有価証券報告書-第67期(平成30年10月1日-令和1年9月30日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績の状況
当社グループは“はかる”技術を基本としたビジネスコンセプトを継続しながら、研究開発市場に傾注してまいりました。そして国内産業の次なる成長の糧となる“新しい技術・製品の開発”の一翼を担うべく、欧米を中心にした先端計測技術・機器の導入と、ソフトウェアを中心にした自社システム製品の増強に力を入れてまいりました。また、中国を中心としたアジア市場に加え、米国市場にも目を向け、当社製品のユーザー開拓にも注力してまいりました。
この結果、連結売上高は255億4千7百万円(前連結会計年度比8.3%増)となり、この内、国内取引高は243億2千9百万円、中国や米国向けを中心とした海外取引高は12億1千8百万円となりました。
利益面では、営業利益は18億6千1百万円(前連結会計年度比30.4%増)、経常利益18億6千5百万円(前連結会計年度比29.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億4千1百万円(前連結会計年度比6.5%減)となり、自己資本当期純利益率(ROE)は前連結会計年度に比べ0.3ポイント低下し3.8%となりました。
各セグメントの業績は、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較について、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 セグメント情報等」に記載しております。
(情報通信/情報セキュリティ)
情報通信におきましては、5G(第5世代移動通信システム)に対応する試験装置の需要が高まっており、売上を大きく伸ばすことができました。さらに、主力のキャリア向けネットワーク機器性能試験装置や、自社製品SYNESISの販売も好調で、売上・利益共に大幅に増加しました。一方、情報セキュリティのサービス提供については、現在もサービスビジネスについて立ち上げ中のため、引き続き経費が先行している状況です。この結果、売上高は70億1千6百万円(前連結会計年度比32.4%増)、営業利益は4億4千2百万円(前連結会計年度比320.5%増)となりました。
(機械制御/振動騒音)
機械制御/振動騒音におきましては、自動車関連向けセンサーの販売が大幅に伸びました。これにより自社開発中の自動運転車両向け開発支援システムや米国での新規ビジネスの先行投資による経費増加を補う事ができました。この結果、売上高は58億5千6百万円(前連結会計年度比4.5%増)、営業利益は12億4百万円(前連結会計年度比15.7%増)となりました。
(物性/エネルギー)
物性/エネルギーにおきましては、自動車向け次世代電池やパワーエレクトロニクスの評価システムの販売が引き続き堅調でした。また電池の基礎研究分野向け自社開発システムの販売も好調を維持しています。一方で、新規ビジネスの立ち上がりが遅れ、先行投資による経費が増加しました。この結果、売上高は42億9千5百万円(前連結会計年度比4.5%増)、営業利益は5億6千2百万円(前連結会計年度比14.3%減)となりました。
(EMC/大型アンテナ)
EMCにおきましては、主要顧客である国内外の自動車関連の受注が継続して堅調であり受注残が大幅に増加していますが、日本・中国共に顧客都合による設置環境などの整備遅れによる大型システムの納入遅れが発生しています。一方で、前期まで実施していた投資が完了したため営業利益は増加しました。この結果、売上高は32億6千7百万円(前連結会計年度比2.8%減)、営業利益は1億7千5百万円(前連結会計年度比2,704.3%増)となりました。
(海洋/特機)
海洋/特機におきましては、防衛省向けの販売は引き続き堅調ですが、前期にあった大型システムの販売が無かったことや、民間機関向けの一部製品のコモディティ化による価格競争の激化により売上が減少しました。この結果、売上高は20億3千8百万円(前連結会計年度比5.3%減)、営業利益は6億円(前連結会計年度比7.9%減)となりました。
(ソフトウエア開発支援)
ソフトウエア開発支援におきましては、自動車業界向けの静的解析ツールと、セキュリティ脆弱性検査ツールの販売は堅調に推移しましたが、大型案件の受注が来期に延期となったことにより売上が減少し、また仕入コストが増加しました。この結果、売上高は13億5千1百万円(前連結会計年度比4.1%減)、営業利益は1億6千5百万円(前連結会計年度比48.6%減)となりました。
(ライフサイエンス/マテリアルズ)
ライフサイエンス/マテリアルズにおきましては、医療機関や医療機器メーカー向けの画像診断システムや工業素材に使われる薄膜の硬度計の販売が大きく伸びました。一方で、素材開発業界向けの新しい電子顕微鏡ビジネスは立ち上げ中です。この結果、売上高は17億2千万円(前連結会計年度比4.2%増)、営業利益は8千2百万円(前連結会計年度比166.5%増)となりました。
財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は、141億9千3百万円(前連結会計年度末は135億7千8百万円)となり、6億1千4百万円増加しました。これは有価証券の増加(35億8千9百万円から41億6千3百万円へ5億7千3百万円増)、商品及び製品の増加(11億3千万円から21億円へ9億7千万円増)、及び受取手形及び売掛金の減少(51億2千7百万円から42億4千5百万円へ8億8千2百万円減)が主な要因です。
(固定資産)
当連結会計年度末の固定資産は、203億6千4百万円(前連結会計年度末は210億4千8百万円)となり、6億8千3百万円減少しました。これは繰延税金資産の増加(3億5千4百万円から6億4百万円へ2億4千9百万円増)、投資有価証券の減少(87億5千7百万円から81億5千6百万円へ6億1百万円減)、及び投資その他の資産のその他の減少(8億7千8百万円から6億9千9百万円へ1億7千8百万円減)が主な要因です。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は、39億3千2百万円(前連結会計年度末は38億2百万円)となり、1億2千9百万円増加しました。これは未払法人税等の増加(4億1千5百万円から5億7千2百万円へ1億5千7百万円増)、賞与引当金の増加(6億7千1百万円から8億7千1百万円へ1億9千9百万円増)、及び流動負債のその他の減少(13億1千5百万円から10億1千1百万円へ3億4百万円減)が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末の固定負債は、7億1千8百万円(前連結会計年度末は7億円)となり、1千7百万円増加しました。これは退職給付に係る負債の増加(6億1千8百万円から6億3千1百万円へ1千3百万円増)が主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、299億7百万円(前連結会計年度末は301億2千3百万円)となり、2億1千5百万円減少しました。これは利益剰余金の増加(218億2千3百万円から221億1千5百万円へ2億9千1百万円増)、自己株式の増加による減少(△15億3千2百万円から△17億2千2百万円へ1億9千万円減)、及びその他有価証券評価差額金の減少(9億7千1百万円から6億5千7百万円へ3億1千4百万円減)が主な要因です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ6億2千2百万円減少し、45億6千4百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、税金等調整前当期純利益19億5百万円及び減価償却費9億2千5百万円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、たな卸資産の増加額9億8千万円及び法人税等の支払額7億3千1百万円によるものです。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローは16億9千8百万円の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入9億2千8百万円、有価証券の売却による収入8億1千8百万円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、投資有価証券の取得による支出24億1千8百万円によるものです。
この結果、投資活動によるキャッシュ・フローは12億1千8百万円の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な減少要因は、配当金の支払額8億3千7百万円によるものです。
この結果、財務活動によるキャッシュ・フローは10億6千8百万円の減少となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況
a. 受注状況
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前期比(%) | 受注残高(千円) | 前期比(%) |
情報通信/情報セキュリティ | 7,556,776 | +49.3 | 1,516,947 | +55.3 |
機械制御/振動騒音 | 5,633,561 | +1.8 | 1,327,558 | △14.4 |
物性/エネルギー | 3,823,360 | △12.9 | 1,099,140 | △30.1 |
EMC/大型アンテナ | 4,278,340 | +14.9 | 2,784,003 | +57.0 |
海洋/特機 | 1,591,377 | △16.5 | 668,337 | △40.1 |
ソフトウエア開発支援 | 1,400,851 | +0.9 | 129,533 | +60.8 |
ライフサイエンス/マテリアルズ | 1,316,364 | △32.4 | 422,624 | △48.9 |
合計 | 25,600,633 | +6.9 | 7,948,145 | +0.7 |
(注) 金額表示は販売価格(消費税等抜き)によっております。なお受注高には条件変更、為替変動に伴う金額調整分を含めております。
b. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 売上高(千円) | 前期比(%) |
情報通信/情報セキュリティ | 7,016,695 | +32.4 |
機械制御/振動騒音 | 5,856,972 | +4.5 |
物性/エネルギー | 4,295,984 | +4.5 |
EMC/大型アンテナ | 3,267,212 | △2.8 |
海洋/特機 | 2,038,410 | △5.3 |
ソフトウエア開発支援 | 1,351,893 | △4.1 |
ライフサイエンス/マテリアルズ | 1,720,357 | +4.2 |
合計 | 25,547,525 | +8.3 |
(注)1 上記金額には消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先別の販売実績及びその割合については、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
その作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する経営者の見積りを必要とします。
経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 経営成績の分析
当社グループは、中期経営計画の中で具体的な経営指標等の目標値を定めております。投資価値のある企業を目指し、連結売上高、連結営業利益、自己資本当期純利益率(ROE)を指標として、2021年9月期の目標値を、連結売上高260億円、連結営業利益20億円、自己資本当期純利益率(ROE)5.0%としております。
当連結会計年度においては、連結売上高255億4千7百万円、連結営業利益18億6千1百万円、連結経常利益18億6千5百万円、親会社株主に帰属する当期純利益11億4千1百万円、自己資本当期純利益率(ROE)3.8%となりました。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。
(ⅰ)売上高
売上高の分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(ⅱ) 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、144億4千7百万円(前連結会計年度比11.0%増)、売上総利益は111億円(同5.0%増)となりました。販売費及び一般管理費は、賞与引当金繰入の増加、修繕費の増加等に伴い92億3千9百万円(同1.0%増)となりました。
(ⅲ) 営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度の1千7百万円の利益から、4百万円の利益へ1千3百万円減少しました。これは主に、受取利息の増加4千2百万円、為替差益の減少2千8百万円、為替差損の増加2千6百万円、持分法による投資損失の減少4千万円、及び和解金の増加6千5百万円等によるものです。
(ⅳ) 特別損益
特別損益は、前連結会計年度の3億8千4百万円の利益から、3千9百万円の利益へ3億4千5百万円減少しました。これは主に、投資有価証券売却益の減少3億1千3百万円によるものです。
(3) 財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(4) キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
(5) 経営方針・経営戦略又は経営上の目標の達成 状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②経営成績の分析」に記載のとおり、当連結会計年度は、売上高255億4千7百万円(前連結会計年度比8.3%増)、営業利益は18億6千1百万円(前連結会計年度比30.4%増)、経常利益18億6千5百万円(前連結会計年度比29.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益11億4千1百万円(前連結会計年度比6.5%減)、自己資本当期純利益率(ROE)3.8%となりました。翌連結会計年度は、売上高256億円、営業利益19億円、経常利益20億円、当期純利益14億円を見込んでおり、中期経営計画の目標である2021年9月期、売上高260億円、営業利益20億円、ROE:5.0%の達成に向け、順調に進捗しております。当連結会計年度におけるROEは3.8%となり前連結会計年度に比べ0.3ポイントの低下となりましたが、中期経営計画の目標数値である5.0%に向けて資本効率を高めることを優先課題とし、ROEの改善に取り組んでまいります。
(6) 財務方針
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりで、資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本方針としております。また、市場変化に対応したビジネスラインの取捨選択を適宜実施すると共に、有望な新規ラインについては既存の組織にとらわれず、初期の段階から独立した部課単位として集中的な投資を行っていくことで、効率的な運営を行ってまいります。