約4%減少、HDD組立の一部製品終息等により、HDDヘッド・サスペンション全体で約18%減収し減益となりましたが、高付加価値製品の増加もあり収益性は前連結会計年度から向上しました。
マグネットにおいてはHDD用マグネットの撤退、産業用ロボットや工作機械向け等の産業機器市場および自動車市場の需要低迷の影響により売上が減少し、収益は厳しい状況が続き、当第4四半期連結会計期間に減損損失約144億円を計上しました。
(エナジー応用製品セグメント)
エナジー応用製品セグメントは、エナジーデバイス(二次電池)、電源で構成され、当セグメントの連結業績は、売上高は597,698百万円(同537,502百万円、同比11.2%増)、セグメント利益は124,149百万円(同91,036百万円、同比36.4%増)、セグメント資産は805,366百万円(同661,595百万円、同比21.7%増)となりました。
エナジーデバイス(二次電池)はスマートフォン向けの売上が大幅に増加、またタブレットやノートPC向けも堅調に推移、さらにワイヤレスイヤホン等ウェラブル向けのミニセルの販売も順調に拡大し、前連結会計年度比約15%の増収となり収益性も向上しました。
産業機器用電源は景気減速により設備投資需要減少の影響を大きく受け、産業機器市場向けの売上が減少し減益となりました。
(その他)
4つの報告セグメントに属さないその他は、メカトロニクス(製造設備)等で構成され、売上高は72,277百万円(同61,624百万円、同比17.3%増)、セグメント損失は8,590百万円(同6,727百万円)、セグメント資産は88,342百万円(同71,811百万円、同比23.0%増)となりました。