有価証券報告書
(1) 重要な会計方針及び見積り
財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産及び負債の報告金額、偶発資産及び負債の開示、報告期間における収益及び費用の報告金額に影響を与える様な見積りを行う必要があります。見積りは、過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき行っており、他の情報源からは得られない資産及び負債の帳簿価額について当社及び連結子会社の判断の基礎となっています。ただし、前提条件や事業環境などに変化が見られた場合には、見積りと将来の実績が異なることもあります。
当社及び連結子会社の財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。
① 金融商品の公正価値測定
当社及び連結子会社における有価証券やデリバティブ等の公正価値で測定される金融商品の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっています。
公正価値は、市場価格等の市場の情報や、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチなどの算出手順に基づき決定しています。具体的には、市場性のある有価証券については、活発な市場における市場価格及び活発ではない市場における同一の資産の市場価値により評価しています。市場性のない有価証券については、将来キャッシュ・フローの割引現在価値、類似取引事例との比較、1株当たり修正純資産価値、第三者による鑑定評価等により評価しています。また、デリバティブについては、取引市場価格及び金利、外国為替レート等の観察可能なインプットを使用し、評価モデルにより評価しています。
経営者は、金融商品の公正価値の評価は合理的であると判断しています。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより金融商品の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社及び連結子会社における公正価値評価額が変動する可能性もあります。
② 償却原価で測定される債権の減損
当社及び連結子会社における売上債権、受取手形、貸付金等の償却原価で測定される債権の残高は多額であるため、当該債権の評価は会計上の見積りにおいて重要なものとなっています。
当社及び連結子会社は、顧客の評価を継続して行っており、回収実績及び信用情報の査定に基づく現在の顧客の与信能力に基づき、顧客毎に成約限度額・信用限度額を定めると同時に、必要な担保・保証などの取り付けを行っています。当社及び連結子会社は、顧客からの回収状況を常にモニタリングしており、過去の貸倒実績率や将来倒産確率などに基づき一部の債権を集合的に評価し、適切な金額の貸倒引当金を設定しています。また当社及び連結子会社は、特定の顧客に対してその財政状態や与信の状況、債権の回収状況を個々にモニタリングしており、債権全額(元利合計)を当初の契約条件に従って回収することが出来ない可能性が高いと判断される場合には、債権の内容、回収遅延期間、格付機関による評価、割引キャッシュ・フロー法に基づく評価、担保物件の公正価値、並びにその他の情報に基づき、それぞれの顧客に対して適切な金額の貸倒引当金を設定しています。
経営者は、償却原価で測定される債権の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、貸倒引当金は十分に計上され、債権が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより債権の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社及び連結子会社が貸倒引当金を増額又は減額する可能性もあります。
③ 非金融資産の減損
当社及び連結子会社は、たな卸資産や繰延税金資産等を除く非金融資産について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、当該資産の回収可能価額を見積っており、帳簿価額が回収可能価額を上回った場合に、減損損失を認識しています。回収可能価額は、使用価値と売却費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、見積り将来キャッシュ・フローを資産固有のリスクを反映した税効果考慮前の割引率を用いて現在価値に割り引いて算出しており、将来の市場の成長度合、収益と費用の予想、資産の予想使用期間等の前提条件を使用しています。
経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び使用価値や公正価値の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、これらの見積りには経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより非金融資産の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社及び連結子会社が追加で減損損失を認識する可能性もあります。
④ 退職給付債務及び費用
従業員の退職給付債務及び費用は、割引率、昇給率、退職率、死亡率等の前提条件を用いた年金数理計算により見積られます。特に割引率は、退職給付債務及び費用を決定する上で重要な前提条件であり、測定日時点における、従業員への給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた優良債券の利回りに基づき決定しています。
経営者は、年金数理計算上用いられる前提条件と方法は適切であると判断しています。ただし、これらの前提条件には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、前提条件と実際の結果が異なる場合、又は前提条件の変更がある場合には、当社及び連結子会社の退職給付債務及び費用に影響を与える可能性もあります。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
当社及び連結子会社における繰延税金資産の残高は多額であるため、繰延税金資産の回収可能性に関する評価は会計上の見積りにおいて重要なものとなっています。
当社及び連結子会社は、税務上の繰越欠損金、税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来課税所得を減算できる可能性が高いものに限り繰延税金資産を認識しています。繰延税金資産の回収可能性は毎連結会計年度末日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しています。
経営者は、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りには経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社及び連結子会社が繰延税金資産を減額する可能性もあります。
(2) 当連結会計年度の業績の概況
当連結会計年度の世界経済は、北朝鮮や中東などの地政学的リスクが高まったものの、先進国では消費や投資の伸長により堅調な経済成長が継続し、新興国では中国を中心に安定した経済成長となりました。
このような環境下、当連結会計年度の業績の概況は、以下のとおりとなりました。
① 収益
当連結会計年度の収益は、前連結会計年度から1兆1,416億円(18%)上回る、7兆5,674億円となりました。このうち、商品販売に係る収益は、前連結会計年度から7,292億円(13%)増加し、6兆2,876億円となり、また、サービス及びその他に係る収益は4,124億円(48%)増加し、1兆2,798億円となりました。主な増減要因(セグメント別)は以下のとおりです。
・生活産業グループの収益は、株式会社ローソン(以下「ローソン」)の子会社化による増加などにより、前連結会計年度から6,722億円(30%)増加し、2兆8,764億円となりました。
・化学品グループの収益は、販売価格上昇や販売数量増加などにより、前連結会計年度から2,255億円(20%)増加し、1兆3,596億円となりました。
・機械グループの収益は、販売台数の増加や為替の影響などにより、前連結会計年度から1,295億円(17%)増加し、8,765億円となりました。
② 売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、ローソンの子会社化による増加や資源価格の上昇などにより、前連結会計年度を5,580億円(42%)上回る1兆8,866億円となりました。
③ 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、ローソンの子会社化などにより、前連結会計年度から4,547億円(49%)負担増の1兆3,873億円となりました。
④ 有価証券損益
当連結会計年度の有価証券損益は、前連結会計年度に計上した関係会社の経営統合や売却等に伴う一過性利益の反動などにより、前連結会計年度を789億円(95%)下回る44億円(利益)となりました。
⑤ 固定資産除・売却損益
当連結会計年度の固定資産除・売却損益は、資源関連資産の売却及び保有資産の交換益計上などにより、前連結会計年度を265億円(184%)上回る409億円(利益)となりました。
⑥ 固定資産減損損失
当連結会計年度の固定資産減損損失は、前連結会計年度に計上した資源関連資産や船舶事業に係る減損損失の反動などにより、前連結会計年度から230億円(22%)負担減の802億円となりました。
⑦ その他の損益-純額
当連結会計年度のその他の損益は、前連結会計年度から略横ばいの99億円(利益)となりました。
⑧ 金融収益
当連結会計年度の金融収益は、資源関連投資先からの受取配当金の増加などにより、前連結会計年度を468億円(35%)上回る1,792億円となりました。
⑨ 金融費用
当連結会計年度の金融費用は、前連結会計年度から略横ばいの523億円となりました。
⑩ 持分法による投資損益
当連結会計年度の持分法による投資損益は、資源価格の上昇などにより、前連結会計年度を939億円(80%)上回る2,114億円(利益)となりました。
⑪ 税引前利益
当連結会計年度の税引前利益は、上記の理由から、前連結会計年度を2,113億円(35%)上回る8,127億円となりました。
⑫ 法人所得税
当連結会計年度の法人所得税は、米国税制改正に伴う繰延税金負債の取崩しがあった一方、税引前利益の増加による負担増に加え、資源関連資産の撤退に係る追加税金費用などにより、前連結会計年度から809億円(67%)負担増の2,023億円となりました。
⑬ 非支配持分に帰属する当期純利益
当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期純利益は、前連結会計年度から104億円(26%)増加し、502億円となりました。
⑭ 当社の所有者に帰属する当期純利益
以上の結果、当連結会計年度の当社の所有者に帰属する当期純利益は、前連結会計年度を1,199億円(27%)上回る5,602億円となりました。これにより、ROEは10.9%となりました。
(3) 当連結会計年度のセグメント別業績概況
(以下「当期純利益」は、「当社の所有者に帰属する当期純利益」を指しています。)
① 地球環境・インフラ事業グループ
地球環境・インフラ事業グループは、電力、水、交通や、その他産業基盤となる環境・インフラ分野における事業や関連する取引などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から166億円(24%)増加し、857億円となりました。
売上総利益は、前連結会計年度から略横ばいの381億円となりました。
持分法による投資損益は、千代田化工建設の持分損益改善などにより、前連結会計年度から141億円(61%)増加し、373億円となりました。
上記のほか、米国税制改正に伴う繰延税金負債の取崩益などにより、当期純利益は446億円となり、前連結会計年度と比較して212億円(91%)の増加となりました。
② 新産業金融事業グループ
新産業金融事業グループは、企業投資、リース、不動産・都市開発、物流などの分野において、投資及び運用事業を行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から314億円(24%)減少し、1,014億円となりました。
売上総利益は、国内不動産事業における物件売却益や物流事業における取扱高の減少などにより、前連結会計年度から103億円(17%)減少し、499億円となりました。
持分法による投資損益は、ファンド関連投資先の評価益増加やリース事業における持分利益の増加などにより、146億円(107%)増加し、283億円となりました。
上記のほか、保有不動産の交換益計上などにより、当期純利益は442億円となり、前連結会計年度と比較して87億円(25%)の増加となりました。
③ エネルギー事業グループ
エネルギー事業グループは、天然ガス・石油の生産・開発事業、液化天然ガス(LNG)事業、原油・石油製品・炭素製品・LPG等の販売取引、新規エネルギー事業の企画開発などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から501億円(4%)増加し、1兆2,394億円となりました。
売上総利益は、市況改善に伴う取引利益の増加などにより、前連結会計年度から180億円(48%)増加し、557億円となりました。
持分法による投資損益は、市況改善に伴う持分利益の増加などにより、188億円(74%)増加し、441億円となりました。
上記に加え、LNG関連事業における受取配当金が増加したものの、前連結会計年度においてシェールガス事業再編に伴う一過性利益164億円を「その他の損益-純額」等に計上したことの反動や、資源関連資産の入替に伴う損失、廃坑費用の追加引当、撤退に係る追加税金費用等の一過性損失などにより、当期純利益は203億円となり、前連結会計年度と比較して352億円(63%)の減少となりました。
④ 金属グループ
金属グループは、薄板・厚板などの鉄鋼製品、石炭・鉄鉱石などの鉄鋼原料、銅・アルミなどの非鉄金属の分野において、トレーディング、開発、投資などを通じて事業経営に携わっています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から851億円(9%)増加し、1兆217億円となりました。
売上総利益は、豪州石炭事業でのサイクロンの影響による生産・出荷数量減を営業施策で一部カバーしたことや市況上昇による増加、及び鉄鋼製品事業における販売価格上昇などにより、前連結会計年度から380億円(9%)増加し、4,528億円となりました。
持分法による投資損益は、銅事業及び鉄鉱石事業における市況改善に伴う持分利益の増加などにより、308億円(1,141%)増加し、335億円となりました。
上記のほか、前連結会計年度に計上した一過性損失の反動などにより、当期純利益は2,610億円となり、前連結会計年度と比較して1,131億円(76%)の増加となりました。
⑤ 機械グループ
機械グループは、工作機械、農業機械、建設機械、鉱山機械、エレベーター、エスカレーター、船舶、宇宙航空関連機器、自動車などの幅広い分野において、販売、金融、物流、投資などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から1,295億円(17%)増加し、8,765億円となりました。
売上総利益は、アジア自動車事業における取引利益の増加などにより、前連結会計年度から135億円(7%)増加し、1,956億円となりました。
持分法による投資損益は、アジア自動車事業における持分利益の増加などにより、235億円(443%)増加し、288億円となりました。
上記のほか、船舶事業における一過性損失の反動や売船益などにより、当期純利益は852億円となり、前連結会計年度と比較して558億円(190%)の増加となりました。
⑥ 化学品グループ
化学品グループは、原油、天然ガス、鉱物、植物、海洋資源などより生産されるエチレン、メタノール、塩といった基礎原料から、プラスチック、電子材料、食品素材、肥料や医農薬などの川下・川中製品まで、幅広い化学品の分野において、販売取引、事業開発、投資などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から2,255億円(20%)増加し、1兆3,596億円となりました。
売上総利益は、販売価格上昇等による取引利益の増加などにより、前連結会計年度から32億円(3%)増加し、1,162億円となりました。
持分法による投資損益は、石化関連事業における販売価格上昇等による持分利益の増加などにより、41億円(34%)増加し、162億円となりました。
上記のほか、基礎化学品関連事業において繰延税金負債計上等に伴う一過性損失を計上したことなどにより、当期純利益は306億円となり、前連結会計年度と比較して39億円(15%)の増加となりました。
⑦ 生活産業グループ
生活産業グループは、食料、衣料、日用品、ヘルスケアなど、消費者の生活に身近な分野で、原料の調達から、流通・小売に至るまでの幅広い領域において、商品・サービスの提供、事業開発などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から6,722億円(30%)増加し、2兆8,764億円となりました。
売上総利益は、ローソン子会社化に伴う増加などにより、前連結会計年度から4,986億円(105%)増加し、9,718億円となりました。
持分法による投資損益は、ローソン子会社化に伴う減少などにより、前連結会計年度から113億円(32%)減少し、236億円となりました。
上記のほか、鮭鱒養殖事業における持分利益が増加した一方、前年度に計上したローソン子会社化及び食肉事業における一過性利益の反動や、食品原料事業における一過性損失などにより、当期純利益は747億円となり、前連結会計年度と比較して466億円(38%)の減少となりました。
地域別情報は以下のとおりです。
① 日本
当連結会計年度の収益は、生活産業グループにおけるローソン子会社化の影響などにより、前連結会計年度から7,762億円(20%)増加し、4兆5,699億円となりました。
② オーストラリア
当連結会計年度の収益は、金属グループの石炭事業における市況上昇の影響などにより、前連結会計年度から
872億円(11%)増加し、8,522億円となりました。
③ アメリカ
当連結会計年度の収益は、エネルギー事業グループの北米ガス事業におけるガス価格上昇及び取引数量増加の影響などにより、前連結会計年度から356億円(4%)増加し、8,333億円となりました。
④ その他地域
当連結会計年度の収益は、前連結会計年度から2,427億円(23%)増加し、1兆3,120億円となりました。
(4) 当連結会計年度のセグメント別の事業環境と翌連結会計年度以降の見通し
① 地球環境・インフラ事業グループ
当連結会計年度は、日米欧など先進国に加え、新興国についても成長基調となりました。その中で、当グループは、千代田化工建設の持分損益改善に加え、米国税制改正に伴う一過性利益等の影響もあり、当期純利益は2013年度に現体制でのグループとなって以来の過去最高益となりました。翌連結会計年度においても、引き続き先進国・新興国ともに底堅い経済成長が見込まれ、当グループが擁する事業領域においては、引き続き成長が見込める事業環境にあると考えています。
当グループの事業分野別の環境認識は以下のとおりです。
電力事業においては、先進国、新興国共に、環境規制強化が進む中で高効率ガス焚、再生可能エネルギーを中心に引き続き事業機会の拡大が見込まれています。先進国においては電力市場向け売電事業や、分散型発電事業、電力小売り事業等、新たなビジネスモデルへの取組機会拡大が進んでいます。
その他インフラ事業においても各分野で事業機会が見込まれています。プラントエンジニアリング事業は油価低迷に伴う一部案件の一時的な停滞が続いていましたが、油価は徐々に回復基調にあり、中長期的にはマクロなエネルギー需要は拡大する見込みであることから、新規プラント需要は着実に見込める事業環境にあると認識しています。また、交通インフラの需要も引き続き旺盛であり、安定収益の確立に努めることができる事業環境にあると考えています。水事業においては、アジア・中東・アフリカを中心に上下水処理・海水淡水化等のプラントに対する需要が引き続き堅調です。
環境関連事業においては、車載用途・産業用途電池の大幅な市場規模拡大が見込まれるなか、リチウムイオン電池の製造に取り組むと同時に、電池を活用する蓄電事業も含めて将来需要の取り込みを図ります。また中長期的な事業機会の取り込みを狙い、水素など次世代エネルギーにも引き続き取り組んでいきます。
② 新産業金融事業グループ
当連結会計年度は、保有不動産の交換益を計上したことや、ファンド評価益の増加などにより、前連結会計年度と比較して増益となりました。翌連結会計年度については、当グループの対面市場の景況は総じて安定的に推移していますが、当連結会計年度に計上した保有不動産の交換益の反動等により減益を見込んでいます。
当グループの主な事業分野の環境認識については以下のとおりです。
プライベートエクイティ関連事業については、日本では後継者不足を背景とした事業承継案件や、企業のカーブアウト案件の伸びが顕著です。アセアンでの成長資金ニーズ、米国でのプライベートエクイティファンドを活用した、成長戦略としてのM&Aも底堅く推移しており、経済環境が総じて堅調に推移していることも相俟って、今後更なる市場の拡大が期待されます。
リース事業は、国内では、総じて設備投資は堅調に推移している一方、企業のキャッシュ・フローが改善傾向にあるなか、平成29年4月~平成30年3月のリース取扱高が前年同期比96.1%(約4兆8,300億円)に留まる等、リースの活用は僅かに減少傾向となっています。海外では、新興国を中心とした経済成長に伴う一定の設備投資、及びリース浸透率の増加等により、マクロトレンドとしては引き続き堅調な市場拡大・需要増加が見込まれます。
国内不動産関連事業は、金融緩和策が当面維持される見通しであること等から、堅調に推移しています。上場不動産投資信託(J-REIT)のイールドスプレッドは3%~4%程度で推移しており、金融機関をはじめとする機関投資家からの不動産マーケットへの資金流入は継続しています。また、プレーヤーの多様化に加え、投資対象物件の供給が少なく、特に優良物件の取得に関しては厳しい競合環境が続いています。
海外不動産関連事業については、米国では、ファンダメンタルズは堅調に推移しており、米国経済は依然として底堅いものの、政策金利の引き上げに伴うイールドスプレッドの動向を注視しています。中国は、安定した経済成長を背景とした中間所得者数の増加に伴い、特に都市部での新規住宅開発のニーズが高まっています。アセアンでは、継続的な人口増加を背景に都市化が進み、中長期的な経済成長が期待され、不動産市場の拡大や都市開発需要の増加が見込まれます。
物流事業は、新興国の経済成長やeコマースの普及等に伴い、物流量が増加し、また、消費者ニーズが高度化、多様化しています。また、物流業界では、ロボティクス等の先端技術の活用や、世界的な合従連衡が引続き進行する見通しです。
③ エネルギー事業グループ
当グループは北米、東南アジア、豪州などにおいて、天然ガス・石油の生産・開発事業、液化天然ガス(LNG)事業を行っており、石油・ガス価格は当グループの業績に少なからぬ影響を与えます。
当連結会計年度の原油価格(Brent)は米国シェールオイルの生産が増大しているものの、アジアを中心とした需要の堅調な伸び、また主要産油国の減産合意延長もあり60ドル台まで上昇しました。翌連結会計年度にも引き続きアジアを中心とした需要の伸び、主要産油国の減産合意継続が見込まれることから、需給は徐々に回復していく見通しであるものの、米国シェールオイルの増産による下振れ要因や、米国のイランへの経済制裁再開といった地政学リスクもあり原油相場は依然として方向性が定まらない状態にあり、今後も動向を注視する必要があります。なお、翌連結会計年度の業績見通しの算出に際しては、原油価格を、ドバイ原油1バーレル当たり60ドルを前提としています。ただし、LNG・原油の価格変動が当グループの業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
④ 金属グループ
当連結会計年度の鋼材・金属市況は、底堅い需要に支えられ、全般的に堅調に推移しました。
平成29年暦年の世界粗鋼生産量は前年比5.3%増の約17億トンとなり、3年ぶりに前年を上回り過去最高を更新しました。主な要因としては、国別生産量第1位で全世界粗鋼生産量の約半分を占める中国で、違法鋼材である「地条鋼」が撤廃された分、高炉での粗鋼生産が増加し、前年比5.7%増の8.3億トンと過去最高を記録したこと、第3位のインドで旺盛なインフラ投資需要により1.01億トンと前年比6.2%増加したこと等があり、国別に事情は異なりますが、総じて好調な経済に支えられ生産量が増加しました。なお、第2位の日本は、生産不調や設備定期改修が影響し、前年比0.1%減の1.05億トンと僅かではありますが上位10か国で唯一の減産となりました。
また、鉄鋼原料であり、金属グループの主力事業の1つである原料炭についても、堅調な粗鋼生産を背景に需給はタイトに推移しました。特に、平成29年3月末に豪州北東部クイーンズランド州に大型サイクロンが上陸した後は、主に鉄道網への影響から原料炭需給が急速に逼迫する局面もありました。もう1つの主力事業である銅に関しても、世界最大の需要国である中国の経済成長や好調な米国経済指標にも下支えされ、需要は底堅い状況にありました。
この様な事業環境下、当グループの当期純利益は、前連結会計年度に計上した一過性損失の反動に加え、豪州石炭事業でのサイクロンの影響による生産・出荷数量減を営業施策で一部カバーしたこと、及び市況上昇による持分利益・受取配当金の増加などが寄与し、前連結会計年度と比較して増益となりました。
中長期的には新興国の経済成長が世界経済を牽引し、金属資源・製品の需要や市況は今後も底堅く推移していく見通しです。
⑤ 機械グループ
当連結会計年度は、新興国を中心にそれぞれの事業分野において市況は回復基調となりました。このような環境の下、当グループは、主に船舶事業における一過性損失の反動や売船益、及びアジア自動車事業における持分利益の増加などにより、前連結会計年度と比較して大幅な増益となりました。事業環境は回復基調が続くと予想され、今後の成長に向けた事業基盤の拡充及び機能の強化を進めていきます。
当グループの主な事業分野の環境に対する認識については以下のとおりです。
産業機械事業における国内レンタル事業は、震災復興工事向けのレンタル需要は落ち着きつつあるものの、老朽化したインフラの復旧工事や東京オリンピック関連の多数の建設投資は旺盛で好調を維持しています。翌連結会計年度も当連結会計年度と同じレベルの建設投資が行われると見込んでいます。エレベーター事業は、アセアン諸国における堅調な建設投資を背景に引き続き着実な成長が見込まれます。工作機械事業は、国内では当連結会計年度受注高が過去最高となっており、翌連結会計年度も当連結会計年度以上の推移と見込んでいます。また、北米では当連結会計年度後半から引き続き、翌連結会計年度も好調に推移すると予測されるものの、米中貿易摩擦による制裁関税対象品等を注視していく必要があります。
農業機械事業は、国内については引き続き農業の高度化と大規模化が進むことから、当事業の対象市場規模は徐々に拡大する見込みです。タイにおいては、農業の効率化と高度化に伴う機械化の流れにより、農機市場の回復が見込まれます。
船舶関連事業は、撒積船市況が歴史的低水準からの回復途上であり、今後、世界経済が順調に伸び、新造船の投機的発注が抑制されれば、事業環境も好転していくと予想されますが、荷動きと船腹量の需給バランスを慎重に見守っていきます。ガス船事業については、近年の原油価格低迷の長期化等の影響によりLNGプロジェクトの新規開発への投資決定実績は限定的でしたが、昨年末以降の世界的なLNG需要の高まりにより中長期的には事業環境は改善に向かうと予想されます。
三菱自動車関連事業は、インドネシア・ロシアを始めとした新興国市場の自動車需要も回復傾向にあり、事業環境は好転し始めています。引き続き新興国を中心とした重要市場において、事業基盤の拡充による将来の市場成長の取り込みを目指すとともに、その他市場での販売の強化を行っていきます。
いすゞ自動車関連事業では、主力のタイ市場において平成29年暦年の自動車全需が前年比13%増と前連結会計年度を底に回復基調へ転じており、翌連結会計年度以降も堅調さを維持すると予想されます。自動車市場の動向を注視しながら、今後も中長期的な成長を目指し、タイに加えて、新興国を中心とした他市場での取り組みを強化していきます。
⑥ 化学品グループ
当連結会計年度の化学品市況は、原油等資源価格の高位安定により、総じて堅調に推移しました。
新興国の需要成長が継続する一方、中国での環境規制強化に伴う生産設備の稼働率低下も、製品市況高に影響を及ぼしました。
今後も、アジア市場を中心とした需要の伸長が期待されるものの、産油国を取り巻く環境や世界の経済成長等において、先行き不透明な状況が当面続くものと予想されます。
中長期的には、シェールガス革命を背景とした北米石油化学産業の台頭による構造変化(業界再編、設備統廃合等)や、EV化に代表される低炭素社会の実現に向けた素材開発等が見込まれ、当グループ機能を発揮する事業機会は拡大すると予想されます。また、「ライフサイエンス」分野では、新興国での生活水準の向上や、先進国での高齢化や医療費削減といった課題に対し、健康・安全・安心・おいしさへの関心が高まっており、市場の拡大が見込まれます。
当グループは、こうした事業環境やニーズの変化に対応すべく、食と健康を中心としたライフサイエンス事業を推進し、国内外市場の成長を積極的に取り込んでいきます。また、サウジアラビアの石油化学事業等の中核ビジネスの更なる強化を図ると共に、化学品のバリューチェーン全体で総合力を活かした事業を継続的に推進します。
⑦ 生活産業グループ
当連結会計年度の国内消費市場は、株安進行等の下押し要因がありつつも、景況感は比較的良好に推移しました。国内消費市場規模は人口減少により縮小傾向にあるとみられますが、高齢社会の進行に伴う生活スタイルの変化などによって新たな需要創出が期待できると捉えています。
海外消費市場においては、米国経済の好調や中国経済の安定成長の継続が主因となり世界経済の好調が続く見通しにて、先進国・新興国ともに堅調な市場の成長が期待されます。
このような事業環境を踏まえ、国内ではバリューチェーンの強化、海外では市場成長の取り込みによる事業拡大を進めていきます。
当連結会計年度の当グループの当期純利益は、鮭鱒養殖事業における持分利益が増加した一方、前連結会計年度に計上したローソン子会社化及び食肉事業における一過性利益の反動や、食品原料事業における一過性損失などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。翌連結会計年度については、当連結会計年度に計上した一過性損失の反動などにより増益を見込んでいます。
(5) 販売、仕入及び受注の状況
① 販売の状況
「(2) 当連結会計年度の業績の概況」及び「第5 経理の状況」におけるセグメント情報を参照願います。
② 仕入の状況
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しています。
③ 受注の状況
受注は販売と概ね連動しているため、記載は省略しています。
(6) 流動性と資金の源泉
① 資金調達方針と流動性マネジメント
当社では事業活動を支える資金調達に際して、低コストでかつ安定的に資金が確保できることを目標として取り組んでいます。資金調達にあたっては、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と銀行借入等の間接金融とを機動的に選択・活用しており、その時々でのマーケット状況での有利手段を追求しています。当社は資本市場でのレピュテーションも高く、加えて間接金融についても、メガバンク以外に外銀・生保・地銀等の金融機関とも幅広く好関係を維持しており、調達コストは競争力のあるものとなっています。今後とも長期資金を中心とした資金調達を継続すると共に、十分な流動性の確保を行っていく方針です。
当連結会計年度の資金調達活動としては、前連結会計年度に引き続き、財務健全性の向上に努めつつ、外貨建社債等による調達を行いました。
これらの資金調達活動の結果、当連結会計年度末のグロス有利子負債残高は、前連結会計年度末から4,295億円減少し4兆9,544億円となり、このうち85%が長期資金となっております。有利子負債のうち、6,000億円はハイブリッドファイナンスであり、格付機関は残高の50%である3,000億円を資本と同等に扱っています。なお、当社単体のグロス有利子負債残高は3兆5,252億円であり、このうち長期資金は91%を占め、平均残存期間は約6年となっています。
翌連結会計年度は、引き続き資金調達ソースの多様化等を通じて、中長期的に安定した調達基盤を維持する方針です。また、連結ベースでの資金効率の向上に向けた取り組みも継続します。
金融市場の環境は、地政学的リスクや主要国の金融政策の変化等、引き続き予断を許さない状況のため、細心の注意を払って対処すべく、現預金等及び銀行融資枠(コミットメントライン)を十分に確保し、流動性を維持していきます。
連結ベースでの資金管理体制については、当社を中心に国内外の金融子会社、海外現地法人等において集中して資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンス方針を原則としています。結果として、当連結会計年度末では、連結有利子負債のうち79%が当社、国内外の金融子会社、海外現地法人等による調達となっています。今後も、連結経営の深化を見据え、連結ベースでの資金管理体制の更なる充実を図ります。
当連結会計年度末の流動比率は連結ベースでは138%となっており、流動性の点で当社の財務健全性は高いといえます。また、当連結会計年度末時点の当社、米国三菱商事、Mitsubishi Corporation Finance、MC Finance & Consulting Asia、MC Finance AustraliaでCP及び1年以内に償還を予定している社債を合わせた短期の市場性資金が2,609億円あるのに対して、現預金、フィーを支払って確保しているコミットメントライン、一年以内に満期の到来する公社債が合計で1兆5,408億円あり、カバー超過額は1兆2,799億円と十分な水準にあると考えています。なお、当社のコミットメントラインについては、円貨で5,100億円を国内主要銀行より、外貨で主要通貨13億米ドル、ソフトカレンシー1.5億米ドル相当を欧米を中心とした国内外の主要銀行より取得しています。
当社ではグローバルな資金調達とビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の3社から格付けを取得しています。3社の平成30年5月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがAA-/a-1+(見通し安定的)、ムーディーズがA2/P-1(見通しネガティブ)、S&PがA/A-1(見通し安定的)となっています。
② 資産及び負債・資本
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より2,834億円(2%)増加し、16兆370億円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末より3,115億円(5%)増加し、6兆7,788億円となりました。これは、期末休日の影響や取引価格の上昇及び取引数量の増加などに伴い、営業債権及びその他の債権が増加したことなどによるものです。
非流動資産は、略横這いの9兆2,582億円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末より1,927億円(2%)減少し、9兆7,718億円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末より2,391億円(5%)増加し、4兆9,169億円となりました。これは、期末休日の影響や取引価格の上昇及び取引数量の増加などに伴い、営業債務及びその他の債務が増加したことなどによるものです。
非流動負債は、前連結会計年度末より4,319億円(8%)減少し、4兆8,548億円となりました。これは、主に短期への振替により社債及び借入金が減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末より4,762億円(8%)増加し、6兆2,652億円となりました。
当連結会計年度末の当社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末より4,152億円(8%)増加し、5兆3,324億円となりました。これは、連結純利益の積み上がりがあったことなどによるものです。
また、非支配持分は、前連結会計年度末より610億円(7%)増加し、9,328億円となりました。
有利子負債総額から現金、現金同等物及び定期預金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末より2,773億円(7%)減少し、3兆7,142億円となりました。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,400億円減少し、1兆55億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動により資金は7,425億円増加しました。これは、法人所得税の支払いなどがあったものの、営業収入や配当収入などにより、資金が増加したものです。
また、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払い増加はあったものの、営業収入の増加に加え、配当収入の増加などにより、前連結会計年度と比較して1,595億円の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動により資金は3,176億円減少しました。これは、固定資産や上場有価証券の売却などによる収入があったものの、三菱自動車工業株式の取得をはじめとする関連会社への投資や設備投資などにより、資金が減少したものです。
また、当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、三菱自動車工業株式の取得をはじめとする関連会社への投資や設備投資の増加などにより、前連結会計年度と比較して、1,380億円の減少となりました。
以上の結果、営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローの合計であるフリーキャッシュ・フローは4,249億円の資金増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動により資金は5,543億円減少しました。これは、借入金の返済や社債の償還、親会社における配当金の支払いなどにより、資金が減少したものです。
また、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金返済の減少などにより、前連結会計年度と比較して、1,979億円の増加となりました。
(7) 経営戦略の進捗状況
「1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】を参照願います。
財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産及び負債の報告金額、偶発資産及び負債の開示、報告期間における収益及び費用の報告金額に影響を与える様な見積りを行う必要があります。見積りは、過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき行っており、他の情報源からは得られない資産及び負債の帳簿価額について当社及び連結子会社の判断の基礎となっています。ただし、前提条件や事業環境などに変化が見られた場合には、見積りと将来の実績が異なることもあります。
当社及び連結子会社の財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。
① 金融商品の公正価値測定
当社及び連結子会社における有価証券やデリバティブ等の公正価値で測定される金融商品の残高は多額であるため、会計上の見積りにおいて重要なものとなっています。
公正価値は、市場価格等の市場の情報や、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチなどの算出手順に基づき決定しています。具体的には、市場性のある有価証券については、活発な市場における市場価格及び活発ではない市場における同一の資産の市場価値により評価しています。市場性のない有価証券については、将来キャッシュ・フローの割引現在価値、類似取引事例との比較、1株当たり修正純資産価値、第三者による鑑定評価等により評価しています。また、デリバティブについては、取引市場価格及び金利、外国為替レート等の観察可能なインプットを使用し、評価モデルにより評価しています。
経営者は、金融商品の公正価値の評価は合理的であると判断しています。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより金融商品の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社及び連結子会社における公正価値評価額が変動する可能性もあります。
② 償却原価で測定される債権の減損
当社及び連結子会社における売上債権、受取手形、貸付金等の償却原価で測定される債権の残高は多額であるため、当該債権の評価は会計上の見積りにおいて重要なものとなっています。
当社及び連結子会社は、顧客の評価を継続して行っており、回収実績及び信用情報の査定に基づく現在の顧客の与信能力に基づき、顧客毎に成約限度額・信用限度額を定めると同時に、必要な担保・保証などの取り付けを行っています。当社及び連結子会社は、顧客からの回収状況を常にモニタリングしており、過去の貸倒実績率や将来倒産確率などに基づき一部の債権を集合的に評価し、適切な金額の貸倒引当金を設定しています。また当社及び連結子会社は、特定の顧客に対してその財政状態や与信の状況、債権の回収状況を個々にモニタリングしており、債権全額(元利合計)を当初の契約条件に従って回収することが出来ない可能性が高いと判断される場合には、債権の内容、回収遅延期間、格付機関による評価、割引キャッシュ・フロー法に基づく評価、担保物件の公正価値、並びにその他の情報に基づき、それぞれの顧客に対して適切な金額の貸倒引当金を設定しています。
経営者は、償却原価で測定される債権の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、貸倒引当金は十分に計上され、債権が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより債権の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社及び連結子会社が貸倒引当金を増額又は減額する可能性もあります。
③ 非金融資産の減損
当社及び連結子会社は、たな卸資産や繰延税金資産等を除く非金融資産について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、当該資産の回収可能価額を見積っており、帳簿価額が回収可能価額を上回った場合に、減損損失を認識しています。回収可能価額は、使用価値と売却費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、見積り将来キャッシュ・フローを資産固有のリスクを反映した税効果考慮前の割引率を用いて現在価値に割り引いて算出しており、将来の市場の成長度合、収益と費用の予想、資産の予想使用期間等の前提条件を使用しています。
経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び使用価値や公正価値の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、これらの見積りには経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより非金融資産の評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来当社及び連結子会社が追加で減損損失を認識する可能性もあります。
④ 退職給付債務及び費用
従業員の退職給付債務及び費用は、割引率、昇給率、退職率、死亡率等の前提条件を用いた年金数理計算により見積られます。特に割引率は、退職給付債務及び費用を決定する上で重要な前提条件であり、測定日時点における、従業員への給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた優良債券の利回りに基づき決定しています。
経営者は、年金数理計算上用いられる前提条件と方法は適切であると判断しています。ただし、これらの前提条件には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、前提条件と実際の結果が異なる場合、又は前提条件の変更がある場合には、当社及び連結子会社の退職給付債務及び費用に影響を与える可能性もあります。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
当社及び連結子会社における繰延税金資産の残高は多額であるため、繰延税金資産の回収可能性に関する評価は会計上の見積りにおいて重要なものとなっています。
当社及び連結子会社は、税務上の繰越欠損金、税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来課税所得を減算できる可能性が高いものに限り繰延税金資産を認識しています。繰延税金資産の回収可能性は毎連結会計年度末日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しています。
経営者は、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり行っている見積りは合理的であり、繰延税金資産が回収可能な額として計上されていると判断しています。ただし、これらの見積りには経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化などにより回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、将来当社及び連結子会社が繰延税金資産を減額する可能性もあります。
(2) 当連結会計年度の業績の概況
当連結会計年度の世界経済は、北朝鮮や中東などの地政学的リスクが高まったものの、先進国では消費や投資の伸長により堅調な経済成長が継続し、新興国では中国を中心に安定した経済成長となりました。
このような環境下、当連結会計年度の業績の概況は、以下のとおりとなりました。
① 収益
当連結会計年度の収益は、前連結会計年度から1兆1,416億円(18%)上回る、7兆5,674億円となりました。このうち、商品販売に係る収益は、前連結会計年度から7,292億円(13%)増加し、6兆2,876億円となり、また、サービス及びその他に係る収益は4,124億円(48%)増加し、1兆2,798億円となりました。主な増減要因(セグメント別)は以下のとおりです。
・生活産業グループの収益は、株式会社ローソン(以下「ローソン」)の子会社化による増加などにより、前連結会計年度から6,722億円(30%)増加し、2兆8,764億円となりました。
・化学品グループの収益は、販売価格上昇や販売数量増加などにより、前連結会計年度から2,255億円(20%)増加し、1兆3,596億円となりました。
・機械グループの収益は、販売台数の増加や為替の影響などにより、前連結会計年度から1,295億円(17%)増加し、8,765億円となりました。
② 売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は、ローソンの子会社化による増加や資源価格の上昇などにより、前連結会計年度を5,580億円(42%)上回る1兆8,866億円となりました。
③ 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、ローソンの子会社化などにより、前連結会計年度から4,547億円(49%)負担増の1兆3,873億円となりました。
④ 有価証券損益
当連結会計年度の有価証券損益は、前連結会計年度に計上した関係会社の経営統合や売却等に伴う一過性利益の反動などにより、前連結会計年度を789億円(95%)下回る44億円(利益)となりました。
⑤ 固定資産除・売却損益
当連結会計年度の固定資産除・売却損益は、資源関連資産の売却及び保有資産の交換益計上などにより、前連結会計年度を265億円(184%)上回る409億円(利益)となりました。
⑥ 固定資産減損損失
当連結会計年度の固定資産減損損失は、前連結会計年度に計上した資源関連資産や船舶事業に係る減損損失の反動などにより、前連結会計年度から230億円(22%)負担減の802億円となりました。
⑦ その他の損益-純額
当連結会計年度のその他の損益は、前連結会計年度から略横ばいの99億円(利益)となりました。
⑧ 金融収益
当連結会計年度の金融収益は、資源関連投資先からの受取配当金の増加などにより、前連結会計年度を468億円(35%)上回る1,792億円となりました。
⑨ 金融費用
当連結会計年度の金融費用は、前連結会計年度から略横ばいの523億円となりました。
⑩ 持分法による投資損益
当連結会計年度の持分法による投資損益は、資源価格の上昇などにより、前連結会計年度を939億円(80%)上回る2,114億円(利益)となりました。
⑪ 税引前利益
当連結会計年度の税引前利益は、上記の理由から、前連結会計年度を2,113億円(35%)上回る8,127億円となりました。
⑫ 法人所得税
当連結会計年度の法人所得税は、米国税制改正に伴う繰延税金負債の取崩しがあった一方、税引前利益の増加による負担増に加え、資源関連資産の撤退に係る追加税金費用などにより、前連結会計年度から809億円(67%)負担増の2,023億円となりました。
⑬ 非支配持分に帰属する当期純利益
当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期純利益は、前連結会計年度から104億円(26%)増加し、502億円となりました。
⑭ 当社の所有者に帰属する当期純利益
以上の結果、当連結会計年度の当社の所有者に帰属する当期純利益は、前連結会計年度を1,199億円(27%)上回る5,602億円となりました。これにより、ROEは10.9%となりました。
(3) 当連結会計年度のセグメント別業績概況
(以下「当期純利益」は、「当社の所有者に帰属する当期純利益」を指しています。)
① 地球環境・インフラ事業グループ
地球環境・インフラ事業グループは、電力、水、交通や、その他産業基盤となる環境・インフラ分野における事業や関連する取引などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から166億円(24%)増加し、857億円となりました。
売上総利益は、前連結会計年度から略横ばいの381億円となりました。
持分法による投資損益は、千代田化工建設の持分損益改善などにより、前連結会計年度から141億円(61%)増加し、373億円となりました。
上記のほか、米国税制改正に伴う繰延税金負債の取崩益などにより、当期純利益は446億円となり、前連結会計年度と比較して212億円(91%)の増加となりました。
② 新産業金融事業グループ
新産業金融事業グループは、企業投資、リース、不動産・都市開発、物流などの分野において、投資及び運用事業を行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から314億円(24%)減少し、1,014億円となりました。
売上総利益は、国内不動産事業における物件売却益や物流事業における取扱高の減少などにより、前連結会計年度から103億円(17%)減少し、499億円となりました。
持分法による投資損益は、ファンド関連投資先の評価益増加やリース事業における持分利益の増加などにより、146億円(107%)増加し、283億円となりました。
上記のほか、保有不動産の交換益計上などにより、当期純利益は442億円となり、前連結会計年度と比較して87億円(25%)の増加となりました。
③ エネルギー事業グループ
エネルギー事業グループは、天然ガス・石油の生産・開発事業、液化天然ガス(LNG)事業、原油・石油製品・炭素製品・LPG等の販売取引、新規エネルギー事業の企画開発などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から501億円(4%)増加し、1兆2,394億円となりました。
売上総利益は、市況改善に伴う取引利益の増加などにより、前連結会計年度から180億円(48%)増加し、557億円となりました。
持分法による投資損益は、市況改善に伴う持分利益の増加などにより、188億円(74%)増加し、441億円となりました。
上記に加え、LNG関連事業における受取配当金が増加したものの、前連結会計年度においてシェールガス事業再編に伴う一過性利益164億円を「その他の損益-純額」等に計上したことの反動や、資源関連資産の入替に伴う損失、廃坑費用の追加引当、撤退に係る追加税金費用等の一過性損失などにより、当期純利益は203億円となり、前連結会計年度と比較して352億円(63%)の減少となりました。
④ 金属グループ
金属グループは、薄板・厚板などの鉄鋼製品、石炭・鉄鉱石などの鉄鋼原料、銅・アルミなどの非鉄金属の分野において、トレーディング、開発、投資などを通じて事業経営に携わっています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から851億円(9%)増加し、1兆217億円となりました。
売上総利益は、豪州石炭事業でのサイクロンの影響による生産・出荷数量減を営業施策で一部カバーしたことや市況上昇による増加、及び鉄鋼製品事業における販売価格上昇などにより、前連結会計年度から380億円(9%)増加し、4,528億円となりました。
持分法による投資損益は、銅事業及び鉄鉱石事業における市況改善に伴う持分利益の増加などにより、308億円(1,141%)増加し、335億円となりました。
上記のほか、前連結会計年度に計上した一過性損失の反動などにより、当期純利益は2,610億円となり、前連結会計年度と比較して1,131億円(76%)の増加となりました。
⑤ 機械グループ
機械グループは、工作機械、農業機械、建設機械、鉱山機械、エレベーター、エスカレーター、船舶、宇宙航空関連機器、自動車などの幅広い分野において、販売、金融、物流、投資などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から1,295億円(17%)増加し、8,765億円となりました。
売上総利益は、アジア自動車事業における取引利益の増加などにより、前連結会計年度から135億円(7%)増加し、1,956億円となりました。
持分法による投資損益は、アジア自動車事業における持分利益の増加などにより、235億円(443%)増加し、288億円となりました。
上記のほか、船舶事業における一過性損失の反動や売船益などにより、当期純利益は852億円となり、前連結会計年度と比較して558億円(190%)の増加となりました。
⑥ 化学品グループ
化学品グループは、原油、天然ガス、鉱物、植物、海洋資源などより生産されるエチレン、メタノール、塩といった基礎原料から、プラスチック、電子材料、食品素材、肥料や医農薬などの川下・川中製品まで、幅広い化学品の分野において、販売取引、事業開発、投資などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から2,255億円(20%)増加し、1兆3,596億円となりました。
売上総利益は、販売価格上昇等による取引利益の増加などにより、前連結会計年度から32億円(3%)増加し、1,162億円となりました。
持分法による投資損益は、石化関連事業における販売価格上昇等による持分利益の増加などにより、41億円(34%)増加し、162億円となりました。
上記のほか、基礎化学品関連事業において繰延税金負債計上等に伴う一過性損失を計上したことなどにより、当期純利益は306億円となり、前連結会計年度と比較して39億円(15%)の増加となりました。
⑦ 生活産業グループ
生活産業グループは、食料、衣料、日用品、ヘルスケアなど、消費者の生活に身近な分野で、原料の調達から、流通・小売に至るまでの幅広い領域において、商品・サービスの提供、事業開発などを行っています。
当連結会計年度において、当グループの収益は、前連結会計年度から6,722億円(30%)増加し、2兆8,764億円となりました。
売上総利益は、ローソン子会社化に伴う増加などにより、前連結会計年度から4,986億円(105%)増加し、9,718億円となりました。
持分法による投資損益は、ローソン子会社化に伴う減少などにより、前連結会計年度から113億円(32%)減少し、236億円となりました。
上記のほか、鮭鱒養殖事業における持分利益が増加した一方、前年度に計上したローソン子会社化及び食肉事業における一過性利益の反動や、食品原料事業における一過性損失などにより、当期純利益は747億円となり、前連結会計年度と比較して466億円(38%)の減少となりました。
地域別情報は以下のとおりです。
① 日本
当連結会計年度の収益は、生活産業グループにおけるローソン子会社化の影響などにより、前連結会計年度から7,762億円(20%)増加し、4兆5,699億円となりました。
② オーストラリア
当連結会計年度の収益は、金属グループの石炭事業における市況上昇の影響などにより、前連結会計年度から
872億円(11%)増加し、8,522億円となりました。
③ アメリカ
当連結会計年度の収益は、エネルギー事業グループの北米ガス事業におけるガス価格上昇及び取引数量増加の影響などにより、前連結会計年度から356億円(4%)増加し、8,333億円となりました。
④ その他地域
当連結会計年度の収益は、前連結会計年度から2,427億円(23%)増加し、1兆3,120億円となりました。
(4) 当連結会計年度のセグメント別の事業環境と翌連結会計年度以降の見通し
① 地球環境・インフラ事業グループ
当連結会計年度は、日米欧など先進国に加え、新興国についても成長基調となりました。その中で、当グループは、千代田化工建設の持分損益改善に加え、米国税制改正に伴う一過性利益等の影響もあり、当期純利益は2013年度に現体制でのグループとなって以来の過去最高益となりました。翌連結会計年度においても、引き続き先進国・新興国ともに底堅い経済成長が見込まれ、当グループが擁する事業領域においては、引き続き成長が見込める事業環境にあると考えています。
当グループの事業分野別の環境認識は以下のとおりです。
電力事業においては、先進国、新興国共に、環境規制強化が進む中で高効率ガス焚、再生可能エネルギーを中心に引き続き事業機会の拡大が見込まれています。先進国においては電力市場向け売電事業や、分散型発電事業、電力小売り事業等、新たなビジネスモデルへの取組機会拡大が進んでいます。
その他インフラ事業においても各分野で事業機会が見込まれています。プラントエンジニアリング事業は油価低迷に伴う一部案件の一時的な停滞が続いていましたが、油価は徐々に回復基調にあり、中長期的にはマクロなエネルギー需要は拡大する見込みであることから、新規プラント需要は着実に見込める事業環境にあると認識しています。また、交通インフラの需要も引き続き旺盛であり、安定収益の確立に努めることができる事業環境にあると考えています。水事業においては、アジア・中東・アフリカを中心に上下水処理・海水淡水化等のプラントに対する需要が引き続き堅調です。
環境関連事業においては、車載用途・産業用途電池の大幅な市場規模拡大が見込まれるなか、リチウムイオン電池の製造に取り組むと同時に、電池を活用する蓄電事業も含めて将来需要の取り込みを図ります。また中長期的な事業機会の取り込みを狙い、水素など次世代エネルギーにも引き続き取り組んでいきます。
② 新産業金融事業グループ
当連結会計年度は、保有不動産の交換益を計上したことや、ファンド評価益の増加などにより、前連結会計年度と比較して増益となりました。翌連結会計年度については、当グループの対面市場の景況は総じて安定的に推移していますが、当連結会計年度に計上した保有不動産の交換益の反動等により減益を見込んでいます。
当グループの主な事業分野の環境認識については以下のとおりです。
プライベートエクイティ関連事業については、日本では後継者不足を背景とした事業承継案件や、企業のカーブアウト案件の伸びが顕著です。アセアンでの成長資金ニーズ、米国でのプライベートエクイティファンドを活用した、成長戦略としてのM&Aも底堅く推移しており、経済環境が総じて堅調に推移していることも相俟って、今後更なる市場の拡大が期待されます。
リース事業は、国内では、総じて設備投資は堅調に推移している一方、企業のキャッシュ・フローが改善傾向にあるなか、平成29年4月~平成30年3月のリース取扱高が前年同期比96.1%(約4兆8,300億円)に留まる等、リースの活用は僅かに減少傾向となっています。海外では、新興国を中心とした経済成長に伴う一定の設備投資、及びリース浸透率の増加等により、マクロトレンドとしては引き続き堅調な市場拡大・需要増加が見込まれます。
国内不動産関連事業は、金融緩和策が当面維持される見通しであること等から、堅調に推移しています。上場不動産投資信託(J-REIT)のイールドスプレッドは3%~4%程度で推移しており、金融機関をはじめとする機関投資家からの不動産マーケットへの資金流入は継続しています。また、プレーヤーの多様化に加え、投資対象物件の供給が少なく、特に優良物件の取得に関しては厳しい競合環境が続いています。
海外不動産関連事業については、米国では、ファンダメンタルズは堅調に推移しており、米国経済は依然として底堅いものの、政策金利の引き上げに伴うイールドスプレッドの動向を注視しています。中国は、安定した経済成長を背景とした中間所得者数の増加に伴い、特に都市部での新規住宅開発のニーズが高まっています。アセアンでは、継続的な人口増加を背景に都市化が進み、中長期的な経済成長が期待され、不動産市場の拡大や都市開発需要の増加が見込まれます。
物流事業は、新興国の経済成長やeコマースの普及等に伴い、物流量が増加し、また、消費者ニーズが高度化、多様化しています。また、物流業界では、ロボティクス等の先端技術の活用や、世界的な合従連衡が引続き進行する見通しです。
③ エネルギー事業グループ
当グループは北米、東南アジア、豪州などにおいて、天然ガス・石油の生産・開発事業、液化天然ガス(LNG)事業を行っており、石油・ガス価格は当グループの業績に少なからぬ影響を与えます。
当連結会計年度の原油価格(Brent)は米国シェールオイルの生産が増大しているものの、アジアを中心とした需要の堅調な伸び、また主要産油国の減産合意延長もあり60ドル台まで上昇しました。翌連結会計年度にも引き続きアジアを中心とした需要の伸び、主要産油国の減産合意継続が見込まれることから、需給は徐々に回復していく見通しであるものの、米国シェールオイルの増産による下振れ要因や、米国のイランへの経済制裁再開といった地政学リスクもあり原油相場は依然として方向性が定まらない状態にあり、今後も動向を注視する必要があります。なお、翌連結会計年度の業績見通しの算出に際しては、原油価格を、ドバイ原油1バーレル当たり60ドルを前提としています。ただし、LNG・原油の価格変動が当グループの業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
④ 金属グループ
当連結会計年度の鋼材・金属市況は、底堅い需要に支えられ、全般的に堅調に推移しました。
平成29年暦年の世界粗鋼生産量は前年比5.3%増の約17億トンとなり、3年ぶりに前年を上回り過去最高を更新しました。主な要因としては、国別生産量第1位で全世界粗鋼生産量の約半分を占める中国で、違法鋼材である「地条鋼」が撤廃された分、高炉での粗鋼生産が増加し、前年比5.7%増の8.3億トンと過去最高を記録したこと、第3位のインドで旺盛なインフラ投資需要により1.01億トンと前年比6.2%増加したこと等があり、国別に事情は異なりますが、総じて好調な経済に支えられ生産量が増加しました。なお、第2位の日本は、生産不調や設備定期改修が影響し、前年比0.1%減の1.05億トンと僅かではありますが上位10か国で唯一の減産となりました。
また、鉄鋼原料であり、金属グループの主力事業の1つである原料炭についても、堅調な粗鋼生産を背景に需給はタイトに推移しました。特に、平成29年3月末に豪州北東部クイーンズランド州に大型サイクロンが上陸した後は、主に鉄道網への影響から原料炭需給が急速に逼迫する局面もありました。もう1つの主力事業である銅に関しても、世界最大の需要国である中国の経済成長や好調な米国経済指標にも下支えされ、需要は底堅い状況にありました。
この様な事業環境下、当グループの当期純利益は、前連結会計年度に計上した一過性損失の反動に加え、豪州石炭事業でのサイクロンの影響による生産・出荷数量減を営業施策で一部カバーしたこと、及び市況上昇による持分利益・受取配当金の増加などが寄与し、前連結会計年度と比較して増益となりました。
中長期的には新興国の経済成長が世界経済を牽引し、金属資源・製品の需要や市況は今後も底堅く推移していく見通しです。
⑤ 機械グループ
当連結会計年度は、新興国を中心にそれぞれの事業分野において市況は回復基調となりました。このような環境の下、当グループは、主に船舶事業における一過性損失の反動や売船益、及びアジア自動車事業における持分利益の増加などにより、前連結会計年度と比較して大幅な増益となりました。事業環境は回復基調が続くと予想され、今後の成長に向けた事業基盤の拡充及び機能の強化を進めていきます。
当グループの主な事業分野の環境に対する認識については以下のとおりです。
産業機械事業における国内レンタル事業は、震災復興工事向けのレンタル需要は落ち着きつつあるものの、老朽化したインフラの復旧工事や東京オリンピック関連の多数の建設投資は旺盛で好調を維持しています。翌連結会計年度も当連結会計年度と同じレベルの建設投資が行われると見込んでいます。エレベーター事業は、アセアン諸国における堅調な建設投資を背景に引き続き着実な成長が見込まれます。工作機械事業は、国内では当連結会計年度受注高が過去最高となっており、翌連結会計年度も当連結会計年度以上の推移と見込んでいます。また、北米では当連結会計年度後半から引き続き、翌連結会計年度も好調に推移すると予測されるものの、米中貿易摩擦による制裁関税対象品等を注視していく必要があります。
農業機械事業は、国内については引き続き農業の高度化と大規模化が進むことから、当事業の対象市場規模は徐々に拡大する見込みです。タイにおいては、農業の効率化と高度化に伴う機械化の流れにより、農機市場の回復が見込まれます。
船舶関連事業は、撒積船市況が歴史的低水準からの回復途上であり、今後、世界経済が順調に伸び、新造船の投機的発注が抑制されれば、事業環境も好転していくと予想されますが、荷動きと船腹量の需給バランスを慎重に見守っていきます。ガス船事業については、近年の原油価格低迷の長期化等の影響によりLNGプロジェクトの新規開発への投資決定実績は限定的でしたが、昨年末以降の世界的なLNG需要の高まりにより中長期的には事業環境は改善に向かうと予想されます。
三菱自動車関連事業は、インドネシア・ロシアを始めとした新興国市場の自動車需要も回復傾向にあり、事業環境は好転し始めています。引き続き新興国を中心とした重要市場において、事業基盤の拡充による将来の市場成長の取り込みを目指すとともに、その他市場での販売の強化を行っていきます。
いすゞ自動車関連事業では、主力のタイ市場において平成29年暦年の自動車全需が前年比13%増と前連結会計年度を底に回復基調へ転じており、翌連結会計年度以降も堅調さを維持すると予想されます。自動車市場の動向を注視しながら、今後も中長期的な成長を目指し、タイに加えて、新興国を中心とした他市場での取り組みを強化していきます。
⑥ 化学品グループ
当連結会計年度の化学品市況は、原油等資源価格の高位安定により、総じて堅調に推移しました。
新興国の需要成長が継続する一方、中国での環境規制強化に伴う生産設備の稼働率低下も、製品市況高に影響を及ぼしました。
今後も、アジア市場を中心とした需要の伸長が期待されるものの、産油国を取り巻く環境や世界の経済成長等において、先行き不透明な状況が当面続くものと予想されます。
中長期的には、シェールガス革命を背景とした北米石油化学産業の台頭による構造変化(業界再編、設備統廃合等)や、EV化に代表される低炭素社会の実現に向けた素材開発等が見込まれ、当グループ機能を発揮する事業機会は拡大すると予想されます。また、「ライフサイエンス」分野では、新興国での生活水準の向上や、先進国での高齢化や医療費削減といった課題に対し、健康・安全・安心・おいしさへの関心が高まっており、市場の拡大が見込まれます。
当グループは、こうした事業環境やニーズの変化に対応すべく、食と健康を中心としたライフサイエンス事業を推進し、国内外市場の成長を積極的に取り込んでいきます。また、サウジアラビアの石油化学事業等の中核ビジネスの更なる強化を図ると共に、化学品のバリューチェーン全体で総合力を活かした事業を継続的に推進します。
⑦ 生活産業グループ
当連結会計年度の国内消費市場は、株安進行等の下押し要因がありつつも、景況感は比較的良好に推移しました。国内消費市場規模は人口減少により縮小傾向にあるとみられますが、高齢社会の進行に伴う生活スタイルの変化などによって新たな需要創出が期待できると捉えています。
海外消費市場においては、米国経済の好調や中国経済の安定成長の継続が主因となり世界経済の好調が続く見通しにて、先進国・新興国ともに堅調な市場の成長が期待されます。
このような事業環境を踏まえ、国内ではバリューチェーンの強化、海外では市場成長の取り込みによる事業拡大を進めていきます。
当連結会計年度の当グループの当期純利益は、鮭鱒養殖事業における持分利益が増加した一方、前連結会計年度に計上したローソン子会社化及び食肉事業における一過性利益の反動や、食品原料事業における一過性損失などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。翌連結会計年度については、当連結会計年度に計上した一過性損失の反動などにより増益を見込んでいます。
(5) 販売、仕入及び受注の状況
① 販売の状況
「(2) 当連結会計年度の業績の概況」及び「第5 経理の状況」におけるセグメント情報を参照願います。
② 仕入の状況
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しています。
③ 受注の状況
受注は販売と概ね連動しているため、記載は省略しています。
(6) 流動性と資金の源泉
① 資金調達方針と流動性マネジメント
当社では事業活動を支える資金調達に際して、低コストでかつ安定的に資金が確保できることを目標として取り組んでいます。資金調達にあたっては、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と銀行借入等の間接金融とを機動的に選択・活用しており、その時々でのマーケット状況での有利手段を追求しています。当社は資本市場でのレピュテーションも高く、加えて間接金融についても、メガバンク以外に外銀・生保・地銀等の金融機関とも幅広く好関係を維持しており、調達コストは競争力のあるものとなっています。今後とも長期資金を中心とした資金調達を継続すると共に、十分な流動性の確保を行っていく方針です。
当連結会計年度の資金調達活動としては、前連結会計年度に引き続き、財務健全性の向上に努めつつ、外貨建社債等による調達を行いました。
これらの資金調達活動の結果、当連結会計年度末のグロス有利子負債残高は、前連結会計年度末から4,295億円減少し4兆9,544億円となり、このうち85%が長期資金となっております。有利子負債のうち、6,000億円はハイブリッドファイナンスであり、格付機関は残高の50%である3,000億円を資本と同等に扱っています。なお、当社単体のグロス有利子負債残高は3兆5,252億円であり、このうち長期資金は91%を占め、平均残存期間は約6年となっています。
翌連結会計年度は、引き続き資金調達ソースの多様化等を通じて、中長期的に安定した調達基盤を維持する方針です。また、連結ベースでの資金効率の向上に向けた取り組みも継続します。
金融市場の環境は、地政学的リスクや主要国の金融政策の変化等、引き続き予断を許さない状況のため、細心の注意を払って対処すべく、現預金等及び銀行融資枠(コミットメントライン)を十分に確保し、流動性を維持していきます。
連結ベースでの資金管理体制については、当社を中心に国内外の金融子会社、海外現地法人等において集中して資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンス方針を原則としています。結果として、当連結会計年度末では、連結有利子負債のうち79%が当社、国内外の金融子会社、海外現地法人等による調達となっています。今後も、連結経営の深化を見据え、連結ベースでの資金管理体制の更なる充実を図ります。
当連結会計年度末の流動比率は連結ベースでは138%となっており、流動性の点で当社の財務健全性は高いといえます。また、当連結会計年度末時点の当社、米国三菱商事、Mitsubishi Corporation Finance、MC Finance & Consulting Asia、MC Finance AustraliaでCP及び1年以内に償還を予定している社債を合わせた短期の市場性資金が2,609億円あるのに対して、現預金、フィーを支払って確保しているコミットメントライン、一年以内に満期の到来する公社債が合計で1兆5,408億円あり、カバー超過額は1兆2,799億円と十分な水準にあると考えています。なお、当社のコミットメントラインについては、円貨で5,100億円を国内主要銀行より、外貨で主要通貨13億米ドル、ソフトカレンシー1.5億米ドル相当を欧米を中心とした国内外の主要銀行より取得しています。
当社ではグローバルな資金調達とビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の3社から格付けを取得しています。3社の平成30年5月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがAA-/a-1+(見通し安定的)、ムーディーズがA2/P-1(見通しネガティブ)、S&PがA/A-1(見通し安定的)となっています。
② 資産及び負債・資本
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より2,834億円(2%)増加し、16兆370億円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末より3,115億円(5%)増加し、6兆7,788億円となりました。これは、期末休日の影響や取引価格の上昇及び取引数量の増加などに伴い、営業債権及びその他の債権が増加したことなどによるものです。
非流動資産は、略横這いの9兆2,582億円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末より1,927億円(2%)減少し、9兆7,718億円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末より2,391億円(5%)増加し、4兆9,169億円となりました。これは、期末休日の影響や取引価格の上昇及び取引数量の増加などに伴い、営業債務及びその他の債務が増加したことなどによるものです。
非流動負債は、前連結会計年度末より4,319億円(8%)減少し、4兆8,548億円となりました。これは、主に短期への振替により社債及び借入金が減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末より4,762億円(8%)増加し、6兆2,652億円となりました。
当連結会計年度末の当社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末より4,152億円(8%)増加し、5兆3,324億円となりました。これは、連結純利益の積み上がりがあったことなどによるものです。
また、非支配持分は、前連結会計年度末より610億円(7%)増加し、9,328億円となりました。
有利子負債総額から現金、現金同等物及び定期預金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末より2,773億円(7%)減少し、3兆7,142億円となりました。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,400億円減少し、1兆55億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動により資金は7,425億円増加しました。これは、法人所得税の支払いなどがあったものの、営業収入や配当収入などにより、資金が増加したものです。
また、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払い増加はあったものの、営業収入の増加に加え、配当収入の増加などにより、前連結会計年度と比較して1,595億円の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動により資金は3,176億円減少しました。これは、固定資産や上場有価証券の売却などによる収入があったものの、三菱自動車工業株式の取得をはじめとする関連会社への投資や設備投資などにより、資金が減少したものです。
また、当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、三菱自動車工業株式の取得をはじめとする関連会社への投資や設備投資の増加などにより、前連結会計年度と比較して、1,380億円の減少となりました。
以上の結果、営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローの合計であるフリーキャッシュ・フローは4,249億円の資金増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動により資金は5,543億円減少しました。これは、借入金の返済や社債の償還、親会社における配当金の支払いなどにより、資金が減少したものです。
また、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金返済の減少などにより、前連結会計年度と比較して、1,979億円の増加となりました。
(7) 経営戦略の進捗状況
「1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】を参照願います。