有価証券報告書-第42期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要、これらに関する経営者の視点による認識及び分析・検討結果は、次のとおりであります。
(1) 経営成績の状況
① 定性的成果
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により景気が下押しされ、依然として厳しい状況にありますが、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直しの動きもみられました。情報サービス産業においては、新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワーク関連需要の増加や、通信キャリアの5G商用サービス提供開始を受け今後の展開を見据えた投資が追い風となる一方で、一部事業活動の制限や、業績への影響が大きかった顧客企業を中心に、同投資を抑制又は延期するなどの動きもみられました。
このような状況下、当社グループにおきましては、「リーディング・カンパニーとして、IT産業の進化を担う」ことを目指した、2018年4月から2021年3月までの3か年の中期経営計画「Opening New Horizons ~新しい景色を見るために~」の達成に向け、4つの“Horizons”「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」、「前に伸ばす:強みをさらに強く」、「外に出る:新たな分野・リージョンの開拓」、「足元を固める:経営基盤の強化」に引き続き注力いたしました。また、新型コロナウイルス感染症により働き方や生活スタイルが変化する中、その対応を支援するため、本中期経営計画に則した新たな取り組みも行っています。セグメントごとの具体的な取り組みは次のとおりであります。
a.エンタープライズ事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・ローコード開発※1基盤OutSystems上で表計算機能を実現する、グレープシティ株式会社のソフトウェア「SpreadJS for OutSystems」の提供を開始しました。同製品は一般的な表計算ソフトと同等の外観や操作性を実現するソフトウェアモジュールで、OutSystemsとシームレスに連携します。当社は、2015年からOutSystemsの取り扱いを開始し、積極的にアジャイル開発やDevOps※2に取り組んでいます。今後も、同開発でのサービスやオプションの拡充に努め、お客様の業務の効率化やDXに貢献していきます。
※1:ローコード開発:プログラミング言語をほとんど必要としないソフトウェア開発プラットフォーム。ソフトウェアの開発時間短縮が可能
※2:DevOps:ソフトウェア開発手法の一つで、「Development(開発)」と「Operations(運用)」の略語を組み合わせた造語。開発担当と運用担当が密接に協力し合うことで、柔軟かつスピーディーなソフトウェア開発を実現
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・物流拠点の適正配置や廃棄ロスの削減など、多様な最適化ニーズに対応する、AIを活用したサプライチェーン最適化ソリューションの提供を開始しました。当社が提供するソリューションは、AIを使用した需要予測と、シミュレーションや数理最適化の技術を組み合わせ、発注量や在庫量、生産量、配送、物流拠点の配置、廃棄量など、企業の目的に合わせてサプライチェーンの問題点を特定し、継続的な改善につなげるものです。
シミュレーションソフトウェアとしては、生産ラインや物流、交通、事務業務などの様々なプロセスを可視化し、計画の定量評価を可能にするLanner Group Ltd.が開発したWITNESSを使用しています。
既に提供を開始しているIoTを活用したデジタルツインソリューションとの連携も視野に本ソリューションの機能を拡充し、お客様のデータ活用やDXに貢献していきます。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・当社、日本電気株式会社、株式会社大林組、日本産業パートナーズ株式会社、株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合は、新しい事業を創出するために新会社「BIRD INITIATIVE株式会社(以下:BIRD)」を設立しました。BIRDは、課題や技術を持ち寄って研究開発を行う「共創型R&D」という新たな仕組みを推進し、デジタル技術に関連する研究開発や受託研究、コンサルティング、スタートアップへの投資などを通じた新規事業の創出に取り組みます。
b.流通事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・アサヒグループホールディングス株式会社(以下、アサヒGH)に、3Dシミュレーションや仮想現実(VR)/拡張現実(AR)分野で高い技術力を持つフィンランドのITサービス企業VividWorks Ltd.(以下:VividWorks)のクラウド型3Dビジュアライゼーション「VividPlatform」を提供しました。アサヒGHの「VR商品パッケージ開発支援システム」における3D仮想商品棚で採用されており、仮想空間に店舗、商品棚などを再現し、簡単な操作で商品のデザインや商品棚内のレイアウト、商品棚自体の構成や配置の変更を行うことができます。今後も、当社とVividWorksは、VR/ARの技術によって、お客様の商品開発や営業、マーケティングにおけるDXに貢献していきます。
・伊藤忠商事株式会社の北米の現地法人ITOCHU International Inc.(以下、III)に、次世代ERP「SAP S/4HANA® Cloud」(エスエーピー・エスフォーハナ・クラウド)を提供しました。今後は、世界各国に拠点を持つ約50社の現地法人にも順次、導入していきます。SAP S/4HANA® CloudはSAP社が提供する、SaaS型のクラウドERPサービスです。多言語対応や各国の会計基準にも対応しており、海外での導入がスムーズに行える特徴があります。SaaS型のため、ユーザーは、資産を持たずに利用でき、ERPシステムのアップデートまで行われる点も特徴です。
当社は、SAP S/4HANA®の提供で蓄積したノウハウをベースに、導入検討から最新技術によるシステム移行、周辺システムの構築、運用業務までのトータルなソリューションでお客様サービスの更なる向上に貢献していきます。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・ディープラーニングの高速化について高い技術力を持つIdein株式会社(以下:Idein)に出資し、AI/IoTシステムの開発と提供について業務提携を行いました。今回の提携により、ディープラーニングの高速化技術を活用したIdeinのエッジコンピューティングプラットフォーム「Actcast」と、当社のデータ収集・分析技術を組み合わせ、流通小売や製造、社会インフラ、ヘルスケアなどの分野を中心とした企業のDXを支えるAI/IoTソリューションを共同で開発していきます。
c.情報通信事業
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・通信キャリア各社より5Gサービスに関するネットワーク構築案件を継続的に受注しています。また、当社が新たにチャレンジしていく領域として位置付けていた「RAN※1領域」の拡大において、従来より取り組んでいるバックホールやフロントホール※2に加え、O-RAN※3や運用自動化に向け期待されるクラウドネイティブ技術を活用することにより、新たな領域でも一部の案件を獲得することができました。当社では、早くからネットワーク仮想化技術に関する人材育成、お客様やベンダーとの共同検証などを行っており、こうした取り組みが継続的な案件獲得や領域拡大につながっています。引き続き、通信キャリアの5Gサービス展開を支援していきます。
※1:RAN:Radio Access Networkの略。無線アクセスネットワーク
※2:フロントホール:基地局ノード間を接続するネットワーク
※3:O-RAN:基地局ノード間のインターフェース規格
・シスコのCisco Partner Summit Digital 2020でGlobal Award「APJC Partner of the Year Award」を受賞しました。日本企業として初の受賞です。
APJC Partner of the Year Awardは、アジアパシフィック全域でのシスコ製品の販売やソリューション開発でシスコのビジネスに最も貢献したパートナーを表彰するものです。当社は、シスコの様々な製品を使用したソリューションの提供やシステム構築を通じて、シスコ関連のビジネスの伸長とお客様へ新たなビジネス価値を創出したことが高く評価され、本アワードを受賞しました。
・デル・テクノロジーズのオンラインパートナーサミット2020で、アジアパシフィック全域においてデル・テクノロジーズのサービスの販売及びサービスに最も貢献したパートナーを表彰する「APJ Go Big-Win Big Services Award」を受賞しました。また今回、日本国内における、デル・テクノロジーズのストレージに関連するソリューションの開発やシステム構築が評価され、「Japan Go Big-Win Big Storage Award」を併せて受賞しました。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・ITOCHU Techno-Solutions America, Inc.(以下:CTCアメリカ)とともにヤフー株式会社(以下:ヤフー)の米国現地法人Actapio, Inc.のデータセンターで稼働する大規模なAI・ビッグデータ基盤を、エネルギー消費効率と運用効率の高いOpen Compute Project※1(以下:OCP)仕様で構築しました。ヤフーでは、2015年以降、同基盤にOCPを採用し、これらの効率の向上を実現してきました。今回の拡張では、AI向けの米NVIDIA社V100 GPU搭載サーバを含め、約3,000台のサーバをCTCアメリカから提供しました。今後も、当社グループは総合力を活かし、同2社のパートナーとして様々な課題に共に取り組み、サービスにおける品質向上と付加価値の創造に貢献していきます。
※1:Open Compute Project:Facebookなどの、大規模ITを活用する企業が主体となり、ユーザー視点での要件を組み込んで、データセンターに最適なハードウェアを設計するプロジェクト。当社は、2013年に運営団体「Open Compute Project Foundation」と国内で初めて認定Solution Provider契約を締結
d.広域・社会インフラ事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンターと慶應義塾大学SFC研究所ブロックチェーン・ラボは、当社、Japan Digital Design株式会社、株式会社ジェーシービー、西日本電信電話株式会社、BlockBase株式会社の5社と共同で、慶應義塾大学の学生を対象に在学証明書や卒業見込証明書などをスマートフォンアプリへ発行する、次世代デジタルアイデンティティ基盤の実証実験を2020年10月から開始しました。今回の実証実験は、大学の教務窓口で身分証明書の提示や書面による諸手続きを行わずに、オンラインで各種証明書の入手を可能にする同基盤について、機能や標準化などの検証を行うものです。名前、住所、年齢などの各種属性に加え、卒業証明書などの各種証明データをオンラインで確実に検証可能とするため、汎用化されたデジタル証明書技術Verifiable Credentialsや、特定の企業・組織に依存しない分散型モデルで永続性のある新たなデジタルID規格Decentralized Identifiers(DID)を活用します。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・株式会社沖縄銀行(以下:沖縄銀行)及び株式会社おきぎんエス・ピー・オーに、台湾Intumit社のAIチャットボット「SmartRobot」を提供しました。今回沖縄銀行では、インターネットバンキング「おきぎんeパートナー(法人)」におけるお客様からの問い合せ窓口業務で、SmartRobotを利用した自動回答システムを導入しました。窓口業務の一部自動化により、オペレーターの負担軽減に加え、顧客満足度やサービス品質の向上につながっています。当社は、2019年4月にIntumit社へ出資後、2020年12月には増資を行いました。今後も同社と協業を進め、お客様のサービスの更なる向上に貢献していきます。
e.金融事業
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・年金積立金管理運用独立行政法人(以下:GPIF)に、資産運用でのベンチマークとなるインデックス情報の収集・分析を行うクラウド基盤の提供を開始しました。GPIFでは、指数会社より提案されるスマートベータ指数やESG指数など、様々なインデックス情報を収集する「インデックス・ポスティング」を開始しています。今回のクラウド基盤の提供によって、これまで時間限定で受け付けていた指数会社からの提案が常時受付可能となり、様々なインデックス情報の収集・蓄積の効率化が実現されました。また、クラウド基盤に搭載された高度データ分析機能を活用することで、インデックスに含まれる企業に関する財務情報だけでなく、ESG情報を含む非財務情報を併せて分析することができ、運用の高度化につなげることができました。
f.ITサービス事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・製品やサービスのUI/UXデザインに強みを持つ株式会社グッドパッチと、ITを活用して新規サービスの開発や業務改革を図る企業のDXの推進事業で協業し、DXの社会理解の促進やプロトタイプの開発を支援するプログラム「Transfer Starter」の提供を開始しました。お客様にノウハウをスキルトランスファーしながらDXにおけるプロダクト開発を行う「build service」を2021年1月から開始しており、今後も、UI/UXデザインや新規事業の立ち上げに強みを持つ同社のビジネスと連携し、お客様のDXの推進と実現に貢献していきます。
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・お客様のクラウド活用への貢献を目的に、韓国の大手IT企業Megazone Corporationグループの米国法人Megazone Corporationと資本提携及び業務提携を行い、マルチクラウドの利用を効率化するソリューションの提供を開始しました。今後も Megazone Corporationグループと共同で新技術の活用や新サービスの開発に取り組み、コストの最適化や運用の負荷軽減など、日本及びアジアを中心としたグローバルのお客様のクラウド活用に貢献していきます。
g.その他
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・独Celonis SEが提供するプロセスマイニングソリューション「Celonis Intelligent Business Cloud」の取り扱いを開始しました。企業内で日々発生する業務データやログをAIで分析し、業務プロセスにおけるボトルネックや改善点を特定するソリューションです。プロセスの改善に必要なOODAループ※1をツールの中でリアルタイムに実行することが可能です。本ソリューションの提供に加え、データ設計やコンサルティング、設定、既存システムとの連携、運用、教育などのサービスもトータルで提供し、お客様のDXを支援していきます。さらに、2020年6月に設立された一般社団法人プロセスマイニング協会へ特別会員として参加。技術啓蒙や人材育成にも注力していきます。
※1:OODAループ:「観察(Observe)」、「方向づけ(Orient)」、「意思決定(Decide)」、「行動(Act)」を繰り返し行う問題解決方法
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・TAKADA株式会社とともに、インテリア系大型商品の配送を行う物流の合弁会社TriValue株式会社(以下:TriValue)を設立しました。TriValueは大型家具配送の元請事業者として、家具メーカーや、小売業のお客様に配送や倉庫を含めた物流サービスを提供します。荷主、消費者、配送事業者に向けた総合的な物流プラットフォームを活用し、配送可能日や状況をリアルタイムで可視化したり、配送ルートや積み荷を最適化したりすることで、お客様の業務効率化と消費者の利便性向上を実現します。当社は、2011年から輸配送を最適化するクラウドサービス「Mobile Asset Management Service」を提供しています。TriValueは同サービスを活用し、効率的な共同配送を実現するDXを実践していきます。
h.全社
<「足元を固める:経営基盤の強化」に関する取り組み>・多様な人材が活躍できる環境や風土を醸成するため、社員の働き方変革や健康経営、女性・シニア及び障がい者の活躍支援、育児・介護との両立支援等に取り組んでおり、加えてLGBT(性的マイノリティ)※1やSOGI(性的指向や性自認)※2を含めた更なるダイバーシティ推進を図るため、ダイバーシティ基本方針を策定しました。本方針に基づき、LGBTやSOGIに関する相談窓口の設置や社内研修を行い社員の理解を促進しています。また、これらの取り組みなどが認められ、任意団体「work with Pride」が策定する、LGBTなどの性的マイノリティへの取り組みの評価指標「PRIDE指標2020」における最高位「ゴールド」を取得しました。一人ひとりが意欲を持ち、多彩な個性が多様な働き方で力を合わせ、新しいことに挑戦し自己実現できる職場環境こそが新たなソリューションや良いサービスを生み出すと考えます。今後も、年齢、性別、性自認や性的指向、国籍、障がいの有無等に関わらず、すべての社員を尊重し、ダイバーシティの浸透を図っていきます。
※1:LGBT:レズビアン/ゲイ/バイセクシュアル/トランスジェンダーの頭文字。性的マイノリティの総称
※2:SOGI:性的指向及び性自認(Sexual Orientation and Gender Identity)の頭文字
・新型コロナウイルス感染症の拡大が続く状況下、当社グループでは、全ての役職員が在宅勤務へと移行しています。従前よりテレワーク環境の整備や、チャットツールの導入、ペーパーレス化など、在宅勤務でも生産性を維持・向上できる仕組みを構築しており、これらを活用することで、状況に合わせた柔軟な働き方が可能になっています。今後、イノベーティブな発想のためのコミュニケーション、一体感の醸成、適切な統制活動などの場としてのオフィスワークの有効性も認識しつつ、感染拡大防止策の徹底を基本としたコロナ禍におけるより良い働き方を追求していきます。
・総務省がテレワークの普及促進を目的としてその導入・活用に十分な実績を持つ企業を選定する「テレワーク先駆者百選」に選ばれました。当社は、社員の働きがい向上を目指した「働き方変革」を推進し、働く「時間」と「場所」の選択肢を拡げてきました。今後も、これを継続するとともに、変化を楽しみ、多様性を価値に変えることができる創造性豊かな人材が成長し、挑戦し続けるための環境づくり、仕組みづくりに取り組んでいきます。
・業務の内容や環境に応じて働く場所や時間の自由度を更に高め、社員の自律性や創造性、社員同士のつながり、新しいことへの挑戦を促進するとともに、グループ連携を強化し企業価値の更なる向上を図るため、現在、分散している当社及び当社グループ会社について、各社の本社機能を中心とした移転統合を実施することを決定しました。当社グループは、2021年6月より現在のオフィスから移転統合先となる神谷町トラストタワーに順次移転を開始し、2021年9月頃に移転完了予定です。
② 業績の状況
当社グループの当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
(金額単位は百万円。%表示は、対前期増減率。)
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は、通信、官公庁、金融向けなどが増加したものの、流通、製造向けや国内外事業会社の減収により、前連結会計年度と比べて7,139百万円(前年同期比1.5%)減少し、479,878百万円となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は、売上総利益率の改善により、前連結会計年度と比べて3,414百万円(同2.9%)増加し、121,465百万円となりました。
売上総利益率は、主に製品販売の採算改善により、前連結会計年度の24.2%から1.1ポイント増加の25.3%となりました。
(その他の収益及び費用)
当連結会計年度のその他の収益及び費用は、人件費の増加などにより、前連結会計年度に比べて1,456百万円(同1.9%)増加し、77,840百万円となりました。
(営業利益)
営業利益は、前連結会計年度と比べて1,957百万円(同4.7%)増加し、43,625百万円となりました。また、売上収益営業利益率は前連結会計年度の8.6%から0.5ポイント増加の9.1%となりました。
(税引前利益)
当連結会計年度の税引前利益は、前連結会計年度と比べて2,411百万円(同5.8%)増加し、43,952百万円となりました。
(当社株主に帰属する当期純利益)
法人所得税は、前連結会計年度に比べて28百万円増加し、13,108百万円となり、非支配持分に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べて347百万円増加し、357百万円となりました。
以上の結果、当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べて2,034百万円(同7.2%)増加し、30,486百万円となりました。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ セグメント別業績
セグメント別の財政状態及び経営成績の状況は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいております。
(金額単位は百万円。%表示は、対前期増減率。)
a. エンタープライズ事業
コロナ禍による顧客の投資活動の抑制や延期などの影響で、売上収益は126,571百万円(前年同期比3.7%減)となりました。減収の影響により、税引前利益は8,509百万円(同5.9%減)となりました。セグメント資産は、営業債権及びその他の債権の増加などにより、60,600百万円(同1.7%増)となりました。
b. 流通事業
コロナ禍の影響を受け期中成約が停滞し、売上収益は52,250百万円(同14.0%減)、税引前利益は1,245百万円(同77.5%減)となりました。セグメント資産は、営業債権及びその他の債権の減少などにより、20,935百万円(同5.0%減)となりました。
c. 情報通信事業
通信事業者向けインフラなどが増加し、売上収益は187,275百万円(同3.5%増)となりました。増収に加え売上総利益率の改善などにより、税引前利益は18,327百万円(同7.6%増)となりました。セグメント資産は、棚卸資産の増加などにより、101,492百万円(同11.9%増)となりました。
d. 広域・社会インフラ事業
中央省庁や公益、製造向けインフラなどが増加し、売上収益は62,234百万円(同1.9%増)となりました。増収による売上総利益の増加などにより、税引前利益は4,680百万円(同92.6%増)となりました。セグメント資産は、棚卸資産の増加などにより、29,450百万円(同19.0%増)となりました。
e. 金融事業
大手銀行や政府系金融機関向けインフラなどの増加により、売上収益は24,666百万円(同2.5%増)となりました。増収に加え売上総利益率の上昇や販売費及び一般管理費の減少により、税引前利益は2,276百万円(同71.5%増)となりました。セグメント資産は、棚卸資産の増加などにより、8,288百万円(同11.1%増)となりました。
f. ITサービス事業
クラウド関連ビジネスの増加により、売上収益は115,672百万円(同2.9%増)、税引前利益は12,735百万円(同12.6%増)となりました。セグメント資産は、78,589百万円(同0.6%減)となりました。
g. その他
海外子会社における顧客の投資抑制などにより、売上収益は38,781百万円(同6.4%減)となりましたが、前連結会計年度に実施したのれん減損の反動などにより税引前利益は2,422百万円(同366.6%増)となりました。セグメント資産は、海外子会社における資産の増加などにより、49,596百万円(同8.3%増)となりました。
(注)上記セグメントの売上収益及び税引前利益は、セグメント間の内部売上収益等を含めて表示しております。
中期経営計画の定量目標に対する達成状況は次のとおりであります。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べて23,931百万円増加し、462,748百万円となりました。これは、主にオフィス移転統合で解約する賃借物件のリース期間短縮等により有形固定資産が10,372百万円減少したものの、現金及び現金同等物が6,329百万円、営業債権及びその他の債権が2,434百万円、棚卸資産が12,153百万円、その他の金融資産(流動)が4,520百万円、その他の流動資産が3,328百万円、その他の金融資産(非流動)が2,657百万円増加したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べて113百万円減少し、200,139百万円となりました。これは、主にその他の流動負債が8,978百万円増加したものの、オフィス移転統合で解約する賃借物件のリース期間短縮等により長期金融負債が9,052百万円減少したことによるものであります。
資本は、前連結会計年度末に比べて24,044百万円増加し、262,609百万円となりました。これは、主に剰余金の配当による減少が14,451百万円あったものの、当期純利益による増加が30,843百万円、その他の包括利益による増加が6,099百万円あったことによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べて6,329百万円増加し、80,944百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な内容は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は37,266百万円となりました。これは、税引前利益43,952百万円、減価償却費及び償却費19,664百万円に加え、棚卸資産が11,965百万円の増加、法人所得税の支払額が15,290百万円の支出となったことによるものであります。
前連結会計年度との比較では、営業活動による収入は12,837百万円減少しております。これは、税引前利益及び非資金費用が増加したものの、運転資本の増減による支出の増加がこれを上回ったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は10,120百万円となりました。これは、既存データセンターの設備増強等のため有形固定資産の取得による支出が3,878百万円となったこと、無形資産の取得による支出が1,818百万円となったこと、オフィスの新規賃貸借契約等のため敷金及び保証金の差入による支出が3,774百万円となったことに加え、マレーシアIT企業への投資等のため関連会社株式の取得による支出が1,018百万円となったことによるものであります。
前連結会計年度との比較では、投資活動による支出は7,067百万円減少しております。これは、前連結会計年度のインドネシアIT企業2社への投資、及びDX事業の関連会社への投資等の反動によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は21,062百万円となりました。これは、セール・アンド・リースバックによる収入が4,909百万円となったものの、リース負債の返済による支出が11,373百万円となったことに加え、当社株主への配当金の支払額が14,339百万円となったことによるものであります。
前連結会計年度との比較では、財務活動による支出は3,938百万円増加しております。これは、セール・アンド・リースバックによる収入が減少したこと、及び当社株主への配当金の支払額が増加したこと等によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
① 当社グループにおける財務資本戦略の基本的な考え方
当社グループは、新たな中期経営計画(2021年4月から2024年3月までの3か年)における3つの基本方針(Accelerate、Expand、Upgrade)を着実に実行することで、顧客、社会に対する価値領域を拡大し、収益力と資本効率を更に向上させ、定量目標である「営業利益率10%」、「当社株主に帰属する当期純利益400億円」、「ROE13%以上」の達成を目指しております。この中期経営計画達成に向けた事業活動で得た資金を、重点分野への成長投資、安定的かつ業績に応じた株主還元、及び内部留保に総合的なバランスを勘案して適正配分することで、企業価値の最大化に繋げていくことを財務資本戦略の基本的な考え方としております。
a.成長投資について
当社グループは、ITインフラやクラウドなどの当社グループの強みを発揮し、リカーリングビジネスの拡大を加速するために必要な事業用資産への投資や、新たな地域やビジネス領域の拡張のために海外事業の買収を進め、ITサービスに対するニーズの高度化、多様化、かつ技術の急速な進歩による変化への対応を図ってまいりました。
新たな中期経営計画期間においては、従来から注力しているAI・IoT、アジャイルなど新たなアプリケーションの開発、次世代ネットワークに関する技術の獲得に加え、DXコンサル、デザインコンサルなどの高付加価値サービスの提供を加速させるため、先進技術の獲得や顧客基盤の強化等を目的とした事業開発に関連する新たな分野への投資やM&Aを進めてまいります。これらの投資にあたっては、資本コストを意識し、将来の投資に対するリターンを注意深く見極めながら進めてまいります。また、M&Aにおいては、その投資効果を高めるための投資後の融合作業が重要であり、その点も考慮した慎重な判断を行ってまいります。
b.株主還元について
当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題として認識し、安定的な配当に努めるとともに、業績に応じた利益還元を重視し、内部留保金とのバランスを考慮しながら、配当水準を高めることを基本方針としております。なお、連結配当性向は45%程度を目安としております。

② 流動性の確保
当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物(以下「資金」)の残高は、前連結会計年度末と比べて6,329百万円増加し、80,944百万円となりました。主な資金の内訳といたしましては、現金及び預金(預入期間が3か月を超える定期預金を除く)37,991百万円、預入期間が3か月以内の預け金42,953百万円となっております。
当社グループでは、キャッシュマネジメントサービスを導入し、グループ会社間の資金を集中管理することにより、効率的かつ安定的な運用を行っております。また、資金運用に際しては、信用リスクが低く安全性の高い金融資産に限定して運用を行っております。
なお、新型コロナウイルス感染症による当連結年度末以降のキャッシュ・フローに対する影響は一定程度見込まれるものの、当該影響に対応可能な流動性は確保できていると判断しております。
③ 資金需要の状況
当社グループにおきましては、運転資金及び設備投資等の資金需要に対して、安定した営業キャッシュ・フローに加えて、上述した内部資金を中心に賄っております。
なお、当連結会計年度における設備投資額は14,635百万円(使用権資産を含む)であり、主な投資内容に関しましては、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。
(5) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は外注費を除くシステム開発にかかる発生原価によっており、消費税等は含まれておりません。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は仕入価格によっており、消費税等は含まれておりません。
③ 受注状況
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については、調整額において消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(6) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
また、この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
(1) 経営成績の状況
① 定性的成果
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により景気が下押しされ、依然として厳しい状況にありますが、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直しの動きもみられました。情報サービス産業においては、新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワーク関連需要の増加や、通信キャリアの5G商用サービス提供開始を受け今後の展開を見据えた投資が追い風となる一方で、一部事業活動の制限や、業績への影響が大きかった顧客企業を中心に、同投資を抑制又は延期するなどの動きもみられました。
このような状況下、当社グループにおきましては、「リーディング・カンパニーとして、IT産業の進化を担う」ことを目指した、2018年4月から2021年3月までの3か年の中期経営計画「Opening New Horizons ~新しい景色を見るために~」の達成に向け、4つの“Horizons”「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」、「前に伸ばす:強みをさらに強く」、「外に出る:新たな分野・リージョンの開拓」、「足元を固める:経営基盤の強化」に引き続き注力いたしました。また、新型コロナウイルス感染症により働き方や生活スタイルが変化する中、その対応を支援するため、本中期経営計画に則した新たな取り組みも行っています。セグメントごとの具体的な取り組みは次のとおりであります。
a.エンタープライズ事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・ローコード開発※1基盤OutSystems上で表計算機能を実現する、グレープシティ株式会社のソフトウェア「SpreadJS for OutSystems」の提供を開始しました。同製品は一般的な表計算ソフトと同等の外観や操作性を実現するソフトウェアモジュールで、OutSystemsとシームレスに連携します。当社は、2015年からOutSystemsの取り扱いを開始し、積極的にアジャイル開発やDevOps※2に取り組んでいます。今後も、同開発でのサービスやオプションの拡充に努め、お客様の業務の効率化やDXに貢献していきます。
※1:ローコード開発:プログラミング言語をほとんど必要としないソフトウェア開発プラットフォーム。ソフトウェアの開発時間短縮が可能
※2:DevOps:ソフトウェア開発手法の一つで、「Development(開発)」と「Operations(運用)」の略語を組み合わせた造語。開発担当と運用担当が密接に協力し合うことで、柔軟かつスピーディーなソフトウェア開発を実現
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・物流拠点の適正配置や廃棄ロスの削減など、多様な最適化ニーズに対応する、AIを活用したサプライチェーン最適化ソリューションの提供を開始しました。当社が提供するソリューションは、AIを使用した需要予測と、シミュレーションや数理最適化の技術を組み合わせ、発注量や在庫量、生産量、配送、物流拠点の配置、廃棄量など、企業の目的に合わせてサプライチェーンの問題点を特定し、継続的な改善につなげるものです。
シミュレーションソフトウェアとしては、生産ラインや物流、交通、事務業務などの様々なプロセスを可視化し、計画の定量評価を可能にするLanner Group Ltd.が開発したWITNESSを使用しています。
既に提供を開始しているIoTを活用したデジタルツインソリューションとの連携も視野に本ソリューションの機能を拡充し、お客様のデータ活用やDXに貢献していきます。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・当社、日本電気株式会社、株式会社大林組、日本産業パートナーズ株式会社、株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合は、新しい事業を創出するために新会社「BIRD INITIATIVE株式会社(以下:BIRD)」を設立しました。BIRDは、課題や技術を持ち寄って研究開発を行う「共創型R&D」という新たな仕組みを推進し、デジタル技術に関連する研究開発や受託研究、コンサルティング、スタートアップへの投資などを通じた新規事業の創出に取り組みます。
b.流通事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・アサヒグループホールディングス株式会社(以下、アサヒGH)に、3Dシミュレーションや仮想現実(VR)/拡張現実(AR)分野で高い技術力を持つフィンランドのITサービス企業VividWorks Ltd.(以下:VividWorks)のクラウド型3Dビジュアライゼーション「VividPlatform」を提供しました。アサヒGHの「VR商品パッケージ開発支援システム」における3D仮想商品棚で採用されており、仮想空間に店舗、商品棚などを再現し、簡単な操作で商品のデザインや商品棚内のレイアウト、商品棚自体の構成や配置の変更を行うことができます。今後も、当社とVividWorksは、VR/ARの技術によって、お客様の商品開発や営業、マーケティングにおけるDXに貢献していきます。
・伊藤忠商事株式会社の北米の現地法人ITOCHU International Inc.(以下、III)に、次世代ERP「SAP S/4HANA® Cloud」(エスエーピー・エスフォーハナ・クラウド)を提供しました。今後は、世界各国に拠点を持つ約50社の現地法人にも順次、導入していきます。SAP S/4HANA® CloudはSAP社が提供する、SaaS型のクラウドERPサービスです。多言語対応や各国の会計基準にも対応しており、海外での導入がスムーズに行える特徴があります。SaaS型のため、ユーザーは、資産を持たずに利用でき、ERPシステムのアップデートまで行われる点も特徴です。
当社は、SAP S/4HANA®の提供で蓄積したノウハウをベースに、導入検討から最新技術によるシステム移行、周辺システムの構築、運用業務までのトータルなソリューションでお客様サービスの更なる向上に貢献していきます。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・ディープラーニングの高速化について高い技術力を持つIdein株式会社(以下:Idein)に出資し、AI/IoTシステムの開発と提供について業務提携を行いました。今回の提携により、ディープラーニングの高速化技術を活用したIdeinのエッジコンピューティングプラットフォーム「Actcast」と、当社のデータ収集・分析技術を組み合わせ、流通小売や製造、社会インフラ、ヘルスケアなどの分野を中心とした企業のDXを支えるAI/IoTソリューションを共同で開発していきます。
c.情報通信事業
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・通信キャリア各社より5Gサービスに関するネットワーク構築案件を継続的に受注しています。また、当社が新たにチャレンジしていく領域として位置付けていた「RAN※1領域」の拡大において、従来より取り組んでいるバックホールやフロントホール※2に加え、O-RAN※3や運用自動化に向け期待されるクラウドネイティブ技術を活用することにより、新たな領域でも一部の案件を獲得することができました。当社では、早くからネットワーク仮想化技術に関する人材育成、お客様やベンダーとの共同検証などを行っており、こうした取り組みが継続的な案件獲得や領域拡大につながっています。引き続き、通信キャリアの5Gサービス展開を支援していきます。
※1:RAN:Radio Access Networkの略。無線アクセスネットワーク
※2:フロントホール:基地局ノード間を接続するネットワーク
※3:O-RAN:基地局ノード間のインターフェース規格
・シスコのCisco Partner Summit Digital 2020でGlobal Award「APJC Partner of the Year Award」を受賞しました。日本企業として初の受賞です。
APJC Partner of the Year Awardは、アジアパシフィック全域でのシスコ製品の販売やソリューション開発でシスコのビジネスに最も貢献したパートナーを表彰するものです。当社は、シスコの様々な製品を使用したソリューションの提供やシステム構築を通じて、シスコ関連のビジネスの伸長とお客様へ新たなビジネス価値を創出したことが高く評価され、本アワードを受賞しました。
・デル・テクノロジーズのオンラインパートナーサミット2020で、アジアパシフィック全域においてデル・テクノロジーズのサービスの販売及びサービスに最も貢献したパートナーを表彰する「APJ Go Big-Win Big Services Award」を受賞しました。また今回、日本国内における、デル・テクノロジーズのストレージに関連するソリューションの開発やシステム構築が評価され、「Japan Go Big-Win Big Storage Award」を併せて受賞しました。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・ITOCHU Techno-Solutions America, Inc.(以下:CTCアメリカ)とともにヤフー株式会社(以下:ヤフー)の米国現地法人Actapio, Inc.のデータセンターで稼働する大規模なAI・ビッグデータ基盤を、エネルギー消費効率と運用効率の高いOpen Compute Project※1(以下:OCP)仕様で構築しました。ヤフーでは、2015年以降、同基盤にOCPを採用し、これらの効率の向上を実現してきました。今回の拡張では、AI向けの米NVIDIA社V100 GPU搭載サーバを含め、約3,000台のサーバをCTCアメリカから提供しました。今後も、当社グループは総合力を活かし、同2社のパートナーとして様々な課題に共に取り組み、サービスにおける品質向上と付加価値の創造に貢献していきます。
※1:Open Compute Project:Facebookなどの、大規模ITを活用する企業が主体となり、ユーザー視点での要件を組み込んで、データセンターに最適なハードウェアを設計するプロジェクト。当社は、2013年に運営団体「Open Compute Project Foundation」と国内で初めて認定Solution Provider契約を締結
d.広域・社会インフラ事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンターと慶應義塾大学SFC研究所ブロックチェーン・ラボは、当社、Japan Digital Design株式会社、株式会社ジェーシービー、西日本電信電話株式会社、BlockBase株式会社の5社と共同で、慶應義塾大学の学生を対象に在学証明書や卒業見込証明書などをスマートフォンアプリへ発行する、次世代デジタルアイデンティティ基盤の実証実験を2020年10月から開始しました。今回の実証実験は、大学の教務窓口で身分証明書の提示や書面による諸手続きを行わずに、オンラインで各種証明書の入手を可能にする同基盤について、機能や標準化などの検証を行うものです。名前、住所、年齢などの各種属性に加え、卒業証明書などの各種証明データをオンラインで確実に検証可能とするため、汎用化されたデジタル証明書技術Verifiable Credentialsや、特定の企業・組織に依存しない分散型モデルで永続性のある新たなデジタルID規格Decentralized Identifiers(DID)を活用します。
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・株式会社沖縄銀行(以下:沖縄銀行)及び株式会社おきぎんエス・ピー・オーに、台湾Intumit社のAIチャットボット「SmartRobot」を提供しました。今回沖縄銀行では、インターネットバンキング「おきぎんeパートナー(法人)」におけるお客様からの問い合せ窓口業務で、SmartRobotを利用した自動回答システムを導入しました。窓口業務の一部自動化により、オペレーターの負担軽減に加え、顧客満足度やサービス品質の向上につながっています。当社は、2019年4月にIntumit社へ出資後、2020年12月には増資を行いました。今後も同社と協業を進め、お客様のサービスの更なる向上に貢献していきます。
e.金融事業
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・年金積立金管理運用独立行政法人(以下:GPIF)に、資産運用でのベンチマークとなるインデックス情報の収集・分析を行うクラウド基盤の提供を開始しました。GPIFでは、指数会社より提案されるスマートベータ指数やESG指数など、様々なインデックス情報を収集する「インデックス・ポスティング」を開始しています。今回のクラウド基盤の提供によって、これまで時間限定で受け付けていた指数会社からの提案が常時受付可能となり、様々なインデックス情報の収集・蓄積の効率化が実現されました。また、クラウド基盤に搭載された高度データ分析機能を活用することで、インデックスに含まれる企業に関する財務情報だけでなく、ESG情報を含む非財務情報を併せて分析することができ、運用の高度化につなげることができました。
f.ITサービス事業
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・製品やサービスのUI/UXデザインに強みを持つ株式会社グッドパッチと、ITを活用して新規サービスの開発や業務改革を図る企業のDXの推進事業で協業し、DXの社会理解の促進やプロトタイプの開発を支援するプログラム「Transfer Starter」の提供を開始しました。お客様にノウハウをスキルトランスファーしながらDXにおけるプロダクト開発を行う「build service」を2021年1月から開始しており、今後も、UI/UXデザインや新規事業の立ち上げに強みを持つ同社のビジネスと連携し、お客様のDXの推進と実現に貢献していきます。
<「前に伸ばす:強みをさらに強く」に関する取り組み>・お客様のクラウド活用への貢献を目的に、韓国の大手IT企業Megazone Corporationグループの米国法人Megazone Corporationと資本提携及び業務提携を行い、マルチクラウドの利用を効率化するソリューションの提供を開始しました。今後も Megazone Corporationグループと共同で新技術の活用や新サービスの開発に取り組み、コストの最適化や運用の負荷軽減など、日本及びアジアを中心としたグローバルのお客様のクラウド活用に貢献していきます。
g.その他
<「上に広げる:ビジネス変革への挑戦」に関する取り組み>・独Celonis SEが提供するプロセスマイニングソリューション「Celonis Intelligent Business Cloud」の取り扱いを開始しました。企業内で日々発生する業務データやログをAIで分析し、業務プロセスにおけるボトルネックや改善点を特定するソリューションです。プロセスの改善に必要なOODAループ※1をツールの中でリアルタイムに実行することが可能です。本ソリューションの提供に加え、データ設計やコンサルティング、設定、既存システムとの連携、運用、教育などのサービスもトータルで提供し、お客様のDXを支援していきます。さらに、2020年6月に設立された一般社団法人プロセスマイニング協会へ特別会員として参加。技術啓蒙や人材育成にも注力していきます。
※1:OODAループ:「観察(Observe)」、「方向づけ(Orient)」、「意思決定(Decide)」、「行動(Act)」を繰り返し行う問題解決方法
<「外に出る:新たな分野・リージョン開拓」に関する取り組み>・TAKADA株式会社とともに、インテリア系大型商品の配送を行う物流の合弁会社TriValue株式会社(以下:TriValue)を設立しました。TriValueは大型家具配送の元請事業者として、家具メーカーや、小売業のお客様に配送や倉庫を含めた物流サービスを提供します。荷主、消費者、配送事業者に向けた総合的な物流プラットフォームを活用し、配送可能日や状況をリアルタイムで可視化したり、配送ルートや積み荷を最適化したりすることで、お客様の業務効率化と消費者の利便性向上を実現します。当社は、2011年から輸配送を最適化するクラウドサービス「Mobile Asset Management Service」を提供しています。TriValueは同サービスを活用し、効率的な共同配送を実現するDXを実践していきます。
h.全社
<「足元を固める:経営基盤の強化」に関する取り組み>・多様な人材が活躍できる環境や風土を醸成するため、社員の働き方変革や健康経営、女性・シニア及び障がい者の活躍支援、育児・介護との両立支援等に取り組んでおり、加えてLGBT(性的マイノリティ)※1やSOGI(性的指向や性自認)※2を含めた更なるダイバーシティ推進を図るため、ダイバーシティ基本方針を策定しました。本方針に基づき、LGBTやSOGIに関する相談窓口の設置や社内研修を行い社員の理解を促進しています。また、これらの取り組みなどが認められ、任意団体「work with Pride」が策定する、LGBTなどの性的マイノリティへの取り組みの評価指標「PRIDE指標2020」における最高位「ゴールド」を取得しました。一人ひとりが意欲を持ち、多彩な個性が多様な働き方で力を合わせ、新しいことに挑戦し自己実現できる職場環境こそが新たなソリューションや良いサービスを生み出すと考えます。今後も、年齢、性別、性自認や性的指向、国籍、障がいの有無等に関わらず、すべての社員を尊重し、ダイバーシティの浸透を図っていきます。
※1:LGBT:レズビアン/ゲイ/バイセクシュアル/トランスジェンダーの頭文字。性的マイノリティの総称
※2:SOGI:性的指向及び性自認(Sexual Orientation and Gender Identity)の頭文字
・新型コロナウイルス感染症の拡大が続く状況下、当社グループでは、全ての役職員が在宅勤務へと移行しています。従前よりテレワーク環境の整備や、チャットツールの導入、ペーパーレス化など、在宅勤務でも生産性を維持・向上できる仕組みを構築しており、これらを活用することで、状況に合わせた柔軟な働き方が可能になっています。今後、イノベーティブな発想のためのコミュニケーション、一体感の醸成、適切な統制活動などの場としてのオフィスワークの有効性も認識しつつ、感染拡大防止策の徹底を基本としたコロナ禍におけるより良い働き方を追求していきます。
・総務省がテレワークの普及促進を目的としてその導入・活用に十分な実績を持つ企業を選定する「テレワーク先駆者百選」に選ばれました。当社は、社員の働きがい向上を目指した「働き方変革」を推進し、働く「時間」と「場所」の選択肢を拡げてきました。今後も、これを継続するとともに、変化を楽しみ、多様性を価値に変えることができる創造性豊かな人材が成長し、挑戦し続けるための環境づくり、仕組みづくりに取り組んでいきます。
・業務の内容や環境に応じて働く場所や時間の自由度を更に高め、社員の自律性や創造性、社員同士のつながり、新しいことへの挑戦を促進するとともに、グループ連携を強化し企業価値の更なる向上を図るため、現在、分散している当社及び当社グループ会社について、各社の本社機能を中心とした移転統合を実施することを決定しました。当社グループは、2021年6月より現在のオフィスから移転統合先となる神谷町トラストタワーに順次移転を開始し、2021年9月頃に移転完了予定です。
② 業績の状況
当社グループの当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
(金額単位は百万円。%表示は、対前期増減率。)
売上収益 | 売上 総利益 | その他の収益 及び費用 | 営業利益 | 税引前利益 | 当社株主に 帰属する 当期純利益 | |||||||
2021年 3月期 | 479,878 | △1.5% | 121,465 | 2.9% | △77,840 | △1.9% | 43,625 | 4.7% | 43,952 | 5.8% | 30,486 | 7.2% |
2020年 3月期 | 487,018 | 7.8% | 118,051 | 9.6% | △76,383 | △6.4% | 41,667 | 16.1% | 41,541 | 14.5% | 28,451 | 15.6% |
2019年 3月期 | 451,957 | 5.2% | 107,709 | 6.0% | △71,810 | △4.1% | 35,898 | 10.0% | 36,286 | 7.6% | 24,616 | 4.4% |
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は、通信、官公庁、金融向けなどが増加したものの、流通、製造向けや国内外事業会社の減収により、前連結会計年度と比べて7,139百万円(前年同期比1.5%)減少し、479,878百万円となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は、売上総利益率の改善により、前連結会計年度と比べて3,414百万円(同2.9%)増加し、121,465百万円となりました。
売上総利益率は、主に製品販売の採算改善により、前連結会計年度の24.2%から1.1ポイント増加の25.3%となりました。
(その他の収益及び費用)
当連結会計年度のその他の収益及び費用は、人件費の増加などにより、前連結会計年度に比べて1,456百万円(同1.9%)増加し、77,840百万円となりました。
(営業利益)
営業利益は、前連結会計年度と比べて1,957百万円(同4.7%)増加し、43,625百万円となりました。また、売上収益営業利益率は前連結会計年度の8.6%から0.5ポイント増加の9.1%となりました。
(税引前利益)
当連結会計年度の税引前利益は、前連結会計年度と比べて2,411百万円(同5.8%)増加し、43,952百万円となりました。
(当社株主に帰属する当期純利益)
法人所得税は、前連結会計年度に比べて28百万円増加し、13,108百万円となり、非支配持分に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べて347百万円増加し、357百万円となりました。
以上の結果、当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べて2,034百万円(同7.2%)増加し、30,486百万円となりました。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ セグメント別業績
セグメント別の財政状態及び経営成績の状況は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいております。
(金額単位は百万円。%表示は、対前期増減率。)
エンター プライズ | 流通 | 情報通信 | 広域・社会 インフラ | 金融 | ITサービス | その他 | ||||||||
売上 収益 | 126,571 | △3.7% | 52,250 | △14.0% | 187,275 | 3.5% | 62,234 | 1.9% | 24,666 | 2.5% | 115,672 | 2.9% | 38,781 | △6.4% |
税引前 利益 | 8,509 | △5.9% | 1,245 | △77.5% | 18,327 | 7.6% | 4,680 | 92.6% | 2,276 | 71.5% | 12,735 | 12.6% | 2,422 | 366.6% |
資産 | 60,600 | 1.7% | 20,935 | △5.0% | 101,492 | 11.9% | 29,450 | 19.0% | 8,288 | 11.1% | 78,589 | △0.6% | 49,596 | 8.3% |
a. エンタープライズ事業
コロナ禍による顧客の投資活動の抑制や延期などの影響で、売上収益は126,571百万円(前年同期比3.7%減)となりました。減収の影響により、税引前利益は8,509百万円(同5.9%減)となりました。セグメント資産は、営業債権及びその他の債権の増加などにより、60,600百万円(同1.7%増)となりました。
b. 流通事業
コロナ禍の影響を受け期中成約が停滞し、売上収益は52,250百万円(同14.0%減)、税引前利益は1,245百万円(同77.5%減)となりました。セグメント資産は、営業債権及びその他の債権の減少などにより、20,935百万円(同5.0%減)となりました。
c. 情報通信事業
通信事業者向けインフラなどが増加し、売上収益は187,275百万円(同3.5%増)となりました。増収に加え売上総利益率の改善などにより、税引前利益は18,327百万円(同7.6%増)となりました。セグメント資産は、棚卸資産の増加などにより、101,492百万円(同11.9%増)となりました。
d. 広域・社会インフラ事業
中央省庁や公益、製造向けインフラなどが増加し、売上収益は62,234百万円(同1.9%増)となりました。増収による売上総利益の増加などにより、税引前利益は4,680百万円(同92.6%増)となりました。セグメント資産は、棚卸資産の増加などにより、29,450百万円(同19.0%増)となりました。
e. 金融事業
大手銀行や政府系金融機関向けインフラなどの増加により、売上収益は24,666百万円(同2.5%増)となりました。増収に加え売上総利益率の上昇や販売費及び一般管理費の減少により、税引前利益は2,276百万円(同71.5%増)となりました。セグメント資産は、棚卸資産の増加などにより、8,288百万円(同11.1%増)となりました。
f. ITサービス事業
クラウド関連ビジネスの増加により、売上収益は115,672百万円(同2.9%増)、税引前利益は12,735百万円(同12.6%増)となりました。セグメント資産は、78,589百万円(同0.6%減)となりました。
g. その他
海外子会社における顧客の投資抑制などにより、売上収益は38,781百万円(同6.4%減)となりましたが、前連結会計年度に実施したのれん減損の反動などにより税引前利益は2,422百万円(同366.6%増)となりました。セグメント資産は、海外子会社における資産の増加などにより、49,596百万円(同8.3%増)となりました。
(注)上記セグメントの売上収益及び税引前利益は、セグメント間の内部売上収益等を含めて表示しております。
中期経営計画の定量目標に対する達成状況は次のとおりであります。
2021年3月期 目標 | 2021年3月期 実績 | |
収益力強化 | 当社株主に帰属する当期純利益 300億円 | 305億円 |
注力ビジネスでの成長 | クラウド・ITアウトソーシングビジネス 600億円 | 716億円 |
グローバル関連ビジネス 600億円 | 617億円 | |
資本効率向上 | ROE 12%以上 | 12.5% |
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べて23,931百万円増加し、462,748百万円となりました。これは、主にオフィス移転統合で解約する賃借物件のリース期間短縮等により有形固定資産が10,372百万円減少したものの、現金及び現金同等物が6,329百万円、営業債権及びその他の債権が2,434百万円、棚卸資産が12,153百万円、その他の金融資産(流動)が4,520百万円、その他の流動資産が3,328百万円、その他の金融資産(非流動)が2,657百万円増加したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べて113百万円減少し、200,139百万円となりました。これは、主にその他の流動負債が8,978百万円増加したものの、オフィス移転統合で解約する賃借物件のリース期間短縮等により長期金融負債が9,052百万円減少したことによるものであります。
資本は、前連結会計年度末に比べて24,044百万円増加し、262,609百万円となりました。これは、主に剰余金の配当による減少が14,451百万円あったものの、当期純利益による増加が30,843百万円、その他の包括利益による増加が6,099百万円あったことによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べて6,329百万円増加し、80,944百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な内容は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は37,266百万円となりました。これは、税引前利益43,952百万円、減価償却費及び償却費19,664百万円に加え、棚卸資産が11,965百万円の増加、法人所得税の支払額が15,290百万円の支出となったことによるものであります。
前連結会計年度との比較では、営業活動による収入は12,837百万円減少しております。これは、税引前利益及び非資金費用が増加したものの、運転資本の増減による支出の増加がこれを上回ったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は10,120百万円となりました。これは、既存データセンターの設備増強等のため有形固定資産の取得による支出が3,878百万円となったこと、無形資産の取得による支出が1,818百万円となったこと、オフィスの新規賃貸借契約等のため敷金及び保証金の差入による支出が3,774百万円となったことに加え、マレーシアIT企業への投資等のため関連会社株式の取得による支出が1,018百万円となったことによるものであります。
前連結会計年度との比較では、投資活動による支出は7,067百万円減少しております。これは、前連結会計年度のインドネシアIT企業2社への投資、及びDX事業の関連会社への投資等の反動によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は21,062百万円となりました。これは、セール・アンド・リースバックによる収入が4,909百万円となったものの、リース負債の返済による支出が11,373百万円となったことに加え、当社株主への配当金の支払額が14,339百万円となったことによるものであります。
前連結会計年度との比較では、財務活動による支出は3,938百万円増加しております。これは、セール・アンド・リースバックによる収入が減少したこと、及び当社株主への配当金の支払額が増加したこと等によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
① 当社グループにおける財務資本戦略の基本的な考え方
当社グループは、新たな中期経営計画(2021年4月から2024年3月までの3か年)における3つの基本方針(Accelerate、Expand、Upgrade)を着実に実行することで、顧客、社会に対する価値領域を拡大し、収益力と資本効率を更に向上させ、定量目標である「営業利益率10%」、「当社株主に帰属する当期純利益400億円」、「ROE13%以上」の達成を目指しております。この中期経営計画達成に向けた事業活動で得た資金を、重点分野への成長投資、安定的かつ業績に応じた株主還元、及び内部留保に総合的なバランスを勘案して適正配分することで、企業価値の最大化に繋げていくことを財務資本戦略の基本的な考え方としております。
a.成長投資について
当社グループは、ITインフラやクラウドなどの当社グループの強みを発揮し、リカーリングビジネスの拡大を加速するために必要な事業用資産への投資や、新たな地域やビジネス領域の拡張のために海外事業の買収を進め、ITサービスに対するニーズの高度化、多様化、かつ技術の急速な進歩による変化への対応を図ってまいりました。
新たな中期経営計画期間においては、従来から注力しているAI・IoT、アジャイルなど新たなアプリケーションの開発、次世代ネットワークに関する技術の獲得に加え、DXコンサル、デザインコンサルなどの高付加価値サービスの提供を加速させるため、先進技術の獲得や顧客基盤の強化等を目的とした事業開発に関連する新たな分野への投資やM&Aを進めてまいります。これらの投資にあたっては、資本コストを意識し、将来の投資に対するリターンを注意深く見極めながら進めてまいります。また、M&Aにおいては、その投資効果を高めるための投資後の融合作業が重要であり、その点も考慮した慎重な判断を行ってまいります。
b.株主還元について
当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題として認識し、安定的な配当に努めるとともに、業績に応じた利益還元を重視し、内部留保金とのバランスを考慮しながら、配当水準を高めることを基本方針としております。なお、連結配当性向は45%程度を目安としております。

② 流動性の確保
当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物(以下「資金」)の残高は、前連結会計年度末と比べて6,329百万円増加し、80,944百万円となりました。主な資金の内訳といたしましては、現金及び預金(預入期間が3か月を超える定期預金を除く)37,991百万円、預入期間が3か月以内の預け金42,953百万円となっております。
当社グループでは、キャッシュマネジメントサービスを導入し、グループ会社間の資金を集中管理することにより、効率的かつ安定的な運用を行っております。また、資金運用に際しては、信用リスクが低く安全性の高い金融資産に限定して運用を行っております。
なお、新型コロナウイルス感染症による当連結年度末以降のキャッシュ・フローに対する影響は一定程度見込まれるものの、当該影響に対応可能な流動性は確保できていると判断しております。
③ 資金需要の状況
当社グループにおきましては、運転資金及び設備投資等の資金需要に対して、安定した営業キャッシュ・フローに加えて、上述した内部資金を中心に賄っております。
なお、当連結会計年度における設備投資額は14,635百万円(使用権資産を含む)であり、主な投資内容に関しましては、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。
(5) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
エンタープライズ事業 | 9,600 | 89.7 |
流通事業 | 5,233 | 88.3 |
情報通信事業 | 10,889 | 101.7 |
広域・社会インフラ事業 | 5,438 | 92.7 |
金融事業 | 4,026 | 99.3 |
ITサービス事業 | 1,258 | 126.8 |
その他 | 2 | 17.4 |
合計 | 36,450 | 95.2 |
(注)金額は外注費を除くシステム開発にかかる発生原価によっており、消費税等は含まれておりません。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
エンタープライズ事業 | 30,351 | 91.7 |
流通事業 | 4,957 | 120.9 |
情報通信事業 | 73,753 | 113.7 |
広域・社会インフラ事業 | 16,343 | 100.6 |
金融事業 | 4,253 | 113.9 |
ITサービス事業 | 379 | 40.3 |
その他 | 27,482 | 107.0 |
合計 | 157,522 | 105.9 |
(注)金額は仕入価格によっており、消費税等は含まれておりません。
③ 受注状況
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前期比 (%) | 受注残高 (百万円) | 前期比 (%) |
エンタープライズ事業 | 123,585 | 100.4 | 74,285 | 112.8 |
流通事業 | 52,583 | 105.4 | 30,382 | 104.0 |
情報通信事業 | 207,440 | 117.8 | 109,691 | 135.6 |
広域・社会インフラ事業 | 68,886 | 114.1 | 53,927 | 114.4 |
金融事業 | 24,681 | 87.1 | 19,826 | 100.5 |
ITサービス事業 | 9,300 | 80.0 | 4,197 | 85.0 |
その他 | 36,015 | 87.4 | 22,601 | 92.0 |
合計 | 522,492 | 106.5 | 314,912 | 115.6 |
(注)金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
エンタープライズ事業 | 126,571 | 96.3 |
流通事業 | 52,250 | 86.0 |
情報通信事業 | 187,275 | 103.5 |
広域・社会インフラ事業 | 62,234 | 101.9 |
金融事業 | 24,666 | 102.5 |
ITサービス事業 | 115,672 | 102.9 |
報告セグメント計 | 568,672 | 99.7 |
その他 | 38,781 | 93.6 |
調整額 | △127,575 | 102.0 |
合計 | 479,878 | 98.5 |
(注) 1.セグメント間の取引については、調整額において消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
日本電信電話㈱及びそのグループ会社 | 72,671 | 14.9 | 79,683 | 16.6 |
ソフトバンクグループ㈱及び そのグループ会社 | 46,420 | 9.5 | 48,774 | 10.2 |
3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(6) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
また、この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。