有価証券報告書-第98期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/25 13:40
【資料】
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【項目】
95項目
(1)業績等の概要
①経営環境
当連結会計年度の世界経済を概観しますと、米国は堅調なものの、欧州・中国の景気低迷等により、全体として減速基調となりました。
米国経済は、政府機関一部閉鎖や一時的な消費マインド悪化等があったものの、堅調な雇用・所得環境と設備投資の拡大に加え、FRBの利上げ路線転換等により、回復基調が継続しました。欧州経済は、輸出減少と内需低迷及び英経済減速等により、緩やかに減速しました。また、英EU離脱交渉難航等により先行き不透明感が増大しました。中国経済は、「量から質」重視への成長戦略転換のもと、投資主導から消費主導へ経済のリバランスが進む中、減税・補助金等の経済政策で景気下支えを図るも、インフラ投資停滞と消費マインド悪化等により、減速基調が継続しました。また、米国との貿易摩擦激化等により、先行き不透明感が増大しました。新興国経済は、中国経済減速等による輸出減や資源価格下落等により、緩やかに減速しました。
こうした中、わが国経済は、中国経済減速によるアジア向け輸出減少等により、輸出や生産の一部に弱さが見られたものの、雇用・所得環境の改善と各種政策の効果等により、緩やかな回復基調が継続しました。一方で貿易摩擦や欧州・中国等の海外経済の低迷等により、景気後退懸念が強まりました。
②セグメント別の事業活動
(Ⅰ)金属
電動自動車向け車載モーター製造事業への新規参入を目的に、台湾の車載モーター製造会社富田(フクタ)電機有限公司の株を2019年3月に一部取得しました。
(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス
高機能液晶調光フィルムの次世代モビリティへの活用を目的に、九州ナノテック光学株式会社による第三者割当増資を引き受け、2019年2月に同社へ出資しました。
(Ⅲ)自動車
ラオスにおけるトヨタブランドのさらなる確立と事業を通じた同国経済への貢献を目的に、同国初となるトヨタ車総輸入販売代理店Toyota Laos Co., Ltd.を設立し、2019年1月からトヨタ車の輸入・卸売りを開始しました。
(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト
ミャンマーにおける港湾ターミナル運営事業への参画を目的に、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構等と共に、2019年1月に同国ターミナル運営会社THILAWA MULTIPURPOSE INTERNATIONAL TERMINAL CO., LTD.への出資を決定しました。
(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス
次世代コネクティッドカー向け制御ソフトウエアのOver the Air (OTA)リプログラミングシステムの開発及び実用化における協業を目的に、トヨタ自動車株式会社、株式会社デンソーと共に、米国のOTAリプログラミングシステム開発会社Airbiquity Inc.の第三者割当増資を引き受け、2019年2月に同社へ出資しました。
(Ⅵ)食料・生活産業
株式会社豊通オールライフが、オーダーメード型リハビリ施設「AViC THE PHYSIO STUDIO」の2号店を2019年2月に日本橋に開設しました。
(Ⅶ)アフリカ
アンゴラの経済復興と産業の多角化を支援するため、同国交通省とナミベ湾の包括開発請負契約を2019年1月に締結しました。
③業績
(単位:億円)
前連結会計年度
(2018年3月期)
当連結会計年度
(2019年3月期)
増減
収益64,91067,6272,717
売上総利益6,0626,384322
営業活動に係る利益1,8262,151325
当期利益(親会社所有者帰属)1,3021,32624
総資産43,10044,4141,314

(2)仕入、成約及び販売の実績
①仕入の実績
仕入と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。
②成約の実績
成約と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。
③販売の実績
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ③業績」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項4.セグメント情報」を参照してください。
(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
①重要な会計方針及び見積り
当社グループにおける重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項3.重要な会計方針」を参照してください。
②当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の収益は自動車生産関連取り扱い増加等により、前連結会計年度を2,717億円(4.2%)上回る6兆7,627億円となりました。
利益につきましては、営業活動に係る利益は販売費及び一般管理費の増加の一方で、売上総利益の増加及びその他の収益・費用の良化により、前連結会計年度を325億円(17.8%)上回る2,151億円となりました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は化学品・エレクトロニクス本部及び機械・エネルギー・プラントプロジェクト本部で一過性の損益による影響等はあったものの、営業活動に係る利益の増加等により、前連結会計年度を24億円(1.8%)上回る1,326億円となり、3期連続で過去最高益を更新することができました。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
(Ⅰ)金属
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、市況の上昇及び需要の増加並びに前期一過性損失の影響等により、前連結会計年度を75億円(26.6%)上回る353億円となりました。
(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、自動車部品取り扱い増加等により、前連結会計年度を9億円(4.0%)上回る237億円となりました。
(Ⅲ)自動車
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、海外自動車販売会社の取扱台数増加等により、前連結会計年度を44億円(24.2%)上回る227億円となりました。
(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、エネルギー事業の貸倒引当金繰入、電力事業における持分法による投資損益の悪化並びに前期一過性利益の影響等により、前連結会計年度を133億円(41.4%)下回る187億円となりました。
(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、前期子会社株式の一部売却益による影響等により、前連結会計年度を106億円(36.6%)下回る184億円となりました。
(Ⅵ)食料・生活産業
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、食品事業における持分法による投資損益の悪化等により、前連結会計年度を6億円(26.4%)下回る17億円となりました。
(Ⅶ)アフリカ
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、前期一過性損失の影響等により、前連結会計年度を133億円上回る101億円となりました。
次期の業績の見通しにつきましては、当期利益(親会社の所有者に帰属)は1,500億円となる見込みです。
③財政状態
資産につきましては、棚卸資産で890億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,314億円増加の4兆4,414億円となりました。また、資本につきましては、当期利益(親会社の所有者に帰属)等により利益剰余金が1,007億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ275億円増加の1兆3,896億円となりました。
その結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は26.9%、ネットDERは0.8倍となりました。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
(Ⅰ)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による増加、投資活動及び財務活動による減少等により、4,658億円となり、前連結会計年度末より424億円の増加となりました。資金の増減額は前連結会計年度と比べて544億円の増加となっており、この主な増加または減少要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は2,107億円となりました。これは税引前利益等によるものです。前連結会計年度比では43億円の収入減少となりましたが、これは営業債務及びその他の債務による資金の使用が745億円減少した一方で棚卸資産の取得による資金の使用が540億円増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動による資金の減少は1,375億円となりました。これは有形固定資産及び投資の取得等によるものです。前連結会計年度比では451億円の支出増加となりましたが、これは主に有形固定資産の取得による資金の支出が230億円増加したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは732億円の資金の増加となりました。前連結会計年度比では494億円の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は249億円となりました。これは配当金の支払い等によるものです。前連結会計年度比では1,038億円の支出減少となりましたが、これは主に借入金の返済の減少及び社債の発行により資金が1,104億円増加したことによるものです。
(Ⅱ)財務戦略
当社グループでは、財務健全性を維持した安定的成長を目指して、「資産の効率化」と「資産の内容に見合った調達」を柱とする財務戦略を推進しております。
「資産の効率化」については、“最小限の資金で最大限の利益確保”を目指し、売掛債権回収の早期化、在庫の削減等による運転資本の効率化や不稼動・非効率固定資産の削減など、資金の効率化を進めております。これらの活動により得られる資金を、より将来性の高い事業への投資や、有利子負債の圧縮に充当することにしており、“企業価値の向上”と“財務の健全性向上”の両立を目指しております。
一方、「資産の内容に見合った調達」については、固定資産は長期借入金と株主資本でカバーし、運転資本は短期借入金でカバーすることを原則としておりますが、同時に運転資本の底溜り部分も長期資金でまかなうことを方針としております。また、連結ベースでの資金管理体制については、親会社からの国内グループファイナンスに一元化すると共に、海外子会社の資金調達についても、アジア及び欧米の海外現地法人などにおいて集中して資金調達を行い、子会社への資金供給をするというキャッシュマネジメントシステムを活用したグループファイナンスを行うことで、連結ベースでの資金の効率化に努め、資金管理体制の更なる充実を図っております。更には、当社グループの資金調達の安全のため、マルチカレンシー・リボルビング・ファシリティー(複数通貨協調融資枠)等を設定するなど、不測の事態にも対応できるように備えております。
今後の資金調達について、当社グループの営業活動が生み出すキャッシュ・フロー、資産の内容、経済情勢、金融環境などを考慮し、資産の一層の効率化と安定的な資金調達に対応していきたいと考えております。
当連結会計年度末の流動比率は連結ベースで148%となっており、流動性の点で当社の財務健全性を維持しております。また、当社及び連結子会社では、主として現預金及び上述コミットメントラインの設定により、十分な流動性を確保しております。
当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりです。
長期短期
格付投資情報センター(R&I)A+(安定的)a-1
スタンダード&プアーズ(S&P)A+(安定的)A-1
ムーディーズ(Moody's)A3(安定的)-

⑤経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(収益の表示方法)
日本基準では、当社グループが当事者として行った取引額及び当社グループが代理人として関与した取引額を総額で売上高として表示いたしますが、IFRSでは、代理人として関与したと判断される取引については純額で収益を表示いたします。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、当連結会計年度の収益及び原価がそれぞれ1,767,059百万円減少しております。
(のれんの償却)
日本基準では、のれんの償却については、一定の期間で償却いたしますが、IFRSでは償却を行いません。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、当連結会計年度ののれん償却額(販売費及び一般管理費)が18,029百万円減少しております。