有価証券報告書-第81期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/26 12:14
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度において、当社グループは「ドラゴンボール」シリーズ、「ワンピース」、「プリキュア」シリーズといった主力作品による収益の安定・拡大を図るとともに、事業においては国内外でのアプリゲーム等ゲーム化権の販売に加え、中国を中心とした映像配信権の販売に引き続き注力しました。
この結果、当連結会計年度における売上高は、国内外でアプリゲーム化権や映像配信権の販売が好調に推移したことから、557億1百万円(前連結会計年度比21.1%増)、利益については、収益性の高い版権事業や海外での映像配信権販売事業が大幅増収となったこと等から、営業利益は157億41百万円(同39.6%増)、経常利益は162億65百万円(同40.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は113億75百万円(同44.9%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります(セグメント間取引金額を含む)。
なお、セグメント損益は、営業利益及び営業損失ベースの数値であります。
[映像製作・販売事業]
劇場アニメ部門では、2018年3月に「映画プリキュアスーパースターズ!」、5月に「デジモンアドベンチャーtri.第6章」、10月に「映画HUGっと!プリキュア」、12月に「ドラゴンボール超 ブロリー」、2019年3月に「映画プリキュアミラクルユニバース」を公開しました。「ドラゴンボール超 ブロリー」や「プリキュア」シリーズのヒットにより、前連結会計年度と比較して大幅な増収となりました。
テレビアニメ部門では、「ワンピース」、「HUGっと!プリキュア」(2019年2月より「スター☆トゥインクルプリキュア」)、「ゲゲゲの鬼太郎」、「爆釣バーハンター」、「おしりたんてい」の5作品を放映しました。前連結会計年度に比べ放映本数が減少したことから、減収となりました。
コンテンツ部門では、前年同期にあった「美少女戦士セーラームーンCrystal」のブルーレイ・DVDの売上に相当するものがなかったことから、大幅な減収となりました。
海外映像部門では、中国向け大口映像配信権の販売本数が増加したことに加え、北米向け映像配信権の販売が好調に稼動したことから、大幅な増収となりました。
その他部門では、国内での映像配信権の販売が好調に稼動したことに加え、「聖闘士星矢: Knights of
the Zodiac」の製作代収入があったこと等から、大幅な増収となりました。
この結果、映像製作・販売事業全体では、売上高は195億31百万円(前連結会計年度比20.4%増)、セグメント利益は利益率の高い海外映像販売事業が好調に推移したこと等から、41億47百万円(同71.2%増)と大幅な増収増益となりました。
[版権事業]
国内版権部門では、アプリゲーム『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』や、『ドラゴンボール レジェンズ』が好調だったことに加え、複数作品で遊技機の大口契約があったことから、前連結会計年度と比較して大幅な増収となりました。
海外版権部門では、アプリゲーム『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』や、『ドラゴンボール ファイターズ』を中心とした家庭用ゲーム、「ドラゴンボール」シリーズの商品化権が欧米で好調に稼動したことに加え、アプリゲーム『ドラゴンボール レジェンズ』の配信が開始されたことから、大幅な増収となりました。
この結果、版権事業全体では、売上高は302億10百万円(前連結会計年度比25.2%増)、セグメント利益は143億60百万円(同25.5%増)と大幅な増収増益となりました。
[商品販売事業]
商品販売部門では、「ドラゴンボール超 ブロリー」の劇場公開に合わせたタイアップ・キャンペーン関連商品の販売が好調だったことに加え、『プリキュアプリティストア』等のショップ事業が好調だったことから、前連結会計年度と比較して増収となりました。
この結果、売上高は51億66百万円(前連結会計年度比8.4%増)、セグメント利益は1億29百万円(同4.8%増)と増収増益となりました。
[その他事業]
その他部門では、採算性を重視した催事イベントやキャラクターショー等を展開しましたが、前連結会計年度にあった「ドラゴンボール超」の催事関連に相当するものがなかったことから、減収となりました。
この結果、売上高は9億70百万円(前連結会計年度比9.1%減)、セグメント損失は42百万円(前連結会計年度は、59百万円のセグメント損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ42億49百万円増加し、262億85百万円となりました。
その要因は以下のとおりであります。
なお、連結貸借対照表に掲記されている現金及び預金勘定344億54百万円との差異は、預入期間3ヶ月超の定期預金82億1百万円等であります。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
営業活動の結果得られた資金は、105億8百万円(前連結会計年度は101億32百万円の獲得)となりました。資金の増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益160億97百万円、仕入債務の増加11億97百万円、資金の減少の主な内訳は、売上債権の増加40億66百万円、たな卸資産の増加15億72百万円、法人税等の支払額39億42百万円であります。なお、減価償却費7億52百万円は、資金流出の発生しない費用であるため、キャッシュ・フロー計算書では資金増の要因となっております。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
投資活動の結果使用した資金は、38億85百万円(前連結会計年度は66億7百万円の使用)となりました。資金の増加の主な内訳は、定期預金の払戻による収入70億39百万円、資金の減少の主な内訳は、定期預金の預入による支出103億4百万円であります。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
財務活動の結果使用した資金は、21億48百万円(前連結会計年度は19億40百万円の使用)となりました。これは、主に配当の支払によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ 受注製作事業実績
当社グループは、映像製作・販売事業において、劇場アニメ作品・テレビアニメ作品の受注製作を行っており、当連結会計年度の製作実績及び受注実績を示すと次のとおりであります。
a.製作実績
区分製作高(百万円)前年同期比(%)
劇場アニメ作品1,947200.0%
テレビアニメ作品4,880104.3%
合計6,828120.8%

(注) 1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. アニメ作品製作について、作業の一部を外注に依存しております。
(主な外注先:㈱ぎゃろっぷ、㈱青二プロダクション、㈱ダンデライオンアニメーションスタジオ)
なお、当連結会計年度における外注費は4,861百万円であります。
b.受注実績
区分本数受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
劇場アニメ作品635319.8%52734.5%
テレビアニメ作品1981,11958.4%1,05773.7%
合計2041,47239.8%1,58553.4%

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
ロ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
映像製作・販売事業19,525120.5
版権事業30,041125.4
商品販売事業5,166108.4
その他事業96890.7
合計55,701121.1

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
㈱バンダイナムコエンターテインメント12,53127.313,01023.4
東映㈱2,9356.43,3876.1

3. 東映グループ(除く東映㈱及び当社の子会社)に対する販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
東映グループ2790.62910.5

4. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、貸倒引当金の計上、退職給付に係る負債の計上、役員退職慰労引当金の計上等について見積り計算を行っております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果が見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前期末比127億32百万円増の884億91百万円となりました。
流動資産については、現金及び預金が59億61百万円、受取手形及び売掛金が39億58百万円、仕掛品が15億80百万円、関係会社短期貸付金が30億円それぞれ増加し、流動資産のその他が1億50百万円減少いたしました。
その結果、流動資産合計は前期末比143億5百万円増の550億15百万円となりました。
固定資産については、長期預金が15億円増加し、関係会社長期貸付金が30億円、有形固定資産のその他が1億69百万円それぞれ減少いたしました。
その結果、固定資産合計は前期末比15億73百万円減の334億76百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末の負債合計は、前期末比35億62百万円増の212億87百万円となりました。
流動負債については、支払手形及び買掛金が10億66百万円、未払法人税等が11億98百万円、流動負債のその他が8億36百万円それぞれ増加いたしました。
その結果、流動負債合計は、前期末比31億26百万円増の188億71百万円となりました。
固定負債については、退職給付に係る負債が4億57百万円増加いたしました。
その結果、固定負債合計は、前期末比4億36百万円増の24億16百万円となりました。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産合計は、前期末比91億69百万円増の672億4百万円となりました。
株主資本については、利益剰余金が前期に係る剰余金の配当により19億78百万円減少し、親会社株主に帰属する当期純利益により113億75百万円増加いたしました。
その結果、株主資本は、前期末比93億97百万円増の652億46百万円となりました。
その他の包括利益累計額については、為替換算調整勘定が円高の影響により2億8百万円減少いたしました。
その結果、その他の包括利益累計額は、前期末比2億27百万円減の19億57百万円となりました。
(b) 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、映像製作・販売事業、版権事業、商品販売事業において増収となったことにより、前期比97億9百万円増の557億1百万円となりました。
各セグメントの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」、海外部門の売上高につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の「セグメント情報等 関連情報」をご参照ください。
(売上原価及び売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前期比44億51百万円増の328億62百万円となりました。
増収に伴い売上原価も増加しましたが、収益性の高い海外映像販売事業や版権事業が大幅な増収となったこと等により、原価率は61.8%から59.0%となりました。
その結果、当連結会計年度の売上総利益は、前期比52億57百万円増の228億38百万円となりました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、新スタジオ完成に伴う不動産取得税等の納付や減価償却費の増加、人員増に伴う人件費の増加等により、前期比7億88百万円増の70億97百万円となりました。
その結果、当連結会計年度の営業利益は、前期比44億69百万円増の157億41百万円となりました。
また、売上高営業利益率は24.5%から28.3%となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度の営業外損益は、持分法投資損益が損失から利益に転じたこと等により、営業外損益の純額では、前期比2億34百万円の増となりました。
その結果、当連結会計年度の経常利益は、前期比47億3百万円増の162億65百万円となりました。
また、売上高経常利益率は25.1%から29.2%となりました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別損益は、投資有価証券売却益と投資有価証券評価損を計上したこと等により、特別損益の純額では、前期比44百万円の減となりました。
その結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前期比46億59百万円増の160億97百万円となりました。
(法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の法人税等合計は、前期比11億31百万円増の47億21百万円となりました。また、税効果会計適用後の法人税等の負担率は29.3%となりました。
その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比35億27百万円増の113億75百万円となりました。
当連結会計年度は、事業内容では、前連結会計年度に引き続き、売上高、利益に占める国内外のアプリゲーム化権、中国向けの大口映像配信権の割合が大きい状況にあります。
また、作品でも、「ドラゴンボール」シリーズ、「ワンピース」の2タイトルの売上高、利益に占める割合が大きい状況が続いております。
特定の事業内容、作品への比重の拡大に加え、当社グループを取り巻くビジネス環境も大きく変化しています。また、製作本数の減少や働き方改革による製作費の増加など、製作部門を取り巻く内的環境も厳しさを増しております。
これらの変化に対応し、中長期での持続的な成長・発展を目指すべく、当社グループは、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)対処すべき課題」に記載した方針に基づき、各種課題に取り組んでいきます。
(c) キャッシュ・フローの分析
(キャッシュ・フローの分析)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローの収入から、投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、66億23百万円(前連結会計年度は35億24百万円)となりました。営業活動によるキャッシュ・フローが増加したことに加え、大泉スタジオの再開発に伴う支出の大半が前連結会計年度で発生したことから、投資活動によるキャッシュ・フローの支出が減少したことが主な要因です。
なお、翌連結会計年度において、重要な資本的支出の予定はございません。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
アニメーションビジネスは、先行投資型ビジネスであり、製作段階で多額の製作資金を投入し、その後、完成した作品の映像著作権をベースに各種事業を展開し、製作資金を回収していくのが基本的なスキームです。作品によって回収に要する期間は様々であり、複数の作品が一定の成績に達しない場合、営業活動から創出される資金が減少することも想定されますが、新規作品の企画製作は、当社グループが成長・発展していくために欠かせないものです。
そのため、当社グループは運転資金、設備投資資金はもとより、新規作品の企画製作費用についても充分な資金流動性を確保し、堅固な財務体質を維持することに努めております。
また、各子会社の余剰資金につきましては、配当金により当社へ集約することを基本に考えておりますが、将来におけるより効率的な資金運用に向けた施策として、キャッシュ・マネジメント・システムにより、一部の海外子会社から資金を集約しております。