有価証券報告書-第21期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
連結会計年度におけるわが国経済は、政府による対策を背景に雇用環境の改善がみられ長期にわたる景気回復が続いております。当社の事業に関連する消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場規模は、平成29年度に前年比9.1%増の16.5兆円と堅調に増加いたしました。さらに、小売市場全体に占めるEC化率は5.7%と世界水準から見てもまだ低いため、今後もEC化の進展による市場の拡大が期待されます。(※1)また、外食産業の市場規模に関しましても、平成28年度に25.4 兆円と前年比で増加しております。(※2)
このような経済状況のもとで、当社グループは「ユーザー本位の価値あるサービスを創出しつづける」をミッションとして事業領域の拡大とサービスの改善を行ってまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上収益は46,782百万円(前年同期比7.6%増)、営業利益は22,876百万円(前年同期比6.7%増)、税引前当期利益は22,820百万円(前年同期比6.4%増)親会社の所有者に帰属する当期利益は15,699百万円(前年同期比6.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
当連結会計年度のインターネット・メディア事業の売上収益は45,564百万円(前年同期比7.1%増)、セグメント利益は22,523百万円(前年同期比5.7%増)となりました。
また、当連結会計年度のファイナンス事業の売上収益は1,218百万円(前年同期比31.3%増)、セグメント利益は348百万円(前年同期比150.8%増)となりました。
※1 出所:経済産業省『平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(平成30年4月25日発表)
※2 出所:一般社団法人 日本フードサービス協会「平成28年外食産業市場規模推計について」(平成29年7月発表)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比べ9,861百万円減少し、21,029百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は16,000百万円(前年同期は16,337百万円の収入)となりました。
これは、主として税引前利益22,820百万円を計上した一方で、法人所得税の支払額が6,869百万円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は8,415百万円(前年同期は2,105百万円の支出)となりました。
これは、主として子会社株式の取得による支出が4,439百万円、投資有価証券の取得による支出が2,605百万円、サーバーで使用するソフトウェアの購入等の無形資産の取得による支出が1,166百万円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は17,447百万円(前年同期は11,657百万円の支出)となりました。
これは、主として自己株式の取得による支出が10,780百万円、配当金の支払額が6,454百万円あったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
生産実績
当社グループの業務には生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
受注実績
当社グループは受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
インターネット・メディア事業 | 45,564 | 107.1 |
ファイナンス事業 | 1,218 | 131.3 |
合計 | 46,782 | 107.6 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度における販売先については、いずれも販売実績が総販売実績の100分の10未満のため、記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループは、当連結会計年度よりIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組替えて比較分析を行っております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績の状況
当連結会計年度の売上収益は46,782百万円(前年同期比7.6%増)となりました。インターネット・メディア事業の食べログの飲食店販促事業及び価格.comのサービス事業が増収となったことによるものです。ファイナンス事業の売上収益は、保険代理店業務が増収となったことに加えてデータを活用した広告収入が増加いたしました。この結果、当連結会計年度の営業利益は22,876百万円(前年同期比6.7%増)となりました。当連結会計年度の金融収益は9百万円、金融費用は3百万円となりました。また持分法による投資損失が62百万円となりました。この結果、当連結会計年度の税引前当期利益は22,820百万円(前年同期比6.4%増)となりました。これらの結果、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は15,699百万円(前年同期比6.0%増)となりました。
セグメントの業績(内部取引消去後)は次のとおりであります。
インターネット・メディア事業
[価格.com業務]
当連結会計年度の売上収益は21,973百万円(前年同期比3.2%増)となりました。
『価格.com』におけるショッピング事業は、消費財カテゴリのユーザビリティ改善が影響し消費財流通総額が増加した結果、手数料収入が増加し、売上収益は9,248百万円(前年同期比1.2%増)となりました。『価格.com』におけるサービス事業は、SIM比較やWi-Fi比較、クレジットカード比較などが好調に推移し、売上収益は8,559百万円(前年同期比7.2%増)となりました。『価格.com』における広告事業は、PCトラフィックの減少が影響しておりましたが外部配信広告の売上収益が増加したため、売上収益は4,166百万円(前年同期比0.1%増)となりました。
『価格.com』の月間利用者は2018年3月度に6,188万人(※1)となりました。
[食べログ業務]
当連結会計年度の売上収益は20,148百万円(前年同期比8.3%増)となりました。
『食べログ』における飲食店販促事業は、新料金プラン(※2)の新規契約店舗数の増加に加えて一部の飲食店で旧料金プラン(※3)から新料金プランへの切替を行ったことにより、新料金プランの契約店舗数が増加いたしました。3月時点の新料金プランの契約店舗数は前年度末より17,800店舗増加し21,300店舗となり、4月に23,500店舗となりました。加えてネット予約可能店舗の増加によりネット予約人数が順調に進捗しました。その結果、売上収益は14,990百万円(前年同期比19.6%増)となりました。『食べログ』におけるユーザー会員事業は、提携パートナーからの手数料収入が減少したことで売上収益は2,942百万円(前年同期比16.5%減)となりました。『食べログ』における広告事業は、飲食店と連携をした企画型広告の収入は増加した一方で、新料金プランの契約店舗数が増加したことにより他のメディアへの送客で発生していた手数料収入が減少いたしました。その結果、売上収益は2,216百万円(前年同期比13.1%減)となりました。
『食べログ』の月間利用者は2018年3月度に1億4,291万人(※1)となりました。
[新興メディア・ソリューション業務]
当連結会計年度の売上収益は3,444百万円(前年同期比30.5%増)となりました。
『キナリノ』において、キナリノモールの手数料収入の増加と企画型広告を中心とした広告収入が増加いたしました。『求人ボックス』において、トラフィックの増加に伴い手数料収入が増加いたしました。
また、2018年1月に連結子会社となった㈱LCLと同年2月に連結子会社となった㈱ガイエは第4四半期連結会計期間より業績貢献をいたしました。
ファイナンス事業
当連結会計年度のファイナンス事業の売上収益は1,218百万円(前年同期比31.3%増)、セグメント利益は348百万円(前年同期比150.8%増)となりました。
連結子会社㈱カカクコム・インシュアランスによる保険代理店業務において、生命保険及び損害保険の申し込み数が増加したことに加え、データを活用した広告収入が増加いたしました。
※1 月間利用者数とは、1ヶ月のうちに運営サイトを訪れたブラウザ数であり、延べ訪問数ではなく、複数回訪問したブラウザも1と数えた場合の正味のブラウザ数となります。また、2016年11月より、モバイル端末のウェブページ多様化に伴い計測ロジックを変更しております。
※2 食べログの新料金プランとは、月額基本料金とネット予約に応じて従量料金が発生する飲食店向けサービスプランです。
※3 食べログの旧料金プランとは、月額基本料金のみの飲食店向けサービスプランです。
ロ.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループは、様々な領域でユーザー本位の価値あるサービスを提供しております。現在、自社の事業領域において優位性を確保していると認識しておりますが、当該事業はいずれも新規参入の可能性があります。またシステムのセキュリティ・開発・保守管理体制は極めて重要であると考えております。
これに対して、ユーザーのニーズを的確に捉え事業領域の拡大やサービスの拡充を行ってまいります。また環境の変化に対応したセキュリティの維持、システム開発及び保守管理体制の整備を進めてまいります。
ハ.資本の財源及び資金の流動性
[キャッシュ・フロー]
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
[資金需要]
当社グループの資金需要は運転資金需要と設備資金需要であります。運転資金需要の主なものは、営業活動における人件費や販売代理店に支払う販売手数料費、またサービス利用者増加を目的とした広告宣伝費によるものであります。設備資金需要の主なものは、サーバーおよびネットワークの設備投資によるものであります。
[財務政策]
当社グループの事業拡大に伴う必要な資金は営業キャッシュ・フローからの獲得した資金となっております。
ニ.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標等について
当社グループは、継続的な事業拡大と経営の効率性維持のため親会社所有者帰属持分当期利益率40%を目安とすることを重要な指標として位置付けております。当連結会計年度における親会社所有者帰属持分当期利益率は45.7%となりました。引き続き、これらの指標を維持できるよう取り組んでまいります。
(並行開示情報)
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表及びIFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
① 要約連結貸借対照表(日本基準)
(単位:百万円) | ||
前連結会計年度 (2017年3月31日) | 当連結会計年度 (2018年3月31日) | |
資産の部 | ||
流動資産 | 37,041 | 29,968 |
固定資産 | ||
有形固定資産 | 913 | 919 |
無形固定資産 | 2,151 | 7,109 |
投資その他の資産 | 2,021 | 4,694 |
固定資産合計 | 5,087 | 12,723 |
資産合計 | 42,129 | 42,692 |
負債の部 | ||
流動負債 | 6,494 | 7,918 |
固定負債 | 236 | 823 |
負債合計 | 6,730 | 8,742 |
純資産の部 | ||
株主資本 | 34,890 | 33,154 |
その他の包括利益累計額 | 101 | 263 |
新株予約権 | 184 | 197 |
非支配株主持分 | 222 | 335 |
純資産合計 | 35,398 | 33,950 |
負債純資産合計 | 42,129 | 42,692 |
② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)
要約連結損益計算書
(単位:百万円) | ||
前連結会計年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | |
売上高 | 45,089 | 48,775 |
売上原価 | 4,493 | 4,825 |
売上総利益 | 40,596 | 43,949 |
販売費及び一般管理費 | 19,434 | 21,560 |
営業利益 | 21,161 | 22,389 |
営業外収益 | 20 | 211 |
営業外費用 | 18 | 146 |
経常利益 | 21,164 | 22,454 |
特別利益 | 36 | 11 |
特別損失 | - | 4 |
税金等調整前当期純利益 | 21,200 | 22,462 |
法人税等合計 | 6,323 | 6,771 |
当期純利益 | 14,877 | 15,690 |
非支配株主に帰属する当期純利益 | 38 | 38 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 14,838 | 15,652 |
要約連結包括利益計算書
(単位:百万円) | ||
前連結会計年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | |
当期純利益 | 14,877 | 15,690 |
その他の包括利益合計 | 7 | 162 |
包括利益 | 14,884 | 15,852 |
(内訳) | ||
親会社株主に係る包括利益 | 14,846 | 15,814 |
非支配株主に係る包括利益 | 38 | 38 |
③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)
前連結会計年度(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)
(単位:百万円) | |||||
株主資本 | その他の包括利益 累計額 | 新株予約権 | 非支配株主持分 | 純資産合計 | |
当期首残高 | 31,645 | 93 | 188 | 183 | 32,111 |
当期変動額合計 | 3,245 | 7 | △4 | 38 | 3,287 |
当期末残高 | 34,890 | 101 | 184 | 222 | 35,398 |
当連結会計年度(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)
(単位:百万円) | |||||
株主資本 | その他の包括利益 累計額 | 新株予約権 | 非支配株主持分 | 純資産合計 | |
当期首残高 | 34,890 | 101 | 184 | 222 | 35,398 |
当期変動額合計 | △1,736 | 162 | 12 | 112 | △1,448 |
当期末残高 | 33,154 | 263 | 197 | 335 | 33,950 |
④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)
(単位:百万円) | ||
前連結会計年度 (自 2016年4月1日 至 2017年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 16,337 | 16,041 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △2,082 | △9,128 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △11,656 | △17,480 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △4 | 0 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | 2,593 | △10,566 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 28,319 | 30,890 |
連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | △22 | 705 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 30,890 | 21,028 |
⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)
前連結会計年度(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)
(平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱いの適用)
法人税法の改正に伴い、「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第32号 平成28年6月17日)を当連結会計年度に適用し、平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更しております。
この結果、当連結会計年度の損益に与える影響は、軽微であります。
当連結会計年度(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)
(連結範囲に関する事項)
連結子会社の数 9社
主要な連結子会社名
フォートラベル㈱
㈱カカクコム・インシュアランス
㈱エイガ・ドット・コム
㈱タイムデザイン
㈱webCG
Time Design International Pte. Ltd.
㈱LCL
㈱ガイエ
連結範囲の変更
Time Design International Pte. Ltd.は、当連結会計年度において新たに設立したため、㈱LCL及び㈱ガイエは、当連結会計年度において新たに株式を取得したため、当連結会計年度より連結の範囲に含めております。
(持分法の適用に関する事項)
持分法適用関連会社の数 2社
主要な持分法適用会社名
CATAPULT VENTURES PTE. LTD.
LOVEBONITO HOLDINGS PTE. LTD.
持分法適用範囲の変更
CATAPULT VENTURES PTE. LTD.及びLOVEBONITO HOLDINGS PTE. LTD.は、当連結会計年度において新たに株式を取得したため、当連結会計年度より持分法の範囲に含めております。
(減価償却方法の変更)
従来、当社の有形固定資産の減価償却方法については、主として定率法を採用しておりましたが、当連結会計年度より定額法へ変更しております。
この変更は、中期経営方針の策定を契機に有形固定資産の減価償却方法を再検討した結果、当社の有形固定資産は耐用年数内で安定的に使用される資産が大部分を占めることから、定額法の採用が、より事業の実態を反映した合理的な方法であると判断し、定率法から変更したものであります。
これにより、従来の方法に比べて、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ85百万円増加しております。
(4)IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
前連結会計年度(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 34.初度適用」に記載のとおりであります。
当連結会計年度(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)
(のれんの償却)
日本基準ではのれんを一定期間にわたり償却しておりましたが、IFRSではのれんの償却は行われず、毎期減損テストを実施することが要求されます。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて販売費及び一般管理費が112百万円減少しております。