有価証券報告書-第70期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/30 13:59
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142項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの影響が収束傾向となり景気に持ち直しの動きが見られましたが、ロシア・ウクライナ問題に起因する資源価格の高騰は収まらず、円安進行による物価高は消費者マインドを悪化させており、依然として厳しい状況が続いております。
当業界において、テレビ関連機器販売の市場に関しましては、物価高に伴う買い控えの影響もあり薄型テレビの出荷台数は低調に推移しております。また、新設住宅着工戸数に関しましても、資材高を背景として特に持家の着工数が減少しており、先行きが非常に不透明な状況が続いております。
通信関連機器につきましても、官需向けが機器入替の端境期にあり、本格的な需要の回復には更に時間を要するものと思われます。
このような状況の中、当社グループは、環境に左右されない経営基盤作りに取り組み、収益性に重点をおいた企業活動の推進や、新製品の開発、コストダウンへの継続的取組、業務の効率化による経費の適正な運営等に努めてまいりました。
しかしながら、放送関連機器については家庭用機器の販売が振るわず、通信用アンテナにつきましては民需向けに関して顧客の事業計画の遅延が解消しつつあるものの、官需向けに関しては反動減の解消には至りませんでした。またソリューション事業についても低調に推移したことから、当連結会計年度の売上高は12,070百万円(前連結会計年度比4.2%減)となりました。
利益面につきましては、売上減による影響の他、仕入原価の高騰等により、営業損失は1,932百万円(前連結会計年度は1,299百万円の営業損失)、経常損失は1,933百万円(前連結会計年度は1,225百万円の経常損失)となりました。また、投資有価証券の売却益の計上等により、親会社株主に帰属する当期純損失は1,861百万円(前連結会計年度は1,766百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(送受信用製品販売事業)
放送関連機器の売上高につきましては、家電量販店向け家庭用機器に関して物価高騰による買い控えの影響があったこと等から前連結会計年度比減となりました。
通信用アンテナの売上高につきましては、通信事業者向け基地局アンテナや通信モジュール用アンテナにおいて顧客の事業計画の遅延に改善がみられたものの、官需向けデジタル無線用アンテナはコロナ禍による機器交換の期限延長等により需要の回復には至らず前連結会計年度並みとなりました。
この結果、売上高は10,195百万円(前連結会計年度比4.2%減)、営業損失は825百万円(前連結会計年度は107百万円の営業損失)となりました。
(ソリューション事業)
前期の大型案件の反動減に加え、資材不足に伴う工事の延伸や中規模案件の獲得が思わしくありませんでしたが、効率化・省力化に努めたこともあり、売上高は1,875百万円(前連結会計年度比4.2%減)、営業利益は263百万円(前連結会計年度比31.2%増)となりました。
財政状態につきましては、まず、当連結会計年度末の流動資産は、15,427百万円(前連結会計年度末比8.9%減)となりました。これは、商品及び製品や原材料及び貯蔵品の増加と、現金及び預金や受取手形、売掛金及び契約資産の減少等によるものであります。
固定資産は、3,934百万円(同17.4%減)となりました。これは、投資有価証券の減少等によるものであります。
当連結会計年度末の流動負債は、3,271百万円(前連結会計年度末比0.4%増)となりました。これは、支払手形及び買掛金や短期借入金の増加と、賞与引当金の減少等によるものであります。
固定負債は、1,331百万円(同8.9%減)となりました。これは、長期未払金の減少等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産の合計は、14,758百万円(前連結会計年度末比13.0%減)となりました。
この結果、自己資本比率は76.2%となりました。
②キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は6,817百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,477百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、減少した資金は2,407百万円(前連結会計年度は365百万円の減少)となりました。これは主に、売上債権の減少や仕入債務の増加及び減価償却費の計上による増加と、税金等調整前当期純損失の計上や棚卸資産の増加による減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、増加した資金は137百万円(前連結会計年度は398百万円の減少)となりました。これは主に、投資有価証券の売却収入による増加と、有形固定資産の取得による支出による減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は190百万円(前連結会計年度は301百万円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の借入収入による増加と、配当金の支払による減少によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
送受信用製品販売事業(百万円)8,78299.0
ソリューション事業(百万円)1,87595.8
合計(百万円)10,65898.4

(注) 金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
送受信用製品販売事業4,678103.3331250.1
ソリューション事業1,52574.367565.2
合計6,20494.31,00686.2

(注) 当連結会計年度において、送受信用製品販売事業における受注残高は著しく増加しております。
これは、携帯事業者向け基地局アンテナの受注金額が増加したこと等によるものであります。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
送受信用製品販売事業(百万円)10,19595.8
ソリューション事業(百万円)1,87595.8
合計(百万円)12,07095.8

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
株式会社JCOM1,2519.91,40711.7

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、売上高につきましては、12,070百万円(前連結会計年度比4.2%減)となりました。これは主に、前連結会計年度に引き続き事業環境が厳しい状況となった結果、送受信用製品販売事業ではテレビ用アンテナや関連機器の販売が依然として低調に推移したことや官需向けデジタル無線用アンテナの需要が端境期にあり伸び悩んだこと、また、ソリューション事業では主力である共聴工事の市況回復に立ち遅れがあったこと等によるものであります。
海外売上高は1,497百万円(同61.6%増)で、連結売上高に占める海外売上高の割合は12.4%と前連結会計年度より増加しております。これは主に、国内売上が減少傾向にある一方で、海外子会社の現地顧客向け売上が増加傾向であったためであります。
販売費及び一般管理費は5,021百万円(前連結会計年度比4.2%減)となりました。これは主に、生産・研究開発設備等の購入に伴い減価償却費が増加した一方で、業績悪化に伴う役員報酬・人件費の削減や消耗品費等の抑制を行ったことによるものであります。
この結果、営業損失は1,932百万円(前連結会計年度は1,299百万円の営業損失)となりました。
当連結会計年度の営業外損益は、1百万円の損失となりました。これは主に、為替差損を32百万円計上したこと(前連結会計年度は為替差益の30百万円)によるものであります。
この結果、経常損失は1,933百万円(前連結会計年度は1,225百万円の経常損失)となりました。
当連結会計年度の特別損益は、100百万円の利益となりました。これは主に、投資有価証券売却益102百万円を計上したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は1,833百万円(前連結会計年度は1,566百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。
税金費用(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)は27百万円になりました。
これにより、親会社株主に帰属する当期純損失は1,861百万円(前連結会計年度は1,766百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
この結果、1株当たり当期純損失は178円58銭となりました。
なお、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、新型コロナウイルス感染症の影響といたしましては、送受信用製品販売事業、ソリューション事業ともに、景気減速による売上減少が見込まれます。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。当社グループといたしましては、企業活動の継続に特段の支障はないものと考えております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、まず、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2,477百万円減少し、6,817百万円となりました。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第一部 企業情報 第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
資金の源泉につきましては、主に、当連結会計年度末の現金及び現金同等物と営業活動により得られる資金であります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、下記のとおりの推移であります。
第66期第67期第68期第69期第70期
売上高(百万円)16,69216,53515,29712,60612,070
営業利益又は営業損失(△)(百万円)1,135784284△1,299△1,932
売上高営業利益率(%)6.84.71.9--
ROA(純利益/総資本)(%)4.52.1---
ROE(純利益/自己資本)(%)5.62.6---

当社グループを取り巻く事業環境といたしましては、新設住宅着工戸数は回復基調にあるものの、米中貿易摩擦やロシア・ウクライナ情勢等の影響は持続しており、テレビ放送関連機器や通信用アンテナの需要は弱含みで推移したことや、共聴工事の市況も本格化には至らず、また新型コロナウイルス感染症の影響からも完全には脱していないこと等から、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ減少いたしました。
また、売上高の減少や原価高に伴う売上総利益の減少が大きく、販売費及び一般管理費の抑制に努めたものの、当連結会計年度は営業損失となりました。
現状では、獲得競争・価格競争の激化が継続し、依然として非常に厳しい情勢であるものと考えられます。
なお、第69期及び第70期は営業損失を計上したことから、売上高営業利益率につきましては記載しておりません。
また、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことから、ROA・ROEにつきましては記載しておりません。
なお、PBRにつきましては、現状を鑑み、組織再編や構造改革を進め、まずは黒字化にむけて業容の回復を目指して改善に尽力する所存であります。
(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容)
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
なお、財政状態につきましては、当社グループでは、セグメントごとではなく、当社グループ一体としての資金管理を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しております。
a.繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異につきまして計上しております。また、当該課税所得を見積るにあたり、前提条件とした条件や仮定に変更が生じ、これが減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
b.固定資産の減損損失
固定資産の減損会計の適用に際しては、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来、この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が会計上の見積りに及ぼす影響を含め、詳細につきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
c.貸倒引当金
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
d.投資の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する有価証券を保有しておりますが、これら株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の確定が困難な非公開会社の株式を含んでおります。当社グループは、投資価値が下落し回復可能性がないと判断した場合、これら有価証券の減損を実施しております。公開会社の株式は、期末日の株価が取得額の50%以上下落した場合又は6四半期間続けて30%以上下落しかつ回復可能性がないと判断された場合、また非公開会社の株式は、原則として当該会社の純資産額が取得額の50%以上下落した場合に、それぞれ回復可能性がないと判断し減損処理を行うこととしております。
e.退職給付債務
従業員に対する退職給付債務は、保険数理計算に基づき決定しております。退職給付債務計算は、その前提として使用している割引率、報酬水準の増加率や従業員の平均残存勤務期間に影響されます。当社グループは、割引率を主として日本国債の金利により決定している他、報酬水準の増加率及び従業員の平均残存勤務期間については、これまでの実績値に基づき決定しております。