有価証券報告書-第86期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/27 9:34
【資料】
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【項目】
145項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
2023年4月、当社の連結子会社である近畿日本ツーリスト株式会社が新型コロナウイルス関係業務等において、自治体等から指示を受けた要員数・個数に満たない仕入れを行うなどして、過大請求を行っていた事案が発覚いたしました。
事業の遂行に当たっては、何よりもコンプライアンス遵守を優先すべきところ、今般発覚いたしました事案は、これまで当社グループが積み上げてきた社会的信頼を損なう行為であり、株主の皆様、お客様、関係協力機関の皆様、行政及び関係者の皆様をはじめとした当社グループの全てのステークホルダーの皆様にご不快な思いのみならず、ご迷惑とご心配をおかけしておりますこと、深くおわび申しあげます。
当社グループでは、本件発覚後当社グループの総力を挙げて本件および本件以外の不適切な事案の有無を解明すべく、緊急社内点検に着手するとともに、さらに客観的かつ徹底的な調査を行うため、4月17日に中立・公正な独立社外取締役2名および外部の専門家2名からなる調査委員会を設置いたしました。調査委員会による調査は継続しておりますが、この間、当社グループとして調査委員会の調査の状況も踏まえながら緊急社内点検を十分かつ適切に実施いたしました。今後、調査委員会により究明される本事案の根本的な原因に照準を合わせ、当社グループの内部統制を再構築し再発防止を図るとともに、社内規定に則った厳正な処分を行い、信頼回復に努めてまいります。
当連結会計年度の事業活動につきましては、旅行業においては、新型コロナウイルス対策に万全を期しつつ、修学旅行その他の団体旅行、国内個人旅行の催行に努めるとともに、Web販売の強化と都道府県民割、全国旅行支援事業等を活用した旅行商品の販売に注力いたしました。しかしながら、2022年5月から販売を再開した海外旅行の需要回復の遅れもあり、旅行業収入はコロナ前に大きく及ばない状況で推移いたしました。
このような状況に対処するため、当社グループは、引き続き旅行業以外の事業の拡大に努め、従来の観光施設運営業務、観光振興業務等に加え、全国の自治体、企業等から新型コロナウイルス関係業務等を受託するなどBPO(Business Process Outsourcing)事業に鋭意取り組みましたが、そのような新規の事業活動が冒頭の不正事案につながったことは、誠に遺憾であり、慙愧に堪えません。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、主に現金及び預金、預け金、受取手形、営業未収金及び契約資産および旅行前払金の増加により1,386億71百万円となり、前連結会計年度末に比較して363億29百万円(35.5%)の増加となりました。一方、負債合計は、主に営業未払金、旅行前受金および賞与引当金の増加により1,027億45百万円となり、前連結会計年度末に比較して247億20百万円(31.7%)の増加となりました。
当連結会計年度末の純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により359億25百万円となり、前連結会計年度末に比較して116億9百万円(47.7%)の増加となりました。
この結果、自己資本比率は25.9%(前連結会計年度末 23.7%)、1株当たり純資産は△198.35円(前連結会計年度末 △595.61円)となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の連結業績は、連結売上高は2,521億52百万円(前年同期比80.2%増)、連結営業利益は114億10百万円(前期 営業損失76億86百万円)、連結経常利益は120億58百万円(前期 経常損失38億86百万円)となりましたが、上記の過大請求事案に伴う特別調査費用等9億円を特別損失に計上したこともあり、親会社株主に帰属する当期純利益は117億90百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失57億71百万円)となりました。なお、緊急社内点検の結果により算定された過大請求額を基に連結売上高の減額修正を行っておりますが、過年度分につきましてもその金額的な影響に重要性がないと判断していることから、当連結会計年度の連結売上高から減額しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期に比較して151億20百万円増加し709億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は149億93百万円の増加(前期は82億44百万円の減少)となりました。これは主に売上債権及び契約資産の増加による影響で156億91百万円減少したものの、税金等調整前当期純利益の計上で110億68百万円、旅行前受金の増加による影響で183億67百万円それぞれ増加したためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は29百万円の増加(前期は76百万円の増加)となりました。これは主に定期預金の預入による支出で4億59百万円、固定資産の取得による支出で7億50百万円それぞれ減少したものの、定期預金の払戻による収入で5億44百万円、固定資産の売却による収入で3億50百万円、差入保証金の回収による収入で5億24百万円それぞれ増加したためであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は30百万円の減少(前期は398億61百万円の増加)となりました。これは主にリース債務の返済による支出で28百万円減少したためであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、旅行業の単一セグメントであり受注生産形態をとらない商品が多いため生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは旅行業の単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容についての記載を省略しております。
① 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、有価証券、減価償却資産、貸倒引当金、繰延税金資産、退職給付に係る資産、賞与引当金、特別調査費用等引当金、旅行券等の計上について見積りを行っております。
なお、見積りについては、過去の実績や現在の状況等に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
主なものとしては次のとおりであります。
固定資産の減損
当社グループは、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、新たに減損損失が発生する可能性があります。
繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得は過去の業績等に基づいて見積っているため、税制改正や経営環境の変化等により課税所得の見積りが大きく変動した場合等には、繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。)。
繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (税効果会計関係)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (税効果会計関係)」をご覧ください。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)経営成績
(売上高と営業損益)
当連結会計年度の売上高と営業損益は、旅行業で都道府県民割や全国旅行支援等を活用したツアーが堅調に推移したほか、観光施設の運営業務、観光振興業務、新型コロナウイルス関連業務等のBPO事業の受注など、非旅行業の取扱いが増加したため、前連結会計年度に比べ、売上高は80.2%増の2,521億52百万円、営業利益は114億10百万円(前期 営業損失76億86百万円)となりました。
(経常損益)
当連結会計年度の営業外収益および営業外費用の純額は6億48百万円の収益超過となり、助成金収入の減少により前連結会計年度に比べ31億51百万円の減益となりましたが、当連結会計年度の経常利益は、120億58百万円(前期 経常損失38億86百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度の特別利益および特別損失の純額は、特別損失として9億円の特別調査費用等を計上したため、9億90百万円の損失超過となりましたが、事業構造改革関連費用や減損損失の減少により前連結会計年度に比べ1億4百万円の増益となりました。
また、当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税は5億62百万円、法人税等調整額は△12億78百万円であり、非支配株主に帰属する当期純損失を差し引いた当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は、117億90百万円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失57億71百万円)の利益となりました。
2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループをとりまく環境としましては、国内における人口減少や高齢化、アジア諸国の経済発展、国を越えた人の動きの活発化等内外の社会構造の変化が旅行業に影響を与えております。また、外資を含めたOTAの事業拡大、国内航空旅行を中心に柔軟に商品価格を変化させるテクノロジーを活用したプライシング機能等の新たなサービスの進化等により事業環境は著しく変化しております。
また、旅行市場は、政府の「観光立国」に向けた政策はあるものの、新型コロナウイルスによる感染拡大に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響、原油価格の高騰、円安基調など、旅行需要を激減させる事態が継続しており、今後も混乱が残るものと予想されます。
当社グループは、個人、団体の国内旅行、海外旅行の企画・販売をはじめ、海外からの訪日旅行を取り扱うため、国内、海外の安全性が損なわれる事態(自然災害、国際テロ、紛争および新興感染症等)が生じた場合や、景況悪化による個人消費の落ち込み、天候や休日の日並びの良否等市場環境の変化などに起因し、経営成績に影響を受ける可能性があります。
2)今後の見通し
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
1)資金需要
当社グループの資金需要は、営業活動については、旅行商品の企画販売にかかる宿泊機関・運輸機関・観光機関等からの仕入、および人件費ならびに販売諸経費等の営業費用が主な内容であります。投資活動については、システム投資をはじめとする設備投資が主な内容であります。
2)財務政策
当社グループは現在、営業活動による資金需要、投資活動による資金需要いずれについても、内部資金により調達しており、借入や社債発行等による外部からの資金調達は行っておらず、有利子負債の金額は僅少であります。
また、当社グループの各社の資金需要については当社が一元管理するとともに、グループ内における資金の効率的活用を図るため、キャッシュマネジメントシステムによる国内子会社の余剰資金の集中および配分を行っております。
なお、当社グループ全体の余剰資金は、親会社である近鉄グループホールディングス株式会社のキャッシュマネジメントシステムに預入を行っております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、安定的に利益を出すことのできる体質を構築し、売上高および営業利益を重視しておりますが、同時に安定性や効率性を計る指標として、自己資本比率および自己資本利益率を定めております。
当連結会計年度における自己資本比率は25.9%(前期比2.2ポイント改善)であり、自己資本利益率(ROE)は39.2%(前期 △79.1%)でした。引き続きこれらの指標について改善されるよう取り組んでまいります。