有価証券報告書-第72期(2024/04/01-2025/03/31)

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2025/06/26 11:17
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文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善する中で、緩やかに回復しております。一方で、長期化する原材料価格やエネルギーコストの高騰、物価上昇に伴う個人消費の停滞や米国の政策動向による影響等が懸念され、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当業界において、テレビ関連機器販売の市場に関しましては、薄型テレビは第3四半期までは個人所得の増加や五輪需要も寄与し大型製品が好調でありましたが、物価高による買い控えの影響もあり前年比で減少傾向に転じました。新設住宅着工戸数に関しましても、2025年4月の法改正を前に駆け込み着工が増加しましたが、建設コストの上昇が住宅取得マインドを押し下げる傾向に大きな変化はなく、期を通じて概ね弱含みで推移しました。
通信関連機器につきましては、官需向け機器が好調であり、民需向けも安定して推移しております。
このような状況の中、当社グループは、環境に左右されない強固な経営基盤作りに取り組み、営業力の強化等の収益性に重点を置いた企業活動の推進や、市場のニーズを捉えた新製品・ソリューションの開発、聖域なきコストダウンへの継続的取組、販売拠点や生産拠点の統廃合等による集約化と業務の効率化による経費の適正な運営等に努めてまいりました。
この結果、放送関連機器に関してはCATV事業者向け機器の需要低迷が継続しており、ソリューション事業につきましても弱含みで推移した反面、通信用アンテナにつきましては官需向けが前連結会計年度比で大きく伸長いたしました。しかしながら、2024年4月に連結子会社2社の持分を全部譲渡したため、当連結会計年度より両社を連結の範囲から除外した影響が大きく、当連結会計年度の売上高は10,691百万円(前連結会計年度比6.1%減)となりました。
利益面につきましては、機器更新需要の確実な獲得に向けた活動や拠点集約に伴う人員配置の見直しによる経費の削減及び経営統合の可能性も踏まえた棚卸資産の最適化等の抜本的な構造改革に全社一丸となり取り組んでまいりましたことや、通信用アンテナの需要が期を通じて貢献したこともあり、営業利益は490百万円(前連結会計年度は2,081百万円の営業損失)、経常利益は525百万円(前連結会計年度は1,918百万円の経常損失)となり、前連結会計年度比で大きく回復いたしました。また、生産・開発機能集約の一環として工場の土地・建物を売却したことにより固定資産売却益を特別利益として計上いたしました。反面、上記の構造改革の費用として棚卸資産の廃棄損、従業員・工場機能の集約に伴う費用、固定資産の売却損及び処分損を特別損失として計上いたしました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,619百万円(前連結会計年度は2,906百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(送受信用製品販売事業)
放送関連機器の売上高につきましては、家電量販店向け家庭用機器に関しては弱含みながらも堅調さを維持しましたが、CATV事業者向け機器は需要の落ち込みからの回復には至らず前連結会計年度比減となりました。
通信用アンテナの売上高につきましては、減災・防災分野での補助政策を背景に官需向けデジタル無線機器の切り替え需要が高まり、民需につきましても通信モジュール用アンテナが好調に推移しましたが、上記の子会社持分譲渡による連結除外の影響等もあり、前連結会計年度比減となりました。
この結果、売上高は9,061百万円(前連結会計年度比7.0%減)、営業利益は1,278百万円(前連結会計年度は815百万円の営業損失)となりました。
(ソリューション事業)
ビル内共聴改修工事は堅調でしたが、大型案件の獲得が難航したこと等もあり、売上高は1,630百万円(前連結会計年度比0.9%減)となりました。一方で案件ごとの利益率が改善したため営業利益は238百万円(同48.7%増)となりました。
財政状態につきましては、まず、当連結会計年度末の流動資産は、16,340百万円(前連結会計年度末比14.1%増)となりました。これは、工場の土地・建物の売却により現金及び預金が増加したことや、上記の子会社持分譲渡による連結除外の影響等のため、商品及び製品、原材料及び貯蔵品が減少したこと等によるものであります。
固定資産は、2,201百万円(同39.0%減)となりました。これは工場の土地・建物の売却や子会社持分譲渡による連結除外の影響等により有形固定資産が減少したことや、保険積立金の解約により投資その他の資産が減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の流動負債は、2,049百万円(前連結会計年度末比57.7%減)となりました。これは、主として工場の土地・建物の売却が完了したことで仮受金が減少したことや、上記の子会社持分譲渡による連結除外の影響等のため、支払手形及び買掛金、関係会社整理損失引当金が減少したこと等によるものであります。
固定負債は、942百万円(同17.2%減)となりました。これは、退職給付に係る負債の減少等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産の合計は、15,550百万円(前連結会計年度末比30.2%増)となりました。
この結果、自己資本比率は83.9%となりました。
②キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は10,144百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,588百万円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は346百万円(前連結会計年度は918百万円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上や棚卸資産の減少による増加と、固定資産売却益の計上や売上債権の増加による減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、増加した資金は3,245百万円(前連結会計年度は781百万円の増加)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入と保険積立金の解約による収入による増加によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は4百万円(前連結会計年度は110百万円の減少)となりました。これは主に、リース債務の返済による支出による減少によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
前年同期比(%)
送受信用製品販売事業(百万円)7,57096.2
ソリューション事業(百万円)1,64398.8
合計(百万円)9,21496.7

(注) 金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
送受信用製品販売事業4,18685.1177.8
ソリューション事業1,736120.0550120.2
合計5,92393.056882.5

(注) 当連結会計年度において、送受信用製品販売事業における受注残高は著しく減少しております。
これは、主に携帯事業者向け基地局アンテナの受注金額が減少したこと等によるものであります。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
前年同期比(%)
送受信用製品販売事業(百万円)9,06193.0
ソリューション事業(百万円)1,63099.1
合計(百万円)10,69193.9

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、売上高につきましては、10,691百万円(前連結会計年度比6.1%減)となりました。送受信用製品販売事業では、通信用アンテナにつきましては官需向けが前連結会計年度比で大きく伸長した一方、放送関連機器に関しましてはCATV事業者向け機器の需要低迷が継続しており、ソリューション事業におきましても弱含みで推移しております。また、2024年4月に連結子会社2社の持分を全部譲渡したため、当連結会計年度より両社を連結の範囲から除外した影響も大きく、前連結会計年度比減となっております。
海外売上高は15百万円(同99.2%減)で、連結売上高に占める海外売上高の割合は0.1%と前連結会計年度より減少しております。これは主に連結子会社2社を譲渡したためであります。
販売費及び一般管理費は3,495百万円(前連結会計年度比32.0%減)となりました。これは主に、2024年4月に連結子会社2社を譲渡したことによるものであります。
この結果、営業利益は490百万円(前連結会計年度は2,081百万円の営業損失)となりました。
当連結会計年度の営業外損益は、35百万円の利益(前連結会計年度は162百万円の利益)となりました。これは主に、受取配当金を12百万円計上したこと(前連結会計年度は12百万円)や、為替差益を5百万円計上したこと(前連結会計年度は134百万円の為替差益)等によるものであります。
この結果、経常利益は525百万円(前連結会計年度は1,918百万円の経常損失)となりました。
当連結会計年度の特別損益は、3,235百万円の利益となりました。これは主に、固定資産売却益3,671百万円を計上したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は3,761百万円(前連結会計年度は2,908百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。
税金費用(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)は142百万円になりました。
これにより、親会社株主に帰属する当期純利益は3,619百万円(前連結会計年度は2,906百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
この結果、1株当たり当期利益は343円91銭となりました。
なお、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。当社グループといたしましては、企業活動の継続に特段の支障はないものと考えております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、まず、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ3,588百万円増加し、10,144百万円となりました。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第一部 企業情報 第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
資金の源泉につきましては、主に、当連結会計年度末の現金及び現金同等物と営業活動により得られる資金であります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、下記のとおりの推移であります。
第68期第69期第70期第71期第72期
売上高(百万円)15,29712,60612,07011,38610,691
営業利益又は営業損失(△)(百万円)284△1,299△1,932△2,081490
売上高営業利益率(%)1.9---4.6
ROA(純利益/総資産)(%)----19.8
ROE(純利益/自己資本)(%)----26.3

当社グループを取り巻く事業環境といたしましては、通信用アンテナに関しましては、官需向け機器が好調でありましたが、テレビ関連機器販売の市場に関しましては物価高による買い控えの影響もあり、ソリューション事業の市況も建設コストの上昇が住宅取得マインドを押し下げる傾向に大きな変化はなく期を通じて概ね弱含みで推移しました。また、連結子会社2社を譲渡した影響も大きく、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ減少いたしました。
しかしながら、機器更新需要の確実な獲得に向けた活動や拠点集約に伴う人員配置の見直しによる経費の削減及び棚卸資産の最適化等の構造改革に全社一丸となり取り組んでまいりましたことや、通信用アンテナの需要が期を通じて貢献したこともあり、当連結会計年度は営業黒字を達成することができました。
一方で、現状では、獲得競争・価格競争の激化が継続し、依然として非常に厳しい情勢であるものと考えられます。
なお、第69期、第70期及び第71期は営業損失を計上したことから、売上高営業利益率につきましては記載しておりません。
また、第68期、第69期、第70期及び第71期は親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことから、ROA・ROEにつきましては記載しておりません。
なお、PBRにつきましては組織再編や構造改革を進め、第72期の営業黒字達成に引き続き継続して収益を上げられる体制を構築することを最優先課題として改善に努めてまいります。
(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容)
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
なお、財政状態につきましては、当社グループでは、セグメントごとではなく、当社グループ一体としての資金管理を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しております。
a.繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異につきまして計上しております。また、当該課税所得を見積るにあたり、前提条件とした条件や仮定に変更が生じ、これが減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
b.固定資産の減損損失
固定資産の減損会計の適用に際しては、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来、この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。
c.貸倒引当金
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
d.投資の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する有価証券を保有しておりますが、これら株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の確定が困難な非公開会社の株式を含んでおります。当社グループは、投資価値が下落し回復可能性がないと判断した場合、これら有価証券の減損を実施しております。公開会社の株式は、期末日の株価が取得額の50%以上下落した場合又は6四半期間続けて30%以上下落しかつ回復可能性がないと判断された場合、また非公開会社の株式は、原則として当該会社の純資産額が取得額の50%以上下落した場合に、それぞれ回復可能性がないと判断し減損処理を行うこととしております。
e.退職給付債務
従業員に対する退職給付債務は、保険数理計算に基づき決定しております。退職給付債務計算は、その前提として使用している割引率、報酬水準の増加率や従業員の平均残存勤務期間に影響されます。当社グループは、割引率を主として日本国債の金利により決定している他、報酬水準の増加率及び従業員の平均残存勤務期間については、これまでの実績値に基づき決定しております。