有価証券報告書-第83期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 11:33
【資料】
PDFをみる
【項目】
141項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度において、当社グループでは「ドラゴンボール」シリーズ、「ワンピース」、「プリキュア」シリーズといった主力作品群からの安定的な収益の確保・拡大を図るとともに、海外事業に引き続き注力しました。また、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指すため、映像製作・販売事業にも積極的に取組みました。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大による映画興行収入の不振、テレビアニメの新作話放送休止、商品販売店舗の営業自粛、イベント・催事の延期・中止等があり、売上にも大きく影響しました。
この結果、当連結会計年度における売上高は515億95百万円(前連結会計年度比5.9%減)、利益については、営業利益は155億3百万円(同3.7%減)、経常利益は160億40百万円(同2.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は110億67百万円(同3.2%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります(セグメント間取引金額を含む)。
なお、セグメント損益は、営業利益及び営業損失ベースの数値であります。
[映像製作・販売事業]
劇場アニメ部門では、2020年7月に映画「人体のサバイバル!」、8月に「東映まんがまつり」、10月に「映画プリキュアミラクルリープ」、11月に映画「魔女見習いをさがして」、2021年1月に劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」前編、2月に同作品の後編と映画「Tokyo 7th シスターズ -僕らは青空になる-」、3月に「映画ヒーリングっど♥プリキュア」を公開しました。コロナ禍による影響や、前連結会計年度にヒットした劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」の反動減により、大幅な減収となりました。
テレビアニメ部門では、「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」、「ワンピース」、「ヒーリングっど♥プリキュア」(2021年2月より「トロピカル~ジュ!プリキュア」)、「デジモンアドベンチャー:」、「ワールドトリガー」、「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」、「おしりたんてい」の7作品を放映しました。コロナ禍による影響から催事イベント向け映像製作が低調であったことや、前連結会計年度好調に稼働したゲーム向け音声製作の反動減により、減収となりました。
コンテンツ部門では、劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」のブルーレイ・DVDが好調に稼働したことから、増収となりました。
海外映像部門では、サウジアラビア向け劇場作品の納品に加え、北米・アジア向け映像配信権の販売が好調に稼働したことから、大幅な増収となりました。
その他部門では、アプリゲーム『聖闘士星矢 ギャラクシースピリッツ』のサービス終了に加え、前連結会計年度に好調に稼働した「ワンピース」の映像配信権販売の反動減により、大幅な減収となりました。
コロナ禍による影響を受けた一方で、収益性の高い海外映像の売上が増加したことにより、当該事業の売上高は197億66百万円(前連結会計年度比0.8%減)、セグメント利益は47億98百万円(同5.8%増)と減収増益となりました。
[版権事業]
国内版権部門では、「ドラゴンボール」シリーズのゲーム化権販売が、好調だった前連結会計年度の勢いには至らなかったことや、前連結会計年度の劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」の公開に向けて好調に稼動したタイアップ・キャンペーン向け許諾の反動減等により、大幅な減収となりました。
海外版権部門では、欧米で「ドラゴンボール」シリーズ、アジアで『スラムダンク』等、アプリゲームが好調に稼動したことにより、増収となりました。
以上により、当該事業の売上高は289億97百万円(前連結会計年度比2.5%減)、セグメント利益は142億57百万円(同1.7%減)と減収減益となりました。
[商品販売事業]
商品販売部門では、前連結会計年度の劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」の公開に向けて好調に稼働したタイアップ・キャンペーン向けノベルティグッズ等の販売の反動減に加え、コロナ禍の影響で商品販売店舗の営業自粛を行ったこと等から、大幅な減収となりました。
以上により、当該事業の売上高は24億66百万円(前連結会計年度比44.0%減)、セグメント損失は1億83百万円(前連結会計年度は、7百万円のセグメント損失)と大幅な減収減益となりました。
[その他事業]
その他部門では、催事イベントやキャラクターショー等を展開しました。コロナ禍によるイベント・催事の延期・中止等の影響から、大幅な減収となりました。
以上により、当該事業の売上高は4億46百万円(前連結会計年度比51.0%減)、セグメント損失は1億91百万円(前連結会計年度は、26百万円のセグメント損失)と大幅な減収減益となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ56億90百万円増加し、380億85百万円となりました。
その要因は以下のとおりであります。
なお、連結貸借対照表に掲記されている現金及び預金勘定430億41百万円との差異は、預入期間3ヶ月超の定期預金50億円等であります。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
営業活動の結果得られた資金は、80億50百万円(前連結会計年度は105億64百万円の獲得)となりました。資金の増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益159億94百万円、仕入債務の増加15億5百万円、資金の減少の主な内訳は、売上債権の増加22億15百万円、たな卸資産の増加20億72百万円、法人税等の支払額49億54百万円であります。なお、減価償却費6億1百万円は、資金流出の発生しない費用であるため、キャッシュ・フロー計算書では資金増の要因となっております。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
投資活動の結果得られた資金は、2億98百万円(前連結会計年度は11億34百万円の使用)となりました。資金の増加の主な内訳は、貸付金の回収による収入30億13百万円、定期預金の払戻による収入101億29百万円、資金の減少の主な内訳は、貸付けによる支出30億1百万円、定期預金の預入による支出105億50百万円であります。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
財務活動の結果使用した資金は、29億35百万円(前連結会計年度は31億55百万円の使用)となりました。これは、主に配当の支払によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ 受注製作事業実績
当社グループは、映像製作・販売事業において、劇場アニメ作品・テレビアニメ作品の受注製作を行っており、当連結会計年度の製作実績及び受注実績を示すと次のとおりであります。
a.製作実績
区分製作高(百万円)前年同期比(%)
劇場アニメ作品2,609111.1
テレビアニメ作品4,638113.1
合計7,247112.4

(注) 1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2. アニメ作品製作について、作業の一部を外注に依存しております。
(主な外注先:㈱TENH ANIMTATION MAGIC、㈱青二プロダクション、㈱ダンデライオンアニメーションスタジオ)
なお、当連結会計年度における外注費は6,038百万円であります。
b.受注実績
区分本数受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
劇場アニメ作品220525.77012.8
テレビアニメ作品19098728.92,51478.4
合計1921,19228.32,58468.9

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
ロ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
映像製作・販売事業19,76299.2
版権事業28,92097.8
商品販売事業2,46556.0
その他事業44649.0
合計51,59594.1

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
㈱バンダイナムコエンターテインメント13,69725.015,78930.6
東映㈱2,5424.61,7713.4

3.東映グループ(除く東映㈱及び当社の子会社)に対する販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
東映グループ2850.52330.5

4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前期末比114億58百万円増の1,054億77百万円となりました。
流動資産については、現金及び預金が30億57百万円、受取手形及び売掛金が21億67百万円、仕掛品が20億93百万円、流動資産のその他が3億72百万円それぞれ増加し、関係会社短期貸付金が29億99百万円減少いたしました。
その結果、流動資産合計は前期末比47億53百万円増の648億34百万円となりました。
固定資産については、投資有価証券が14億47百万円、関係会社長期貸付金が29億94百万円、長期預金が30億円それぞれ増加し、建物及び構築物(純額)が2億21百万円、有形固定資産のその他(純額)が1億31百万円、投資その他の資産のその他が4億49百万円それぞれ減少いたしました。
その結果、固定資産合計は前期末比67億5百万円増の406億43百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末の負債合計は、前期末比10億30百万円増の203億56百万円となりました。
流動負債については、支払手形及び買掛金が13億52百万円増加し、流動負債のその他が4億81百万円減少いたしました。
その結果、流動負債合計は、前期末比9億21百万円増の176億23百万円となりました。
固定負債については、固定負債のその他が50百万円増加いたしました。
その結果、固定負債合計は、前期末比1億8百万円増の27億33百万円となりました。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産合計は、前期末比104億28百万円増の851億20百万円となりました。
株主資本については、利益剰余金が前期に係る剰余金の配当により28億64百万円減少し、親会社株主に帰属する当期純利益により110億67百万円増加いたしました。
その結果、株主資本は、前期末比82億24百万円増の818億94百万円となりました。
その他の包括利益累計額については、その他有価証券評価差額金が19億28百万円、為替換算調整勘定が2億71百万円それぞれ増加いたしました。
その結果、その他の包括利益累計額は、前期末比22億3百万円増の32億26百万円となりました。
(b) 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、すべてのセグメントで減収となったことにより、前期比32億23百万円減の515億95百万円となりました。
各セグメントの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」、海外部門の売上高につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の「セグメント情報等 関連情報」をご参照ください。
(売上原価及び売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前期比27億2百万円減の286億55百万円となりました。
減収に伴い売上原価も減少しましたが、収益性の高い海外での映像販売事業や商品化権販売事業が増収となったこと等により、原価率は57.2%から55.5%となりました。
その結果、当連結会計年度の売上総利益は、前期比5億21百万円減の229億39百万円となりました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、劇場アニメ作品公開に係る広告宣伝費の増加や、アーカイブ資産保全に係る業務委託費の増加等により、前期比69百万円増の74億36百万円となりました。
その結果、当連結会計年度の営業利益は、前期比5億90百万円減の155億3百万円となりました。
また、売上高営業利益率は29.4%から30.0%となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度の営業外損益は、投資事業組合運用損及び匿名組合投資損失の計上があった一方で、為替差損益が好転したこと等により、営業外損益の純額では、前期比1億75百万円の増となりました。
その結果、当連結会計年度の経常利益は、前期比4億15百万円減の160億40百万円となりました。
また、売上高経常利益率は30.0%から31.1%となりました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別損益は、投資有価証券評価損が増加したこと等により、特別損益の純額では、前期比16百万円の減となりました。
その結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前期比4億32百万円減の159億94百万円となりました。
(法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の法人税等合計は、前期比62百万円減の49億26百万円となりました。また、税効果会計適用後の法人税等の負担率は30.8%となりました。
その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比3億69百万円減の110億67百万円となりました。
当連結会計年度は、事業内容では、前連結会計年度から引き続いて、売上高、利益に占める国内外のアプリゲーム化権、中国向けの大口映像配信権の割合が大きい状況にあります。
また、作品でも、「ドラゴンボール」シリーズ、「ワンピース」の2タイトルの売上高、利益に占める割合が大きな状況も続いております。
特定の事業内容、作品への比重の拡大に加え、当社グループを取り巻く事業環境も大きく変化しています。
製作現場においては「働き方改革」推進での残業時間削減や労働生産性の再検討、CG・デジタル作画をはじめとしたアニメーション製作技術の急速な進化への対応等、さまざまな課題が山積するなか、人気作品・コンテンツの開発競争は更に激化しています。
また、ビジネス面では、コンテンツのデジタル化が進展する中、スマートデバイスの普及による映像配信やアプリゲーム市場の拡大等、今後とも、アニメーションを収益化する機会は、世界的に拡大すると予想されています。
これらの変化に対応し、中長期での持続的な成長・発展を目指すべく、当社グループは、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)対処すべき課題」に記載した方針に基づき、各種課題に取組んでいきます。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの分析)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローの収入から、投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは83億48百万円(前連結会計年度は94億30百万円)となりました。投資有価証券の取得による支出が減少し、投資活動によるキャッシュ・フローが支出から収入へ転じた一方、営業活動によるキャッシュ・フローが減少したことが主な要因です。
なお、翌連結会計年度において、重要な資本的支出の予定はございません。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
アニメーションビジネスは、先行投資型ビジネスであり、製作段階で、多額の製作資金を投入し、その後、完成した作品の映像著作権をベースに、各種事業を展開し、製作資金を回収していくのが基本的なスキームです。作品によって、回収に要する期間はさまざまであり、複数の作品が、一定の成績に達しない場合、営業活動から創出される資金が減少することも想定されますが、新規作品の企画製作は、当社グループが成長・発展していくために欠かせないものです。
そのため、当社グループは、運転資金、設備投資資金はもとより、新規作品の企画製作費用についても、充分な資金流動性を確保し、堅固な財務体質を維持することに努めております。
また、各子会社の余剰資金につきましては、配当金により当社へ集約することを基本に考えておりますが、将来におけるより効率的な資金運用に向けた施策として、キャッシュ・マネジメント・システムにより、一部の海外子会社より資金を集約しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、非上場株式の評価、貸倒引当金の計上、退職給付に係る負債の計上、役員退職慰労引当金の計上、役員株式給付引当金の計上等について見積り計算を行っております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果が見積りと異なる場合があります。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響について、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、2021年6月以降も一定程度の影響が当面継続するものと仮定し、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。