有価証券報告書-第72期(2023/10/01-2024/09/30)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績の状況
当社は2024年9月期の通期業績予想(売上高345億円、営業利益33.5億円)及び、最終年度を迎えた中期経営計画“TY2024”で掲げてきた経営指標の一つであるROE8.0%以上の達成に向けて、成長戦略を推進してまいりました。
当連結会計年度におきましては、物性/エネルギー事業がカーボンニュートラル分野における研究開発投資の活況を受け、次世代電池やEV向け評価装置の売上が好調に推移しました。また、機械制御/振動騒音事業では米国及び国内においてAD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)開発向けの大型評価システム案件を計上し、当事業についても大幅に売上が増加しました。これらの結果、連結売上高は過去最高となる350億4千2百万円(前連結会計年度比24.4%増)となりました。この内、国内売上高は316億6千万円(前連結会計年度比22.6%増)、米国や中国向けを中心とした海外売上高は33億8千2百万円(前連結会計年度比43.5%増)でした。
利益面におきましては、売上高の増加による増収効果、事業構成の変化や高利益率の大型案件による売上総利益率の上昇により、営業利益、経常利益、当期純利益ともに大幅に増加しました。営業利益は33億6千6百万円(前連結会計年度比128.6%増)、経常利益は33億7千5百万円(前連結会計年度比87.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は25億2千2百万円(前連結会計年度比64.4%増)となりました。
なお、ROEについては9.0%となり、前連結会計年度の5.3%から大きく向上しました。
受注高については、機械制御/振動騒音事業が大きく増加したほか、情報通信/情報セキュリティ事業、海洋/特機事業が伸長したことにより、336億2千8百万円(前連結会計年度比9.3%増)となりました。一方、受注残高は物性/エネルギー事業などの計上が順調に進み、170億3千2百万円(前連結会計年度比6.2%減)となりました。
事業セグメントごとの業績は、次のとおりです。
(情報通信/情報セキュリティ)
情報通信/情報セキュリティ事業におきましては、情報通信分野の大手通信事業者向けネットワーク性能試験や新規ビジネスのモービルマッピングシステムが伸長しました。また、サイバーセキュリティ分野のサービスプロバイダー案件が堅調に推移しました。
この結果、売上高は74億8千1百万円(前連結会計年度比12.5%増)、セグメント利益は3億8千8百万円(前連結会計年度比52.6%増)となりました。
(機械制御/振動騒音)
機械制御/振動騒音事業におきましては、AD/ADAS開発向けVILS(実車とシミュレーション環境を連携した評価・試験手法)分野の大型案件を国内外で計上できたほか、振動騒音計測関連も堅調に推移しました。また価格の見直しによる利益率の改善などがあり、売上高、セグメント利益ともに大幅に増加しました。
この結果、売上高は76億6千4百万円(前連結会計年度比63.1%増)、セグメント利益は15億9千5百万円(前連結会計年度比328.6%増)となりました。
(物性/エネルギー)
物性/エネルギー事業におきましては、脱炭素に向けた研究開発プロジェクトを国が支援するグリーンイノベーション基金の追い風により、基礎電気化学測定システムや電池の充放電測定システムが非常に好調に推移しました。また、新たな計測ソリューションとしてエアモビリティ向けの電動推進システム評価ベンチの納入もあり、売上高、セグメント利益ともに大きく増加しました。
この結果、売上高は99億9百万円(前連結会計年度比43.7%増)、セグメント利益は21億6百万円(前連結会計年度比39.1%増)となりました。
(EMC/大型アンテナ)
EMC/大型アンテナ事業におきましては、買収により連結となった東陽EMCエンジニアリング社の売上増はあったものの、国内EMCシステムの大型案件の受注遅れや自社開発製品の販売遅れから、売上高、セグメント利益ともに減少しました。
この結果、売上高は46億8千1百万円(前連結会計年度比13.8%減)、セグメント利益は2億3千7百万円(前連結会計年度比13.4%減)となりました。
(海洋/特機)
海洋/特機事業におきましては、大型案件の計上に加え、その他案件も順調に検収が進んだことで売上高は増加しました。また、円安に対処するための価格見直しによる利益率の改善などによりセグメント利益も増加しました。
この結果、売上高は22億6千1百万円(前連結会計年度比29.7%増)、セグメント利益は4億6千1百万円(前連結会計年度比69.2%増)となりました。
(ソフトウェア開発支援)
ソフトウェア開発支援事業におきましては、ゲーム開発用のバージョン管理ツールなどゲーム関連企業向けの販売が順調だったことにより、売上高は堅調に推移しました。一方、円安の影響により売上総利益率が低下したほか、人員増強に伴って販管費が増加しました。
この結果、売上高は21億2千8百万円(前連結会計年度比8.4%増)、セグメント利益は4億6百万円(前連結会計年度比3.9%減)となりました。
(ライフサイエンス)
ライフサイエンス事業におきましては、連結子会社のレキシー社における整形外科デジタルプランニングツールの販売が堅調に推移したことにより、売上高、セグメント利益ともに増加しました。
この結果、売上高は9億1千6百万円(前連結会計年度比16.5%増)、セグメント利益は8千2百万円(前連結会計年度比162.7%増)となりました。
財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は、184億2千3百万円(前連結会計年度末は167億1千6百万円)となり、17億7百万円増加しました。これは受取手形、売掛金及び契約資産の増加(45億3千4百万円から62億2千8百万円へ16億9千3百万円増)、前払費用の増加(13億7千3百万円から19億6千6百万円へ5億9千2百万円増)、有価証券の増加(13億6千7百万円から19億4千1百万円へ5億7千4百万円増)、及び流動資産のその他の減少(17億4千9百万円から8億5千7百万円へ8億9千2百万円減)、商品及び製品の減少(45億5千4百万円から39億9千7百万円へ5億5千7百万円減)が主な要因です。
(固定資産)
当連結会計年度末の固定資産は、207億1千万円(前連結会計年度末は232億3千8百万円)となり、25億2千7百万円減少しました。これはのれんの増加(2億6千7百万円から15億6千1百万円へ12億9千4百万円増)、建設仮勘定の増加(57億1百万円から65億2千9百万円へ8億2千7百万円増)、及び土地の減少(68億8百万円から47億1千4百万円へ20億9千4百万円減)、建物及び構築物(純額)の減少(26億7千9百万円から8億8千9百万円へ17億8千9百万円減)、投資有価証券の減少(35億3千1百万円から24億1千4百万円へ11億1千6百万円減)が主な要因です。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は、98億8千3百万円(前連結会計年度末は108億2千5百万円)となり、9億4千1百万円減少しました。これは短期借入金の増加(20億円増)、流動負債のその他の増加(9億7千7百万円から13億8千6百万円へ4億9百万円増)、賞与引当金の増加(7億7千2百万円から10億9千1百万円へ3億1千8百万円増)、及び前受金の減少(40億6千万円減)が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末の固定負債は、11億2千3百万円(前連結会計年度末は8億1千5百万円)となり、3億7百万円増加しました。これは固定負債のその他の増加(1億4千3百万円から3億1千2百万円へ1億6千9百万円増)、退職給付に係る負債の増加(6億7千2百万円から8億1千万円へ1億3千8百万円増)が主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、281億2千7百万円(前連結会計年度末は283億1千3百万円)となり、1億8千6百万円減少しました。これは利益剰余金の増加(239億9千5百万円から252億4千2百万円へ12億4千7百万円増)、その他有価証券評価差額金の増加(5千3百万円のマイナスから1千7百万円へ7千1百万円増)、非支配株主持分の増加(4千7百万円増)、及び自己株式の増加(44億9千6百万円から58億3千万円へ13億3千3百万円増)、繰延ヘッジ損益の減少(1億2千9百万円から9千4百万円のマイナスへ2億2千4百万円減)が主な要因です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ4億3千2百万円増加し、30億9千1百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、税金等調整前当期純利益33億2千万円及び棚卸資産の減少額7億1千3百万円です。一方、資金の主な減少要因は、売上債権及び契約資産の増加額13億2千1百万円及び法人税等の支払額7億9百万円です。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローは41億1千万円の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入11億6千8百万円及び有価証券の売却による収入7億6百万円です。一方、資金の主な減少要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出17億2千2百万円及び有形固定資産の取得による支出15億7千4百万円です。
この結果、投資活動によるキャッシュ・フローは28億9千2百万円の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、短期借入金の純増加額19億5千9百万円です。一方、資金の主な減少要因は、自己株式の取得による支出14億2千万円及び配当金の支払額12億7千5百万円です。
この結果、財務活動によるキャッシュ・フローは7億3千6百万円の減少となりました。
③ 生産、受注及び売上の状況
a. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前期比(%) | 受注残高(千円) | 前期比(%) |
情報通信/情報セキュリティ | 8,176,590 | +15.9 | 3,747,934 | +22.8 |
機械制御/振動騒音 | 7,507,106 | +36.1 | 3,453,765 | +3.9 |
物性/エネルギー | 7,892,899 | △12.7 | 3,948,173 | △33.8 |
EMC/大型アンテナ | 4,111,544 | △2.6 | 2,593,296 | △17.8 |
海洋/特機 | 2,812,236 | +33.3 | 2,168,392 | +34.0 |
ソフトウェア開発支援 | 2,281,200 | +10.5 | 912,098 | +20.1 |
ライフサイエンス | 847,212 | +9.9 | 208,632 | △25.0 |
合計 | 33,628,789 | +9.3 | 17,032,293 | △6.2 |
b. 売上実績
当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 売上高(千円) | 前期比(%) |
情報通信/情報セキュリティ | 7,481,264 | +12.5 |
機械制御/振動騒音 | 7,664,064 | +63.1 |
物性/エネルギー | 9,909,169 | +43.7 |
EMC/大型アンテナ | 4,681,028 | △13.8 |
海洋/特機 | 2,261,549 | +29.7 |
ソフトウェア開発支援 | 2,128,719 | +8.4 |
ライフサイエンス | 916,786 | +16.5 |
合計 | 35,042,582 | +24.4 |
(注) 主な相手先別の売上実績及びその割合については、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略
しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営計画“TY2024”において、2024年9月期の経営指標を連結売上高300億円、連結営業利益35億円、ROE8.0%としております。
当連結会計年度は、売上高350億4千2百万円(前連結会計年度比24.4%増)、営業利益は33億6千6百万円(前連結会計年度比128.6%増)、経常利益33億7千5百万円(前連結会計年度比87.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益25億2千2百万円(前連結会計年度比64.4%増)、ROE9.0%となりました。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。
(ⅰ) 売上高
売上高の分析は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(ⅱ) 売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費
売上原価は、198億6千万円(前連結会計年度比19.4%増)、売上総利益は151億8千2百万円(同31.5%増)となりました。販売費及び一般管理費は、従業員給与賞与の増加、賞与引当金繰入の増加、福利厚生費の増加、のれん償却の増加に伴い118億1千6百万円(同17.3%増)となりました。
(ⅲ) 営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度の3億2千8百万円の利益から、9百万円の利益へ3億1千9百万円減少しました。これは主に、和解金の減少1億1千9百万円、為替差益の減少1億1千万円、為替差損の増加1億6百万円によるものです。
(ⅳ) 特別損益
特別損益は、前連結会計年度の4億4千1百万円の利益から、5千5百万円の損失へ4億9千6百万円減少しました。これは主に、固定資産売却益の増加34億5千9百万円、固定資産圧縮損の減少39億5千7百万円、及び固定資産権利変換益の減少71億9千9百万円、投資有価証券売却益の減少3億8千6百万円、減損損失の増加3億4百万円によるものです。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
当社グループの資金需要のうち主なものは、売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用、各種税金の納付及び配当金の支払です。また、成長戦略として、自社のオリジナル製品・ソリューションの開発投資を積極的に行うとともに、M&Aによる事業拡大を検討しており、有望なM&A案件があれば投資を実行してまいります。これらの必要な資金に関しては、営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金及び銀行借入で賄うことを基本方針としております。
また、株主の皆様への利益還元を重要な経営政策と考えており、安定的かつ積極的な配当を行うとともに、自己株式の取得を適宜検討し機動的に実施してまいります。事業拡大に伴う営業活動によるキャッシュ・フローの増加と合わせて、資本効率向上を目指した資金運営を行ってまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
その作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する経営者の見積りを必要とします。
経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。