有価証券報告書-第69期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッ
シュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(平成29年4月1日~平成30年3月31日)における航空総需要は、日本国内および海外ともに総じ
て緩やかな景気回復傾向の継続により、国内旅客需要と訪日外国人需要を中心に堅調に推移しました。
また、当社グループの燃料調達コスト、国際線旅客収入ならびに国際線貨物収入に影響を与える原油価格について
は、OPECの協調減産期間の延長や地政学リスクを受け上昇し、一方、米ドルの為替レートについては、概ね105~115
円のレンジで推移しました。
当社グループはこのような経済状況のもと、平成29年4月28日に発表しました「2017-2020年度 JALグループ中期
経営計画」で掲げた目標を達成するべく、安全運航の堅持を基盤としたうえで、JALフィロソフィと部門別採算制度
によって採算意識を高め、経営の効率化を図り、お客さまに最高のサービスを提供できるよう努めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産については、前連結会計年度末に比べ1,254億円増加し、1兆8,542億円となりまし
た。負債については、前連結会計年度末に比べ347億円増加の7,600億円となりました。純資産につきましては、前連
結会計年度末に比べ907億円増加の1兆941億円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における営業収益は1兆3,832億円(前年同期比7.3%増加)、営業費用は1兆2,086億円(前年同
期比8.1%増加)となり、営業利益は1,745億円(前年同期比2.5%増加)、経常利益は1,631億円(前年同期比1.1%
減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期の法人税等調整額の影響もあり1,354億円(前年同期比17.5%減
少)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
<航空運送事業>当連結会計年度における航空運送事業の実績については、営業収益は1兆2,572億円(前年同期比8.4%増加)、
営業利益は1,612億円(前年同期比5.3%増加)となりました。(営業収益及び営業利益はセグメント間連結消去前数
値です。)
部門別売上高は次のとおりです。
(注)金額については切捨処理、各比率については四捨五入処理しております。
連結輸送実績は次のとおりです。
(注)1.旅客キロは、各区間有償旅客数(人)に当該区間距離(キロ)を乗じたものであり、座席キロは、
各区間有効座席数(席)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。
輸送量(トン・キロ)は、各区間輸送量(トン)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。
2.区間距離は、IATA(国際航空運送協会)、ICAO(国際民間航空機構)の統計資料に準じた算出基準の
大圏距離方式で算出しております。
3.国際線:日本航空(株)
国内線:日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)、日本エアコミューター(株)、
(株)ジェイエア、琉球エアーコミューター(株)、(株)北海道エアシステム
ただし、前年同期は、国際線:日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)
国内線:日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)、日本エアコミューター(株)、
(株)ジェイエア、琉球エアーコミューター(株)、(株)北海道エアシステム
4.数字については切捨処理、比率については四捨五入処理しております。
<その他>その他の事業における主要2社の概況は次のとおりです。
株式会社ジャルパック
株式会社ジャルカード
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ586億円増加して1,828億円とな
りました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益1,624億円に減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減算等を行っ
た結果、営業活動によるキャッシュ・フロー(インフロー)は2,815億円(前年同期比283億円の増加)となりま
した。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出を主因として、投資活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△1,666億円
(前年同期比14億円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払いや自己株式の取得を行ったことから、財務活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は
△558億円(前年同期比23億円の増加)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産、受注及び販売に該当する業種・業態がほとんどないため、「① 財政状態及び経営成績の状
況」に含めて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断及び見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における資産については、航空機の購入や航空機前払金の支払いなどを主因として前連結会計
年度末に比べ1,254億円増加し、1兆8,542億円となりました。
(負債合計)
当連結会計年度末における負債については、営業未払金や借入金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ
347億円増加の7,600億円となりました。
(純資産合計)
当連結会計年度末における純資産については、配当金の支払いや自己株式の取得の一方、親会社株主に帰属する
当期純利益の計上やその他の包括利益累計額の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ907億円増加の1兆941
億円となりました。
2)経営成績
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、収入面では、国際旅客収入はレベニューマネジメントの取り組
みによる日本発、海外発のいずれも高単価需要が堅調に推移し、燃油サーチャージ収入の増加と為替影響を合わせ
て477億円の増収、国内旅客収入は2016年の熊本地震の影響からの回復や、個人旅客需要が大きく伸びたことに加
え、他社に先駆けて実施したWi-Fi無料化による選好性向上効果もあり、前年対比196億円の増収となり、営業収益
は1兆3,832億円(前年同期比7.3%増加)となりました。
費用面では、燃油費は市況の上昇により164億円の増加、整備費はエンジン整備の増加などにより131億円増加し
ました。人件費は、事業規模拡大に伴う人員増や、業績に連動した賞与の増加などにより170億円増加、また、
2017年11月に稼働した新しい旅客基幹システムの償却費や旅客数の増加に伴う各種費用の増加もありましたが、前
連結会計年度から引き続き部門別採算制度等を通じた費用削減に取り組み、営業費用全体としては1兆2,086億円
(前年同期比8.1%増加)となりました。
以上の結果、営業利益は1,745億円(前年同期比2.5%増加)となりました。
営業外損益~親会社株主に帰属する当期純利益については、航空機材処分損の増加等により営業外費用が前連結会計年度よりも増加し、経常利益は1,631億円(前年同期比1.1%減少)となりました。前連結会計年度に法人税等調整額を316億円計上していたこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は1,354億円(前年同期比17.5%減少)となりました。
セグメント別の分析は次のとおりです。
<航空運送事業>(国際線)
国際線旅客においては、堅調な日本発の需要に加え、海外発の需要が好調に推移した結果、旅客数が前年比
2.3%増、有償座席利用率は過去最高の81.0%となりました。
路線運営面では、平成29年9月に成田=メルボルン線、成田=コナ線を開設し、10月には羽田深夜発の欧州線と
なる羽田=ロンドン線の増便を行い、日本発の業務・観光および海外発の幅広い需要獲得に努めました。また、更
なるネットワークの拡充を図るべく、ベトジェット、ビスタラ、ハワイアン航空、アエロメヒコ航空、アエロフロ
ート・ロシア航空との提携開始について合意に達しました。
商品面では、ご好評いただいております「JAL SKY SUITE」機材の客室仕様によるサービスを拡充すべく、新た
に「JAL SKY SUITE 787(JAL スカイスイート787)」を導入いたしました。
サービス面では、外部のサービス評価機関(JCSI)によって国際航空部門「ロイヤルティ(再利用意向)」が5
年連続で第1位の評価を得たことに加え、「顧客満足」についても第1位となりました。また、機内食では、若き
才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35の2016年度のグランプリを含む歴代ファイナリスト
が監修するメニューを日本発中・長距離路線プレミアムエコノミークラス・エコノミークラスにて開始いたしまし
た。
以上の結果、当連結会計年度の国際線供給は有効座席キロベースで前年同期比2.4%の増加、国際旅客収入は
4,629億円(前年同期比11.5%増加)となりました。
今後の見通し
国際線旅客においては、安定した日本発の需要に加え、引き続き海外発の需要増加が期待される一方、LCCを含
めた国内外の航空会社の供給拡大に伴い、競争環境は厳しさを増すと想定されます。このような環境において、需
要に合わせた期間増便の設定(関空=ホノルル線、成田=グアム線、成田=バンコク線)や既存の共同事業・提携関
係の深化に加え、新たなパートナーとの協力関係を活用し、ネットワークの強化やサービスの改善に努めます。ま
た、高品質な客室仕様の機材導入やお客さま一人一人のニーズに沿ったサービスを提供し、日本だけでなく海外マ
ーケットにおけるプレゼンスを高めていきます。
(国内線)
国内線旅客においては、他社との競争により単価が前年を下回った一方で、平成28年4月の熊本地震の影響で低
下した旅客需要が回復したことと各種需要喚起策が奏功し、旅客数が前年比4.5%増となったことにより、旅客収
入は前年を上回りました。
路線運営面では、伊丹発着路線を中心にエンブラエル190型機の運航路線を拡大したことに加え、日本エアコミ
ューターが運航する鹿児島県内の離島路線には、最新鋭のターボプロップ機であるATR42-600型機を投入し、地方
ネットワーク路線の利便性・快適性の向上を図りました。
商品面では、「JAL SKY NEXT」運航便にてご利用いただける「機内Wi-Fiサービス」の無料での提供を開始し、多くのお客さまからご好評いただいております。また日本トランスオーシャン航空が運航する737-800型機におい
ても、「JAL SKY NEXT」の導入を進め、利便性・快適性の向上に努めました。
営業面では、TripAdvisor,Inc.(トリップアドバイザー)との協業により、日本の知られざる魅力を発信する
特集サイト「Untold Stories of Japan(知られざる日本)」を新たに開設しました。特集サイトでは、日本各地
の様々な観光施設やアクティビティ情報を発信すると共に、訪日旅行者向け国内線運賃「JAL Japan Explorer
Pass」の提供により、海外からより多くのお客さまが日本各地を訪れる機会を創出しています。また民泊サービ
ス事業を展開する株式会社百戦錬磨との資本・業務提携を行い、各地域固有の観光資源を活かした民泊体験と航
空とを組み合わせた旅行商品の設定を拡充するなど、観光産業に関わる異業種との連携を進め、訪日旅行需要を
含めた地域間の交流促進に努めました。
以上の結果、当連結会計年度の国内線供給は有効座席キロベースで前年同期比0.8%の増加、国内旅客収入は
5,182億円(前年同期比3.9%増加)となりました。
今後の見通し
国内線旅客においては、価格やサービス面で他社との競争激化が想定される中で、需要に合わせた機材投入を行
い、収益性の向上に努めるとともに、さらなる利便性の向上に向けた取り組みを展開していきます。
路線運営面では、旺盛な需要の見込まれる夏季期間や週末の一部期間において、羽田=新千歳線などの増便を実
施することに加え、平成30年7月より、日本エアコミューターの運航にて、奄美群島と沖縄を結ぶ徳之島=沖永良
部=那覇線を新たに開設し、交流人口の拡大に貢献します。
商品面では、「JAL SKY NEXT」運航便にてご利用いただける「機内Wi-Fiサービス」について、ビデオプログラ
ムの拡充を図るとともに、新たに機内衛星テレビの放映を開始するなど、さらなる利便性・快適性の向上を図りま
す。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フ
ローの状況」に記載のとおりです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループが主たる事業領域としている航空市場は、経済活動のグローバル化に伴い、中長期的には拡大基調に
あり、特にアジア市場は世界の航空市場のなかでも高い成長性が期待されています。また、マーケットや環境の変化
はより速く、テクノロジーの著しい進歩も予見される中、将来の持続的かつ安定した成長を実現するため、「2017~
2020年度JALグループ中期経営計画」の4年間は「挑戦、そして成長へ」をテーマに、引き続き「フルサービスキャ
リア事業を磨き上げる」ことと、新たな収益源の創造・育成といった「事業領域を拡げる」ことに挑戦し、一歩ずつ
着実に進んでまいります。
国際旅客事業については、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催、想定される首都圏発着枠の拡大
などにより、これまで以上の外国人需要の増加が期待される一方、LCCを含めた国内外の航空会社の供給拡大に伴
い、競争環境は厳しさを増すと想定されます。このような環境において、太平洋・欧州路線の共同事業や他社提携を
含めたネットワークの強化、競争力の優れた客室仕様の機材導入などにより、日本だけでなく海外マーケットにおけ
るプレゼンスを高め、世界から評価される航空会社を目指してまいります。
国内旅客事業については、国内人口の減少や少子高齢化の進展により国内旅客総需要の大きく伸びないことが見込
まれる中、鉄道を含めた競争環境は一層厳しくなることが予想されます。このような環境において、エアバス
A350-900型機など新機材の導入、機内Wi-Fi利用の無料化、訪日外国人の利用増加に向けた多言語対応など、便利で
快適な移動空間の提供により、競争力の向上を図ってまいります。訪日需要を含む地域への送客を通じて交流人口を
拡大させ、地域の活性化に貢献してまいります。
また、航空市場は自然災害、戦争やテロ、疫病の発生等のさまざまな要因によって、短期的には需要が大きく変動
するリスクがあることから、フルサービスキャリア事業以外の当社グループの強みが活かせる新たな収益源の創造・
育成に挑戦することで、将来の安定した成長に繋げてまいります。
当社グループは、企業理念である「JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、一、お客さまに最高のサ
ービスを提供します。一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。」の実現に向けて、一層の事業・財務体
質の強化、社会のニーズや課題への対応に社員一丸となって取り組み、企業価値の向上に努めてまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性
1)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配
分することを財務戦略の基本方針としております。
強固な財務体質の維持に関しては、自己資本比率の水準を60%程度に保ち、「シングルAフラット」以上の信
用格付(日本の格付機関)の取得・維持を目指し、リスク耐性の強化を図ります。
同時に、適切な情報開示・IR活動を通じて株主資本コストの低減に努めると共に、営業キャッシュ・フロー
による十分な債務償還能力を前提に、厳格な財務規律のもとで負債の活用も進めることにより、資本コストの低
減および資本効率の向上にも努めてまいります。
設備投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進してまいります。平成30年度
から平成32年度の3年間累計では総額6,600億円の投資を計画しており、その約2/3に相当する4,400億円をキ
ャッシュ・フローの増加に繋がる投資を行う計画としております。なお、各年度の設備投資額は営業キャッシ
ュ・フローの範囲内とすることを原則とし、強固な財務体質を維持し、十分な水準の手元流動性を確保してまい
ります。
また、既に計画している設備投資とは別に、将来の企業価値を飛躍的に向上させる投資機会に機動的に対応で
きるよう、500億円の「特別成長投資枠」を設定しております。
2)経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、適正な手元現預金の水準について検証を実施しております。今中期経営計画期間において
は、総資産利益率(ROA)にも着目しつつ十分なイベントリスク耐性も備えるべく、売上高の約2.6か月分を安定
的な経営に必要な手元現預金水準とし、それを超える分については、「追加的に配分可能な経営資源」と認識
し、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。
平成32年度に向け、手元現預金及び今後創出するフリーキャッシュ・フロー、そして有利子負債の活用により
創出された追加的に配分可能な経営資源については、企業年金基金の財政基盤強化、飛躍的な成長のための特別
成長投資枠、株主還元のさらなる充実、に活用する考えです。
3)資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、航空運送事業に関わる燃油費、運航施設利用費、整備費、航空販売手数料、機材費(航空機に関わる償却費、賃借料、保険料など)、サービス費(機内・ラウン
ジ・貨物などのサービスに関わる費用)、人件費などがあります。
また、投資活動に係る資金支出は、航空機の安全、安定運航のために不可欠な設備や施設への投資、企業価値
向上に資する効率性・快適性に優れた新しい航空機への投資、安定的・効率的な航空機の運航や、競争力強化に
資する予約販売に関するIT投資などがあります。
4)資金調達
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金および外部資金を有効に
活用しております。
設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としておりますが、資金調達手段の多様化と
資本効率の向上を企図し、主要な事業資産である航空機などの調達に当たっては、金融機関からの借入や社債の
発行等、一部有利子負債を活用しております。
また、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、当社グループは国内2社の格
付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付はA(安定的)、格付投資
情報センターの格付はAマイナス(安定的)となっております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関
係を維持しており、加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要
な運転資金、投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。なお、国内金融機関において複数
年を含む合計500億円のコミットメントラインを設定しており、緊急時の流動性を確保しております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「2017~2020年度JALグループ中期経営計画」において、以下を経営目標としており、引き続き、経営目標の達成
に向け取り組んでまいります。
(安全)
安全運航はJALグループの存立基盤であり社会的責務であることを認識し輸送分野における安全のリーディングカンパニーとして安全の層を厚くし、安全運航を堅持します。航空事故ゼロ、重大インシデントゼロを実現します。
2017年度は重大インシデント1件(*)の発生により、目標を達成できませんでした。引き続き、安全管理システムの進化、事故の教訓を確実に継承する教育・研修の実施により、安全の層をより厚く、強固なものにしてまいります。また、テロの脅威からお客さまをお守りする保安管理システムの強化にも取り組みます。
(*)2017年9月5日、JL006便(東京国際空港発 ニューヨークJFK空港行)が、離陸中に左エンジンの不具合が発
生したため、当該エンジンを停止し、燃料投棄を行った後、東京国際空港に引き返しました。到着後のエン
ジン内部の検査において、エンジン後部の低圧タービンなどに損傷があることを確認されたことから、国土
交通省航空局より、重大インシデントと認定されました。
(注1)航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災、航行中の航空機
の損傷(大修理)等
(注2)航空事故には至らないものの、その恐れがあったと認められる事態。滑走路からの逸脱、非常脱出等
(顧客満足)
すべてのお客さまが常に新鮮な感動を得られるような最高のサービスを提供し、2020年度までに世界トップレベルのお客さま満足を実現します。
日本のお客さまのみならず世界のお客さまの評価について、推奨意向を向上させることで、顧客満足・再利用意向もさらに高まることから、その指標としてNPS(Net Promoter Score)で測ります。
2017年度は旅客システム刷新が大きなトラブルなく進捗したことに加え、国内線の「機内Wi-Fiサービスの無料提供開始」、国際線の「新たな機内食メニューの導入」などの取り組みにより、国内線・国際線ともに中期期間における順調なスタートとなりました。
(財務)
これまで築き上げた高い収益性と強固な財務安定性を兼ね備えつつ、成長に向けた積極的な投資および経営資源
の有効活用により常に成長し続けるために、「営業利益率10%以上、投資利益率(ROIC)9%以上」を目指します。
2017年度は満たしておりますが、引き続き、高い収益性と強固な財務安定性を目指してまいります。
(注)投資利益率(ROIC)=営業利益(税引後)/期首・期末固定資産平均(オフバランス未経過リース料含む)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッ
シュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(平成29年4月1日~平成30年3月31日)における航空総需要は、日本国内および海外ともに総じ
て緩やかな景気回復傾向の継続により、国内旅客需要と訪日外国人需要を中心に堅調に推移しました。
また、当社グループの燃料調達コスト、国際線旅客収入ならびに国際線貨物収入に影響を与える原油価格について
は、OPECの協調減産期間の延長や地政学リスクを受け上昇し、一方、米ドルの為替レートについては、概ね105~115
円のレンジで推移しました。
当社グループはこのような経済状況のもと、平成29年4月28日に発表しました「2017-2020年度 JALグループ中期
経営計画」で掲げた目標を達成するべく、安全運航の堅持を基盤としたうえで、JALフィロソフィと部門別採算制度
によって採算意識を高め、経営の効率化を図り、お客さまに最高のサービスを提供できるよう努めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産については、前連結会計年度末に比べ1,254億円増加し、1兆8,542億円となりまし
た。負債については、前連結会計年度末に比べ347億円増加の7,600億円となりました。純資産につきましては、前連
結会計年度末に比べ907億円増加の1兆941億円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における営業収益は1兆3,832億円(前年同期比7.3%増加)、営業費用は1兆2,086億円(前年同
期比8.1%増加)となり、営業利益は1,745億円(前年同期比2.5%増加)、経常利益は1,631億円(前年同期比1.1%
減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期の法人税等調整額の影響もあり1,354億円(前年同期比17.5%減
少)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
<航空運送事業>当連結会計年度における航空運送事業の実績については、営業収益は1兆2,572億円(前年同期比8.4%増加)、
営業利益は1,612億円(前年同期比5.3%増加)となりました。(営業収益及び営業利益はセグメント間連結消去前数
値です。)
部門別売上高は次のとおりです。
科目 | 前連結会計年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) | 構成比 (%) | 当連結会計年度 (自平成29年4月1日 至平成30年3月31日) | 構成比 (%) | 対前年 同期比 (%) |
国際線 | |||||
旅客収入 (百万円) | 415,218 | 35.8 | 462,919 | 36.8 | 111.5 |
貨物収入 (百万円) | 43,334 | 3.7 | 56,036 | 4.5 | 129.3 |
郵便収入 (百万円) | 8,699 | 0.8 | 9,858 | 0.8 | 113.3 |
手荷物収入 (百万円) | 764 | 0.1 | 749 | 0.1 | 98.0 |
小計 (百万円) | 468,017 | 40.4 | 529,563 | 42.1 | 113.2 |
国内線 | |||||
旅客収入 (百万円) | 498,628 | 43.0 | 518,239 | 41.2 | 103.9 |
貨物収入 (百万円) | 22,260 | 1.9 | 22,444 | 1.8 | 100.8 |
郵便収入 (百万円) | 3,959 | 0.3 | 3,718 | 0.3 | 93.9 |
手荷物収入 (百万円) | 301 | 0.0 | 304 | 0.0 | 101.0 |
小計 (百万円) | 525,150 | 45.3 | 544,706 | 43.3 | 103.7 |
国際線・国内線合計 (百万円) | 993,168 | 85.7 | 1,074,269 | 85.4 | 108.2 |
その他の収入 (百万円) | 166,224 | 14.3 | 182,995 | 14.6 | 110.1 |
合計 (百万円) | 1,159,392 | 100.0 | 1,257,265 | 100.0 | 108.4 |
(注)金額については切捨処理、各比率については四捨五入処理しております。
連結輸送実績は次のとおりです。
項目 | 前連結会計年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) | 当連結会計年度 (自平成29年4月1日 至平成30年3月31日) | 対前年同期比 (利用率は ポイント差) | |
国際線 | ||||
有償旅客数 | (人) | 8,394,777 | 8,585,399 | 102.3% |
有償旅客キロ | (千人・キロ) | 40,633,050 | 42,013,111 | 103.4% |
有効座席キロ | (千席・キロ) | 50,621,656 | 51,836,491 | 102.4% |
有償座席利用率 | (%) | 80.3 | 81.0 | 0.8 |
有償貨物トン・キロ | (千トン・キロ) | 1,887,856 | 2,233,387 | 118.3% |
郵便トン・キロ | (千トン・キロ) | 239,127 | 254,679 | 106.5% |
国内線 | ||||
有償旅客数 | (人) | 32,570,397 | 34,033,475 | 104.5% |
有償旅客キロ | (千人・キロ) | 24,550,154 | 25,643,092 | 104.5% |
有効座席キロ | (千席・キロ) | 35,423,513 | 35,714,021 | 100.8% |
有償座席利用率 | (%) | 69.3 | 71.8 | 2.5 |
有償貨物トン・キロ | (千トン・キロ) | 357,803 | 364,089 | 101.8% |
郵便トン・キロ | (千トン・キロ) | 26,104 | 24,697 | 94.6% |
合計 | ||||
有償旅客数 | (人) | 40,965,174 | 42,618,874 | 104.0% |
有償旅客キロ | (千人・キロ) | 65,183,205 | 67,656,203 | 103.8% |
有効座席キロ | (千席・キロ) | 86,045,169 | 87,550,512 | 101.7% |
有償座席利用率 | (%) | 75.8 | 77.3 | 1.5 |
有償貨物トン・キロ | (千トン・キロ) | 2,245,659 | 2,597,477 | 115.7% |
郵便トン・キロ | (千トン・キロ) | 265,231 | 279,377 | 105.3% |
(注)1.旅客キロは、各区間有償旅客数(人)に当該区間距離(キロ)を乗じたものであり、座席キロは、
各区間有効座席数(席)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。
輸送量(トン・キロ)は、各区間輸送量(トン)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。
2.区間距離は、IATA(国際航空運送協会)、ICAO(国際民間航空機構)の統計資料に準じた算出基準の
大圏距離方式で算出しております。
3.国際線:日本航空(株)
国内線:日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)、日本エアコミューター(株)、
(株)ジェイエア、琉球エアーコミューター(株)、(株)北海道エアシステム
ただし、前年同期は、国際線:日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)
国内線:日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)、日本エアコミューター(株)、
(株)ジェイエア、琉球エアーコミューター(株)、(株)北海道エアシステム
4.数字については切捨処理、比率については四捨五入処理しております。
<その他>その他の事業における主要2社の概況は次のとおりです。
株式会社ジャルパック
項目 | 前連結会計年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) | 当連結会計年度 (自平成29年4月1日 至平成30年3月31日) | 対前年 同期比 (%) |
海外旅行取扱人数(万人) | 24.1 | 23.1 | 95.8 |
国内旅行取扱人数(万人) | 251.0 | 254.5 | 101.4 |
営業収益 (億円)(連結消去前) | 1,725 | 1,751 | 101.5 |
株式会社ジャルカード
項目 | 前連結会計年度 (自平成28年4月1日 至平成29年3月31日) | 当連結会計年度 (自平成29年4月1日 至平成30年3月31日) | 対前年 同期比 (%) |
カード会員数 (万人) | 327.2 | 342.6 | 104.7 |
営業収益 (億円)(連結消去前) | 204 | 183 | 89.6 |
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ586億円増加して1,828億円とな
りました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益1,624億円に減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減算等を行っ
た結果、営業活動によるキャッシュ・フロー(インフロー)は2,815億円(前年同期比283億円の増加)となりま
した。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出を主因として、投資活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△1,666億円
(前年同期比14億円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払いや自己株式の取得を行ったことから、財務活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は
△558億円(前年同期比23億円の増加)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産、受注及び販売に該当する業種・業態がほとんどないため、「① 財政状態及び経営成績の状
況」に含めて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断及び見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における資産については、航空機の購入や航空機前払金の支払いなどを主因として前連結会計
年度末に比べ1,254億円増加し、1兆8,542億円となりました。
(負債合計)
当連結会計年度末における負債については、営業未払金や借入金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ
347億円増加の7,600億円となりました。
(純資産合計)
当連結会計年度末における純資産については、配当金の支払いや自己株式の取得の一方、親会社株主に帰属する
当期純利益の計上やその他の包括利益累計額の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ907億円増加の1兆941
億円となりました。
2)経営成績
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、収入面では、国際旅客収入はレベニューマネジメントの取り組
みによる日本発、海外発のいずれも高単価需要が堅調に推移し、燃油サーチャージ収入の増加と為替影響を合わせ
て477億円の増収、国内旅客収入は2016年の熊本地震の影響からの回復や、個人旅客需要が大きく伸びたことに加
え、他社に先駆けて実施したWi-Fi無料化による選好性向上効果もあり、前年対比196億円の増収となり、営業収益
は1兆3,832億円(前年同期比7.3%増加)となりました。
費用面では、燃油費は市況の上昇により164億円の増加、整備費はエンジン整備の増加などにより131億円増加し
ました。人件費は、事業規模拡大に伴う人員増や、業績に連動した賞与の増加などにより170億円増加、また、
2017年11月に稼働した新しい旅客基幹システムの償却費や旅客数の増加に伴う各種費用の増加もありましたが、前
連結会計年度から引き続き部門別採算制度等を通じた費用削減に取り組み、営業費用全体としては1兆2,086億円
(前年同期比8.1%増加)となりました。
以上の結果、営業利益は1,745億円(前年同期比2.5%増加)となりました。
営業外損益~親会社株主に帰属する当期純利益については、航空機材処分損の増加等により営業外費用が前連結会計年度よりも増加し、経常利益は1,631億円(前年同期比1.1%減少)となりました。前連結会計年度に法人税等調整額を316億円計上していたこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は1,354億円(前年同期比17.5%減少)となりました。
セグメント別の分析は次のとおりです。
<航空運送事業>(国際線)
国際線旅客においては、堅調な日本発の需要に加え、海外発の需要が好調に推移した結果、旅客数が前年比
2.3%増、有償座席利用率は過去最高の81.0%となりました。
路線運営面では、平成29年9月に成田=メルボルン線、成田=コナ線を開設し、10月には羽田深夜発の欧州線と
なる羽田=ロンドン線の増便を行い、日本発の業務・観光および海外発の幅広い需要獲得に努めました。また、更
なるネットワークの拡充を図るべく、ベトジェット、ビスタラ、ハワイアン航空、アエロメヒコ航空、アエロフロ
ート・ロシア航空との提携開始について合意に達しました。
商品面では、ご好評いただいております「JAL SKY SUITE」機材の客室仕様によるサービスを拡充すべく、新た
に「JAL SKY SUITE 787(JAL スカイスイート787)」を導入いたしました。
サービス面では、外部のサービス評価機関(JCSI)によって国際航空部門「ロイヤルティ(再利用意向)」が5
年連続で第1位の評価を得たことに加え、「顧客満足」についても第1位となりました。また、機内食では、若き
才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35の2016年度のグランプリを含む歴代ファイナリスト
が監修するメニューを日本発中・長距離路線プレミアムエコノミークラス・エコノミークラスにて開始いたしまし
た。
以上の結果、当連結会計年度の国際線供給は有効座席キロベースで前年同期比2.4%の増加、国際旅客収入は
4,629億円(前年同期比11.5%増加)となりました。
今後の見通し
国際線旅客においては、安定した日本発の需要に加え、引き続き海外発の需要増加が期待される一方、LCCを含
めた国内外の航空会社の供給拡大に伴い、競争環境は厳しさを増すと想定されます。このような環境において、需
要に合わせた期間増便の設定(関空=ホノルル線、成田=グアム線、成田=バンコク線)や既存の共同事業・提携関
係の深化に加え、新たなパートナーとの協力関係を活用し、ネットワークの強化やサービスの改善に努めます。ま
た、高品質な客室仕様の機材導入やお客さま一人一人のニーズに沿ったサービスを提供し、日本だけでなく海外マ
ーケットにおけるプレゼンスを高めていきます。
(国内線)
国内線旅客においては、他社との競争により単価が前年を下回った一方で、平成28年4月の熊本地震の影響で低
下した旅客需要が回復したことと各種需要喚起策が奏功し、旅客数が前年比4.5%増となったことにより、旅客収
入は前年を上回りました。
路線運営面では、伊丹発着路線を中心にエンブラエル190型機の運航路線を拡大したことに加え、日本エアコミ
ューターが運航する鹿児島県内の離島路線には、最新鋭のターボプロップ機であるATR42-600型機を投入し、地方
ネットワーク路線の利便性・快適性の向上を図りました。
商品面では、「JAL SKY NEXT」運航便にてご利用いただける「機内Wi-Fiサービス」の無料での提供を開始し、多くのお客さまからご好評いただいております。また日本トランスオーシャン航空が運航する737-800型機におい
ても、「JAL SKY NEXT」の導入を進め、利便性・快適性の向上に努めました。
営業面では、TripAdvisor,Inc.(トリップアドバイザー)との協業により、日本の知られざる魅力を発信する
特集サイト「Untold Stories of Japan(知られざる日本)」を新たに開設しました。特集サイトでは、日本各地
の様々な観光施設やアクティビティ情報を発信すると共に、訪日旅行者向け国内線運賃「JAL Japan Explorer
Pass」の提供により、海外からより多くのお客さまが日本各地を訪れる機会を創出しています。また民泊サービ
ス事業を展開する株式会社百戦錬磨との資本・業務提携を行い、各地域固有の観光資源を活かした民泊体験と航
空とを組み合わせた旅行商品の設定を拡充するなど、観光産業に関わる異業種との連携を進め、訪日旅行需要を
含めた地域間の交流促進に努めました。
以上の結果、当連結会計年度の国内線供給は有効座席キロベースで前年同期比0.8%の増加、国内旅客収入は
5,182億円(前年同期比3.9%増加)となりました。
今後の見通し
国内線旅客においては、価格やサービス面で他社との競争激化が想定される中で、需要に合わせた機材投入を行
い、収益性の向上に努めるとともに、さらなる利便性の向上に向けた取り組みを展開していきます。
路線運営面では、旺盛な需要の見込まれる夏季期間や週末の一部期間において、羽田=新千歳線などの増便を実
施することに加え、平成30年7月より、日本エアコミューターの運航にて、奄美群島と沖縄を結ぶ徳之島=沖永良
部=那覇線を新たに開設し、交流人口の拡大に貢献します。
商品面では、「JAL SKY NEXT」運航便にてご利用いただける「機内Wi-Fiサービス」について、ビデオプログラ
ムの拡充を図るとともに、新たに機内衛星テレビの放映を開始するなど、さらなる利便性・快適性の向上を図りま
す。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フ
ローの状況」に記載のとおりです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループが主たる事業領域としている航空市場は、経済活動のグローバル化に伴い、中長期的には拡大基調に
あり、特にアジア市場は世界の航空市場のなかでも高い成長性が期待されています。また、マーケットや環境の変化
はより速く、テクノロジーの著しい進歩も予見される中、将来の持続的かつ安定した成長を実現するため、「2017~
2020年度JALグループ中期経営計画」の4年間は「挑戦、そして成長へ」をテーマに、引き続き「フルサービスキャ
リア事業を磨き上げる」ことと、新たな収益源の創造・育成といった「事業領域を拡げる」ことに挑戦し、一歩ずつ
着実に進んでまいります。
国際旅客事業については、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催、想定される首都圏発着枠の拡大
などにより、これまで以上の外国人需要の増加が期待される一方、LCCを含めた国内外の航空会社の供給拡大に伴
い、競争環境は厳しさを増すと想定されます。このような環境において、太平洋・欧州路線の共同事業や他社提携を
含めたネットワークの強化、競争力の優れた客室仕様の機材導入などにより、日本だけでなく海外マーケットにおけ
るプレゼンスを高め、世界から評価される航空会社を目指してまいります。
国内旅客事業については、国内人口の減少や少子高齢化の進展により国内旅客総需要の大きく伸びないことが見込
まれる中、鉄道を含めた競争環境は一層厳しくなることが予想されます。このような環境において、エアバス
A350-900型機など新機材の導入、機内Wi-Fi利用の無料化、訪日外国人の利用増加に向けた多言語対応など、便利で
快適な移動空間の提供により、競争力の向上を図ってまいります。訪日需要を含む地域への送客を通じて交流人口を
拡大させ、地域の活性化に貢献してまいります。
また、航空市場は自然災害、戦争やテロ、疫病の発生等のさまざまな要因によって、短期的には需要が大きく変動
するリスクがあることから、フルサービスキャリア事業以外の当社グループの強みが活かせる新たな収益源の創造・
育成に挑戦することで、将来の安定した成長に繋げてまいります。
当社グループは、企業理念である「JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、一、お客さまに最高のサ
ービスを提供します。一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。」の実現に向けて、一層の事業・財務体
質の強化、社会のニーズや課題への対応に社員一丸となって取り組み、企業価値の向上に努めてまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性
1)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配
分することを財務戦略の基本方針としております。
強固な財務体質の維持に関しては、自己資本比率の水準を60%程度に保ち、「シングルAフラット」以上の信
用格付(日本の格付機関)の取得・維持を目指し、リスク耐性の強化を図ります。
同時に、適切な情報開示・IR活動を通じて株主資本コストの低減に努めると共に、営業キャッシュ・フロー
による十分な債務償還能力を前提に、厳格な財務規律のもとで負債の活用も進めることにより、資本コストの低
減および資本効率の向上にも努めてまいります。
設備投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進してまいります。平成30年度
から平成32年度の3年間累計では総額6,600億円の投資を計画しており、その約2/3に相当する4,400億円をキ
ャッシュ・フローの増加に繋がる投資を行う計画としております。なお、各年度の設備投資額は営業キャッシ
ュ・フローの範囲内とすることを原則とし、強固な財務体質を維持し、十分な水準の手元流動性を確保してまい
ります。
また、既に計画している設備投資とは別に、将来の企業価値を飛躍的に向上させる投資機会に機動的に対応で
きるよう、500億円の「特別成長投資枠」を設定しております。
2)経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、適正な手元現預金の水準について検証を実施しております。今中期経営計画期間において
は、総資産利益率(ROA)にも着目しつつ十分なイベントリスク耐性も備えるべく、売上高の約2.6か月分を安定
的な経営に必要な手元現預金水準とし、それを超える分については、「追加的に配分可能な経営資源」と認識
し、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。
平成32年度に向け、手元現預金及び今後創出するフリーキャッシュ・フロー、そして有利子負債の活用により
創出された追加的に配分可能な経営資源については、企業年金基金の財政基盤強化、飛躍的な成長のための特別
成長投資枠、株主還元のさらなる充実、に活用する考えです。
3)資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、航空運送事業に関わる燃油費、運航施設利用費、整備費、航空販売手数料、機材費(航空機に関わる償却費、賃借料、保険料など)、サービス費(機内・ラウン
ジ・貨物などのサービスに関わる費用)、人件費などがあります。
また、投資活動に係る資金支出は、航空機の安全、安定運航のために不可欠な設備や施設への投資、企業価値
向上に資する効率性・快適性に優れた新しい航空機への投資、安定的・効率的な航空機の運航や、競争力強化に
資する予約販売に関するIT投資などがあります。
4)資金調達
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金および外部資金を有効に
活用しております。
設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としておりますが、資金調達手段の多様化と
資本効率の向上を企図し、主要な事業資産である航空機などの調達に当たっては、金融機関からの借入や社債の
発行等、一部有利子負債を活用しております。
また、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、当社グループは国内2社の格
付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付はA(安定的)、格付投資
情報センターの格付はAマイナス(安定的)となっております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関
係を維持しており、加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要
な運転資金、投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。なお、国内金融機関において複数
年を含む合計500億円のコミットメントラインを設定しており、緊急時の流動性を確保しております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「2017~2020年度JALグループ中期経営計画」において、以下を経営目標としており、引き続き、経営目標の達成
に向け取り組んでまいります。
(安全)
安全運航はJALグループの存立基盤であり社会的責務であることを認識し輸送分野における安全のリーディングカンパニーとして安全の層を厚くし、安全運航を堅持します。航空事故ゼロ、重大インシデントゼロを実現します。
2017年度は重大インシデント1件(*)の発生により、目標を達成できませんでした。引き続き、安全管理システムの進化、事故の教訓を確実に継承する教育・研修の実施により、安全の層をより厚く、強固なものにしてまいります。また、テロの脅威からお客さまをお守りする保安管理システムの強化にも取り組みます。
(*)2017年9月5日、JL006便(東京国際空港発 ニューヨークJFK空港行)が、離陸中に左エンジンの不具合が発
生したため、当該エンジンを停止し、燃料投棄を行った後、東京国際空港に引き返しました。到着後のエン
ジン内部の検査において、エンジン後部の低圧タービンなどに損傷があることを確認されたことから、国土
交通省航空局より、重大インシデントと認定されました。
指標 | 目標 | 2017年度 |
航空事故(注1) | 0件 | 0件 |
重大インシデント(注2) | 0件 | 1件 |
(注1)航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災、航行中の航空機
の損傷(大修理)等
(注2)航空事故には至らないものの、その恐れがあったと認められる事態。滑走路からの逸脱、非常脱出等
(顧客満足)
すべてのお客さまが常に新鮮な感動を得られるような最高のサービスを提供し、2020年度までに世界トップレベルのお客さま満足を実現します。
日本のお客さまのみならず世界のお客さまの評価について、推奨意向を向上させることで、顧客満足・再利用意向もさらに高まることから、その指標としてNPS(Net Promoter Score)で測ります。
2017年度は旅客システム刷新が大きなトラブルなく進捗したことに加え、国内線の「機内Wi-Fiサービスの無料提供開始」、国際線の「新たな機内食メニューの導入」などの取り組みにより、国内線・国際線ともに中期期間における順調なスタートとなりました。
指標 | 2020年度までの目標 (2017年度期首実績対比) | 2017年度 |
NPS 国内線 | +5.3ポイント | +1.4ポイント |
NPS 国際線 | +4.5ポイント | +2.1ポイント |
(財務)
これまで築き上げた高い収益性と強固な財務安定性を兼ね備えつつ、成長に向けた積極的な投資および経営資源
の有効活用により常に成長し続けるために、「営業利益率10%以上、投資利益率(ROIC)9%以上」を目指します。
2017年度は満たしておりますが、引き続き、高い収益性と強固な財務安定性を目指してまいります。
指標 | 目標 | 2017年度 |
営業利益率 | 10%以上 | 12.6% |
投資利益率(ROIC)(注) | 9%以上 | 10.1% |
(注)投資利益率(ROIC)=営業利益(税引後)/期首・期末固定資産平均(オフバランス未経過リース料含む)