有価証券報告書-第94期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 10:18
【資料】
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【項目】
136項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
イ.財政状態
[資産・負債・純資産]
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ3,142億円増加し、12兆5,918億円となった。これは、現金及び預金が増加したことなどによるものである。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ56億円増加し、9兆9,345億円となった。これは、有
利子負債の増加などによるものである。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ3,085億円増加し、2兆6,572億円となった。これ
は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによるものである。この結果、自己資本比率は
21.1%と前連結会計年度末に比べ2.0ポイント上昇した。
ロ.経営成績
[概要]
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比9.2%増の5兆8,509億円、経常利益は同12.0%増の2,548億
円、親会社株主に帰属する当期純利益は同139.5%増の3,180億円となった。
[売上高]
当連結会計年度における各セグメントの売上高(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが9,577
億円(前連結会計年度比4.3%増)、フュエル&パワーが1兆8,284億円(前連結会計年度比11.8%増)、パワ
ーグリッドが1兆7,420億円(前連結会計年度比3.0%増)、エナジーパートナーが5兆5,324億円(前連結会
計年度比7.7%増)となった。
販売電力量は、電灯は前連結会計年度比4.3%減の827億kWh、電力は同3.0%減の1,504億kWhとなっ
た。
[経常損益]
当連結会計年度における各セグメントの経常損益(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが
1,422億円の経常利益(前連結会計年度は208億円の経常損失)、フュエル&パワーが519億円の経常利益(前
連結会計年度比2.4%減)、パワーグリッドが790億円の経常利益(前連結会計年度比29.2%減)、エナジーパ
ートナーが1,159億円(前連結会計年度比55.1%増)となった。
[親会社株主に帰属する当期純利益]
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、原賠・廃炉等支援機構資金交付金3,819億円を特別利益に計
上する一方で、災害特別損失213億円や原子力損害賠償費2,868億円を特別損失に計上したことなどから、
3,278億円となった。ここから、法人税、住民税及び事業税208億円、法人税等調整額△113億円、非支配株主
に帰属する当期純利益1億円を加減し、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、3,180億円と
なった。なお、1株当たり当期純利益は198円52銭となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末
に比べ2,441億円(26.0%)増加し、1兆1,843億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、前連結会計年度比3.9%減の7,521億円となった。これ
は、火力燃料購入に関する支出が増加したことなどによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、前連結会計年度比8.8%増の5,205億円となった。これ
は、定期預金の払戻による収入が減少したことなどによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、125億円(前連結会計年度は6,039億円の支出)となっ
た。これは、短期借入れによる収入が増加したことなどによるものである。
③ 生産及び販売の実績
当社グループは、水力・原子力発電等を行う「ホールディングス」、火力発電等を行う「フュエル&パワー」、送電・変電・配電による電力の供給等を行う「パワーグリッド」及び電気の販売等を行う「エナジーパートナー」の4つのセグメントがコスト意識を高めるとともに自発的に収益拡大に取り組みつつ、一体となって電気事業を運営している。加えて、電気事業が連結会社の事業の大半を占めており、また、電気事業以外の製品・サービスは多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくないため、生産及び販売の実績については、電気事業のみを記載している。
イ.発電実績
種別平成29年度
(百万kWh)
前年同期比
(%)




水力発電電力量12,212121.7
火力発電電力量184,38496.9
原子力発電電力量--
新エネルギー等発電電力量72106.2
発電電力量合計196,66898.1

ロ.販売実績
(a) 販売電力量
種別平成29年度
(百万kWh)
前年同期比
(%)
電灯82,68695.7
電力150,43797.0
電灯電力合計233,12396.5

(注)東京電力エナジーパートナー株式会社(単体ベース)
(b) 料金収入
種別平成29年度
(百万円)
前年同期比
(%)
電灯2,030,931102.0
電力2,543,076104.4
電灯電力合計4,574,007103.3

(注)1.上記料金収入には、消費税等は含まれていない。
2.東京電力エナジーパートナー株式会社(単体ベース)
(c) 託送収入
種別平成29年度
(百万円)
前年同期比
(%)
託送収益1,552,398103.4

(注)1.上記料金収入には、消費税等は含まれていない。
2.セグメント間取引消去前
ハ.資材の状況
重油及び原油等の受払状況
種別平成29年度
期首残高受入量前年同期比
(%)
払出量前年同期比
(%)
期末残高
石炭(t)392,6178,637,677109.38,380,384102.1649,910
重油(kl)271,549690,17443.7779,15647.4182,567
原油(kl)66,245123,773252.9126,39730.263,621
LNG(t)478,86320,996,60393.920,803,12492.2672,342
LPG(t)42,619211,63764.5157,09941.097,157

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものである。
① 経営成績等
当連結会計年度における当社グループを取り巻く経営環境は、国内エネルギー需要の減少が見込まれるなか、電力に加え昨年4月よりガスの小売全面自由化が始まり、分野・地域を超えた競争が激化するなど、厳しい状況が継続している。
当社グループは、新々・総合特別事業計画(第三次事業計画)に基づき、企業価値向上を果たし福島への責任を貫徹するため、ガス事業に参入し事業領域を拡大するなど「稼ぐ力」の強化に向けた取り組みをすすめてきた。
当社グループの当連結会計年度の販売電力量(連結)は、電力小売全面自由化の影響などにより、前連結会計年度比1.4%減の2,403億kWhとなった。
当連結会計年度の連結収支については、収益面では、燃料費調整制度の影響などにより電気料収入単価が上昇したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比9.2%増の5兆8,509億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は8.8%増の5兆8,995億円となった。
一方、費用面では、原子力発電が引き続き全機停止するなか、グループをあげてコスト削減に努めたものの、燃料価格の上昇などにより燃料費や購入電力料が増加したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比8.7%増の5兆6,447億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比12.0%増の2,548億円となった。また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金3,819億円を特別利益として計上した一方、災害特別損失と原子力損害賠償費を合わせた3,081億円を特別損失として計上したことなどから、親会社に帰属する当期純利益は3,180億円となった。
当連結会計年度の自己資本比率については、前連結会計年度の19.1%から21.1%に、デット・エクイティ・レシオについては、前連結会計年度の2.56から2.27となるなど、引き続き財務体質の改善がすすんだ。
また、当年度もパワーグリッドが継続的に社債を発行するなど、円滑な事業運営が可能となる資金調達に取り組んだ。
当連結会計年度における各セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
[ホールディングス]
収益面では、当連結会計年度よりパワーグリッドからの廃炉等負担金収益を計上したことなどにより、売上高(営業収益)は前連結会計年度比4.3%増の9,577億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は、各基幹事業会社からの配当による営業外収益の増加などにより、13.5%増の1兆1,430億円となった。一方、費用面では、徹底的なコスト削減に努めたことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比2.6%減の1兆7億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比1,631億円増の1,422億円となった。
[フュエル&パワー]
収益面では、販売電力量が減少したものの燃料価格の上昇により火力電力料収入が増加したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比11.8%増の1兆8,284億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は11.8%増の1兆8,484億円となった。
一方、費用面では、定期点検期間の短縮などコスト削減に努めたものの、燃料価格の上昇により燃料費が増加したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比12.3%増の1兆7,964億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比2.4%減の519億円となった。
[パワーグリッド]
収益面では、エリア需要が気温の影響などにより前連結会計年度比1.7%増の2,766億kWhとなったことにより託送収入が増加したことなどから、売上高(営業収益)は3.0%増の1兆7,420億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は3.0%増の1兆7,582億円となった。
一方、費用面では、設備保全の合理化などコスト削減に努めたものの、当連結会計年度より廃炉積立金の原資となる廃炉等負担金を計上したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比5.3%増の1兆6,792億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比29.2%減の790億円となった。
[エナジーパートナー]
収益面では、販売電力量(連結)が前連結会計年度比1.4%減の2,403億kWhとなったものの、燃料費調整制度の影響などにより電気料収入単価が上昇したことなどから、売上高(営業収益)は7.7%増の5兆5,324億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は7.8%増の5兆5,403億円となった。
一方、費用面では、燃料価格の上昇により購入電力料が増加したものの、電源調達の効率化などコスト削減に努めたことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比7.1%増の5兆4,243億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比55.1%増の1,159億円となった。
② 資本の財源及び資金の流動性
イ.キャッシュ・フロー等
(a) キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。
(b) 有利子負債
平成30年3月31日現在の社債、長期借入金、短期借入金については、以下のとおりである。
当連結会計年度(平成30年3月31日)
1年以内
(百万円)
1年超
2年以内
(百万円)
2年超
3年以内
(百万円)
3年超
4年以内
(百万円)
4年超
5年以内
(百万円)
5年超
(百万円)
社債853,058420,560227,72286,178222,123421,250
長期借入金903,469482,234561,19864,80333,862165,243
短期借入金1,581,266-----
合計3,337,794902,794788,920150,981255,985586,493

上記については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)2.金融商品の時価等に関する事項(注4)社債、長期借入金及びその他の有利子負債の連結決算日後の返済予定額」にも記載。
ロ.財務政策
東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に伴う多額の損失の発生や原子力発電所の停止等による燃料費の増加等により財務基盤と収益構造が大幅に悪化するとともに、自律的な資金調達力が低下したことを受け、総合特別事業計画(平成24年5月に主務大臣より認定。)に基づき、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、「機構」)から1兆円の出資を受けるとともに、取引金融機関に対しては、その後の新・総合特別事業計画等(平成26年1月に主務大臣より認定。)においてもあわせて、追加与信及び借換え等による与信の維持等をお願いし、ご協力をいただいてきた。
新々・総合特別事業計画(平成29年5月に主務大臣より認定。)等においても、取引金融機関に対し、前回総特での協力要請の通り引き続き与信を維持することなどをお願いし、ご協力をいただいている。これらの機構や金融機関の支援・協力のもとで、自己資本比率の改善、公募社債市場への復帰などの取組は進んでおり、平成29年度はパワーグリッドにおいて4,000億円の公募社債を発行した。引き続き社債の発行を継続するなど、当社グループの自律的な資金調達力の回復もはかっていく。
また、当社グループでは、グループ全体でより効率的な資金の運用を図る観点からグループ金融制度を採用している。
③ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」に記載のとおり、賠償・廃炉に必要な資金を確保しつつ、2026年度以内に連結経常利益で3,000億円/年超、2027年度以降には4,500億円規模の利益水準を達成することを目標に掲げている。
当連結会計年度における経常利益は2,548億円となった。