有価証券報告書-第71期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/28 10:21
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【項目】
145項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、社会経済活動の正常化による個人消費等が進み、景気は緩やかな回復による前向きな動きが見られましたが、円安の進行や資源・原材料価格の高騰に起因する物価の上昇、国際情勢の緊迫化等、依然として先行き不透明な状況は継続しております。
当業界において、テレビ関連機器販売の市場に関しましては、テレビ需要の落ち込みは長期化しており、薄型テレビの出荷台数は低迷しております。また、新設住宅着工戸数に関しましても、建設コストの上昇等を背景に住宅取得マインドが低下する中、弱含みで推移しております。
通信関連機器につきましては、官需向け機器の更新需要が期を通して堅調に推移しました。
このような状況の中、当社グループは、環境に左右されない強固な経営基盤作りに取り組み、営業力の強化等の収益性に重点を置いた企業活動の推進や、市場のニーズを捉えた新製品・ソリューションの開発、聖域なきコストダウンへの継続的取組、販売拠点や生産拠点の統廃合等による集約化と業務の効率化による経費の適正な運営等に努めてまいりました。
しかしながら、通信用アンテナにつきましては官需向けデジタル無線機器の伸長が貢献しましたが、放送関連機器に関しては需要の落ち込みからの脱却には至らず、ソリューション事業につきましても第3四半期以降低調であったこと等から、当連結会計年度の売上高は11,386百万円(前連結会計年度比5.7%減)となりました。
利益面につきましては、需要の低迷や為替の影響による仕入原価の高騰等により、営業損失は2,081百万円(前連結会計年度は1,932百万円の営業損失)、経常損失は1,918百万円(前連結会計年度は1,933百万円の経常損失)となりました。また、関係会社整理損の計上等により、親会社株主に帰属する当期純損失は2,906百万円(前連結会計年度は1,861百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(送受信用製品販売事業)
放送関連機器の売上高につきましては、家電量販店向け家庭用機器に関しては、経済活動の正常化に伴い旅行や外食といった「外向き」の消費が増えたことや長期化する物価高により家電の買い控えが続いていること等の影響が大きく、またCATV事業者向け機器に関しても企業間の競争はますます激化していること等から、前連結会計年度比減となりました。
通信用アンテナの売上高につきましては、官需向けデジタル無線機器の更新需要が好調に推移したこと等から、前連結会計年度比増となりました。
この結果、売上高は9,741百万円(前連結会計年度比4.5%減)、営業損失は815百万円(前連結会計年度は825百万円の営業損失)となりました。
(ソリューション事業)
第2四半期までは大規模都市再開発や無線通信工事の大型案件等が貢献しましたが、第3四半期以降は案件受注が伸び悩んだことから、売上高は1,645百万円(前連結会計年度比12.3%減)、営業利益は160百万円(前連結会計年度比39.1%減)となりました。
財政状態につきましては、まず、当連結会計年度末の流動資産は、14,317百万円(前連結会計年度末比7.2%減)となりました。これは、現金及び預金や受取手形、商品及び製品並びに原材料及び貯蔵品の減少等によるものであります。
固定資産は、3,610百万円(同8.2%減)となりました。これは、建物及び構築物、機械装置及び運搬具や工具、器具及び備品の減価償却の計上等によるものであります。
当連結会計年度末の流動負債は、4,849百万円(前連結会計年度末比48.3%増)となりました。これは、関係会社整理損失引当金の増加と、支払手形及び買掛金の減少等によるものであります。
固定負債は、1,138百万円(同14.5%減)となりました。これは、退職給付に係る負債の減少等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産の合計は、11,939百万円(前連結会計年度末比19.1%減)となりました。
この結果、自己資本比率は66.6%となりました。
②キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は6,556百万円となり、前連結会計年度末に比べ261百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、減少した資金は918百万円(前連結会計年度は2,407百万円の減少)となりました。これは主に減価償却費や関係会社整理損の計上や棚卸資産の減少による増加と、税金等調整前当期純損失の計上や仕入債務の減少による減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、増加した資金は781百万円(前連結会計年度は137百万円の増加)となりました。これは主に、有価証券や有形固定資産の売却収入による増加によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は110百万円(前連結会計年度は190百万円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の借入収入による増加と、配当金の支払による減少によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前年同期比(%)
送受信用製品販売事業(百万円)7,86789.6
ソリューション事業(百万円)1,66488.7
合計(百万円)9,53189.4

(注) 金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
送受信用製品販売事業4,921105.223169.7
ソリューション事業1,44794.845767.8
合計6,368102.668968.5

c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
前年同期比(%)
送受信用製品販売事業(百万円)9,74195.5
ソリューション事業(百万円)1,64587.7
合計(百万円)11,38694.3

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
株式会社JCOM1,40711.79047.9

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、売上高につきましては、11,386百万円(前連結会計年度比5.7%減)となりました。これは主に、送受信用製品販売事業では、官需向けデジタル無線機器は更新需要が好調に推移した一方、テレビ関連機器に関しては厳しい事業環境が継続していることや、ソリューション事業においても第3四半期以降は案件受注が伸び悩んだこと等によるものであります。
海外売上高は1,802百万円(同20.4%増)で、連結売上高に占める海外売上高の割合は15.8%と前連結会計年度より増加しております。これは主に、国内売上が減少傾向にある一方で、海外子会社の現地顧客向け売上が増加傾向であったためであります。
販売費及び一般管理費は5,141百万円(前連結会計年度比2.3%増)となりました。これは主に、有形固定資産や子会社持分の譲渡に伴い支払手数料が増加したことによるものであります。
この結果、営業損失は2,081百万円(前連結会計年度は1,932百万円の営業損失)となりました。
当連結会計年度の営業外損益は、162百万円の利益となりました。これは主に、為替差益を134百万円計上したこと(前連結会計年度は32百万円の為替差損)によるものであります。
この結果、経常損失は1,918百万円(前連結会計年度は1,933百万円の経常損失)となりました。
当連結会計年度の特別損益は、992百万円の損失となりました。これは主に、関係会社整理損957百万円を計上したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は2,908百万円(前連結会計年度は1,833百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。
税金費用(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)は△1百万円になりました。
これにより、親会社株主に帰属する当期純損失は2,906百万円(前連結会計年度は1,861百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
この結果、1株当たり当期純損失は278円30銭となりました。
なお、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、新型コロナウイルス感染症の影響といたしましては、経済活動は正常化の動きを見せておりますが、収束時期の正確な予測は困難であり、先行きは不透明な状況にあるものとみております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。当社グループといたしましては、企業活動の継続に特段の支障はないものと考えております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、まず、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ261百万円減少し、6,556百万円となりました。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第一部 企業情報 第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
資金の源泉につきましては、主に、当連結会計年度末の現金及び現金同等物と営業活動により得られる資金であります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、下記のとおりの推移であります。
第67期第68期第69期第70期第71期
売上高(百万円)16,53515,29712,60612,07011,386
営業利益又は営業損失(△)(百万円)784284△1,299△1,932△2,081
売上高営業利益率(%)4.71.9---
ROA(純利益/総資本)(%)2.1----
ROE(純利益/自己資本)(%)2.6----

当社グループを取り巻く事業環境といたしましては、官需向けデジタル無線機器の需要は期を通して堅調でありましたが、テレビ関連機器の需要の落ち込みは長期化しており、ソリューション事業の市況も建設コストの上昇等を背景に弱含んでおり、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ減少いたしました。
また、売上高の減少や原価高に伴う売上総利益の減少が大きく、販売費及び一般管理費の抑制に努めたものの、当連結会計年度は営業損失となりました。
現状では、獲得競争・価格競争の激化が継続し、依然として非常に厳しい情勢であるものと考えられます。
なお、第69期、第70期及び第71期は営業損失を計上したことから、売上高営業利益率につきましては記載しておりません。
また、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことから、ROA・ROEにつきましては記載しておりません。
なお、PBRにつきましては、現状を鑑み、組織再編や構造改革を進め、引き続き黒字化にむけて業容の回復を目指して改善に尽力する所存であります。
(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容)
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
なお、財政状態につきましては、当社グループでは、セグメントごとではなく、当社グループ一体としての資金管理を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しております。
a.繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異につきまして計上しております。また、当該課税所得を見積るにあたり、前提条件とした条件や仮定に変更が生じ、これが減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
b.固定資産の減損損失
固定資産の減損会計の適用に際しては、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来、この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が会計上の見積りに及ぼす影響を含め、詳細につきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
c.貸倒引当金
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
d.投資の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する有価証券を保有しておりますが、これら株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の確定が困難な非公開会社の株式を含んでおります。当社グループは、投資価値が下落し回復可能性がないと判断した場合、これら有価証券の減損を実施しております。公開会社の株式は、期末日の株価が取得額の50%以上下落した場合又は6四半期間続けて30%以上下落しかつ回復可能性がないと判断された場合、また非公開会社の株式は、原則として当該会社の純資産額が取得額の50%以上下落した場合に、それぞれ回復可能性がないと判断し減損処理を行うこととしております。
e.退職給付債務
従業員に対する退職給付債務は、保険数理計算に基づき決定しております。退職給付債務計算は、その前提として使用している割引率、報酬水準の増加率や従業員の平均残存勤務期間に影響されます。当社グループは、割引率を主として日本国債の金利により決定している他、報酬水準の増加率及び従業員の平均残存勤務期間については、これまでの実績値に基づき決定しております。