有価証券報告書-第68期(令和1年10月1日-令和2年9月30日)

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2020/12/25 10:31
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績の状況
当社グループは“はかる”技術を基本としたビジネスコンセプトを継続しながら、研究開発市場に傾注してまいりました。そして国内産業の次なる成長の糧となる“新しい技術・製品の開発”の一翼を担うべく、欧米を中心にした先端計測技術・機器の導入と、ソフトウェアを中心にした自社システム製品の増強に力を入れてまいりました。また、中国を中心としたアジア市場に加え、米国市場にも目を向け、当社製品のユーザー開拓にも注力してまいりましたが、新型コロナウイルス感染症による自粛ムードや感染拡大の第2波への懸念等が根強く、引き続き国内外経済は先行き不透明な状況で推移しました。
この結果、当社グループの経営成績につきましては、連結売上高は新型コロナウイルス感染拡大による販売遅れの影響を受け231億4百万円(前連結会計年度比9.6%減)となり、この内、国内取引高は217億1千6百万円、中国や米国向けを中心とした海外取引高は13億8千7百万円となりました。
利益面では、営業利益は12億5千万円(前連結会計年度比32.8%減)、経常利益14億5千万円(前連結会計年度比22.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は14億3千8百万円(前連結会計年度比26.0%増)となり、自己資本当期純利益率(ROE)は前連結会計年度(3.8%)に比べ1.0ポイント上昇し4.8%となりました。
各セグメントの業績は、次のとおりです。
(情報通信/情報セキュリティ)
情報通信におきましては、注力している5G(第5世代移動通信システム)及びローカル5Gの領域では、通信事業者や機器製造会社などへの試験装置や検証システムの販売が堅調でした。大手通信事業者向けでは、次世代高速イーサネットに対応したネットワーク性能試験装置などの販売が増加しました。自社製品SYNESISについては、通信事業者からエンタープライズまで幅広い顧客に販売し大きく伸長しました。しかし、前期大型案件の反動により、売上高は減少しました。また、戦略投資として保有していた在庫の評価損を計上したことにより、減益となりました。情報セキュリティにおきましては、増収を見込んでおりましたが新型コロナウイルス感染拡大の影響(以下、「感染拡大」という。)により、一部案件が遅延し前年並みにとどまりました。この結果、売上高は63億8千8百万円(前連結会計年度比9.0%減)、営業利益は7千8百万円(前連結会計年度比82.3%減)となりました。
(機械制御/振動騒音)
機械制御/振動騒音におきましては、自動車会社における振動・騒音など、従来の研究開発分野への投資縮小に加えて、感染拡大による購買延期や中止がありました。また、受注済みの複数の大型システムについても同影響により、お客様の受け入れ準備の遅れや海外仕入先の製造遅れによる納入遅延が発生しました。米国において国家研究機関向けに自動運転車開発関連の大型システムの販売がありましたが、従来分野における販売減をカバーするには至りませんでした。この結果、売上高は49億1千1百万円(前連結会計年度比16.1%減)、営業利益は9億4千8百万円(前連結会計年度比21.2%減)となりました。
(物性/エネルギー)
物性/エネルギーにおきましては、自動車向け次世代電池やパワーエレクトロニクスの評価システムのニーズは引き続き堅調でした。また、注力している電池の基礎研究分野向け自社開発システムの商談もさらに増加しており、受注は大幅に増加しました。一方、感染拡大を受け、複数の大型案件の出荷が遅れたため売上は若干の減少となりました。この結果、売上高は39億5千5百万円(前連結会計年度比7.9%減)、営業利益は5億7千万円(前連結会計年度比1.3%増)となりました。
(EMC/大型アンテナ)
EMCにおきましては、主要顧客である国内外の自動車関連の大型システム販売が継続して堅調に推移しました。アンテナ計測におきましては、5G向けの無線評価システムの販売が増加しました。感染拡大によって第3四半期まで発生していたシステム設置作業の遅延について、中国においては顧客の設備環境が整わずに遅れが解消していませんが、国内と米国においては概ね計画通りに売上げることができました。この結果、売上高は39億4千万円(前連結会計年度比20.6%増)、営業利益は2億8千9百万円(前連結会計年度比65.1%増)となりました。
(海洋/特機)
海洋/特機におきましては、上期まで順調だった民間企業からの受注が、感染拡大によりデモンストレーションの実施が困難になるなどの原因により下期は低迷しました。売上についても同影響により複数の案件において海外仕入先からの入荷遅れによる納入遅延が発生しました。この結果、売上高は13億9千5百万円(前連結会計年度比31.5%減)、営業利益は2億2千4百万円(前連結会計年度比62.7%減)となりました。
(ソフトウエア開発支援)
ソフトウエア開発支援におきましては、ゲーム業界におけるテレワーク増加に伴い構成管理ツールなどの販売が大きく増加しました。エンタープライズ向けのセキュリティ脆弱性検査ツールのサブスクリプション販売も、堅調に推移しました。一方、自動車業界向けのソフトウエア検証ツールの販売は、一部自動車関連企業での購入先送りなどの影響を受け、減少しました。この結果、売上高は14億8千3百万円(前連結会計年度比9.8%増)、営業利益は2億4千6百万円(前連結会計年度比48.8%増)となりました。
(ライフサイエンス/マテリアルズ)
ライフサイエンス/マテリアルズにおきましては、医療機関向けビジネスは胸部読影支援システムや整形外科用プランニングツールが堅調なものの、感染拡大によりその他の製品販売が減少しました。また、ナノ分析装置関連のビジネスも、同影響により顧客のサンプル測定が実施できないなどの活動制約があり低調に終わりました。この結果、売上高は10億2千9百万円(前連結会計年度比40.2%減)、営業損失は9千5百万円(前連結会計年度は8千2百万円の営業利益)となりました。
財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は、154億5百万円(前連結会計年度末は141億9千3百万円)となり、12億1千2百万円増加しました。これは現金及び預金の増加(29億1千4百万円から38億8千万円へ9億6千5百万円増)、有価証券の増加(41億6千3百万円から52億1千8百万円へ10億5千5百万円増)、商品及び製品の減少(21億円から16億1千2百万円へ4億8千8百万円減)、及び流動資産のその他の減少(7億6千8百万円から4億7千8百万円へ2億9千万円減)が主な要因です。
(固定資産)
当連結会計年度末の固定資産は、191億1千4百万円(前連結会計年度末は203億6千4百万円)となり、12億5千万円減少しました。これは投資有価証券の減少(81億5千6百万円から69億8千1百万円へ11億7千5百万円減)が主な要因です。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は、35億7百万円(前連結会計年度末は39億3千2百万円)となり、4億2千4百万円減少しました。これは賞与引当金の減少(8億7千1百万円から4億5千1百万円へ4億2千万円減)が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末の固定負債は、7億4千7百万円(前連結会計年度末は7億1千8百万円)となり、2千9百万円増加しました。これは退職給付に係る負債の増加(6億3千1百万円から6億5千万円へ1千9百万円増)が主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、302億6千4百万円(前連結会計年度末は299億7百万円)となり、3億5千7百万円増加しました。これは利益剰余金の増加(221億1千5百万円から226億9千1百万円へ5億7千6百万円増)、新株予約権の増加(1億4千2百万円から1億9千万円へ4千7百万円増)、及びその他有価証券評価差額金の減少(6億5千7百万円から3億6千1百万円へ2億9千5百万円減)が主な要因です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ18億1千6百万円増加し、63億8千万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、税金等調整前当期純利益22億2千3百万円及び減価償却費9億4千7百万円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、法人税等の支払額9億2千万円及び投資有価証券売却損益7億3千3百万円によるものです。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローは21億3千1百万円の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、有価証券の売却による収入15億9千4百万円及び投資有価証券の売却による収入9億4千万円によるものであり、一方、資金の主な減少要因は、投資有価証券の取得による支出9億2百万円及び有形固定資産の取得による支出4億2千6百万円によるものです。
この結果、投資活動によるキャッシュ・フローは5億4百万円の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な減少要因は、配当金の支払額8億5千7百万円によるものです。
この結果、財務活動によるキャッシュ・フローは8億1千9百万円の減少となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況
a. 受注状況
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称受注高(千円)前期比(%)受注残高(千円)前期比(%)
情報通信/情報セキュリティ6,619,680△12.41,268,526△16.4
機械制御/振動騒音4,426,076△21.4841,742△36.6
物性/エネルギー4,688,196+22.61,831,836+66.7
EMC/大型アンテナ3,897,328△8.92,458,394△11.7
海洋/特機1,284,872△19.3557,686△16.6
ソフトウエア開発支援1,514,179+8.1159,768+23.3
ライフサイエンス/マテリアルズ1,012,115△23.1405,718△4.0
合計23,442,448△8.47,523,673△5.3

(注) 金額表示は販売価格(消費税等抜き)によっております。なお受注高には条件変更、為替変動に伴う金額調整分を含めております。
b. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称売上高(千円)前期比(%)
情報通信/情報セキュリティ6,388,101△9.0
機械制御/振動騒音4,911,892△16.1
物性/エネルギー3,955,500△7.9
EMC/大型アンテナ3,940,596+20.6
海洋/特機1,395,523△31.5
ソフトウエア開発支援1,483,944+9.8
ライフサイエンス/マテリアルズ1,029,021△40.2
合計23,104,580△9.6

(注)1 上記金額には消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先別の販売実績及びその割合については、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営計画の中で具体的な経営指標等の目標値を定めております。投資価値のある企業を目指し、連結売上高、連結営業利益、自己資本当期純利益率(ROE)を指標として、2021年9月期の目標値を、連結売上高260億円、連結営業利益20億円、自己資本当期純利益率(ROE)5.0%としております。
当連結会計年度は、売上高231億4百万円(前連結会計年度比9.6%減)、営業利益は12億5千万円(前連結会計年度比32.8%減)、経常利益14億5千万円(前連結会計年度比22.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益14億3千8百万円(前連結会計年度比26.0%増)、自己資本当期純利益率(ROE)4.8%となりました。
なお、ROEについては前連結会計年度(3.8%)に比べ1.0ポイントの上昇となりました。引き続き、中期経営計画の目標数値である5.0%に向けて資本効率を高めることを優先課題とし、ROEの改善に取り組んでまいります。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。
(ⅰ) 売上高
売上高の分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(ⅱ) 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、134億5千6百万円(前連結会計年度比6.9%減)、売上総利益は96億4千7百万円(同13.1%減)となりました。販売費及び一般管理費は、旅費交通費の減少、賞与引当金繰入の減少、及び研究開発費の減少等に伴い83億9千7百万円(同9.1%減)となりました。
(ⅲ) 営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度の4百万円の利益から、2億円の利益へ1億9千5百万円増加しました。これは主に、有価証券利息の増加3千万円、為替差益の増加2千7百万円、為替差損の減少2千6百万円、持分法による投資損失の減少5千7百万円、及び前連結会計年度において和解金6千5百万円が発生したこと(当連結会計年度は発生なし)等によるものです。
(ⅳ) 特別損益
特別損益は、前連結会計年度の3千9百万円の利益から、7億7千2百万円の利益へ7億3千2百万円増加しました。これは主に、投資有価証券売却益の増加6億7千5百万円、及び前連結会計年度において減損損失3千6百万円が発生したこと(当連結会計年度は発生なし)等によるものです。
次期連結会計年度は中期経営計画(目標数値:売上高260億円、営業利益20億円、ROE5.0%)の最終年となります。次期連結会計年度業績予想は、新型コロナウイルス感染拡大による営業活動制限を想定して、売上高 250億円、営業利益 21億円、経常利益 22億円、当期純利益 15億円と発表しておりますが、新型コロナウイルス感染拡大が収束した場合は、中期経営計画は十分達成できる計画であると考え、当初の予定通り社員一丸となり邁進してまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
当社グループの資金需要のうち主なものは、売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用、各種税金の納付及び配当金の支払です。これらの必要な資金に関しては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本方針としております。また、市場変化に対応したビジネスラインの取捨選択を適宜実施すると共に、有望な新規ラインについては既存の組織にとらわれず、初期の段階から独立した部課単位として集中的な投資を行っていくことで、効率的な運営を行ってまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
その作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する経営者の見積りを必要とします。
経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大による会計上の見積りへの影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。