有価証券報告書-第69期(令和2年10月1日-令和3年9月30日)

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2021/12/24 14:10
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績の状況
“はかる”ことは、新しいモノ・コトを創り出すために欠かすことのできないプロセスであり、当社グループは、最先端の“はかる”技術のリーディングカンパニーとして技術革新に貢献しています。計測機器・技術の輸入販売を事業ベースとし、自社のオリジナル製品・ソリューションの開発により、日本市場だけでなく中国や米国市場にも進出し、事業の拡大に注力しています。当社事業を成長させることはサステナブルな社会の実現に直接貢献するものであり、SDGsへの取り組みに基づく成長戦略によって企業価値の向上を推進してまいります。
当社グループの経営成績につきましては、連結売上高は235億1千1百万円(前連結会計年度比1.8%増)となり、この内、国内売上高は225億7千万円、中国や米国向けを中心とした海外売上高は9億4千1百万円となりました。利益面では、営業利益17億2千5百万円(前連結会計年度比38.1%増)、経常利益22億3千1百万円(前連結会計年度比53.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は17億3千4百万円(前連結会計年度比20.6%増)となりました。
また、当連結会計年度は中期経営計画“TY2021”(経営指標:売上高260億円、営業利益20億円、ROE5.0%)の最終年度でした。受注高は256億6千6百万円(前連結会計年度比9.5%増)と順調でしたが、新型コロナウィルス感染拡大(以下、感染拡大と言う)によって、海外におけるロックダウン、半導体不足や電子部品の納入遅延、海外仕入先の技術者が来日できないことによる検収遅れなどにより、売上高、営業利益につきましては目標未達となりました。一方で、ROEにつきましては資本効率の向上などにより5.8%と目標を達成いたしました。
各事業のセグメントごとの業績は、次のとおりです。
(情報通信/情報セキュリティ)
情報通信におきましては、自動車会社からの大型システム受注や、通信事業者における5G試験設備、テレワークの普及に伴う通信品質の試験需要の高まりなどにより、受注、売上ともに堅調でした。情報セキュリティにおきましても、通信可視化およびDDoS対策などキャリア向け製品の販売が大きく伸長しました。さらに、採算性の改善により営業利益は大幅に増加しました。この結果、売上高は68億4千5百万円(前連結会計年度比7.2%増)、営業利益は7億6千1百万円(前連結会計年度比873.1%増)となりました。
(機械制御/振動騒音)
機械制御/振動騒音におきましては、自動車会社を中心に研究開発用センサーの受注状況は引き続き穏やかな回復傾向にあります。一方、自動車会社における振動・騒音など、従来の研究開発分野での大型システムへの投資意欲は低調で、受注、売上ともに影響を受けました。また、半導体不足や電子部品の納入遅延が売上に影響しました。この結果、売上高は43億5千9百万円(前連結会計年度比11.2%減)、営業利益は7億4千1百万円(前連結会計年度比21.8%減)となりました。
(物性/エネルギー)
物性/エネルギーにおきましては、カーボンニュートラルやESG投資といった潮流の中、自社開発製品の全固体電池開発用測定システムや、EV(電気自動車)向け急速充電評価装置の販売が好調でした。国が掲げている再生可能エネルギープロジェクトからのニーズも多く、エネルギー分野の販売も順調でした。この結果、売上高は48億9千7百万円(前連結会計年度比23.8%増)、営業利益は8億4千8百万円(前連結会計年度比48.7%増)となりました。
(EMC/大型アンテナ)
EMC/大型アンテナにおきましては、新開発のEMCソフトウェアの販売は計画どおり推移しましたが、大型システムの販売は感染拡大の影響による予算先送りや、海外仕入先の技術者が来日できないことによる検収遅れが生じました。中国市場では、自動車向けEMC及び通信品質評価設備の需要は回復し受注は大幅に増加しましたが、顧客の設備環境が整わずに売上の遅れが生じました。この結果、売上高は32億6千5百万円(前連結会計年度比17.1%減)、営業利益は2億6千6百万円(前連結会計年度比7.8%減)となりました。
(海洋/特機)
海洋/特機におきましては、感染拡大の影響を受けていた民間需要は従来水準に戻りつつあり、注力してきた小型無人ボートを使った計測システムも受注に至りはじめました。また、特機関連の受注は大幅に増加しました。しかし、本セグメントの特長として売上までの納入期間が長いため、受注残高は増加していますが当連結会計年度の売上は減少しました。この結果、売上高は13億円(前連結会計年度比6.8%減)、営業利益は2億1千6百万円(前連結会計年度比3.4%減)となりました。
(ソフトウエア開発支援)
ソフトウエア開発支援におきましては、ゲーム業界におけるソフトウェア構成管理ツールの需要が高く、ライセンス追加購入及びサブスクリプションの更新などにより販売が増加しました。また、セキュリティ脆弱性検査ツールにつきましてもアプリケーションセキュリティへの認識が高まっており、継続利用を含むサブスクリプション販売が堅調に推移しました。この結果、売上高は17億2千万円(前連結会計年度比16.0%増)、営業利益は3億8千万円(前連結会計年度比54.7%増)となりました。
(ライフサイエンス/マテリアルズ)
ライフサイエンス/マテリアルズにおきましては、医療機関向けビジネスが感染拡大の影響から回復基調にあり、主力製品である胸部読影支援システムや整形外科用プランニングツールなどの売上が増加しましたが、ナノ分析装置関連は、低価格製品との競合により売上が減少しました。そのため、売上が計画に届かず、採算性は改善しつつも黒字化には至りませんでした。この結果、売上高は11億2千1百万円(前連結会計年度比9.0%増)、営業損失は1千1百万円(前連結会計年度は9千5百万円の営業損失)となりました。

財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は、216億5百万円(前連結会計年度末は154億5百万円)となり、62億円増加しました。これは有価証券の増加(52億1千8百万円から106億8千7百万円へ54億6千8百万円増)、商品及び製品の増加(16億1千2百万円から24億3百万円へ7億9千1百万円増)、流動資産のその他の増加(4億7千8百万円から8億1百万円へ3億2千3百万円増)、及び現金及び預金の減少(38億8千万円から34億9千6百万円へ3億8千3百万円減)が主な要因です。
(固定資産)
当連結会計年度末の固定資産は、172億7千3百万円(前連結会計年度末は191億1千4百万円)となり、18億4千万円減少しました。これはソフトウェアの減少(8億1千2百万円から6億3千2百万円へ1億8千万円減)、及び投資有価証券の減少(69億8千1百万円から54億7千9百万円へ15億1百万円減)が主な要因です。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は、43億6千9百万円(前連結会計年度末は35億7百万円)となり、8億6千1百万円増加しました。これは支払手形及び買掛金の増加(12億4千6百万円から13億6千2百万円へ1億1千6百万円増)、賞与引当金の増加(4億5千1百万円から7億4千1百万円へ2億9千万円増)、及び流動負債のその他の増加(13億8百万円から16億9千5百万円へ3億8千6百万円増)が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末の固定負債は、47億7千3百万円(前連結会計年度末は7億4千7百万円)となり、40億2千5百万円増加しました。これは長期前受金の増加(0円から40億6千万円へ40億6千万円増)が主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、297億3千7百万円(前連結会計年度末は302億6千4百万円)となり、5億2千7百万円減少しました。これは利益剰余金の増加(226億9千1百万円から234億1千1百万円へ7億1千9百万円増)、自己株式の増加による減少(△17億1千2百万円から△27億2千1百万円へ10億8百万円減)、及びその他有価証券評価差額金の減少(3億6千1百万円から1億9千6百万円へ1億6千5百万円減)が主な要因です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ13億8千3百万円減少し、49億9千6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、収用補償金の受取額40億6千万円及び税金等調整前当期純利益25億7千万円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、たな卸資産の増加額8億1千4百万円及び法人税等の支払額7億8千6百万円によるものです。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローは60億5千万円の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、有価証券の売却による収入19億4千7百万円及び投資有価証券の売却による収入16億9千1百万円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、有価証券の取得による支出68億6千1百万円及び投資有価証券の取得による支出16億1千7百万円によるものです。
この結果、投資活動によるキャッシュ・フローは53億2千8百万円の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な減少要因は、自己株式の取得による支出11億3千1百万円及び配当金の支払額9億8千1百万円によるものです。
この結果、財務活動によるキャッシュ・フローは21億5千1百万円の減少となりました。
③ 生産、受注及び売上の状況
a. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称受注高(千円)前期比(%)受注残高(千円)前期比(%)
情報通信/情報セキュリティ7,038,260+6.31,461,292+15.2
機械制御/振動騒音4,738,474+7.11,220,535+45.0
物性/エネルギー5,051,479+7.71,985,423+8.4
EMC/大型アンテナ3,684,090△5.52,877,011+17.0
海洋/特機2,305,109+79.41,562,305+180.1
ソフトウエア開発支援1,694,441+11.9133,413△16.5
ライフサイエンス/マテリアルズ1,154,653+14.1438,567+8.1
合計25,666,508+9.59,678,548+28.6

(注) 金額表示は販売価格(消費税等抜き)によっております。なお受注高には条件変更、為替変動に伴う金額調整分を含めております。
b. 売上実績
当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称売上高(千円)前期比(%)
情報通信/情報セキュリティ6,845,495+7.2
機械制御/振動騒音4,359,681△11.2
物性/エネルギー4,897,892+23.8
EMC/大型アンテナ3,265,473△17.1
海洋/特機1,300,490△6.8
ソフトウエア開発支援1,720,796+16.0
ライフサイエンス/マテリアルズ1,121,804+9.0
合計23,511,633+1.8

(注)1 上記金額には消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先別の売上実績及びその割合については、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営計画の中で具体的な経営指標等の目標値を定めております。投資価値のある企業を目指し、連結売上高、連結営業利益、ROEを指標として、2021年9月期の目標値を、連結売上高260億円、連結営業利益20億円、ROE5.0%としております。
当連結会計年度は、売上高235億1千1百万円(前連結会計年度比1.8%増)、営業利益は17億2千5百万円(前連結会計年度比38.1%増)、経常利益22億3千1百万円(前連結会計年度比53.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益17億3千4百万円(前連結会計年度比20.6%増)、ROE5.8%となりました。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。
(ⅰ) 売上高
売上高の分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(ⅱ) 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、131億9千4百万円(前連結会計年度比1.9%減)、売上総利益は103億1千6百万円(同6.9%増)となりました。販売費及び一般管理費は、従業員給与賞与の増加、賞与引当金繰入額の増加、及び旅費交通費の減少等に伴い85億9千万円(同2.3%増)となりました。
(ⅲ) 営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度の2億円の利益から、5億6百万円の利益へ3億5百万円増加しました。これは主に、受取配当金の増加6千2百万円、受取保険金の増加6千1百万円、有価証券売却益の増加6千2百万円、為替差益の増加8千8百万円、及び助成金収入の増加7千3百万円等によるものです。
(ⅳ) 特別損益
特別損益は、前連結会計年度の7億7千2百万円の利益から、3億3千9百万円の利益へ4億3千3百万円減少しました。これは主に、固定資産売却益の減少4千万円、及び投資有価証券売却益の減少3億9千5百万円等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
当社グループの資金需要のうち主なものは、売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用、各種税金の納付及び配当金の支払です。また、成長戦略として、自社のオリジナル製品・ソリューションの開発投資を積極的に行うとともに、M&Aによる事業拡大を検討しており、有望なM&A案件があれば投資を実行してまいります。これらの必要な資金に関しては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本方針としております。
また、株主の皆様への利益還元を重要な経営政策と考えており、安定的かつ積極的な配当を行うとともに、自己株式取得を適宜検討し、事業拡大に伴う営業活動によるキャッシュ・フローの増加と合わせて、資本効率向上を目指した資金運営を行ってまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
その作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する経営者の見積りを必要とします。
経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大による会計上の見積りへの影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。