有価証券報告書-第96期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 11:22
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189項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
イ.財政状態
[資産・負債・純資産]
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ7,996億円減少し、11兆9,578億円となった。これは、電気事業固定資産が減少したことなどによるものである。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ8,128億円減少し、9兆409億円となった。これは、有利子負債が減少したことなどによるものである。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ131億円増加し、2兆9,168億円となった。これは、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによるものである。この結果、自己資本比率は24.3%と前連結会計年度末に比べ1.7ポイント上昇した。
ロ.経営成績
[概要]
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比1.5%減の6兆2,414億円、経常利益は同4.5%減の2,640億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同78.2%減の507億円となった。
[売上高]
当連結会計年度における各セグメントの売上高(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが8,469億円(前連結会計年度比10.9%減)、フュエル&パワーが97億円(前連結会計年度比99.5%減)、パワーグリッドが1兆7,598億円(前連結会計年度比1.6%減)、エナジーパートナーが5兆6,428億円(前連結会計年度比3.7%減)となった。
販売電力量は、前連結会計年度比3.5%減の2,223億kWhとなった。
[経常利益]
当連結会計年度における各セグメントの経常利益(セグメント間取引消去前)は、ホールディングスが1,529億円(前連結会計年度比34.3%減)、フュエル&パワーが647億円(前連結会計年度は35億円)、パワーグリッドが1,166億円(前連結会計年度比2.4%増)、エナジーパートナーが600億円(前連結会計年度比17.5%減)となった。
[親会社株主に帰属する当期純利益]
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、特別利益に原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金1,016億円、持分変動利益1,997億円、災害損失引当金戻入額1,135億円を計上した一方、特別損失に災害特別損失3,949億円、原子力損害賠償費1,079億円、福島第二廃止損失956億円、減損損失105億円を計上したことなどから、692億円となった。ここに、法人税、住民税及び事業税188億円、法人税等調整額△12億円、非支配株主に帰属する当期純利益8億円を計上し、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、507億円となった。なお、1株当たり当期純利益は31円65銭となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,872億円(18.7%)減少し、8,121億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、前連結会計年度比35.8%減の3,234億円となった。これは、購入電力料の支出が増加したことなどによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、前連結会計年度比11.0%減の5,082億円となった。これは、固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、135億円(前連結会計年度は1,176億円の支出)となった。これは、社債の償還による支出が減少したことなどによるものである。
③ 生産及び販売の実績
当社グループは、水力・原子力発電等を行う「ホールディングス」、火力発電等を行う「フュエル&パワー」、送電・変電・配電による電力の供給等を行う「パワーグリッド」及び電気の販売等を行う「エナジーパートナー」の4つのセグメントがコスト意識を高めるとともに自発的に収益拡大に取り組みつつ、一体となって電気事業を運営している。加えて、電気事業が連結会社の事業の大半を占めており、また、電気事業以外の製品・サービスは多種多様であり、受注生産形態をとらない製品も少なくないため、生産及び販売の実績については、電気事業のみを記載している。
イ.発電実績
種別2019年度
(百万kWh)
前年同期比
(%)




水力発電電力量10,74397.0
火力発電電力量1600.1
原子力発電電力量--
新エネルギー等発電電力量6287.2
発電電力量合計10,9665.7

(注)2019年4月1日付けで㈱JERAが承継会社となり、既存火力発電事業等を吸収分割により承継させた。これに伴い、前年同期比で火力発電電力量が減少している。
ロ.販売実績
(a) 販売電力量
種別2019年度
(百万kWh)
前年同期比
(%)
販売電力量222,27796.5

(注)上記販売電力量には、連結子会社の一部を含んでいる。
(b) 電気料収入
種別2019年度
(百万円)
前年同期比
(%)
電気料収入4,509,69394.1

(注)1.上記電気料収入には、消費税等は含まれていない。
2.連結子会社の一部を含んでいる。
(c) 託送収入
種別2019年度
(百万円)
前年同期比
(%)
託送収益1,494,22096.0

(注)1.上記料金収入には、消費税等は含まれていない。
2.セグメント間取引消去前
④ 電気料金
東京電力エナジーパートナー株式会社は、2019年10月1日より消費税率(地方消費税率を含む)が8%から10%へ変更になることを踏まえ、2019年8月28日に経済産業大臣に特定小売供給約款の変更を届出し、2019年10月1日から実施している。
主要契約種別の新税率が適用される場合の電気料金は下記のとおりである。
電気料金表
(消費税等相当額を含む料金単価)

単位料金単価(円)



需要家料金1契約 1か月につき55.00



10Wまで1灯 1か月につき99.56
10W超過 20Wまで149.62
20W 〃 40W 〃249.74
40W 〃 60W 〃349.87
60W 〃 100W 〃550.12
100W 〃 100Wまでごとに550.12





50VAまで1機器 1か月につき239.17
50VA超過 100VAまで387.05
100VA 〃 100VAまでごとに387.05



A最低料金1か月8kWhまで235.84
電力量料金上記超過1kWhにつき19.88
B


10A1契約 1か月につき286.00
15A429.00
20A572.00
30A858.00
40A1,144.00
50A1,430.00
60A1,716.00




最初の120kWhまで1kWhにつき19.88
120kWh超過 300kWhまで26.48
300kWh超過30.57
最低月額料金1契約 1か月につき235.84
C基本料金1kVA 1か月につき286.00




最初の120kWhまで1kWhにつき19.88
120kWh超過 300kWhまで26.48
300kWh超過30.57

単位料金単価(円)




A需要家料金1契約 1か月につき49.50



10Wまで1灯 1か月につき90.10
10W超過 20Wまで136.20
20W 〃 40W 〃228.40
40W 〃 60W 〃320.61
60W 〃 100W 〃505.02
100W 〃 100Wまでごとに505.02





50VAまで1機器 1か月につき218.27
50VA超過 100VAまで349.65
100VA 〃 100VAまでごとに349.65
B基本料金1kVA 1か月につき258.50
電力量料金1kWhにつき20.05
最低月額料金1契約 1か月につき224.84



基本料金1kW 1か月につき1,122.00
電力量料金1kWhにつき夏季
17.37
その他季
15.80

(注)1.上記契約種別のほか、臨時電灯、臨時電力、農事用電力がある。
2.料金単価欄の「夏季」とは毎年7月1日から9月30日までの期間をいい、「その他季」とは毎年10月1日から翌年の6月30日までの期間をいう。
3.原油・LNG(液化天然ガス)・石炭などの燃料価格の変動に応じ毎月自動的に料金を調整する燃料費調整制度が導入されている。なお、燃料費調整制度の算定方法は、「(参考)燃料費調整」に記載している。
(参考)燃料費調整
特定小売供給約款における燃料費調整
a.燃料費調整単価の算定方法
平均燃料価格の範囲燃料費調整単価の算定方法
44,200円/klを下回る場合(44,200円-平均燃料価格)×基準単価/1,000
44,200円/klを上回り,かつ,66,300円/kl以下の場合(平均燃料価格-44,200円)×基準単価/1,000
66,300円/klを上回る場合(66,300円-44,200円)×基準単価/1,000

b.基準単価
単位基準単価
従量制1kWhにつき23銭2厘

(注) 定額制供給についても,同様に基準単価がある。
⑤ 託送供給料金
東京電力パワーグリッド株式会社は、2019年10月1日より消費税率(地方消費税率を含む)が8%から10%へ変更になることを踏まえ、2019年8月21日に経済産業大臣に「託送供給等約款」の変更を届出し、2019年10月1日から実施している。
主要託送供給料金は下記のとおりである。
託送供給料金表
(消費税等相当額を含む料金単価)

単位料金単価(円)
接続送電サービス低圧電灯定額接続送電サービス電灯
料金
10Wまで1灯 1か月につき35.54
10W超過 20Wまで71.09
20W 〃 40W 〃142.19
40W 〃 60W 〃213.28
60W 〃 100W 〃355.47
100W 〃 100Wまでごとに355.47
小型
機器
料金
50VAまで1機器 1か月につき106.17
50VA超過 100VAまで212.34
100VA 〃 100VAまでごとに212.34
電灯標準接続送電サービス基本
料金
実量契約1kW 1か月につき214.50
SB・主開閉器契約1kVA 1か月につき143.00
SB契約;5Aの場合1契約 1か月につき71.50
SB契約;15Aの場合214.50
電力量料金1kWhにつき7.45
電灯
時間帯別接続送電サービス
基本
料金
実量契約1kW 1か月につき214.50
SB・主開閉器契約1kVA 1か月につき143.00
SB契約;5Aの場合1契約 1か月につき71.50
SB契約;15Aの場合214.50
電力量料金昼間時間1kWhにつき8.20
夜間時間1kWhにつき6.55
電灯従量接続送電サービス1kWhにつき10.97
動力標準接続送電サービス基本
料金
実量契約1kW 1か月につき704.00
主開閉器契約445.50
電力量料金1kWhにつき5.17
動力
時間帯別接続送電サービス
基本
料金
実量契約1kW 1か月につき704.00
主開閉器契約445.50
電力量料金昼間時間1kWhにつき5.69
夜間時間4.57
動力従量接続送電サービス16.71

単位料金単価(円)
接続送電
サービス
高圧高圧標準
接続送電
サービス
基本料金1kW 1か月につき555.50
電力量料金1kWhにつき2.34
高圧
時間帯別
接続送電
サービス
基本料金1kW 1か月につき555.50
電力量料金昼間時間1kWhにつき2.57
夜間時間2.04
高圧従量接続送電サービス1kWhにつき11.45
ピークシフト割引1kW 1か月につき471.90
特別
高圧
特別
高圧標準
接続送電
サービス
基本料金379.50
電力量料金1kWhにつき1.30
特別高圧
時間帯別
接続送電
サービス
基本料金1kW 1か月につき379.50
電力量料金昼間時間1kWhにつき1.39
夜間時間1.17
特別高圧従量接続送電サービス7.52
ピークシフト割引1kW 1か月につき322.30
予備送電サービス高圧予備送電サービスA71.50
予備送電サービスB88.00
特別
高圧
予備送電サービスA66.00
予備送電サービスB77.00
近接性
評価割引
受電電圧が標準電圧6,000V以下の場合1kWhにつき0.69
受電電圧が標準電圧6,000Vをこえ140,000V以下の場合0.41
受電電圧が標準電圧140,000Vをこえる場合0.21

(注)1.上記契約種別のほか、臨時接続送電サービス、発電量調整受電計画差対応電力、接続対象計画差対応電力、
需要抑制量調整受電計画差対応電力、給電指令時補給電力がある。
2.SBとは、電流制限器またはその他適当な電流を制限する装置。
3.時間帯別接続送電サービスにおける「昼間時間」とは、毎日午前8時から午後10時までの時間をいい、「夜間時間」とは、「昼間時間」以外の時間をいう。ただし、日曜日、祝日(「国民の祝日に関する法律」に規定する休日)および1月2日・3日、4月30日、5月1日・2日、12月30日・31日は、全日「夜間時間」扱いとする。
4.近接性評価割引とは、近接性評価地域に立地する発電場所における発電設備を維持し、および運用する発電契約者から当該発電設備に係る電気を受電し、接続供給を利用する場合に行う割引をいう。
5.これまで近接性評価割引対象とされていた地域において、現に割引の適用を受けている電源についても、暫定的に、引き続き割引くこととし、受電電圧が標準電圧140,000Vをこえる場合の単価を適用する。
ハ.資材の状況
重油及び原油等の受払状況
2019年4月1日付けで㈱JERAが承継会社となり、既存火力発電事業等を吸収分割により承継させた。これに伴い、2018年度末在庫量については、すべて㈱JERAへ承継されている。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものである。
① 経営成績等
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、省エネルギーの進展等により国内エネルギー需要の減少傾向が続くなか、小売事業におけるさらなる競争の激化などにより、一層厳しい状況にある。
こうしたなか、当社グループは、福島への責任を貫徹するため、カイゼン活動をはじめとした生産性改革、株式会社JERAを象徴とする他社との提携、成長領域への事業展開などの取り組みをグループ一丸となってすすめ、収益力と企業価値の向上に努めてきた。
当社グループの当連結会計年度の販売電力量(連結)は、電力小売全面自由化や気温の影響などにより、前連結会計年度比3.5%減の2,223億kWhとなった。
当連結会計年度の連結収支については、収益面では、販売電力量(連結)が減少したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比1.5%減の6兆2,414億円となり、その他の収益を加えた経常収益合計は0.4%減の6兆3,488億円となった。
一方、費用面では、原子力発電が引き続き全機停止するなか、グループをあげたコスト削減の徹底などにより、経常費用合計は前連結会計年度比0.2%減の6兆848億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比4.5%減の2,640億円となった。また、株式会社JERAへの既存火力発電事業等の承継に伴う持分変動利益、福島第二原子力発電所の廃止決定に伴う災害損失引当金の戻入額、原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金を合わせ4,149億円を特別利益として計上する一方、燃料デブリの取り出しに係る支出の一部などの災害特別損失、原子力損害賠償費、福島第二原子力発電所の廃止決定に伴う損失などを合わせ6,093億円を特別損失として計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は507億円となった。
当連結会計年度の自己資本比率については前連結会計年度の22.6%から24.3%に、デット・エクイティ・レシオについては前連結会計年度の2.04から1.69になるなど、引き続き財務体質の改善をすすめた一方、資本効率の指標であるROE/ROAは、親会社株主に帰属する当期純利益の減少などにより、ROEは前連結会計年度の8.4%から1.8%に、ROAは前連結会計年度の2.5%から1.7%となった。
当連結会計年度における各セグメントの業績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
[ホールディングス]
収益面では、販売電力料収入が減少したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比10.9%減の8,469億円となり、経常収益合計は10.9%減の1兆104億円となった。一方、費用面では、システム維持費用を各基幹事業会社による負担に変更したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比4.8%減の8,574億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比34.3%減の1,529億円となった。
[フュエル&パワー]
2019年4月1日、東京電力フュエル&パワー株式会社の既存火力発電事業等を株式会社JERAに承継させたことに伴い、収益面、費用面とも前連結会計年度に比べ大幅に減少となった。
経常利益は、持分法適用会社である株式会社JERAが燃料費調整における期ずれの影響などにより増益となったことなどから、前連結会計年度に比べ612億円増の647億円となった。
[パワーグリッド]
収益面では、気温の影響などによりエリア需要が前連結会計年度比1.8%減の2,698億kWhとなり、託送収入が減少したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比1.6%減の1兆7,598億円となり、経常収益合計は1.6%減の1兆7,778億円となった。
一方、費用面では、購入電力料や修繕費が減少したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比1.9%減の1兆6,611億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比2.4%増の1,166億円となった。
[エナジーパートナー]
収益面では、販売電力量(連結)が前連結会計年度比3.5%減の2,223億kWhとなったことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度比3.7%減の5兆6,428億円となり、経常収益合計は3.7%減の5兆6,492億円となった。
一方、費用面では、購入電力料が減少したことなどから、経常費用合計は前連結会計年度比3.5%減の5兆5,892億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度比17.5%減の600億円となった。
2019年度末より世界的に流行している新型コロナウイルス感染症が経済や暮らしに影響を与える中、2019年度当社エリア電力需要への影響は軽微であった。全て新型コロナウイルス感染症の影響と断定することはできないが、2020年度4・5月累計の当社エリア電力需要は前年同月比で7%程度減少している。今後、電力需要の減少が継続する可能性があるため、引き続き動向を注視していく。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況
イ.キャッシュ・フロー等
(a) キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。
(b) 有利子負債
2020年3月31日現在の社債、長期借入金、短期借入金については、以下のとおりである。
当連結会計年度(2020年3月31日)
1年以内
(百万円)
1年超
2年以内
(百万円)
2年超
3年以内
(百万円)
3年超
4年以内
(百万円)
4年超
5年以内
(百万円)
5年超
(百万円)
社債457,20499,631221,999160,000200,8061,075,000
長期借入金511,66446,49723,76557,10228,08460,475
短期借入金1,972,699-----
合計2,941,568146,129245,765217,102228,8901,135,475

上記については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)2.金融商品の時価等に関する事項(注4)社債、長期借入金及びその他の有利子負債の連結決算日後の返済予定額」にも記載。
ロ.財務政策
東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に伴う多額の損失の発生や原子力発電所の停止等による燃料費の増加等により財務基盤と収益構造が大幅に悪化するとともに、自律的な資金調達力が低下したことを受け、総合特別事業計画(2012年5月に主務大臣より認定。)に基づき、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、「機構」)から1兆円の出資を受けるとともに、取引金融機関に対しては、その後の新・総合特別事業計画等(2014年1月に主務大臣より認定。)においてもあわせて、追加与信及び借換え等による与信の維持等をお願いし、ご協力をいただいてきた。
新々・総合特別事業計画(2017年5月に主務大臣より認定。)等においても、取引金融機関に対し、前回総特での協力要請の通り引き続き与信を維持することなどをお願いし、ご協力をいただいている。これらの機構や金融機関の支援・協力のもとで、自己資本比率の改善、公募社債市場への復帰を2017年3月に実現しており、2019年度はパワーグリッドにおいて5,800億円の公募社債を発行した。引き続き社債の発行を継続するなど、当社グループの自律的な資金調達力の回復もはかっていく。
金融機関からの借入金や社債の発行により調達した資金は、電気事業等に必要な設備資金、借入金返済及び社債償還等に充当している。設備投資計画については、「第3 設備の状況」のとおりであり、借入金返済及び社債償還の予定については、「② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況 イ.キャッシュ・フロー等 (b) 有利子負債」のとおりである。
また、当社グループでは、グループ全体でより効率的な資金の運用を図る観点からグループ金融制度を採用している。
なお、新型コロナウイルス感染症による景気後退を起因とした資金繰りへの影響については、今後注意深く見極めていく。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
イ.福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失に係る引当金
(a) 廃炉に関連した見積りの前提
東京電力ホールディングス株式会社(以下、「東電HD」という)では、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、「機構」という)により指定された額について、廃炉等に充てる資金の積立てを行い(廃炉等積立金)、機構と共同で、廃炉作業を想定したうえで必要となる資金について取戻し計画を策定する。当該計画について、経済産業大臣の承認を受けたのちに、廃炉等積立金の取戻しを行い、実際の廃炉作業への支出を行っている。
廃炉作業に関連して発生する費用又は損失に係る引当金は、災害損失引当金、特定原子力施設炉心等除去準備引当金及び特定原子力施設炉心等除去引当金の3つの科目で貸借対照表上に計上している。
0102010_001.png
※災害損失引当金、特定原子力施設炉心等除去引当金及び特定原子力施設炉心等除去準備引当金の関係
引当の対象取戻し計画の状況引当金の名称
取戻し計画に定める金額のうち炉心等除去に要する費用大臣の承認後特定原子力施設炉心等除去引当金
大臣の承認前特定原子力施設炉心等除去準備引当金
その他災害損失引当金

(b) 会計上の見積方法
ⅰ) 災害損失引当金
災害損失引当金に含まれる主な費用又は損失の計上方法等については以下のとおりである。
・福島第一原子力発電所の事故の収束及び廃止措置等に向けた費用又は損失
政府の原子力災害対策本部が設置する政府・東京電力統合対策室により策定された「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋 ステップ2完了報告書」(平成23年12月16日)を受け、政府の原子力災害対策本部が設置する政府・東京電力中長期対策会議により「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(平成23年12月21日。以下、「中長期ロードマップ」という)が策定された(令和元年12月27日最終改訂)。
当社は中長期ロードマップの主要な目標工程等や原子力規制委員会により策定された「東京電力福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(2020年3月版)」(令和2年3月4日)に掲げる目標を達成するための具体的な計画として「廃炉中長期実行プラン2020」(2020年3月27日)を策定した。
これを踏まえ、通常の見積りが可能な費用又は損失については、具体的な目標期間と個々の対策内容に基づく見積額(「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」(平成23年8月10日 法律第94号)第55条の9第2項の承認の申請をした廃炉等積立金の取戻しに関する計画における炉心等除去に要する費用を除く)を計上している。一方、将来の工事等の具体的な内容を当事業年度末では想定できず、通常の見積りが困難である費用又は損失については、海外原子力発電所事故における実績額に基づく概算額を計上している。
・福島第一原子力発電所1~4号機の廃止に関する費用又は損失のうち加工中等核燃料の処理費用
今後の使用が見込めない加工中等核燃料に係る処理費用について、当該費用の現価相当額(割引率4.0%)を計上している。
ⅱ) 特定原子力施設炉心等除去準備引当金及び特定原子力施設炉心等除去引当金
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用又は損失に備えるため、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」(平成23年8月10日 法律第94号)第55条の9第2項の承認の申請をした廃炉等積立金の取戻しに関する計画に定める金額のうち炉心等除去に要する費用を計上している。なお、申請額のうち、既承認額については特定原子力施設炉心等除去引当金に、それ以外の申請額については特定原子力施設炉心等除去準備引当金に計上している。
なお、事故炉である福島第一原子力発電所の解体費用の見積りについては、通常炉と同様の状況にまで復旧させるための費用は、災害損失引当金、特定原子力施設炉心等除去準備引当金及び特定原子力施設炉心等除去引当金として計上し、通常炉としての解体費用については、原子力発電施設解体費として計上している。前者については、以下の不確実性が存在する一方、後者については、通常炉と同様の省令に準じた見積りとなる。
(c) 不確実性
災害損失引当金、特定原子力施設炉心等除去準備引当金及び特定原子力施設炉心等除去引当金においては、主に以下の不確実性を含んでいる。
ⅰ) 通常の見積りが可能なもの
2020年3月27日に公表した廃炉中長期実行プランでは、廃炉の主要な作業プロセスを提示した。当連結会計年度末においては、これに基づき関連する費用の見積りを行っている。
福島第一原子力発電所の廃炉は過去に前例のない取り組みであり、それ自体に不確実性を内包しているが、それでも至近3年程度は概念検討などが進んでいることから具体的な工事や作業を計画しやすい一方で、それ以降はこれから具体的な検討をするものが多く、中でもデブリ取出しに関しては本格的に取り出すための装置は構想に近い段階にあるなど、長期にわたる工事や作業の金額を見積るにあたっては、多くの仮定を置かざるを得ない。今回の見積りでは、それぞれの作業プロセスにおいて、現在進められている国等の研究の状況や実施内容が類似する過去の作業内容に基づいた仮定を置いているが、今後の研究の進展や現場状況のより詳細な把握、ステップ・バイ・ステップのアプローチに基づく新たな技術的知見の獲得などにより、見積りの前提として置いた仮定は見直しが必要となることも考えられる。このような場合、新たな作業や想定していた作業方法の変更、作業の範囲の見直し、作業単価の変動等が生じ、廃炉費用の見積りは変動する可能性がある。
ⅱ) 通常の見積りが困難なもの
工事等の具体的な内容を現時点では想定できず、通常の見積りが困難な費用又は損失については、類似事例である米スリーマイル島原子力発電所(以下、「TMI」という)の事故における費用実績額に基づく概算額を計上している。当見積りにおいては、TMIでの費用処理実績額に、TMIの事故発生時から福島第一原子力発電所の事故発生時までの間における物価上昇率、為替レートなどに、取出し対象基数などを加味して算定を行っている。これには、廃炉に必要となる作業の種類、範囲及び量は、発電機の基数に比例する等の仮定に基づいているが、TMIと福島第一原子力発電所では、燃料デブリの量や、原子炉内の存在箇所の違いによる難易度の違い等、状況の差異があることから、想定した見積りと実際の作業の種類・範囲及び量が変動する可能性がある。また、事故炉の廃炉という極めて限定的かつ長期にわたって発生する作業について、作業の種類・範囲及び量が一定であったとした場合においても、物価水準の変動、技術革新の状況等が生じ、廃炉費用の見積りは変動する可能性がある。
(d) 変動により生じる影響
上記により、今後の状況の変化によって、将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性がある。
ロ.退職給付に係る負債
(a) 会計上の見積方法
従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき計上している。
退職給付債務の算定にあたり、退職給付見込額を当連結会計年度末までの期間に帰属させる方法については、期間定額基準によっており、過去勤務費用は、主としてその発生時に全額を費用処理している。数理計算上の差異は、主として各連結会計年度の発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(3年)による定額法により按分した額を、それぞれ発生の当連結会計年度から費用処理している。
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用については、税効果を調整の上、純資産の部におけるその他の包括利益累計額の退職給付に係る調整累計額に計上している。
退職給付債務の計算において使用する割引率は、期末の国債及びダブルA格社債の利回り(指標利率)を基に決定しており(2019年度は1.0%を採用)、年金資産の長期期待運用収益率は、運用方針や保有している年金資産のポートフォリオ及び過去の運用実績等を基に決定している(2019年度は2.5%を採用)。
(b) 不確実性
上記による従業員の退職給付に係る債務及び費用は、割引率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率、年金数理計算上の基礎率などについて合理的な仮定に基づき見積っているが、実績との差異や仮定の変動は、将来の退職給付に係る債務・費用に影響を及ぼす可能性がある。指標利率の変動により割引率を変更することとなった場合は、退職給付債務が変動するが、退職給付債務が10%以上変動しないと見込まれる場合は、重要性基準により変更しない。また、年金資産として保有している株式や債券は、金融市場の動向により時価が変動する。
(c) 変動により生じる影響
上記により、将来の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。
会計方針に基づき、数理計算上の差異は発生年度より3年間で定額償却しており、変動影響は以下のとおりである。
退職給付債務への影響退職給付費用への影響(年)
割引率変更0.1%あたり110億円程度40億円程度
年金資産運用収益率の差異1.0%あたり50億円程度20億円程度

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
「新々・総合特別事業計画(第三次計画)」に記載のとおり、賠償・廃炉に必要な資金を確保しつつ、2026年度以内に連結経常利益で3,000億円/年超、2027年度以降には4,500億円規模の利益水準を達成することを目標に掲げている。
当連結会計年度における経常利益は2,640億円となった。