有価証券報告書-第66期(平成29年10月1日-平成30年9月30日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績の状況
当社グループは“はかる”技術を基本としたビジネスコンセプトを継続しながら、研究開発市場に傾注してまいりました。そして国内産業の次なる成長の糧となる“新しい技術・製品の開発”の一翼を担うべく、欧米を中心にした先端計測技術・機器の導入と、ソフトウェアを中心にした自社システム製品の増強に力を入れてまいりました。また、中国を中心としたアジア市場に加え、米国市場にも目を向け、当社製品のユーザー開拓にも注力してまいりました。
この結果、連結売上高は235億9千万円(前連結会計年度比9.3%増)となり、この内、国内取引高は224億5百万円、中国や米国向けを中心とした海外取引高は11億8千5百万円となりました。
利益面では、営業利益は14億2千7百万円(前連結会計年度比11.7%増)、経常利益14億4千5百万円(前連結会計年度比39.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は12億2千万円(前連結会計年度比146.5%増)となりました。
各セグメントの業績は、次のとおりであります。
(情報通信)
情報通信におきましては、主力のSpirent Communications社製品のネットワーク機器性能試験装置やテスト自動化ソフトの売上は堅調に推移し、次世代無線通信(5G)用で無線伝搬路擬似装置の受注もありました。また、自社製品のSynesisパケットキャプチャ製品は最上位の100Gイーサネットモデルが大手キャリアから採用され堅調な受注が続いております。エンタープライズ向けにはTenable社のセキュリティ脆弱性検出用のサブスクリプション製品の販売が好調でした。しかし、上半期の競合との価格競争による売上高の減少を補うまでには至りませんでした。この結果、売上高は44億5千7百万円(前連結会計年度比4.6%減)、営業利益は3億3千5百万円(前連結会計年度比12.1%減)となりました。
(機械制御/振動騒音)
機械制御/振動騒音におきましては、自動車開発を中心とする市場への計測システムの販売が引き続き好調であったことを背景に、新規取り扱い製品の販売も寄与し、順調に販売を伸ばすことができました。一方、将来に向けた大型設備投資、新規事業のスタートなどにより経費が増加し、減益となりました。この結果、売上高は56億5百万円(前連結会計年度比13.3%増)、営業利益は10億4千万円(前連結会計年度比14.0%減)となりました。
(物性/エネルギー)
物性/エネルギーにおきましては、引き続き自動車向け次世代電池やパワーエレクトロニクス評価システムが
販売好調でした。特に電池関連の充放電評価システムは製品競合力もあり、大幅に販売を伸ばすことができました。電池の基礎研究分野向け市場では輸入製品に当社開発製品を組み合わせることにより、より競合力を増した販売ができております。この結果、売上高は39億1千7百万円(前連結会計年度比31.9%増)、営業利益は6億9百万円(前連結会計年度比255.7%増)となりました。
(EMC/大型アンテナ)
EMCにおきましては、主要顧客である国内自動車関連への販売が継続して好調であり、中国における電気自動車関連の販売もさらに増加しました。実施していた投資は計画通り本年度末で終了し、営業利益は今後大幅に増加する見込みです。大型アンテナにおきましては、衛星追尾関連のプロジェクトの販売遅れにより低調でした。この結果、売上高は33億6千1百万円(前連結会計年度比7.0%増)、営業利益は6百万円(前連結会計年度比91.7%減)となりました。
(海洋/特機)
海洋/特機におきましては、民間企業からの安定した需要に下支えされたうえで、公官庁の需要が増え、新規取り扱い商品の効果もあり、これらの需要に対応することに成功しました。今後有力と考えている海洋セキュリティー関連のビジネスも少しずつ立ち上がりを見せております。この結果、売上高は21億5千2百万円(前連結会計年度比10.7%増)、営業利益は6億5千2百万円(前連結会計年度比9.6%増)となりました。
(ソフトウエア開発支援)
ソフトウエア開発支援におきましては、構成管理ツールは、大手電子機器メーカ向けの大型案件獲得があり、また、既存ユーザからのライセンス追加などで売上高が対前年比50%以上の伸びを示しました。また、自動車業界向けCERT-C,AUTOSAR C++対応の静的解析ツールや、ソースコード脆弱性診断テストツールの販売も前年から大幅に伸長しています。この結果、売上高は14億9百万円(前連結会計年度比30.3%増)、営業利益は3億2千2百万円(前連結会計年度比29.0%増)となりました。
(ナノイメージング)
ナノイメージングにおきましては、厳しい価格の競合状態が継続しており販売が減少しましたが、昨年より実施している経費の削減、および選択と集中の推進による売買益率向上の効果が出て、増益となりました。この結果、売上高は9億8百万円(前連結会計年度比28.3%減)、営業利益は5千1百万円(前連結会計年度は4千3百万円の営業損失)となりました。
(メディカルシステム)
メディカルシステムにおきましては、医療機関向けの画像診断ソフトウエアシステムや国内医療機器メーカ向けOEM製品が堅調な売上を達成しましたが、中国向け液晶評価システムビジネスの動きが鈍く販売に遅れが発生しています。この結果、売上高は9億3千7百万円(前連結会計年度比23.9%減)、営業利益は2千6百万円(前連結会計年度比72.3%減)となりました。
(セキュリティ&ラボカンパニー)
セキュリティ&ラボカンパニーにおきましては、ITセキュリティ事業におけるDDoS対策製品の売上が前連結会計年度比で大幅増でした。一方、ITセキュリティ事業および新設組織のOTセキュリティ事業(産業セキュリティ)の開発とプロモーション活動により経費が増加しました。この結果、売上高は8億4千2百万円(前連結会計年度比154.8%増)、営業損失は2億3千万円(前連結会計年度は3億6千1百万円の営業損失)となりました。
財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は、141億3千3百万円(前連結会計年度末は128億2百万円)となり、13億3千1百万円増加しました。これは現金及び預金の増加(25億3千万円から32億8千7百万円へ7億5千6百万円増)、受取手形及び売掛金の増加(43億4千万円から51億2千7百万円へ7億8千7百万円増)、及び有価証券の減少(39億5千3百万円から35億8千9百万円へ3億6千3百万円減)が主な要因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末の固定資産は、206億9千3百万円(前連結会計年度末は209億2千2百万円)となり、2億2千8百万円減少しました。これは投資有価証券の増加(82億2千万円から87億5千7百万円へ5億3千7百万円増)、長期預金の減少(12億円から7億円へ5億円減)、建物及び構築物(純額)の減少(22億8千2百万円から22億1千3百万円へ6千8百万円減)、及び工具、器具及び備品(純額)の減少(8億9百万円から7億1千7百万円へ9千2百万円減)が主な要因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は、38億2百万円(前連結会計年度末は38億1千7百万円)となり、1千4百万円減少しました。これはその他の増加(10億7百万円から13億1千5百万円へ3億8百万円増)、及び支払手形及び買掛金の減少(17億3千8百万円から13億3千万円へ4億8百万円減)が主な要因であります。
(固定負債)
当連結会計年度末の固定負債は、9億1百万円(前連結会計年度末は7億6千5百万円)となり、1億3千5百万円増加しました。これは繰延税金負債の増加(8千2百万円から2億円へ1億1千7百万円増)が主な要因であります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、301億2千3百万円(前連結会計年度末は291億4千1百万円)となり、9億8千2百万円増加しました。これは利益剰余金の増加(211億5千5百万円から218億2千3百万円へ6億6千7百万円増)、及びその他有価証券評価差額金の増加(6億6千5百万円から9億7千1百万円へ3億6百万円増)が主な要因であります。
② キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ7億5千6百万円増加し、51億8千6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、税金等調整前当期純利益18億3千万円及び減価償却費8億8千1百万円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、法人税等の支払額7億5千1百万円によるものであります。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローは11億3千5百万円の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入15億5百万円、定期預金の払戻による収入5億円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、投資有価証券の取得による支出19億1千8百万円によるものであります。
この結果、投資活動によるキャッシュ・フローは1億6千6百万円の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な減少要因は、配当金の支払額5億4千3百万円によるものであります。
この結果、財務活動によるキャッシュ・フローは5億4千4百万円の減少となりました。
③生産、受注及び販売の状況
a. 受注状況
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前期比(%) | 受注残高(千円) | 前期比(%) |
情報通信 | 4,605,464 | △0.4 | 873,055 | +20.4 |
機械制御/振動騒音 | 5,533,989 | +2.8 | 1,550,969 | △4.4 |
物性/エネルギー | 4,163,193 | +17.3 | 1,448,027 | +20.5 |
EMC/大型アンテナ | 3,725,136 | +13.0 | 1,772,874 | +25.8 |
海洋/特機 | 1,904,799 | △34.2 | 1,115,370 | △18.1 |
ソフトウエア開発支援 | 1,388,584 | +32.4 | 80,575 | △20.3 |
ナノイメージング | 1,234,574 | +50.0 | 531,404 | +159.0 |
メディカルシステム | 937,336 | △23.9 | 418,949 | △0.1 |
セキュリティ&ラボカンパニー | 457,364 | △41.4 | 103,811 | △78.8 |
合計 | 23,950,442 | +1.3 | 7,895,037 | +4.8 |
(注) 金額表示は販売価格(消費税等抜き)によっております。なお受注高には条件変更、為替変動に伴う金額調整分を含めております。
b. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 売上高(千円) | 前期比(%) |
情報通信 | 4,457,407 | △4.6 |
機械制御/振動騒音 | 5,605,379 | +13.3 |
物性/エネルギー | 3,917,156 | +31.9 |
EMC/大型アンテナ | 3,361,126 | +7.0 |
海洋/特機 | 2,152,109 | +10.7 |
ソフトウエア開発支援 | 1,409,147 | +30.3 |
ナノイメージング | 908,325 | △28.3 |
メディカルシステム | 937,677 | △23.9 |
セキュリティ&ラボカンパニー | 842,386 | +154.8 |
合計 | 23,590,716 | +9.3 |
(注)1 上記金額には消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先別の販売実績及びその割合については、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
その作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する経営者の見積りを必要とします。
経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高235億9千万円(前連結会計年度比9.3%増)、経常利益14億4千5百万円(同39.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は12億2千万円(同146.5%増)となりました。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。
(ⅰ)売上高
売上高の分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(ⅱ) 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、130億1千6百万円(前連結会計年度比10.6%増)、売上総利益は105億7千4百万円(同7.8%増)となりました。販売費及び一般管理費は、従業員給料及び賞与の増加、福利厚生費の増加等に伴い91億4千7百万円(同7.2%増)となりました。
(ⅲ) 営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度の2億4千1百万円の損失から、1千7百万円の利益へ2億5千9百万円増加しました。これは主に、持分法による投資損失が2億5千4百万円減少したこと等によるものです。
(ⅳ) 特別損益
特別損益は、前連結会計年度の3千7百万円の利益から、3億8千4百万円の利益へ3億4千7百万円増加しました。これは主に、当連結会計年度において投資有価証券売却益が3億7千1百万円増加したこと等によるものです。
(3) 財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(4) キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」をご参照下さい。
(5)中期経営計画
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②経営成績の分析」に記載のとおり、当連結会計年度は、連結売上高235億9千万円(前連結会計年度比9.3%増)、営業利益14億2千7百万円(前連結会計年度比11.7%増)となりました。翌連結会計年度は、連結売上高240億円(当連結会計年度比1.7%増)、営業利益14億円(当連結会計年度比1.9%減)と横ばいの予想をしておりますが、中期経営計画の経営方針として掲げている、自動車産業への注力、海外事業の伸張、新しい事業モデルの確立により、2021年9月期目標値である連結売上高260億円、営業利益20億円、ROE5.0%を目指してまいります。
(6)財務方針
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載のとおりで、資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本方針としております。また、市場変化に対応したビジネスラインの取捨選択を適宜実施すると共に、有望な新規ラインについては既存の組織にとらわれず、初期の段階から独立した部課単位として集中的な投資を行っていくことで、効率的な運営を行ってまいります。